2017年5月21日

2017年5月21日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
  • アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請 
  • バイエル、PI3K阻害剤を承認申請 
  • Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請 
  • CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持 
  • キートルーダ、膀胱癌に承認 
  • FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大 
  • FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告 


【新薬開発】


シャイアー、遺伝性血管浮腫用薬を承認申請へ
(2017年5月18日発表)

シャイアーはlanadelumabの第三相HAE(遺伝性血管浮腫)発作予防試験が成功したと発表した。18年始めまでに承認申請する考え。

HAEは有病率が3万人に一人の希少疾患。補体系に係るC1エステラーゼの遺伝子欠損・変異により、皮膚や小腸、口、喉に痛みを伴う浮腫ができ、喉で起きた場合は命に関わることもある。

lanadelumabは血漿カリクレイン(pKal)を標的とする完全ヒト化抗体で、16年に59億ドルで買収したDyax社がDX-2930として開発したもの。特徴は投与方法が簡便であること。同社の血漿由来ヒトC1エステラーゼ・インヒビター、Cinryzeは週二回点滴静注だが、二週間あるいは四週間に一回の皮注で足りる。

第三相試験では、300mgを二週間毎に投与した群では発作が偽薬比87%少なかった。150mg四週間毎、300mg四週間毎の各群も偽薬比有意に減少した。主な有害事象は注射箇所痛。

リンク: シャイアーのプレスリリース

【承認申請】


アムジェン、片頭痛発作予防薬を承認申請
(2017年5月18日発表)

アムジェンは、AMG 334(erenumab)を片頭痛発作予防薬として米国で承認申請した。CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とする完全ヒト化抗体で、慢性片頭痛や反復性片頭痛(月に4~14日発症)の患者に、月一回、皮注する。三本の薬効確認試験では、月間発症日数の減少が偽薬群より1~2日多かった。

イーライリリーも抗CGRPヒト化抗体、LY2951742(galcanezumab)の第三相試験が成功、下期に米国などで承認申請する予定。投与頻度や試験成績は両剤とも大差ない。

アムジェンはアルツハイマー病や片頭痛領域でノバルティスと共同開発提携を結んでおり、AMG 334の販売は米国は共同、海外(日本は除く)はノバルティスが販売する。

リンク: アムジェンのプレスリリース

バイエル、PI3K阻害剤を承認申請
(2017年5月17日発表)

バイエルは、BAY 80-6946(copanlisib)を米国で濾胞性リンパ腫の三次治療薬として承認申請し受理されたと発表した。希少疾患用薬指定とファーストトラック指定を持っており、優先審査を受ける。

再発性難治性低悪性度非ホジキン型リンパ腫の第二相試験に基づく加速承認申請で、濾胞性104例におけるORR(客観的反応率)は59%(うち14%は完全反応)、メジアン反応持続期間は52週間以上だった。G3以上の有害事象は高血糖が40%の患者で、高血圧症が23%で、発生した。

作用機序は、B細胞の活性化や生存、トラフィッキングに係るphosphoinositide-3 kinase(PI3K)の阻害。ファースト・イン・クラスであるギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のZydelig(idelalisib)は14年に米国で難治性濾胞性リンパ腫と再発性慢性リンパ性白血病用薬として承認された。copanlisibはPI3Kデルタだけでなくアルファも阻害する汎クラスI PI3K阻害剤であることが特徴。重篤感染症のリスクや肝毒性が小さいようなら長所になりうるのではないか。

PI3K阻害剤の開発は活発で、インフィニティ・ファーマスーティカルズやノバルティスも第三相試験中。

リンク: バイエルのプレスリリース

Aerie社、緑内障治療の新薬を再び承認申請
(2017年5月15日発表)

Aerie Pharmaceuticals(Nasdaq:AERI)は、Rhopressa(netarsudil)を緑内障治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。審査期限は来年2月28日。眼球における液排出経路である小柱網を標的とする画期的新薬で、一日一回の点眼で足りる。臨床試験では、眼圧が26 mmHg未満のサブグループにおける効果がtimololの一日二回点眼と非劣性だった。

16年9月に承認申請したが、製造会社が承認前検査(新薬承認に際してFDAが行う工場査察)を受ける準備ができていないという理由で翌月に撤回した経緯がある。

リンク: Aerie社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが自家軟骨細胞療法などの承認を支持
(2017年5月19日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、自家軟骨細胞療法などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域などで承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

まず、ドイツのco.don AG(FSE:CNWK)が承認申請したSpheroxは、ドイツで97年以来、販売されている自家軟骨細胞療法。患者の軟骨細胞の球状凝集体をex vivoで培養し関節鏡的に移植、欠損部位の再生を促す。症候性で10平方センチメートル以下の大腿顆・膝蓋骨軟骨欠損の治療に用いる。二本の臨床試験でKOOS(疼痛や生活機能、QOLに関する患者アンケート)が有意に改善した。副作用は創傷治癒の遅れや関節拘束など。

先端医療としてCommittee for Advanced Therapiesが審査、CHMPに肯定的意見を出すよう勧告したもの。

リンク: EMAのプレスリリース

リンク: co.don社のプレスリリース(5/18付)

イタリアのDompe farmaceutici S.p.A.が承認申請したOxervate(cenegermin)は遺伝子組換え型ヒト神経成長因子の点眼液。神経栄養性角膜炎の治療に用いる。この疾患は三叉神経に損傷があり角膜の感覚が低下・欠如しており、角膜細胞のヒーリングに必要な物質が分泌されにくくなっている。重度神経栄養性角膜炎は希少疾患だが失明のリスクがある。

リンク: EMAのプレスリリース

ハンガリーのゲデオン・リヒターのReagila(cariprazine)はD3/D2受容体パーシャル・アゴニスト。統合失調症の治療に用いる。米国ではアラガン(NYSE:AGN)がインライセンスし、15年にVraylarという製品名で承認を取得した。日本周辺は田辺三菱製薬が導入。

デンマークのレオ ファーマが承認申請したKyntheum(brodalumab、米国名Siliq、和名ルミセフ)は抗IL-17受容体A完全ヒト化抗体。中重度乾癬を治療する。アムジェンが創製しアストラゼネカと共同開発したが、臨床試験で自殺思慮・試行が見られたためアムジェンは離脱、アストラゼネカも権利を他社に譲渡した。欧州の権利を取得したのが今回のレオ ファーマだ。

米国ではValeant(NYSE:VRX)が今年2月に販売承認を取得したが、懸念された通り、自殺思慮・試行リスクが枠付き警告された。日本は協和発酵キリンが16年に発売。

リンク: レオ ファーマのプレスリリース(pdfファイル)

スイスのVifor Pharma Group(SIX:VIFN)のVeltassa(patiromer)は高カリウム血症の治療薬。経口液用粉末で、食中に服用すると、結腸でカリウムに結合、そのまま排泄される。主な有害事象は便秘、下痢、低マグネシウム血症など。様々な薬と結合するため、数時間、離して服用する必要がある。米国では15年に承認。

リンク: Viforのプレスリリース

一方、否定的意見となったのは、まず、Xbiotech(Nasdaq:XBIT)のXilonix。抗IL-1アルファ・ヒトモノクローナル抗体で、結腸直腸癌患者のリーンマスやQOLを改善する薬として承認申請され、加速審査を受けたが、支持されなかった。リーンマスで見てもQOLでも改善効果が明確ではなく、重大な感染症リスクがあり、臨床試験用と市販用の製品の同等性にも懸念があるため。

Xbiotechは4月に否定的意見が出るであろうことを公表済み。米国では承認申請が認められず第三相試験を実施中なので、その結果を待って今後を決めることになりそうだ。

ABサイエンスのMasipro(masitinib)は今度は全身性肥満細胞症の治療薬として承認申請されたが今後も否定的意見となった。治験施設査察時に深刻なGCP(治験実施基準)違反が判明しデータの信頼性が損なわれたこと、安全性データが限定的であること、好中球減少症のような副作用が懸念されること、の三点がボトルネックとなった。

主要な適応拡大は、ノバルティスのZykadia(ceritinib、ジカディア)をALK再編成陽性末期非小細胞性肺癌の一次治療薬として単剤投与することが支持された。Alimta(pemetrexed)及び白金薬の併用療法に追加する三剤併用を検討した第三相非扁平上皮性非小細胞性肺癌試験で、PFS(無進行生存期間)のメジアン値が16.6ヶ月と二剤併用群の8.1ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.55、有意に優れていた。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

【承認】


キートルーダ、膀胱癌に承認
(2017年5月18日発表)

MSDのKeytruda(pembrolizumab)を末期・転移性尿路上皮細胞腫に用いる適応拡大がFDAに承認された。二次治療用途だが、cisplatin不適患者なら一次治療可。200mgを3週間毎に点滴静注する。

二次治療試験は中間解析で成功認定。メジアン生存期間が10.3ヶ月と医師が選んだ薬を投与した群の7.4ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.73、ログランクp=0.0022となった。共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間)は1.1ヶ月の差に留まりフェールした。

一次治療のエビデンスは第二相試験。16年のESMO発表によると、客観的反応率は24%だった。

抗PD-1抗体や抗PD-L1抗体は多くが膀胱癌の承認を取得・申請中だが、ロシュのTecentriq(atezolizumab)の市販後薬効確認試験がフェールしたため、反応率を評価するだけで足りるのか、一抹の不安が生じている。KeytrudaもPFS解析がフェールと紙一重だが、暗中模索している人には延命効果のエビデンスが燦然と輝いてみえる。

リンク: MSDのプレスリリース

FDA、Kalydecoの適応人口を更に拡大
(2017年5月17日発表)

FDAは、バーテックス・ファーマシューティカルズのKalydeco(ivacaftor)の適応拡大を承認した。CFTR遺伝子に特定の変異を持つ嚢胞性線維症の治療薬で、12年の初承認以降も対象となる変異型を増やしてきた。最初はG551D変異型だけだったが、14年2月にはG1244Dなど8種類の変異型が、同年12月にはR117H変異型が、今回、23種類の変異型が追加され、合計33種類となった。

カバレッジは広がったが米国の対象患者数は初回承認時の1000人が2000~3000人になった程度だ。バーテックスは15年にOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)が承認されたが、適応になるF508ホモ欠損型は8000人以上である。経済性だけを考えたら、Kalydecoの適応を100人、200人単位で積み上げるよりも他の新薬に開発資源を投入したほうが効率が良い。

だからこそ、直ぐには適応にならない少数の患者を見捨てずに開発を一歩ずつ進めてきたバーティックスの姿勢は称賛に値する。

FDAも、患者数が少ないため十分な規模の臨床試験を実施できない条件下で、in vitroのデータを元に臨床的効用を判定する手法を採用したことをアピールするプレスリリースを出している。新規23変異型のうち臨床試験データがあるのは8変異19例だけで、承認が1年遅れたのはこれが理由と推測されるが、既存の10変異型におけるin vitroと臨床データの相関を元に、上手くブリッジングできるモデルを構築できたのだろう。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、カナグルの下肢切断リスクを枠付き警告
(2017年5月16日発表)

FDAは、Invokana(和名カナグル)を始めとするcanagliflozin配合剤について、下肢切断リスクを添付文書で枠付き警告することを発表した。昨年、心血管アウトカム試験の中間安全性評価でリスクが表面化。EUのほうが情報提供も警告強化も一歩先行しているが、FDAは、少なくとも現時点では、対象をcanagliflozinだけに留めSGLT2阻害剤全体に広げていないことが印象的だ。大西洋の東西で見解が分かれることは珍しくないが、日本の当局や学会はどう考えているのだろうか?

