2018年2月18日

2018年2月18日号

【ニュース・ヘッドライン】

  • バベンチオも肺癌試験がフェール 
  • MSD、BACE1阻害剤のアルツハイマー病試験がまたフェール 
  • バイオジェン、アルツハイマー病試験の組入れ拡大を発表 
  • Agios、FDAがIDH1阻害剤のNDAを受理 
  • アミカス社、FDAがmigalastatのNDAを受理 
  • ファイザー、新規ALK阻害剤を承認申請 
  • リツキサン、尋常性天疱瘡に適応拡大申請 
  • ヴァーテックス、嚢胞性線維症の新薬が米国で承認 
  • FDAが第二世代アンドロゲン受容体阻害剤を承認 
  • FDA、アストラゼネカの抗PD-L1抗体の適応を追加 


【新薬開発】


バベンチオも肺癌試験がフェール
(2018年2月15日発表)

ドイツのメルクとファイザーは、両社が共同開発販売している抗PD-L1完全ヒト化抗体、Bavencio(avelumab、和名バベンチオ)の第三相末期非小細胞性肺癌試験がフェールしたと発表した。PD-L1陽性サブグループの全生存期間をdocetaxel群と比較したが、ハザードレシオは0.90、p=0.1627に留まった。

抗PD-1/PD-L1抗体の臨床試験の注目点の一つは効果とPD-L1発現の関連性だ。本試験では、中高度発現(50%以上で発現、被験者の約4割)サブグループのハザードレシオは0.67、p=0.0052、著高発現(80%以上)サブグループではハザードレシオ0.59だった。主評価項目がフェールしたのでこれらは探索的解析に過ぎず、また、他の抗PD-1/PD-L1抗体のデータは一筋縄ではいかなかったため即断は危険だが、更に探求する余地はありそうだ。

尚、標準療法と同程度なのだから悪くないと思う人もいるかもしれないが、この試験はあくまで優越性検証試験であり、同程度であることを証明するためにはもっと大規模で厳格な試験が必要だ。

対照群は癌が進行した後にBavencioのようなチェックポイント阻害剤による治療を受けた患者の比率が26.4%と、Bavencio群の5.7%や過去のdocetaxelの臨床試験より高く、三次治療の違いが結果に影響した可能性がある。

このJAVELIN Lung 200試験は盲検ではないので、BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)などが承認されている国では、docetaxel群に割り付けられた患者が早めに進行認定を受けてOpdivoにスイッチするようなことがあったかもしれない。被験者は命が懸かっているのだから。二次治療の施行期間は決して長くないので三次治療でも効果は大差ないかもしれない。

Bavencioは非小細胞性肺癌の一次治療試験も進行中。当初の計画ではPFS(無進行生存期間)を主評価項目として17年にもデータベース・ロックの予定だったが、Opdivoの類似した試験のフェールが発表された後に全生存期間を共同主評価項目とする変更を行い、目標症例数が増えたため、開票が2019年に遅れることとなった。薬の効果は一次治療試験のほうがハッキリと出るだろうが、後治療でチェックポイント阻害剤を使うノイズが再び撹乱要因になるかもしれない。

リンク: 両社のプレスリリース

MSD、BACE1阻害剤のアルツハイマー病試験がまたフェール
(2018年2月13日発表)

MSDは、MK-8931(verubecestat)の第三相前駆アルツハイマー病試験を中止すると発表した。データ監視委員会が中間解析で無益性を認定したため。

MK-8931は09年に買収したシェリング・プラウがライガンド・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:LGND)との共同研究を通じて創製したBACE1阻害剤。一年前には軽中度アルツハイマー病の第2/3相試験が無益性で打ち切りになった。今回の試験は、PET検査でアミロイド蓄積が確認された患者だけを組入れてCDR-SBを主評価項目とする、最近の試験の典型的なデザインを採用している。

周到な臨床開発を行うことで定評のあるMSDが、過去に第三相がフェールした他社の開発品よりプロファイルの良いBACE阻害剤として満を持して第三相入りさせたコンパウンドなので、BACE阻害剤全体の評価に影響がありそうだ。