米国は血糖治療薬の承認に際して心血管リスクが高まらないことを要求している。血糖治療の目的は大血管性合併症や腎障害や感染症、下肢切断などの小血管性合併症のリスクを削減することなので、もし副作用で増えてしまうとしたら話が違う。

規制の発端はPPARガンマ作動剤だ。第一号のトログリタゾンは肝毒性で販売中止になったが、第二号のロジグリタゾンは心不全や心筋梗塞、第三号のピオグリタゾンも心不全のリスクが発覚、警告が強化されるとともに、新薬の心血管リスク評価が厳しくなった。尚、グリタゾンは様々な病気の治療薬としての可能性を秘めていて開発品が数多くあったが、癌原性試験を経て開発中止になったものが少なくなく、今日ではすっかり人気のない開発分野になってしまった。

さて、血糖治療薬は長期間服用する薬なので通常の臨床試験より長い期間、効果の持続性や副作用を監視する必要がある。糖尿病の患者は多いので発生率が1000人年に1例でも多くの患者が被害を受けることになるため、大規模な試験で稀だが深刻な副作用を確認する必要がある。血糖治療薬は降圧剤と比べて忍容性に難のあるものが多いが、幸い、選択肢は多いので、より安全なものを使えばよい。

このような制度・環境の下、ジョンソン・エンド・ジョンソンと田辺三菱製薬はcanagliflozinの心血管アウトカム試験CANVASと腎障害予防効果を検討するCANVAS-R試験を実施している。下肢切断リスクはこの二本の安全性監視データから表面化したもので、巨額の予算を投じてでも長期大規模試験を行う価値がまたまた確認された格好だ。

進行中の試験なのでデータは集計時点により変動するが、今回のFDAの発表によると、CANVAS試験では偽薬、100mg、300mgの各群の下肢切断発生率(1000人年当り)は2.8回、6.2回、5.5回で、ハザードレシオは両用量とも2倍以上、95%信頼区間の下限1.2以上。CANVAS-R(100mgで開始、300mgまで増量可)でも偽薬群4.2回に対して7.9回、ハザードレシオ1.8以上、95%下限1.1以上となった。二つの大規模長期試験でリスクが再現されたのだから、疑う余地は小さそうだ。

FDAは、canagliflozinによる治療を行う前に下肢切断のリスク因子を評価するよう求めている。下肢切断歴、末梢血管疾患、神経症、糖尿病性足潰瘍などだ。治療中は感染症、疼痛、下肢潰瘍などの兆候や症状に注意し、発生したら投与を止める。患者にもcanagliflozinが切断リスク上昇と関連していることと、注意すべき兆候症状を伝える。

枠付き警告は重大な副作用を表しており、TV広告などを行う時でもキチンと伝えなければならない。医師は、患者にキチンと伝えないと後で医療過誤訴訟に巻き込まれる可能性がある。何かと制約があり、販促面で不利だ。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

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2017年5月14日

2017年5月14日


【ニュース・ヘッドライン】

  • アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功 
  • ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール 
  • Array社、悪性黒色腫の第三相が成功 
  • イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功 
  • KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例 
  • アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視 
  • キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認 


【新薬開発】


アストラゼネカ、Imfinziの肺癌メンテ試験成功
(2017年5月12日発表)

アストラゼネカはImfinzi(durvalumab)の第三相肺癌維持療法試験が成功したと発表した。ステージIIIの切除不能非小細胞性肺癌で、白金薬と放射線療法を受けて進行が止まった患者を組入れて欧米や日本の施設で行われた試験で、共同主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)が中間解析で偽薬比有意に上回った。当局と承認申請に向けて相談する考え。尚、この試験ではPD-L1発現状況は不問。

Imfinziは今月、米国で尿路上皮細胞腫二次治療薬として承認された抗PD-L1完全ヒト化抗体。非小細胞性肺癌ではMSDの抗PD-1抗体、Keytrudaが三剤併用で一次治療に承認されたところだが、忍容性に関しては投与タイミングをずらしたほうが良好だろうから、Imfinziが承認されれば選択肢の一つとして価値がありそうだ。

Imfinziは通常の一次治療でも単剤やtremelimumab(ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体)併用で第三相試験を行っており、年内にPFS解析結果が判明する見込み。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ロシュ、Tecentriqの市販後薬効確認試験がフェール
(2017年5月10日発表)

ロシュのTecentriqはImfinziと同じ抗PD-L1モノクローナル抗体で尿路上皮細胞腫用薬として一年早く承認された。両剤とも第二相試験の反応率データに基づく加速承認なので、改めて第三相試験を実施して延命又はそれに準じる効果を確認する義務があるが、Tecentriqはフェールしたことが発表された。Avastin(bevacizuab)の転移性乳癌のように承認取消のリスクがあるが、Avastinと同様にセカンドチャンス、サードチャンスが与えられるのではないか。データが公表された段階で改めて考えたい。

尿路上皮細胞腫は二次治療とcisplatin不適患者の一次治療用途で承認されているが、フェールしたIMvigor211試験は白金薬治療歴を持つ患者の二次治療試験。対照群は担当医がvinflunine、paclitaxel、またはdocetaxelの中から選んだ薬を用いた。Tecentriqは尿路上皮細胞腫ではPD-L1不問で承認されているが、この試験の解析はシーケンシャルで、先ずPD-L1強陽性サブグループの全生存期間を解析する。

統計的に有意な差があれば、次に、PD-L1陽性サブグループの解析、これも成功なら陰性も含めたintent-to-treat全体の解析に進む。どの段階でフェールしたのか明記されていないが、常識的に考えれば強陽性サブグループでフェールしたのだろう。第二相の反応率はPD-L1陽性のほうがだいぶ良かったことを考えれば、PD-L1陽性サブグループやintent-to-treatのp値も0.05以上だったのではないか。

ロシュのプレスリリースによると、Tecentriq群の結果は第二相と概ね同様だったが、化学療法群が解析計画の前提より良かった。となると、Tecentriqが無効なのではなく三剤の効果が従来考えられていたより高いと考える余地がある。一方で、この三剤は少なくとも米国では尿路上皮細胞腫に承認されていないのだから、承認審査の上では偽薬と同じに扱われ、Tecentriqの効果は立証されていないと判定されるリスクがある。

この場合でも、直ぐに承認が取り消されるとは限らない。一次治療試験など他の尿路上皮細胞腫試験が成功すれば、二次治療における効用も追認される可能性がある。

抗PD-1/PD-L1抗体は尿路上皮細胞腫で承認されていたり、承認審査中だったりするものが多いが、Tecentriqの薬効確認試験のフェールは他剤にも疑いの眼差しを向けさせる結果になるだろう。

例外はMSDのKeytruda(pembrolizumab)だ。IMvigor211試験と類似したデザインのKEYNOTE-045試験が成功、メジアン生存期間が10.3ヶ月と化学療法群の7.4ヶ月を上回った。共同主評価項目であるPFSはフェールしたのでエビデンスは盤石ではなく、TecentriqのデータがKeytrudaと大差ない可能性も考えられるが、裏付けがあるのは強みだ。非小細胞性肺癌と同様に、尿路上皮細胞腫でもKeytrudaを選択するケースが増えるのではないか。

リンク: ロシュのプレスリリース

Array社、悪性黒色腫の第三相が成功
(2017年5月9日発表)

BRAF-V600変異を持つ切除不能悪性黒色腫にはBRAF阻害剤とMEK阻害剤の併用が有効で、ロシュがZelboraf(vemurafenib)とCotellic(cobimetinib)、ノバルティスがTafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)を品揃えしている。

ノバルティスは当初、Array BioPharma(Nasdaq:ARRY)のLGX818(encorafenib)とMEK162(binimetinib)をライセンスしたが、GSKと事業交換を行って腫瘍学の製品・開発品を取得する過程で当局の命を受け権利返還した。

ArrayはPierre Fabreに欧州南米アジアなどの権利を供与すると共に第三相試験を続行、主目的を達成した。併用群のメジアンPFSが14.9ヶ月とvemurafenib群の7.3ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.54、統計的に有意だった。ところが、encorafenib単剤投与群(メジアン9.6ヶ月)との比較ではp=0.051となり、併用の必然性を立証することはできなかった。

今回成功したのはこの第三相の第二部で、binimetinibの用量は45mg一日二回で第一部と同じだが、併用群のencorafenibの用量を第一部の450mg一日一回から300mg一日一回に引き下げてencorafenib単剤投与群と統一した。結果は、PFSが12.9ヶ月対9.2ヶ月、ハザードレシオ0.77、p=0.029と有意な差があった。

有意と言っても0.029では十分に低いという感じはしないが、成功は成功だ。Arrayは7月までに承認申請する考え。

リンク: Arrayのプレスリリース

イーライリリー、抗CGRP抗体の片頭痛予防試験が成功
(2017年5月12日発表)

イーライリリーは、LY2951742(galcanezumab)の第三相片頭痛予防試験が三本とも成功したことを明らかにした。下期に米国などで承認申請する予定。

CGRP(calcitonin gene-related peptide)を標的とするヒト化抗体で、アムジェンも完全ヒト化抗体のAMG 334(erenumab)の第三相を成功させ、年内に承認申請する予定。抗体医薬でも小分子薬と同様に、類薬同士の開発販売競争が珍しくなくなった。

galcanezumabの第三相は、反復性片頭痛(発生頻度が月4~14日)を組入れた試験が二本、慢性(月14日超)が一本。試験用量は120mg(初回だけ240mg)と240mgで、月一回、皮注。反復性試験は片頭痛発生日数がベースラインの9日から偽薬群は2~3日減少、試験薬群はどちらも4~5日減少し有意に上回った。慢性試験はベースラインの19.4日から偽薬群は2.7日減少、試験薬群は低量が4.8日、高量は4.6日減少し、何れも有意に上回った。用量反応相関は見られないので120mgで足りそうだ。

AMG 334の用法は月一回皮注で同じ、効果も第三相反復性片頭痛予防試験で偽薬群が月8.3日から1.8日減少、70mg群と140mg群は各3.2日と3.7日減少でgalcanezumabと大差ない。

CGRPは片頭痛発作時に増加し、鎮静化すると減少と、疾病に直接関係している可能性がある。既存薬のように癲癇など他の疾患の治療薬の転用ではないので心理的なバリアが低い。一方で、受容体は脳血管系や心血管系に広く分布しているので、安全性の確認が重要だ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

KiteのCAR-Tでも脳浮腫による死亡例
(2017年5月8日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は、SECに提出した四半期決算報告書の中で、KTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の第三相試験で脳浮腫による死亡例が発生したことを開示した。Juno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)も脳浮腫が原因でJCAR015の開発を中止しており、クラス・イフェクトなのか、リスクに多寡はあるのか、が注目される。

KTE-C19は、3月に米国で他家造血幹細胞移植不適再発性難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫用薬として承認申請された、CAR-Tと呼ばれる新しいタイプの細胞療法。CD19抗原特定的なキメラ抗原受容体とCD28共刺激ドメインの遺伝子をレトロウイルスをベクターとして患者から採取したT細胞に導入、患者の体内に戻すと、T細胞が抗原提示を受けなくても腫瘍細胞を攻撃する。

開発後期段階のCAR-TはノバルティスがB細胞性急性リンパ芽球性白血病に承認申請したCTL019も含めて複数あるが、KTE-C19はJCAR015と組成が似ているので、臨床的な異同が注目されている。

CAR-Tの泣き所は免疫が亢進しすぎるサイトカイン放出症候群だ。Kiteはtocilizumab(ロシュの抗IL-6受容体抗体)やlevetiracetam(UCBの抗癲癇薬)を早期に用いることで重症化を回避する手法を検討するため30名を組入れて試験を行ったところ、発症を2例に抑えることに成功したが、2例のうち一人が脳浮腫を発症し死亡した。

脳浮腫による死亡はJCAR015の試験で5名、JCAR014でも1名発生しているので、CAR-T全体のクラス・イフェクトと疑う余地はある。発生頻度は違うかもしれないが、投与症例数が限られているため現状ではよくわからない。KTE-C19の臨床試験では累計で200人に投与、致死的有害事象は2%とのことなので、血液癌の薬としては特に毒性が高いようにも見えない。

リンク: Kiteの17/3四半期Form 10-Q(この話は31頁に記載)

アストラゼネカ、抗IL-13抗体の二本目の第三相はサブポピュレーションを重視
(2017年5月10日発表)

アストラゼネカは、tralokinumab(Cambridge Antibody Technology社の開発コードはCAT-354)の第三相重度喘息症試験がフェールしたと発表した。事前に設定された、IL-13活動性が亢進していることを示すバイオマーカーでスクリーニングされたサブグループの解析では喘息増悪回数が臨床的に意味のある減少を示したため、進行中のもう一本の第三相では、このサブグループの解析を主評価項目とすることを決めた。17年下期に結果が出る見込み。

Adaptive designの試験は分かりにくいが、この第三相も、一本目がフェールしたらサブポピュレーションの解析を行い、二本目だけを仮説検証的試験とする計画だったのだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

【承認】


キートルーダの肺癌一次治療併用が米国で承認
(2017年5月10日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)を末期非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療薬としてAlimta(pemetrexed)及びcarboplatinと三剤併用することがFDAに承認されたと発表した。EGFR阻害剤が適応になるEGFR活性化変異型やALK阻害剤が適応になるALK再編成型以外が対象になる。PD-L1発現は不問。

KEYNOTE-021試験の123例のORR(客観的反応率)に基づく承認で、三剤併用群は55%とAlimta・carboplatinの二剤併用群の29%を上回った。93%の患者は反応が6ヶ月以上持続した。二剤併用群では81%だった。用量・用法は3週間毎に200mgを30分点滴静注で、化学療法と同日だが先に投与する。

リンク: MSDのプレスリリース






今週は以上です。

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2017年5月7日

2017年5月7日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗 
  • 回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請 
  • ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請 
  • Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回 
  • エダラボン、米国でもALSに承認 
  • 5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認 
  • 造骨型骨粗鬆症治療薬が承認 


【新薬開発】


大塚、アルツハイマー性激越治療試験は一勝一敗
(2017年5月2日発表)

大塚製薬とルンドベックは、非定型向精神薬Rexulti(brexpiprazole、和名レキサルティ)の適応拡大試験結果を発表した。アルツハイマー性認知症の典型的な症状の一つである激越を改善する効果を検討したもので、一本は主評価項目(CMAIトータルスコアの変化)で偽薬比有意な差が出たものの副次的項目(CGI-Sの変化)はダメ、もう一本は真逆で主評価項目はフェール、副次的項目は有意だった。

両社は承認審査機関と今後の方針を相談する考え。家族や介護者にとってunmet medical needsであるため、多少効果が弱くても許容されるだろうが、そもそも、広くオフレーベル使用されている非定型向精神薬が正式に承認されていないのは突然死のリスクがあるからであり、Rexultiも治験データが精査されることになるだろう。

今回の適応拡大試験で意外なのは、二本しかやっていない模様であることだ。一般的に精神症状は客観的評価が難しく、状態が不安定で、偽薬効果が大きく出ることもあるため、偽陰性リスクに備えて臨床試験を三本実施することが珍しくない。また、評価期間は二本とも12週間だが、現実の医療では半永久的に用いるだろうから、長期安全性確認試験をやっても良かったのではないか。統合失調症では長期試験が行われたが、アルツハイマー病は突然死リスクを慎重に吟味する必要がある。

リンク: 大塚ホールディングスのプレスリリース(和文、pdfファイル)

【承認申請】


回腸嚢炎治療用アンチセンス薬が承認申請
(2017年5月1日発表)

英国のAtlantic Healthcare Limitedは、米国でalicaforsenの浣腸用製剤のローリング承認申請を開始した。適応は潰瘍性大腸炎の手術後に好発する回腸嚢炎の治療。

米国のIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)が創製した、ICAM-1の発現を阻害するアンチセンス薬。POC試験では12人の患者に6週間に亘って毎晩浣腸したところ、PDAI(嚢炎疾病活動指数)がベースラインの11.42から6.83に改善した。臨床症状サブスケールも3.75から2.25に改善した。深刻な有害事象は見られなかった。138人を組入れた第三相試験が進行中で年内に成否が判明する見込み。

Ionisは最初のアンチセンス薬であるVitravene(fomivirsen)が98年にCMV治療薬として米国で承認され、前途洋々と見られたが、販売不振で承認返上となってしまった。しかし、13年にコレステロール治療薬Kynamro(mipomersen sodium)、16年には脊髄性筋萎縮症治療薬Spinraza(nusinersen)と、ここ数年は新薬が続々と承認されている。核酸医薬の難点であった薬物動態の改良が成果を出し始めた。

リンク: Atlantic社のプレスリリース

ファイザー、ゼルヤンツを乾癬性関節炎に適応拡大申請
(2017年5月3日発表)

ファイザーは、抗リウマチ薬として承認されているJAK阻害剤、Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)を中重度活性期乾癬性関節炎の治療に用いる適応拡大申請を米国で行い受理されたことを発表した。12月に審査結果が出る見込み。臨床試験では10mgを一日二回投与する群も設定されたが、5mg一日二回と、11mg一日一回のXeljanz XRだけが申請された。

Xeljanzは元々は臓器移植後の拒絶反応防止薬として開発され、動物試験ではカルシニューリン阻害剤に引けを取らない強力な免疫抑制作用を示した。臨床入り後に自己免疫疾患の治療薬として開発の方向転換が行われたのだが、この用途では、カルシニューリン阻害剤と同様に、強すぎるきらいがある。FDAが乾癬の適応拡大を承認しなかったのは、関節炎ほど深刻な病気ではないため副作用リスクと釣り合いが取れないという判断なのだろう。一方、乾癬性関節炎はQOLに大きく影響するので、承認される可能性がありそうだ。

リンク: ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Sunesis、vosaroxinの欧州承認申請を撤回
(2017年5月1日発表)

Sunesis Pharmaceuticals(Nasdaq:SNSS)は、大日本住友製薬からインライセンスしたキノロン誘導体、vosaroxinを60歳以上の再発性急性骨髄性白血病の治療薬として2015年にEUで承認申請したが、撤回したことを公表した。CHMPが否定的意見を出す見込みであるため。

第三相のcytarabine併用試験はメジアン生存期間が7.5ヶ月と偽薬・cytarabine併用群の6.1ヶ月と大差なくフェールした。最初の30日間の死亡率が7.9%と偽薬群の6.6%を上回り安全性懸念も浮上した。ところが、事前に予定されていた60歳以上の患者451例だけの解析が、メジアン生存期間7.1ヶ月対5.0ヶ月、ハザードレシオ0.755、p=0.006、と良い結果になったため、EUではこのサブグループ限定で承認申請することが認められた。

一方、FDAは再試験を要求した。このような経緯があるため、今回の結果は意外ではない。

リンク: Sunesisのプレスリリース

【承認】


エダラボン、米国でもALSに承認
(2017年5月5日発表)

FDAは、田辺三菱製薬のRadicava(edaravone、和名ラジカット)をALS(筋萎縮性側索硬化症)用薬として承認した。日本で15年に効能追加されたことを知り、FDAがメーカーにアプローチした由だ。薬効と安全性のエビデンスも日本で行われた試験のようだ。