リンク: MSDのプレスリリース

バイオジェン、アルツハイマー病試験の組入れ拡大を発表
(2018年2月15日発表)

バイオジェンは、投資銀行主催のヘルスケア・カンファレンスで、BIIB037(aducanumab)の第三相試験の目標症例数を二本合計で510人追加することを明らかにした。MK-8931のフェールが発表された直後であることや、元々懐疑的な意見が珍しくなかったことなどから、株価が7%急落したが、悪材料と呼ぶほどではないように感じられる。

BIIB037はアミロイドベータの立体配座エピトープを標的とするIgG1型完全ヒト化抗体で、07年にスイスのNeurimmune社からインライセンスした。エーザイ提携の対象で、日本でも先駆け審査指定されている。

第三相は早期アルツハイマー病(アルツハイマー性軽度認知障害や軽度アルツハイマー病)の患者二本合計2700人を組入れて78週間治療し、CDR-SBの変化を偽薬群と比較するもの。事前に計画された検出力再評価の結果、データのばらつきが前提より大きいことが判明。検出力を90%に維持するためには症例数を増やす必要が生じた。

第三相のような仮説検証試験は、前提に誤りがあると検出力不足だけの理由でフェールしてしまうリスクがある。この誤りは臨床的に重要である場合も、誰も気にしない程度の違いに過ぎない場合もありうる。従って、今回の発表を悪材料と呼ぶのは不適切だろう。

私自身は、BIIB037でも、他のコンパウンドでも、アルツハイマー病試験が成功するといいな...でも多分フェールするんだろうな...と思っている。

リンク: Bloombergの報道


【承認申請】


Agios、FDAがIDH1阻害剤のNDAを受理
(2018年2月15日発表)

Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)は、FDAがAG-120(ivosidenib)の承認申請を受理し、優先審査指定したと発表した。審査期限は8月21日。IDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)を阻害する経口剤で、IDH1変異を持つ再発性難治性AML(急性骨髄性白血病)の治療に用いる。エビデンスとなる第一相試験では、CR(完全反応)率が21.6%、CRh(血液学的反応が部分的であること以外は完全反応)を含めると30.4%だった。

Agiosは2010年以来、セルジーン(Nasdaq:CELG)と癌代謝領域で戦略的協業を行っており、最初の成果であるIDH2阻害剤、Idhifa(enasidenib)は昨年8月にIDH2変異型再発性難治性AMLの治療薬としてFDAに承認された。一方、AG-120はセルジーン提携の対象ではない。

IDH2型はAMLの8~19%、IDH1型は6~10%を占めるとのこと。AMLは様々なタイプの寄せ集めで、今後も特定のサブタイプに適した治療手段が開発されていくだろう。新薬が高価であることは人類の不幸だが、希少疾患に関しては、もし高い値段で売ることができなかったら製薬会社は開発を諦めざるを得ないだろう。私たちとしては、Idhifaのような薬が続々と誕生することを望むばかりである。

リンク: Agiosのプレスリリース

アミカス社、FDAがmigalastatのNDAを受理
(2018年2月12日発表)

アミカス・セラピュティクス(Nasdaq:FOLD)は、FDAがmigalastatの承認申請を受理し優先審査指定したことを発表した。審査期限は8月13日。欧州では16年5月に承認。日本でも昨年6月に承認申請され、3月1日に薬食審・医薬品第一部会で審議される予定。

「がんばれ!!小さき命(いのち)たちよ」と言えば神奈川県立こども医療センターの新生児科部長、豊島先生のブログだが、「小さな命が呼ぶとき」という映画のモデルになったのが、アミカス社のCEOであるJohn Crowleyだ。ポンぺ病の娘さんのためにBMSを退職し、有望なアイディアを持つ研究者を発見し、臨床開発に必要な巨額の資金を集め、遂にMyozyme(alglucosidase alfa)の実用化に成功した。

Myozymeは酵素補充療法なので点滴静注が必要だが、05年にCEOに就任したアミカスは、ファーマスーティカル・シャペロンという不思議な現象を利用した経口治療薬を開発している。遺伝子変異が原因で翻訳後装飾時の折り畳みが上手く行かず、立体構造が違うせいで本来の機能が果たせないタンパクを、小分子薬で補正するもので、最初に第三相に進んだのがmigalastatだ。

ファブリー病の治療薬で、アルファ・ガラクトシダーゼAのGLA遺伝子変異のうち、amenable mutationと呼ばれる269種類に効果がある。患者の35~50%が該当するようだ。

開発は順調ではなかった。07年に共同開発提携したシャイアも、10年提携のGSKも、去った。欧州はバイオマーカーに基づいて薬効を認定したが、FDAは認めず、胃腸症状改善効果を検討する第三相を実施中だ。

流れが変わったように感じられたのがトランプ大統領の登場だ。昨年2月の施政方針演説でCrowley父娘と面談したことに言及し、患者が有望な新薬を早く使えるようFDA改革を行うと宣言した。16年にSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)がデュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬として承認された頃から顕在化した、臨床的な効用が曖昧でもバイオマーカーが改善するなら承認する事例が、昨年は増加したように感じられる。

アミカスの場合も、FDAが承認申請に前向きな姿勢を示したのは昨年7月なので、やはり、トランプ効果なのだろう。

リンク: アミカスのプレスリリース

ファイザー、新規ALK阻害剤を承認申請
(2018年2月12日発表)

ファイザーは、PF-06463922(lorlatinib)を承認申請しFDAに受理されたと発表した。優先審査で、審査期限は今年8月とだけ公表された。前後して日本や欧州でも承認申請済み。

ALK/ROS1チロシンキナーゼ阻害剤で、ALK活性化変異を持つ非小細胞性肺癌で他のALK阻害剤による治療歴を持つ患者に用いる。第二相試験では、同社のXalkori(crizotinib、和名ザーコリ)歴を持つ患者の7割弱が反応した。第三相は、変異ALK陽性非小細胞性肺癌の一次治療Xalkori対照試験が進行中。Xalkoriはファースト・イン・クラスだったが今日では競合が増えたため、PF-06463922も差別化が課題だろう。

リンク: ファイザーのプレスリリース

リツキサン、尋常性天疱瘡に適応拡大申請
(2018年2月14日発表)

ロシュは、Rituxan(rituximab、欧州名MabThera、和名リツキサン)を尋常性天疱瘡の一次治療に用いる適応拡大を米国で申請し、受理されたと発表した。10万人に3人の希少疾患で、希少疾患用薬指定とブレークスルー・セラピー指定を受けており、今回、優先審査指定された。

承認申請の根拠となるPEMPHIX試験では、24ヶ月の治療で46人中89%が完全緩解した。prednisoneだけによる治療を行った群は34%に留まった。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認】


ヴァーテックス、嚢胞性線維症の新薬が米国で承認
(2018年2月13日発表)

米国でヴァーテックス・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:VRTX)のSymdekoが嚢胞性線維症治療薬として承認された。病理に係るCFTR遺伝子変異のうち、F508欠乏のホモ接合型や、ヘテロでももう一つの遺伝子の変異がSymdekoに応答するタイプ(27種類)である場合に、適応になる。

CFTR蛋白チャネルの開口時間を長期化するCFTRポテンシエイターで12年に商品化されたKalydeco(ivacaftor)の活性成分と、CFTR蛋白が細胞表面に移行するのを助ける新開発のCFTRコレクター、tezacaftorの合剤で、朝はこの合剤、夕方はivacaftorだけを経口投与する。

第三相試験では、ホモ接合型では予測一秒量が絶対値で偽薬比4ポイント程度改善した。ヘテロは変異型によりかなり異なる。報道によると、WAC(問屋取得価格)は年29万ドル程度とのこと。