ALS Associationによると、上市は8月で一年分の価格は14.6万ドルとのこと。日本は数十万円、他にも特許切れした国があるようなので、並行輸入する動きもありそうだ。

日本で16年前に脳梗塞で発症から24時間以内の患者に使うことが承認された時は、臨床試験で24時間超の患者の転帰も有意に改善したことが信じられないというのなら24時間以内のデータも疑うべきではないかと思った。何れにせよ、そのうち治験論文が査読医学誌で刊行されれば真相に一歩近づくはずと思ったが、掲載されたのは私にとって聞いたことのない医学誌だった。抗血栓薬以外の脳梗塞治療試験が続々とフェールする中、唯一の快挙であったことを考えれば、NEJMやLancetでないのが意外だった。

何れにせよ、そのうち米国で臨床試験が行われれば白黒ハッキリするはずと思ったが、実現しなかった。

今回のALSのデータも盤石ではない。臨床試験の裏付けがあるのは状態が比較的良い患者だけだが、PDMAもFDAも適応を限定しなかったので、エビデンスレス・メディスンが行われるリスクがある。だが、ライフサイクルを考えると、改めて薬効確認試験が行われる可能性は低そうだ。

二人のALS患者がオランダで設立したTreeway社がedaravoneの経口投与用製剤、TW001を開発中で、欧米で希少疾患用薬指定を受けている。Radicavaは60分点滴静注で、28日サイクルで最初は14日間連続、その後のサイクルは10日間投与する。経口剤なら連続投与することで薬効をパワーアップできるかもしれない。また、Radicavaの深刻な有害事象として蕁麻疹や膨張、呼吸困難、添加物である亜硫酸水素ナトリウムに対するアレルギー反応が挙げられているが、この幾つかは経口剤なら回避できるかもしれない。

承認を取るだけだったら生物学的同等性試験を行えば十分だろうが、もし可能ならば、例えばALS治療薬として承認されている経口剤、Rilutek(riluzole)を活性対照薬として、改めて薬効を確認してほしいものだ(日本の試験は9割の患者がRilutekを服用していたので実質的にアドオン試験となっている)。

リンク: FDAのリリース
リンク: Radicavaの米国向け情報サイト

5番目の抗PD-1/PD-L1抗体が承認
(2017年5月1日発表)

アストラゼネカは、Imfinzi(durvalumab)が尿路上皮細胞腫用薬として米国で承認されたと発表した。白金薬治療歴を持つ患者の二次治療として、10mg/kgを二週間に一回、60分点滴静注する。

PD-L1発現状況に関係なく使用することができるが、薬効のエビデンスとなった第2相試験では、PD-L1高発現サブグループ(被験者のほぼ半分が該当)のORR(客観的反応率)は26%、判定不能例では21%、低・無発現サブグループでは4%となっており、コストや副作用を考えると高発現に限定したほうが良いのではないだろうか。

ImfinziはPD-L1を標的とするIgG1カッパ型完全ヒト化抗体で、抗PD-L1抗体としてはロシュのTecentriq(atezolizumab)、独メルク/ファイザーのBavencio(avelumab)に次ぐ三剤目、PD-L1の受容体であるPD-1を標的とするMSDのKeytruda(pembrolizumab)やBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も含めれば5剤目。

膀胱癌は抗PD-1/PD-L1の得意分野で、5剤のうちTecentriqとOpdivoが既に承認、KeytrudaやBavencioは適応拡大申請中で審査期限は各6月と8月となっており、レッドオーシャン状態だ。

薬効を比較する上で厄介なのは、PD-L1発現検査の方法が異なること。Imfinziの試験はTecentriqと同様に、ロシュの子会社であるVentana Medical Systemsのアッセイを用いているが、高発現の評価方法が異なる模様であり、PD-L1サブグループだけのORRを比較することはできない。かといって、全ユニバースのORRは陰性患者の構成比に左右される可能性があり、使いたくない。何とかならないものか。

分かり易い違いは投与頻度。ImfinziとOpdivo、Bavencioは2週間に一回、ImfinziとTecentriqは3週間に一回。末期癌は元々のQOLが低いが、一次治療の患者が限られた日々を有効に過ごすことを考えると、医療施設に行く回数は少ない方が良い。

用量は尿路上皮細胞腫ではImfinziとBavencio以外は体重を問わず同一。体重に合わせて用量を変えるのは血中濃度を同一にするための工夫だが、太っている人は薬剤費が高くなり、また、使い残しが出やすいので、経済的には固定のほうが良い。抗PD-1/PD-L1抗体は用量反応相関があまり明確ではないので、統一する余地はありそうだ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

造骨型骨粗鬆症治療薬が承認
(2017年4月28日発表)

Radius Health(Nasdaq:RDUS)はTymlos(abaloparatide)が閉経後骨粗鬆症治療薬としてFDAに承認されたと発表した。骨損壊リスクが高い患者に用いる。

甲状腺ホルモン関連ペプチド(PTHrP)のアナログで、類似薬であるイーライリリーのForteo(teriparatide)と同様に、破骨細胞抑制というよりは造骨細胞を活性化するアナボリック作用を持つ。欠点もForteoと同様。レーベルには、癌原性試験でオスとメスのラットに臨床用量の4倍以上を投与したら骨肉腫が増加したと枠付き警告されている。マウスについては記されていないのでリスクがなかったと考えれば、二種類以上の動物で雄雌両方で増加という癌原性判定基準には該当しないことになるが、気持ち悪い。

Forteoと同様に、二年以上の連続投与は推奨しないことも枠付き警告された。

リンク: Radius社のプレスリリース






今週は以上です。

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2017年4月30日

2017年4月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功 
  • リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答 
  • アリアド、武田グループ入り後初の承認 
  • FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認 
  • FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認 
  • バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大 
  • EUでVarubyなどが承認 


【承認申請】


イーライリリーのCDK4/6阻害剤、一次治療試験も成功
(2017年4月24日発表)

イーライリリーは、LY2835219(abemaciclib)の第三相乳癌一次治療試験の成功を発表した。ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後転移性乳癌にanastrozoleまたはletrozoleと併用する効果を検討したところ、中間解析で主評価項目のPFS(無進行生存期間)が偽薬群を有意に上回った。データは未発表。

abemaciclibは細胞周期の進行に係るサイクリン依存性キナーゼ4と6を阻害する小分子薬で、150mgを一日二回、経口投与する。先行品としてはファイザーのIbrance(palbociclib)が15年に、ノバルティスのKisqali(ribociclib)が今年3月に、米国で承認されている。イーライリリーは、追いかける側の定石通りに、サルベージと二次治療、そして一次治療の臨床試験を雁行的に進めており、今四半期中にサルベージと併用二次治療で、次四半期に今回の併用一次治療で、承認申請する計画だ。

先行二剤とは服用スケジュールが異なり、一日一回ではなく、休薬期がない。忍容性が優れる可能性もあるが、直接比較試験が行われたわけではないので、良くわからない。好中球減少症が用量制限的毒性にならないため効果が高い可能性があるので、データを見てみたい。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


リジェネロン、抗IL-6Rアルファ抗体でFDAの指摘に完全回答
(2017年4月28日発表)

リジェネロンと開発販売パートナーであるサノフィは、Kevzara(sarilumab)を抗リウマチ薬として欧米で承認申請し、EUでは今月、CHMPの肯定的意見を得た。米国は、サノフィの充填最終製剤工場でcGMP上の欠陥が発覚し審査完了通知を受領したが、今回、指摘事項に回答、受理された。クラスIリサブミッションとなったので、2ヶ月内に審査結果が出るはず。

KevzaraはIL-6受容体アルファ・サブユニットを標的とする完全ヒト化抗体。日本発の抗体医薬である中外/ロシュのActemra(tocilizumab)の類薬だ。Kevzaraは皮注、Actemraも関節リウマチ用には皮注用製剤あり。投与頻度は二週間に一回、Actemraも同じだが100kg超の患者は毎週。Kevzaraは完全ヒト化抗体、Actemraはヒト化抗体。細かい違いはあるものの概ね同じようなものと考えておけばよいだろう。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認】


アリアド、武田グループ入り後初の承認
(2017年4月28日発表)

武田薬品は、2月に54億ドルで買収した米国の新興製薬会社、アリアド・ファーマスーティカルズが開発したAlunbrig(brigatinib)が米国で承認されたと発表した。ALK変異陽性の非小細胞性肺癌でcrizotinibに不応または不耐の患者に用いる。経口剤で、開始用量は90mgを一日一回、忍容性が良好なら8日目から180mgに増量する。

第二相試験では確認ORR(客観的反応率)が53%、メジアン反応持続期間は13.8ヶ月。脳転移患者では頭蓋内ORRが67%だった。主な有害事象は腎機能検査値異常、高血圧症、肺炎、発疹など。致死的な有害事象の発生率は3.7%で、肺炎や突然死、呼吸困難、肺不全、肺塞栓、細菌性髄膜炎、尿路性肺血症。

リンク: 武田のプレスリリース(アリアドのホームページ)

FDAがノバルティスのFLT3阻害剤を承認
(2017年4月28日発表)

FDAは、ノバルティスのRydapt(midostaurin)をFLT3変異型AML(急性骨髄性白血病)の新患および末期全身性肥満細胞症に用いる薬として承認した。ノバルティスを始め多くの製薬会社の研究開発テーマであったFLT3阻害剤が遂に臨床デビューする。

AMLでは、cytarabineなどを用いる導入療法や地固め療法と併用で、第8~22日に50mgを一日二回経口投与する。第三相試験では全生存のハザードレシオが0.77と有意に改善した。末期全身性肥満細胞症では100mgを一日二回服用する。

主な有害事象は骨髄抑制、悪心嘔吐、粘膜炎など。妊婦は禁忌。肺障害が発生したら投与を中止する。

FLT(FMS-like tyrosine kinase)は造血前駆細胞の受容体チロシンキナーゼで、AMLの3割程度では、インターナル・タンデム・デュプリケーションなどの活性化変異が見られる。Invivoscribe TechnologiesがPMA(販売前申請)した検査アッセイも承認された。