同社は患者支援団体とともに治療薬の開発を進め、変異型毎に様々な単剤、合剤を商品化することに成功した。まだ全ての患者には対応できていないが、VX-561とCTP-656の併用などパイプラインは豊富なので、マス目が着々と埋まっていくだろう。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

FDAが第二世代アンドロゲン受容体阻害剤を承認
(2018年2月14日発表)

ジョンソンエンドジョンソンのErleada(apalutamide)が米国で承認された。審査期限は4月なので2ヶ月早かった。FDAによると二つの初がある。まず、適応症。前立腺癌でアンドロゲン枯渇療法を受けている患者のうち、まだ転移はしていないがPSA値が急上昇し始めた段階の、「非転移性去勢抵抗性」前立腺癌に用いる薬が承認されたのは初。

次に、薬効のエビデンス。第三相試験の主評価項目は無転移生存期間で、メジアン40.5ヶ月、偽薬群は16.2ヶ月、ハザードレシオは0.28だった。副次的評価項目である全生存期間の解析はまだ中間解析に留まっている。無転移生存期間に基づく承認は前立腺癌では初。

ファイザー/アステラスのXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)を創製した医学者が第二世代品としてリリースしたアンドロゲン受容体阻害剤で、bicalutamideと異なり、状況によってはアゴニストとして作用してしまうことがない。240mgのカプセルを一日一回、服用する。

Xtandiも同様な内容の試験で同様な成績を上げている。この用途での承認はErleadaが先行したが、前立腺癌用薬としての発売は6年遅れなので、競争条件は決して良くないだろう。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: JNJのプレスリリース(pdfファイル)

FDA、アストラゼネカの抗PD-L1抗体の適応を追加
(2018年2月16日発表)

FDAは、アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)を切除不能非小細胞性肺癌の一次治療後維持療法として承認した。ステージIIIで、白金ベースの化学療法と放射線療法に反応・疾病安定化した患者に用いる。PD-L1発現は不問。日米欧などで実施された第三相試験では、中間解析でメジアンPFSが16.8ヶ月と偽薬群の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.52、統計的に有意だった。

Imfinziは抗PD-L1完全ヒト化抗体。17年に局所進行性/転移性尿路上皮細胞腫の二次治療薬として米国で承認された。肺癌は抗CTLA-4ヒト化抗体(BMSのYervoyと類似)併用試験のPFS解析がフェール。まだ全生存の解析が残っているが前途に雲が掛かっていた。ステージIII切除不能は非小細胞性肺癌の1~2割を占め、対象患者数が多く、維持療法の承認は初なので、朗報だ。抗PD-1/PD-L1抗体は数が多いので独自の適応を持つことは重要。

リンク: FDAのプレスリリース




今週は以上です。

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2018年2月11日

2018年2月11日号

【ニュース・ヘッドライン】

  • ASCO GU:イクスタンジの次世代品のデータ発表 
  • ASCO GU:イクスタンジも負けてはいない 
  • BMS曰く、オプジーボとヤーボイの併用はTMBが重要 
  • ASCO GU:テセントリク・アバスチン併用腎細胞腫試験が成功 
  • Shield社、経口鉄の適応拡大試験がフェール 
  • ギリアド、新規HIV/AIDS治療薬が米国で承認 
  • JNJ、ザイティガの適応拡大が承認 
  • ノボ、オゼンピックがEUでも承認 
  • EU、ulipristalに関する暫定的対策を発表 


【新薬開発】


ASCO GU:イクスタンジの次世代品のデータ発表
(2018年2月8日発表)

ファイザー/アステラス製薬のアンドロゲン受容体阻害薬、Xtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)を創製した医学者が第二世代品として送り出したErleada(apalutamide)の第三相SPARTAN試験の結果がASCO GU(米国臨床腫瘍学会泌尿器癌シンポジウム)とNew England Journal of Medicine誌で発表された。

前立腺癌でアンドロゲン枯渇療法(ADT)を受けていて、まだ転移はしていないがPSA値が急上昇し始めた、非転移性無症候性CRPC(去勢抵抗性前立腺癌)患者1207人にErleada(240mgを一日一回経口投与)または偽薬を追加投与して転移・死亡リスク削減効果を検討したところ、メジアン無転移生存期間が各40.5ヶ月と16.2ヶ月となり、ハザードレシオは0.28、統計的に有意な差があった。

全生存期間のデータは未だ成熟していないが、中間解析でハザードレシオ0.45、p値は0.0001を下回っており、正しい方向を指し示している。深刻な有害事象の発生率は各25%と23%、有害事象による治験離脱は11%と7%となっており、忍容性は悪くなさそうだ。

13年にAragon Pharmaceuticalsを6.5億ドルと達成報奨金最大3.5億ドルで買収してapalutamideを入手したジョンソンエンドジョンソンは、17年10月に今回の試験の用途でFDAに承認申請。優先審査指定を受けたので、今年4月までに結果が判明する見込み。

後述のように同学会ではXtandiの類似した内容の試験の結果も発表されたが、大差ないように見える。Xtandi陣営にしてみれば、競合相手が現れたが先行の利は生かせそう、というところか。

さて、ADTを受けている患者は効果が低下してPSA値が急上昇したり転移性・症候性に移行した場合は治療方法を再検討するが、PSA上昇だけの場合は治療強化のタイミングが難しく、方針は国によっても異なるようである。先端的な医療施設では新しいPET造影法を用いて転移を早期発見する手法を探索している模様。

前立腺癌のステージングは既に十分、複雑だが、判定方法が変化するなら薬の効果もそれに合わせて再検討することになるかもしれない。ファイザー/アステラスとジョンソンエンドジョンソンの開発競争は今後も続くだろう。

リンク: ジョンソンエンドジョンソンのプレスリリース
リンク: Smithらの治験論文(N Engl J Med.、2018)

ASCO GU:イクスタンジも負けてはいない
(2018年2月5日発表)

ファイザー/アステラス製薬のアンドロゲン受容体阻害薬、Xtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)の第三相PROSPER試験のデータがASCO GUで発表された。成功したことは昨年9月に公表済みだが、数値も中々良かった。

この試験は、非転移性無症候性CRPCの患者約1400人にXtandi(160mgを一日一回経口投与)または偽薬を追加投与して転移・死亡リスク削減効果を比較したところ、メジアン無転移生存期間が各36.6ヶ月と14.7ヶ月となり、ハザードレシオは0.29、統計的に有意だった。全生存はまだ中間解析で、ハザードレシオ0.80だが信頼区間が1を跨いでいる。今後のアップデートを待ちたい。

リンク: ファイザーのプレスリリース

BMS曰く、オプジーボとヤーボイの併用はTMBが重要
(2018年2月5日発表)

BMSは、非小細胞性肺癌の一次治療におけるOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)の併用療法の有効性を検討したCheckMate-227試験で、主評価項目の一つであるPFS(無進行生存期間)が達成されたと発表した。解析対象が治験登録と異なっているため警戒的な世評が多いが、もし盲検解除前に変更したのなら大きな問題にはならないだろう。Tumor Mutation Burden(TMB)という新しい反応予測手法の有効性を示すエビデンスになることを期待したい。

この試験は元々複雑で、パート1aはPD-L1陽性患者をOpdivo単剤群(以下、O群)、Opdivo・Yervoy併用群(OY群)、化学療法群(CT群)に割り付け。パート1bはPD-L1陰性患者をOY群、Opdivo・化学療法併用群(OC群)、CT群に割り付け。パート2は組み入れ条件を広げてOC群とCT群に割り付けた。

臨床試験の評価項目は多ければ多いほど偶然に有意差が出てしまうリスクが高まるので、主評価項目は一つ、二つに絞り込み、残りは順番をつけて解析がフェールしたら以降は仮説検証的解析ではなく探索的解析と位置付けるのが一般的だ。悪い輩が、結果が出揃った後で成功した項目を主評価項目に仕立て上げるのを防ぐため、プロトコルだけでなく治験登録にも明記が望まれるが、無視する会社や研究者も少なくない。