全身性肥満細胞症は肥満細胞が増殖し肝臓などの臓器に障害を与えるとともに血球数や体重の低下が起きる。9割の患者では肥満細胞の増殖生存に係るKIT酵素の遺伝子変異が見られる。Rydaptは、他の多くの分子標的薬と同様に、KITも阻害する。

リンク: FDAのリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

FDA、バイオマリンのCLN2治療薬も承認
(2017年4月27日発表)

FDAはバイオマリン(Nasdaq:BMRN)が承認申請したBrineura(cerliponase alfa)を神経セロイドリポフスチン症2型(CLN2)治療薬として承認した。適応は幼児期後期に発症した3歳以上の患者だけで、2歳以下や早期発症型に対する効能や安全性は確立していない。

CLN2はTPP1遺伝子の変異によるトリペプチジル・ペプチダーゼ1の機能喪失/欠乏が原因で、ライソゾームで分解されるべき蛋白が蓄積する。典型的な経過は、2~4歳で発症し、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡する。米国では年間に20人の新生児が罹患と推定されている。

Brineuraは遺伝子組換え型ヒト・トリペプチジル・ペプチダーゼ1。第1/2相単群試験で24人に二週間に一回、300mgを4時間半かけて脳室内点滴投与したところ、運動・言語機能の評価スコアが48週間で0.43単位しか悪化しなかった。自然歴は2.1単位悪化と推定されている。FDAはリリースの中で症候性小児の歩行能力喪失を遅らせる薬は初と記しており、対照試験ではないが十分なエビデンスと評価したのだろう。主な治療関連深刻有害事象は過敏反応と点滴反応。

BrineuraはEUでもCHMPが今月、肯定的意見を纏めた。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイオマリンのプレスリリース

バイエルのスチバーガ、米国で肝臓癌に適応拡大
(2017年4月27日発表)

FDAはバイエルのStivarga(regorafinib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に適応拡大した。同社のNexavar(sorafenib、和名ネクサバール)による治療を既に受けた患者が適応になる。肝細胞腫用薬はNexavarが07年に適応拡大承認されて以来、10年ぶり。

StivargaはNexavarと類似した構造のVEGF受容体拮抗剤。Nexavarはオニキス・ファーマスーティカル(後にアムジェンが買収)とのras共同研究の成果で、オニキスにロイヤルティや利益シェアを払う必要がある。Stivargaは、バイエルは当初、独自に創製と主張したが、結局、オニキスへの支払いを免れることはできなかった。それでも、Nexavarより特許失効が遅いので、Stivargaを優先するメリットがある。

第三相試験ではメジアン生存期間が10.6ヶ月と偽薬群の7.8ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62と有意に改善した。

日本でも昨年10月に申請され、迅速審査指定を得ている。

リンク: FDAのリリース
リンク: バイエルのプレスリリース

EUでVarubyなどが承認
(2017年4月26日発表)

EUの薬品承認審査機関であるEMAの医薬品専門家委員会、CHMPが2月と3月に肯定的意見を纏めた薬が続々と承認された。

まず、Tesaro(Nasdaq:TSRO)のVaruby(rolapitant)。NK-1受容体拮抗剤で、化学療法薬に誘発されて分泌されるサブスタンスPが脳の嘔吐中枢を刺激するのを防ぐ。中高度催吐性を持つ抗癌剤を施行する時に、即効性制吐剤である5-HT3受容体拮抗剤やdexamethasoneと併用すると、遅発性悪心嘔吐を抑制することができる。

米国では今年1月に審査完了通知を受領した。

NK-1受容体拮抗剤の第一号であるMSDのEmend(aprepitant、和名イメンド)と異なり3A4相互作用が小さい長所を持つが、発売が10年以上遅れたので市場性は限定的だろう。

Opko Health(NYSE:OPK)がシェリング・プラウ(後にMSDと合併)から資産取得し、MGI Pharmaで5-HT3受容体拮抗剤Aloxi(palonosetron)を開発したメンバーがエーザイ買収を機に独立して設立したTesaroに独占開発生産販売権を供与した。

リンク: Tesaroのプレスリリース(4/26付け)

次に、シャイアーのNatpar(甲状腺ホルモン、遺伝子組換え)は15年に52億ドルで買収したNPS Pharmaceuticalsの開発品。NPSは骨粗鬆症治療薬として欧米で承認申請したが、米国では承認されず、欧州では06年にPreotactという製品名で承認されたものの14年に商業上の理由で承認返上。慢性副甲状腺機能低下症に伴う低カルシウム血症の治療薬として出直した。米国では15年に限定的な内容で承認され、今回、EUでも条件付き承認された。

リンク: シャイアーのプレスリリース(4/26付け)

適応拡大では、Darzalex(daratumumab)を多発骨髄腫の二次治療に用いることが承認された。セルジーン(Nasdaq:CELG)のRevlimid(lenalidomide )若しくはジョンソン・エンド・ジョンソン/武田薬品のVelcade(bortezomib)と、dexamethasoneを三剤併用する。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.37~0.38と、二剤併用のみより有意に優れていた。

Darzalexはジョンソン・エンド・ジョンソンがデンマークのジェンマブからライセンスした抗CD38完全ヒト化抗体。EUでは16年にRevlimidのような免疫調節薬及びVelcadeを既に使った患者に単剤投与するサルベージ用途で承認された。

リンク: ジェンマブのプレスリリース(4/28付け)

BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)は頭頸部扁平上皮腫に適応拡大。白金ベースのレジメンによる治療中・治療後に進行した患者に用いる。3mg/kgを2週間に一回投与する。第三相試験では延命効果が医師が選んだ薬(Erbitux(cetuximab)など)を投与した群を有意に上回った。

リンク: BMSのプレスリリース





今週は以上です。

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2017年4月23日

2017年4月23日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 先進国初の遺伝子療法が承認返上に 
  • アッヴィ、PARP阻害剤の第三相二本がフェール 
  • ライジェル、Syk阻害剤をITP治療薬として承認申請 
  • CHMP、新薬4品などに肯定的意見 
  • Tecentriqが一次治療薬として承認 


【今週の話題】


先進国初の遺伝子療法が承認返上に
(2017年4月20日発表)

オランダのuniQure biopharma(Nasdaq:QURE)は、Glybera(alipogene tiparvovec)のEUにおける販売承認を更新しないことを決めた。先進国で初めて承認された遺伝子療法だが残念な結果になった。

この薬は、重度家族性リポプロテイン・リパーゼ欠乏症(高カイロミクロン血症)という100万人に1~2人が罹患する超希少疾患の治療薬で、リポプロテイン・リパーゼの遺伝子をアデノ随伴ウイルスをベクターとして導入する。高脂血症の治療で優れた実績を持つアムステルダム大学アカデミック・メディカル・センター出身のバイオベンチャー、uniQureが2012年に承認を取得、Chiesi Farmaceuticiが販売している。

15年にベルリンで承認後初めての患者が治療を受けたと報じられたが、結局、最初で最後の患者になった模様だ。年110万ユーロと著しく高価だが、超希少疾患薬は数十万ユーロ級の薬が珍しくない。個人負担は大きくはないだろうし、健康保険にとっては高血圧症や高脂血症、糖尿病に係る支出のほうがはるかに大きい。従って、費用の問題というよりは薬の効果やリスクの問題なのだろう。臨床的な転帰を改善する効果が実証されていないため、適応が膵炎を頻繁に発症する患者に限定されていることなどが影響したのだろう。

Glyberaは、例外的環境条項に基づいて承認された。治療が難しい深刻な疾患で、患者が少ないために十分な規模の臨床試験を行うことができない場合に、承認のハードルを引き下げる制度だ。販売許可保有者は、患者登録などの市販後監視、追加的な臨床試験、リスク管理などの実施が課せられる。uniQureはこれらの負担や供給体制維持に関わる費用を節減するために、5年間の承認期間が終了する今年10月25日をもって販売終了を決めた。Chiesiに対する補償を考慮しても年200万ユーロのコスト削減になる由だ。

欧州では、昨年、グラクソ・スミスクラインもStrimvelisの承認を取得している。イタリアの研究機関が開発したex vivo遺伝子療法で、ADA-SCID(アデノシンデアミナーゼ欠損症による重症複合免疫不全症)の治療に用いる。これも年60万ユーロと高いが、病気が極めて深刻で治療法の選択肢が限られているため効用が大きい。グラクソは成功報酬制度を用意するなどの工夫も行っている。

折角の画期的新薬が不発に終わるのは残念だが、便益と費用・副作用リスクのバランスが取れないのならば止むを得ない。患者が欲しているのは新しい薬ではなく有益な薬なのだから。

リンク: uniQureのプレスリリース

【新薬開発】


アッヴィ、PARP阻害剤の第三相二本がフェール
(2017年4月19日発表)

アッヴィはPARP阻害剤ABT-888(veliparib)の第三相試験を様々な癌に実施しているが、扁平上皮非小細胞性肺癌のcarboplatin・paclitaxel併用一次治療試験と、早期トリプルネガティブ乳癌ネオアジュバント試験がフェールしたことが発表された。残りは非扁平上皮非小細胞性肺癌とBRCA1/2型の乳癌と卵巣癌の三本。

他社のPARP阻害剤はBRCA1/2型の乳癌や卵巣癌を狙うことが多く、肺癌で第三相を行うのは珍しいため、フェールしても意外感はあまりない。今回の試験の主評価項目は喫煙経験者だけの解析となっているので、おそらく、このサブグループなら成功すると信じる根拠があったのだろう。一方、乳癌のほうは大変意外だ。

ABT-888は政府や医学者が臨床開発をスピードアップするために導入した画期的な試みで用いられたことで有名だ。例えば、フェーズ・ゼロ試験。ファースト・イン・マンを前倒しして、ごく少量を投与することによって早い段階で人間における薬物動態を把握する。あるいは、I-SPY 2。様々な会社の様々な分子標的薬を様々な遺伝子プロファイルを持つ癌に次々と投与することによって、ベストな組み合わせを早く見つける。

ABT-888はI-SPY 2の最初の卒業生だった。トリプルネガティブ乳癌のネオアジュバント療法(摘出術前に腫瘍を小さくする目的で施行する)として300人規模の第三相試験を行えば、成功確率92%と予測された。それなのに、フェールしてしまった。

ベイズ確率は考え方としては有望であるように感じられ、I-SPY 2卒業生の第三相試験に注目していたのだが、第一号は意外な結果になった。

リンク: アッヴィのプレスリリース

【承認申請】


ライジェル、Syk阻害剤をITP治療薬として承認申請
(2017年4月17日発表)

ライジェル・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:RIGL)はR788(fostamatinib disodium)を慢性・持続性免疫性血小板減少症(ITP)治療薬として米国で承認申請した。

マスト細胞やマクロファージ、B細胞などの免疫グロブリンG受容体の細胞内シグナル伝達に係るspleen tyrosine kinaseを阻害し、IL-6やMMP-3を2~3割減少させる効果を持つ。第三相試験は100mgを一日二回、経口投与したところ、一本では奏効率が18%と偽薬群の0%を有意に上回ったがもう一本は18%対4%でフェールした。主な有害事象は悪心、下痢、血圧上昇など。

リンク: ライジェルのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMP、新薬4品などに肯定的意見
(2017年4月21日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPが、4月の会議で脊髄性筋萎縮症用薬などの承認とオプジーボの適応拡大などに肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヵ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

肯定的意見を得た新薬は、まず、バイオジェンがIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)からライセンスして開発したアンチセンス薬、Spinraza(nusinersen)。脊髄性筋萎縮症の治療に用いる。希少疾患で、日米欧の患者数は3~3.5万人と推定されている。殆どの患者がSurvival Motor Neuron(SMN)の遺伝子であるSMN1に変異を持ち、十分に機能するSMNを産生できない。発症時期や重篤さが異なるI型、II型、III型がある。

これまでのアンチセンス薬は特定の蛋白の発現を阻害するメカニズムだったが、Spinrazaは、短いSurvival Motor Neuron(SMN)しか作れないSMN2遺伝子のスプライシングを変えることによって、SMN1遺伝子の代わりに正常なSMNを作らせる、正の作用であることがユニークだ。I型(幼児発症型)試験では、反応率が51%と文献データの0%を大きく上回った。人工呼吸器が恒久的に必要になったり死亡したりするリスクも半減した。II型試験では筋肉機能評価スコアが用量依存的に改善した。

髄腔内投与で最初は2ヶ月間に4回投与、その後は4ヶ月に一回投与する。米国では昨年12月に承認された。日本も臨床試験に参加しており、昨年12月に承認申請された。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: バイオジェンのプレスリリース

次に、バイオマリン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:BMRN)のBrineura(cerliponase alfa)は、同社お得意の超希少疾患用の酵素補充療法。適応はCLN2(神経セロイドリポフスチン症2型)。TPP1/CLN2遺伝子の変異が原因でトリペプチジルペプチダーゼを作ることができず、この酵素で分解されるべき蛋白が蓄積してしまう。2~4歳で発症、6歳までに歩行・会話能力を失い、8~12歳で死亡することが多い、深刻な疾患だ。罹患率は20万人に一人。

Brineuraは遺伝子組換え型のヒトTPP1で、二週間に一回、脳室内に点滴投与する。臨床試験では運動機能や言語機能の悪化が文献データ比8割少なかった。

昨年7月に欧米で承認申請された。米国の審査期限は4月27日。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: バイオマリンのプレスリリース

ファイザーのBesponsa(inotuzumab ozogamicin)は抗CD22ヒト化抗体とカリケアマイシンを結合した抗体薬物複合体。再発難治性、CD22陽性の前駆B細胞急性リンパ芽球性白血病に用いる。第三相試験では完全寛解率が80.7%と標準療法群の29.4%を上回り、PFS(無進行生存期間)のハザードレシオは0.45で統計的に有意、全生存期間はメジアン値が各7.7ヶ月と6.7ヶ月、ハザードレシオ0.77で有意ではなかったが方向的には好ましい結果だった。

ワイスがセルテックからライセンスしてCD22陽性非ホジキンリンパ腫でrituximab併用第三相試験を実施したがフェール。ワイスはファイザーに、セルテックはUCBに買収されたが開発は継続され、今日に至った。米国でも承認審査中で8月に結果が出る見込み。

リンク: ファイザーのプレスリリース
リンク: Kantarjianらの第三相試験論文(NEJM誌、オープンアクセス)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発したKevzara(sarilumab)はIL-6受容体アルファ・サブユニットを標的とする完全ヒト化抗体。中重度活性期リウマチ性関節炎の治療に用いる。

抗IL-6受容体抗体という点では日本発の抗体医薬、中外/ロシュのActemra(tocilizumab)と同じ。皮注薬で、Actemraも関節リウマチ用には皮注用製剤も用意されている。投与頻度は二週間に一回、Actemraも同じだが100kg超の患者は毎週。こちらは完全ヒト化抗体、向こうはヒト化抗体、等々、細かい違いはあるものの概ね同じようなものと考えておけばよいだろう。

米国では昨年10月に審査完了通知を受領した。サノフィの充填最終製剤工場でcGMP上の欠陥が指摘されたようだ。日米欧の規制局はこのような情報の交換協定を結んでいる。欧州でも承認遅延の可能性があるのか、4月23日夕方現在、両社ともCHMP通過に関するプレスリリースを出していない。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大では、BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)を切除不能な局所進行性・転移性尿路上皮細胞腫に用いることが支持された。白金薬による治療がフェールした患者が適応になる。用量は体重相関ではなく、240mg。60分点滴静注を二週間毎に施行する。第二相試験では持続的反応率が19.6%。PD-L1発現が1%以上のサブグループでは23.8%、1%未満では16.1%と、それほど大きな差はなかった。

抗PD-1抗体Opdivoは、EUでは以下の適応症に承認されている。悪性黒色腫(モノセラピーまたはYervoy併用)、非小細胞性肺癌(モノ、二次治療限定)、腎細胞腫(モノ、二次治療限定)、古典的ホジキン型リンパ腫(モノ、自家造血幹細胞移植及びAdcetrisによる治療を既に受けた患者に限定)、頭頸部扁平上皮腫(モノ、白金薬による治療に不応・再発した患者に限定)。

Yervoy併用試験が活発に実施され学会発表も盛んであるためか、EMAのプレスリリースは黒色腫以外ではモノセラピーしか承認されていないことを明記している。

リンク: BMSのプレスリリース

さて、EMAのプレスリリースには言及されていないが、米国テキサス州のバイオベンチャーであるXbiotech(Nasdaq:XBIT)は、結腸直腸癌用薬として承認申請した抗IL-1アルファ・ヒトモノクローナル抗体、Xilonixに関して、CHMPが否定的な『トレンド』投票を行った旨を公表した。5月の会合で正式に否定的意見が出る見込みである模様だ。

第三相試験では偽薬比有意なQOL改善効果が見られたが、QOLの評価が独自であるため議論の余地が大きそうだ。米国承認申請に向けて別途、第三相試験を実施中なので、この結果を待つことになるのではないか。

リンク: XBiotechのプレスリリース(4/20付け)

【承認】


Tecentriqが一次治療薬として承認
(2017年4月17日発表)

ロシュの米国子会社であるジェネンテックは、抗PD-L1抗体医薬Tecentriq(atezolizumab)を局所進行性・転移性尿路上皮細胞腫の一次治療に用いることがFDAに承認されたと発表した。cisplatinに不適な患者が適応になる。これまでは白金薬による治療を受けた患者の二次治療限定だった。

どちらも第二相試験の反応率データに基づく承認で、一次治療コフォートでは反応率が23.5%、うちPD-L1の発現が5%以上のサブグループは28%、未満では22%とそれほど大きな差はなかった。主な有害事象は肺炎、肝炎、結腸炎、ホルモン分泌障害、神経障害など。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース




今週は以上です。

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2017年4月16日

2017年4月16日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イムブルビカを移植片対宿主病に適応拡大申請 
  • BMSもオプジーボをMSI-H腫瘍に適応拡大申請 
  • イーライリリーのJAK阻害剤は審査終了 
  • ニューロクラインの遅発性ジスキネジア治療薬が承認 
  • テバのハンチントン舞踏病治療薬が承認 
  • ノバルティス、BRAF変異型肺癌用薬がEUで承認 
  • EUがウプトラビの無垢を認めた 


【承認申請】


イムブルビカを移植片対宿主病に適応拡大申請
(2017年4月4日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、FDAがImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)の適応拡大申請を受理したと発表した。造血幹細胞移植後に慢性移植片対宿主病(GvHD)を発症し、ステロイドなどの全身性治療がフェールした患者に用いる。昨年、ブレークスルー・セラピー指定と希少疾患用薬指定を受けており、第二相試験に基づいて承認申請された。プレスリリースには審査期限は記されていない。

Imbruvicaは、B細胞のアポトーシスや細胞接着、組織移行・帰還を制御するBruton's tyrosine kinaseを阻害する小分子薬。マントル細胞リンパ腫や慢性リンパ性白血病などに欧米日で承認されている。42人を組入れたGvHDの第二相試験では、客観的反応率が67%に達した。一次治療の第三相試験が進行中。

リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

BMSもオプジーボをMSI-H腫瘍に適応拡大申請
(2017年4月4日発表)

BMSのOpdivo(nivolumab、オプジーボ)をdMMR(不十分なミスマッチ修復)型転移性結腸直腸癌に用いる適応拡大申請がFDAに受理された。優先審査を受け、審査期限は8月2日。MSDもKeytruda(pembrolizumab)で同様な適応拡大申請を行っており、審査期限は当初は3月8日だったが6月9日に延期されたため、リードが2ヶ月弱に縮小している。

dMMRは細胞分裂時に遺伝子の複製ミスが発生しても修復できない。リンチ症候群ではミスマッチ修復に関わる遺伝子の生殖細胞系変異が大腸癌の発生に関与している。特定の塩基配列パターンが繰り返されるマイクロサテライトと呼ばれる部位は複製ミスが起きやすいので、当該部位の繰り返し回数を調べてMSI-H(マイクロサテライト不安定性高)と判定されたらdMMRと見なす、代替的な検査がリンチ症候群以外にも使われるようになった。このdMMR/MSI-H型は、転移性結腸直腸癌の早期患者では15%、末期では5%を占めるようだ。