CheckMate-227試験の治験登録も、全生存期間とPFSが共同主評価項目と書いているだけで、解析対象どころか、パートに分かれていることすら記されていない。治験登録の趣旨を冒涜しているように感じられる。

さて、今回のBMSの発表で最大のサプライズは、主評価項目の一つであるPFSの解析対象がパート1a(PD-L1陽性)ではなく、パート横断的な高TMBサブグループだったこと。尚、もう一つの主評価項目はPD-L1陽性患者を対象とした全生存の解析で、未成熟なのだろう、データ監視委員会が続行勧告した由。

解析対象を高TMBに変更するらしいという噂は昨秋には流れていた模様なので、禁じ手である後出しじゃんけんではなく、許容することが可能な盲検解除前の変更なのではないか。当惑させられるのは、全生存の解析対象が異なることだ。結果的に、高TMBサブグループの全生存期間やPD-L1陽性患者のPFSが主評価項目と同様な重要性を持ってしまうので、多重性リスクを冒すことになる。

それはそれとして、TMBをスクリーニングに使う手法は興味深い。非小細胞性肺癌の病理に係る遺伝子変異のうち、EGFRやALKなどの活性化変異は決定的に重要で、だからこそEGFR阻害剤やALK阻害剤に顕著に反応するのだが、他の変異の関与は判然としない。ジノムワイドアソシエーションスタディや後ろ向き研究では様々な関連性が浮上しているが、上記の多重性リスクを内包しているので、前向き試験で確認する必要がある。

TMB分析は癌に関連する可能性のある遺伝子変異の多寡を応答性予測因子として使うもの。今回の試験ではロシュ・グループのFoundation Medicine(Nasdaq:FMI)のFoundationOne CDxという、癌細胞の標本からEGFRなど300を超える遺伝子の変異や反復異常を纏めて探知できるラボラトリー・アッセイを使った。閾値は、メガベース当り10変異(10mut/mb)を超えるものを高TBとした。よく用いられる、20mut/mbを閾値とする方法は1割強しか該当しないが、今回の定義だと40~45%である由。

これまでに、OpdivoやロシュのTecentriq(atezolizumab)の肺癌試験のTMB分析結果が学会発表されている。Opdivoの非小細胞性肺癌一次治療モノセラピー試験(CheckMate-026)では、高TMB(変異が243箇所以上)サブグループのメジアンPFSが9.7ヶ月と化学療法群の5.8ヶ月を上回った。但し、全生存期間では18.3ヶ月対18.8ヶ月、ハザードレシオ1.10となった。

結果が食い違うのは症例数が少ないせいかもしれないが、227試験のPFS解析対象を高TMBに絞り込んだのは、このデータが影響したのかもしれない。

PD-1/PD-L1阻害剤の応答予測因子はPD-L1が有効だろうと想像していたが、治験結果は区々で、各社が採用したアッセイが異なることもあって、当初考えていたほど単純ではなさそうだ。TMBも百点満点ではなさそうだが、今後、様々な薬の様々な癌におけるデータが集積すれば、少なくとも一歩前進できるだろう。

リンク: BMSのプレスリリース
リンク: CheckMate 227試験の治験登録
リンク: GoodmanらのTMBバイオマーカーに関する後ろ向き研究(Mol Cancer Ther.、2017)
リンク: Kowanetzらのatezolizumbの臨床成績の高TMBサブグループ分析(J Thorac Oncol. 、2016)

ASCO GU:テセントリク・アバスチン併用腎細胞腫試験が成功
(2018年2月6日発表)

ロシュは、Tecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)とAvastin(bevacizumab、和名アバスチン)を併用で末期・転移性腎細胞腫の一次治療に用いるIMmotion151試験の結果をASCO GUで発表した。共同主評価項目のうち、PD-L1陽性患者のPFS(担当医評価)はメジアン11.2ヶ月となり、標準療法であるSutent(sunitinib)群の7.7ヶ月を上回った。ハザードレシオは0.74、p=0.02。もう一つの、PD-L1陰性も含めた全生存期間の解析は未成熟で有意差はないが、ハザードレシオ0.81で正しい方向を向いている。

二次的評価項目であるPD-L1陽性患者の全生存解析はハザードレシオ0.68、intent-to-treatのPFSは0.83で、どちらも正しい方向を向いている。G3/4の有害事象発生率は40%とSutent群の54%を下回った。ロシュは、データを世界の医薬品審査機関に提示し討議する予定。

ところで、この試験の主評価項目と二次的評価項目の捩れ方は上記の227試験とよく似ている。それだけ製薬会社や研究者に迷いがあり、それだけに、取りこぼしてライバルに追い抜かれないため二股かけることが必要なのだろう。

リンク: ロシュのプレスリリース

Shield社、経口鉄の適応拡大試験がフェール
(2018年2月5日発表)

Shield Therapeutics(LSE:STX)は、Feraccru(ferric maltol)を慢性腎臓疾患患者の鉄欠乏性貧血症の治療に用いた第三相試験がフェールしたと発表した。ヘモグロビン値の改善が0.45g/dLに留まり、偽薬群の0.15g/dLと大差なかった。

Feraccruは経口鉄で、塩ではないので吸収が良い可能性がある。16年にEUで炎症性腸疾患患者の鉄欠乏性貧血症の治療薬として承認された。臨床試験ではヘモグロビン値が2.2g/dL上昇。一方、偽薬群はベースライン値に留まった。昨年9月に、炎症性腸疾患以外の患者にも使えるよう適応拡大申請したが、今回のセットバックで見通しが不透明になったのではないか。

承認用途では静注用製剤(ferric carboxymaltose)対照の非劣性試験が進行中で18年下期に判明する見込み。

リンク: Shield社のプレスリリース


【承認】


ギリアド、新規HIV/AIDS治療薬が米国で承認
(2018年2月7日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のBiktarvy錠がFDAにHIV/AIDS治療薬として承認された。新開発のインテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビターであるbictegravirを代表的な核酸系逆転写阻害剤であるemtricitabine及びtenofovir alafenamide fumarateと組み合わせた合剤で、一日一回一錠服用で足りる。新たに治療を受ける患者だけでなく、薬物療法によりウイルス抑制に成功している患者のスイッチも認められた。

ギリアドは3~4種類の薬剤を配合する合剤を次々と投入しHIV/AIDS分野のトップランナーになったが、シェアが高まれば高まるほど耐性ウイルスの脅威が増加するので補完的な選択肢が必要になり、ヴィーヴ・ヘルスケア(GKS、ファイザー、塩野義の合弁)との競合が激化してきた。

BiktarvyはヴィーヴのTriumeq(dolutegravir、abacavir、lamivudineの合剤)との直接比較試験が複数実施され、奏効率の非劣性解析は成功したが優越性は見られず、数値上は少しだけ下回った。そのせいか、ギリアド社のプレスリリースは使いやすさの面での競争力を強調している。腎機能やHLA-B遺伝子多型、服用タイミングに関する制約が小さいことや、治療前のウイルス量やCD4カウントに基づく制限がないことなどだ。

もう一つ、正面からぶつかる覚悟を示すのが優先審査バウチャーを使ったこと。ヴィーヴ陣営も別の薬で同じ手を使っており、競争に負けないための手段としてすっかり定着した格好だ。

リンク: ギリアドのプレスリリース

JNJ、ザイティガの適応拡大が承認
(2018年2月8日発表)

ジョンソンエンドジョンソンのZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大がFDAに承認された。テストステロンの合成を阻害する経口剤で、前立腺癌用薬として11年に承認後、一歩ずつ早い段階で使う適応拡大を進めてきた。今回は、転移性でホルモン療法未経験の高リスク患者にアンドロゲン枯渇療法とZytiga及びprednisoneを併用するもの。