第二相試験では、ORR(客観的反応率)が担当医評価で31%、独立査読委員会の評価で27%。12ヶ月PFS(無進行生存率)は各48.4%と45.6%だった。

リンク: BMSのプレスリリース

Opdivoに関しては、第三相多形性膠芽腫二次治療試験がフェールしたことも発表された。全生存期間がAvastin(bevacizumab)を上回らなかった。放射線療法や化学療法と併用する一次治療試験二本は予定通り進める予定。一次治療試験は、予後やtemozolomide応答性を予測する上で重要なMGMT(O6-methylguanine-DNA methyltransferase)メチル化のある患者とない患者を分けて分析することが特徴で、日本の施設も参加している。

リンク: BMSのプレスリリ-ス(17/4/3付)

【承認審査・委員会】


イーライリリーのJAK阻害剤は審査終了
(2017年4月14日発表)

イーライリリーはインサイト(Nasdaq:INCY)からライセンスしたJAK1/2阻害剤、Olumiant(baricitinib)を中重度活性期リウマチ性関節炎治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領したと発表した。副作用懸念からか、FDAは至適用量を再検討する臨床試験の実施や、安全性に係る追加分析を求めた由。

臨床試験では4mg群で致死的な脳基底細胞血栓症や非ST上昇型心筋梗塞などの稀だが深刻な有害事象が増加した。2mgの印象は悪くなかったが、個人差を考慮すればセーフティマージンが十分とは言えないだろう。また、JAK阻害剤は癌や感染症のリスクが高まる恐れがある。

イーライリリーはFDAの結論に同意しないと明記している。トランプ大統領が規制緩和に前向きであることを踏まえて、FDAに揺さぶりを掛ける考えなのかもしれない。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認】


ニューロクラインの遅発性ジスキネジア治療薬が承認
(2017年4月11日発表)

FDAはニューロクライン(Nasdaq:NBIX)のIngrezza(valbenazine)を遅発性ジスキネジア治療薬として承認した。この病気は、向精神薬の高量、長期投与などが原因で、無意識な反復動作が現れる。Ingrezzaは神経終末の小胞モノアミントランスポータタイプ2(VMAT2)を阻害する小分子薬で、ドパミンなどの神経伝達物質がシナプス前小胞に取り込まれるのを妨げ、不随意運動に関与するドパミン神経系機能を正常化する。第三相試験ではAIMスコアが偽薬比3ポイント改善した。

遅発性ジスキネジア治療薬の承認は初。他には次項のAustedo(deutetrabenazine)が適応拡大申請中だが、Igrezzaは一日一回服用で足り、精神性副作用が小さい長所を持つ。

Ingrezzaの日本やアジアの権利は田辺三菱製薬が保有している。

リンク: FDAのリリース
リンク: ニューロクラインのプレスリリース

テバのハンチントン舞踏病治療薬が承認
(2017年4月3日発表)

テバ(NYSE:TEVA)は、FDAがAustedo(deutetrabenazine)をハンチントン舞踏病治療薬として承認したと発表した。VMAT2阻害剤Xenazine(trabenazine)の水素基を重水素で置換して、活性代謝物の分解を遅らせ作用を長期化するとともに、忍容性や個人差、薬物相互作用を改善したもの。Xenazineと同様に、うつ病や自殺思考・行動のリスク警告がレーベルに記載された。テバは問屋取得価格を年6万ドルとする考え。

昨年12月に遅発性ジスキネジアの適応拡大も申請された。優先審査指定を受け、審査期限は8月30日。

テバが35億ドルで買収したAuspex社の開発品。

リンク: テバのプレスリリース

ノバルティス、BRAF変異型肺癌用薬がEUで承認
(2017年4月3日発表)

ノバルティスは、BRAF-V600変異型非小細胞性肺癌にTafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMekinist(trametinib、和名メキニスト)を併用する適応拡大がEUで承認されたと発表した。小規模な臨床試験で初めて治療を受ける患者のORR(総合反応率)が61%、再発治療例では66%だった。メジアン反応持続期間は前者は未達、後者は9.8ヶ月。一次治療試験の詳細は今後、学会発表される予定。

BRAF-V600変異型は腺腫肺癌の1~3%程度なので決して多くない。悪性黒色腫では5割程度と多く、BRAF阻害剤TafinlarはV600変異型悪性黒色腫に単剤、またはMEK1/2阻害剤Mekinistと併用で用いることが承認されている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

【医薬品の安全性】


EUがウプトラビの無垢を認めた
(2017年4月7日発表)

EUは、アクテリオンが日本新薬からライセンスして開発した肺動脈高血圧症治療薬、Uptravi(selexipag、和名ウプトラビ)の危険と便益を再検討していたが、承認内容の変更は必要なしと結論した。

事の発端は1月にフランスで服用患者5名の死亡が報告されたこと。EUの薬品審査機関であるEMAが承認した薬なので、フランスの要請により、EMAのPRAC薬品安全性監視委員会が検討を開始した。
しかし、データを分析しても死亡リスクの増加は示唆されず、今回の無垢宣言に至った。

フランスは数年前に一部の医薬品で承認審査や安全性監視の不備が表面化、批判を浴びた。それ以来、周辺の国と比べても副作用情報に敏感に反応する傾向がある。

リンク: EMAのリリース






今週は以上です。

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2017年4月2日

2017年4月2日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ヴァーテックス、嚢胞性線維症の新薬を承認申請へ 
  • ノバルティス、CAR-Tの承認申請が受理 
  • KiteもCAR-Tの承認申請を完了 
  • Cempra、solithromycinの欧州での承認申請を撤回 
  • アトピーの画期的新薬は年37000ドル 
  • Tesaro、PARP阻害剤が米国で承認 
  • ロシュ、多発性硬化症用薬が米国で承認 
  • ファイザー、ゼルヤンツが欧州でやっと承認 


【新薬開発】


ヴァーテックス、嚢胞性線維症の新薬を承認申請へ
(2017年3月28日発表)

嚢胞性線維症治療薬Kalydeco(ivacaftor)とOrkambi(lumacaftor 、ivacaftor)を開発したヴァーテックス・ファーマスーティカルズ(Nasdaq: VRTX)が、第三の新薬tezacaftorの第三相試験に成功した。今年第3四半期に欧米で承認申請する予定。

嚢胞性線維症は遺伝子変異が原因でCFTRの機能が低下、気道の粘液などが除去されずに蓄積する。ivacaftorがCFTRチャネルの開口を長期化するポテンシエイターとして作用するのに対して、tezacaftorはCFTRが細胞表面に移行するのを促すコレクター(矯正薬)として作用する。lumacaftorと同じで、改良版という意味合いがあるだろう。

嚢胞性線維症で最も多いF508欠損ホモ接合型はCFTRが移行しにくいとされ、コレクターのほうが適している可能性がある。臨床成績もKalydeco単剤では十分な効果がなかったが、Orkambiは良績を上げ、このタイプに承認された。尤も、効果は必要最低限で、もっと有効な薬が登場する可能性がある。有力候補と考えられているのがtezacaftorだ。

第三相試験は四本実施された。F508欠損ホモ接合型を組入れた試験が一本、ヘテロは三本で、もう一つのアレルの特性に応じて、CFTR機能が残っていると推定されるアレルの試験、ミニマム機能のアレルの試験、そしてivacaftorに応答するゲーティング変異アレルの試験だ。このうち、F508欠損/CFTRミニマム機能患者の試験は途中で無益性が認定され打ち切られたが、今回、ホモ接合型とF508欠損/CFTR機能残存型の試験が成功した。

ホモ接合型試験では、tezacaftor(100mg)を一日一回とivacaftor(150mg)を一日二回、経口投与して24週間治療したところ、%1秒量(FEV1 % predicted)がベースラインの60%から3.4ポイント改善、偽薬だけを投与した群は0.6ポイント悪化したため、偽薬調整後の治療効果は4.0ポイント、p<0.0001となった。

F508欠損/CFTR機能残存型試験はクロスオーバー試験で、%1秒量がベースラインの62%から6.5ポイント改善した。ivacaftorだけを投与した期間は4.4ポイント改善し、どちらも、偽薬期間(0.3ポイント悪化)を有意に上回った。

Orkambiのデータと見比べると、ホモ接合型の治療効果は0.5~1ポイント、高そうだ。有害事象の発生率もOrkambiほどではない。勿論、直接比較試験ではないので明確なことはいえない。承認されている薬があるのだから偽薬対照ではなくOrkambi対照試験でも良かったのではないかと思われる。

F508欠損/CFTR機能残存型試験では、併用とKalydeco単剤の比較でも有意差があるのかどうかが気になるところだ。クロスオーバー試験であることも弱い。更に、Orkambiの試験はフェールしたがこのサブタイプだけの試験を行えば成功するかもしれない。ヘテロ接合型に関しては、三剤間の比較が十分に行われていないため、釈然としないものがある。それでも、単剤比2ポイントの差があるなら良いのではないかという気もする。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

【承認申請】


ノバルティス、CAR-Tの承認申請が受理
(2017年3月29日発表)

ノバルティスは、CTL019(tisagenlecleucel-T)を米国で承認申請し受理されたことを発表した。予定適応は青少年の再発難治性B細胞急性リンパ芽球性白血病。優先審査を受ける。

CTL019はCAR-Tと呼ばれる細胞療法で、B細胞特異的に発現するCD19に結合する抗体の単鎖可変領域とTCRの共刺激伝達領域である4-1BB及びCD3ゼータチェーンを融合した遺伝子を、患者から採取したT細胞に導入し、培養・活性化したもの。患者に戻すと、T細胞が抗原提示がなくてもB細胞を攻撃する。FDAが小児と成人の再発難治性急性リンパ芽球性白血病用薬としてブレークスルー・セラピー指定している。

ペンシルバニア大学から共同開発販売権を取得したノバルティスが日米欧などの施設で実施した試験では、客観的反応率が82%となった(50例のうち、血球数の回復が不十分な症例も含めて41人が完全寛解)。CAR-Tはサイトカイン放出症候群がボトルネックで、G3/4だけでも48%の患者で発生し、人工心肺や透析を必要とする低血圧も起きたが、致死例はなかった。G3神経学的精神学的有害事象(脳症、せん妄など)も15%で発生したがG4はなかった。

CAR-Tは次項のKite Pharmaも含めて三社が先陣争いしているが、今のところ、CTL019が承認第一号になりそうだ。ノバルティスは、年内にびまん性大細胞型B細胞リンパ腫の適応も申請する予定。EUでも年内申請予定。

最近の画期的新薬は信じられないほど高い。NICE(英国政府の医療技術評価組織)によると、急性リンパ芽球性白血病のCAR-Tによる治療は64.9万ドルでも正当化できるとのことなので、保健機関にとってまた頭痛の種になりそうだ。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

KiteもCAR-Tの承認申請を完了
(2017年3月31日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)はKTE-C19(axicabtagene ciloleucel)の米国におけるローリング承認申請を完了したと発表した。予定適応は他家造血幹細胞移植不適の再発難治性アグレッシブ非ホジキン型リンパ腫。EUでも年内に承認申請する計画。日本では第一三共が1月に製造開発販売権を取得した。

CTL019と同様なCAR-T療法で、主な違いは共刺激ドメインに4-1BBではなくCD28を採用していることと、組換え遺伝子を導入する時のベクターがレンチウイルスではなくレトロウイルスであること。

101人を組入れた第二相試験では、客観的反応率が82%、完全寛解率は54%、但し8.7ヶ月後時点では各44%と39%に低下した。サブグループの客観的反応率は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫が82%、転換濾胞性リンパ腫(TFL)と原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)は83%だった。主なG3以上の有害事象は骨髄抑制、脳症、サイトカイン放出症候群、神経学的毒性など。治療時発現有害事象による死亡は3例。

もう一社、CAR-Tの先陣争いに加わっていたJuno Therapeutics(Nasdaq:JUNO)は、JCAR015の開発が脳浮腫による死亡が数例発生したため打ち切りとなり、後退した。プリコンディショニングに用いた化学療法の用量用法が原因とも言われているが、真相はわからない。FDAは詳細な報告を受けているだろうから他のCAR-Tの承認審査に影響したとしても不思議はないだろう。このJCAR015はCD28、レトロウイルスなのでどちらかと言えばKTE-C19に似ている。

リンク: Kiteのプレスリリース
リンク: LockeらのAACR抄録

【承認審査・委員会】


Cempra、solithromycinの欧州での承認申請を撤回
(2017年3月28日発表)

Cempra(Nasdaq:CEMP)は、CEM-101(solithromycin)の欧州における承認申請を撤回した。米国と同様に承認の見込みが遠退いたため。日本は16年に富山化学が第三相試験を開始したところ。

Optimer Pharmaceuticalsから取得したマクロライド/ケトライド系開発プログラムの成果で、市中細菌性肺炎治療薬として欧米で承認申請されたが、FDAから大規模な肝安全性試験の実施を求められた。ケトライドの第一号であるKetek(telithromycin)も肝毒性が見られ、大規模肝安全性試験でリスクは限定的であることが立証されたが、後に不正報告が発覚した経緯がある。

Cempraはモルガン・スタンレーに事業戦略のオプションについてアドバイスを求めている。欧州の申請手続きを打ち切るのは豊富な手元流動性を維持する意図であり、開発を諦めたわけではなさそうだ。

リンク: Cempraのプレスリリース

【承認】


アトピーの画期的新薬は年37000ドル
(2017年3月28日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィが中重度アトピー性皮膚炎の治療薬として日米欧で承認申請したDupixent(dupilumab)が、まず米国で承認された。ステロイドなどの局所性治療薬に十分反応しない、あるいは適さない患者に用いる。

Th2型免疫反応の惹起・維持に関わるIL-4やIL-13をブロックする抗IL-4受容体アルファサブユニット抗体で、初日は二回、その後は二週間毎に皮注する。二本の第三相試験では全般的奏効率が36~38%となり偽薬群の8~10%を有意に上回った。痒みも改善した。主な有害事象は過敏反応、結膜炎、角膜炎など。好酸球性喘息症用薬としても承認されていることを踏まえてか、喘息症を併発する患者に用いる時も喘息用薬を止めないよう注意している。

WAC(問屋取得コスト)は年37000ドル、正味価格でも3万ドル前後と推測されている。米国の対象患者数は30万人と推定されているので希少疾患用薬ではなく、何十年も使う可能性があることを考えれば驚かされるが、承認と前後してInstitute for Clinical and Economic Researchが公開した評価報告書案によると、年3万ドルでも妥当とのことだ。

リンク: FDAのリリース
リンク: 両社のプレスリリース(PR Newswire)
リンク: Atopic Dermatitis: Draft Evidence Report(ICER)

Tesaro、PARP阻害剤が米国で承認
(2017年3月27日発表)

FDAは、Tesaro(Nasdaq:TSRO)が申請したZejula(niraparib)を審査期限の3ヶ月も前に承認した。難治性白金感受性卵巣癌で白金薬ベースの治療に反応した患者の維持療法に用いる。BRCA変異限定ではないことが感慨深い。12年にMSDからPARP阻害剤MK-4827をインライセンスしたもので、達成報奨金や売上ロイヤルティを払う。

PARPは遺伝子の複製ミスを修復する二つのメカニズムの一つに関わる酵素で、これまでは、もう一つに関わるBRCAに機能喪失変異を持つ患者の癌に有効と考えられていた。Zejulaの第三相試験でも生殖細胞系BRCA変異を持つ患者ではPFS(無進行生存期間)がメジアン21.0ヶ月で偽薬群の5.5ヶ月を上回りハザードレシオ0.26だったが、持たない患者では各9.3ヶ月、3.9ヶ月、0.45と、前者の方が効果が高い。しかし、持たない患者でも統計的に有意であり、5ヶ月延びるなら臨床的にも大きな価値がありそうだ。

BRCA1/2機能喪失変異は卵巣癌や乳癌のリスクが高いことで知られているが、卵巣癌のうち生殖細胞系BRCA変異は10~15%、米国では年2000人程度である模様。それ以外の患者にも承認されたことは商業的な意義も大きい。

特徴的な副作用は、PARP阻害剤は骨髄異形成症候群/急性骨髄性白血病が増加する可能性があり、発生頻度は稀だが注意が必要だ。

さて、生殖細胞系BRCA変異陽性の転移性乳癌を組入れた第三相化学療法対照試験も行われているが、対照群で治験を離脱しPARP阻害剤にスイッチする患者が多く発生し、データの頑強性が損なわれたことが公表された。クロスオーバーを認めることは被験者を集める上で重要な施策だが、このようなリスクが付き物だ。他社の類似薬が承認された場合にも起こりがちである。治験のデザインや実施地域を吟味して再挑戦するのではないか。

PARP阻害剤の第一号はアストラゼネカのLynparza(olaparib)。生殖細胞系または体細胞系BRCA変異を持つ白金薬感受性卵巣癌の維持療法として欧米で承認申請され、欧州では承認されたが、米国では認められず、代わりに生殖細胞系BRCA変異卵巣癌の四次療法として承認された。その後、第三相試験が成功し、米国で改めて生殖細胞系BRCA変異白金感受型卵巣癌の維持療法用薬として承認申請され、受理されたことが先日、公表された。優先審査指定されたので今年第3四半期までに結果が出ることになる。

リンク: FDAのリリース
リンク: Tesaroのプレスリリース(pdfファイル)

ロシュ、多発性硬化症用薬が米国で承認
(2017年3月28日発表)

ロシュのOcrevus(ocrelizumab)が米国で一次進行型と再発型の多発性硬化症の維持療法薬として承認された。患者数の多い再発型はインターフェロンから免疫抑制剤まで様々な薬が承認されているが、一次進行型は殆どの新薬の治験がフェールしており、意義がある。尤も、Rituxan(rituximab)では駄目なのか、という疑問は残る。

ロシュの抗CD20抗体フランチャイズはキメラ抗体のRituxan、ヒト化抗体のOcrevus、フコース欠如ヒト化抗体Gazyva/Gazyvaro(obinutuzumab)が出揃った。このほかにジェネンテックがバイオワのポテリジェント技術を用いてADCC活性を増強した抗CD20抗体を開発していたが、ロシュが完全子会社化した後に開発中止となっている。

OcrevusはRituxanよりマウス由来のアミノ酸が少なく過敏反応リスクが小さい可能性があるため自己免疫疾患に適すると考えられていたが、第三相試験でアジアの施設を中心に深刻な感染症が増加したため、多発性硬化症以外は開発打ち切りとなった。再発型の第三相試験は二本実施され、再発頻度が年率0.15回とRebif(ベータインターフェロン)を投与した群の0.29回を有意に下回った。障害の進行を抑制する効果も見られた。有害事象は点滴箇所反応が多かったが深刻な有害事象は少なかった。

一次進行型では障害進行リスクを偽薬比24%削減した(p=0.0321)。

投与は最初の二回は300mgを二週間置いて、その後は24週毎に600mgを3.5時間以上かけて、点滴静注する。点滴反応を抑制するためにステロイドと抗ヒスタミンなどでプリトリートするのはRituxanと同じ。有害事象で印象的なのは、乳癌が781人中6人で発生、対照群は668人中ゼロなので、リスクがあるのかもしれない。

WAC(問屋取得コスト)は年65000ドル。既存薬の価格はいつの間にか暴騰したらしく、多発性硬化症用薬としては安いほうとのことだ。尤も、Rituxanならもっと安いのではないか。バイオシミラーが発売されたら猶更だ。再発型はRituxanの第二相試験より数字が良いが、偽薬対照試験ではないしこの程度の差なら直接比較試験を行っても有意差は出ないのではないかと思われる。

Rituxanの一次進行型第2/3相試験はフェールしたが、Ocrevusの試験とは主評価項目が異なり、再発頻度のデータは有意ではないもののOcrevusとそれほど変わらない。プリトリートの手間も変わらないので安全性も大差ないのではないか。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース

ファイザー、ゼルヤンツが欧州でやっと承認
(2017年3月27日発表)

ファイザーは、Xeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)がEUで承認されたと発表した。選択的Janus Kinase阻害剤で、疾病装飾的抗リウマチ薬に十分反応しない、または不適な、中重度活性期リウマチ性関節炎の治療に用いる。

米国では12年に、日本でも13年に承認されたが、EUはCHMPが感染症や癌、胃腸穿孔のリスクを懸念したため、承認が遅れた。元々は臓器移植後の拒絶反応予防薬として臨床入りした経緯を持つ強力な免疫抑制剤なので、カルシニューリン阻害剤と同様なリスクがあっても不思議はない。

リンク: ファイザーのプレスリリース





今週は以上です。

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