日本の施設も参加した第三相LATITUDE試験のエビデンスに基づくもので、アンドロゲン枯渇療法だけの群と比べて、全生存のハザードレシオが0.62、p値は0.0001を下回った。

この適応拡大は、欧州でも昨年12月に承認。日本は、今月、第二部会を通過した。

リンク: JNJのプレスリリース

ノボ、オゼンピックがEUでも承認
(2018年2月9日発表)

ノボ ノルディスクは、Ozempic(semaglutide、和名オゼンピック)がEUで承認されたと発表した。二型糖尿病の血糖治療に用いるGLP-1作用剤で、皮注用だが週一回の投与で足りることと、心血管安全性確認試験のポストホック分析でMACE(主要有害心血管イベント)が対照群より有意に少なかったことが長所。GLP-1作用剤のクラスイフェクトである体重抑制作用や悪心嘔吐副作用も持っている。

米国では昨年12月に承認。大規模試験で網膜有害事象の増加がみられたが、FDAの諮問委員会は重視しなかった。初めて聞いたが、血糖治療の最初の数年間は糖尿病性網膜症の合併症が増加するものらしい。日本は今月、部会を通過したところ。

ペン型ディバイスの新型を承認申請する計画で、欧州発売は承認後の今年下半期になる見込み。

リンク: ノボのプレスリリース


【医薬品の安全性】


EU、ulipristalに関する暫定的対策を発表
(2018年2月9日発表)

EMA(欧州薬品庁)のPRCA(薬物監視リスク評価委員会)は、Gedeon Richter社のEsmya(ulipristal acetate)の肝臓安全性に関する検討を昨年11月に開始したが、今回、暫定的な対策を発表した。治療中で便益を受けている患者は、肝臓障害を示唆する兆候症状に注意するとともに、定期的に肝臓検査を受ける。新規に治療を開始してはいけない。尚、同じ活性成分を含有するレイプ後緊急避妊薬、ellaOneには今回の措置は適用されない。

Esmyaは選択的プロゲスチン受容体調節剤で、12年にEUで子宮筋腫治療薬として承認された。摘出術前の最大3ヶ月間の使用だけでなく、休薬期を挟みながら長期使用することも認めらた。13年にはカナダでFibristal名で承認されたが、用法は手術までのつなぎだけだ。

昨年11月のEMAの発表によると、これまでに深刻な肝障害が4例報告され、うち3人は肝移植を受けた。投与実績は67万人とのことなので発生頻度は低い。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: Richter社のプレスリリース






今週は以上です。

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2018年2月4日

2018年2月4日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • サノフィ、西アフリカ睡眠病治療薬を承認申請 
  • アラガン、複合セファロスポリンが適応拡大 
  • FDA、オベチコール酸の用法遵守を警告 


【承認申請】


サノフィ、西アフリカ睡眠病治療薬を承認申請
(2018年1月31日発表)

サノフィは、fexinidazoleを西アフリカ睡眠病(ガンビア・ヒト・アフリカ・トリパノソーマ症)の治療薬としてEMA(欧州薬品庁)に承認申請し受理されたと発表した。EU域外だけで販売する予定だが、医薬品審査のリソースを持たない国々に代わってEMAが意見を表明する制度がある。

アフリカ睡眠病はツェツェバエが媒介する寄生虫感染症で、中枢神経に侵入すると髄膜脳炎を起こし、昏睡状態を経て死に至る。原因寄生虫は二種類あるがガンビア種による西アフリカ睡眠病が9割以上を占める。WHOが予防・治療対策を再開した後は減少傾向にあり、年間死者数は3000人以下に減った。

fexinidazoleは1970年代にヘキスト(現在のサノフィ)が創製したが商品化には至らなかった。05年にDNDi(顧みられない病気のための新薬イニシアティブ)がガンビア・トリパノソーマに対する活性を発見、09年にサノフィと共同開発を開始した。

西アフリカ睡眠病の治療は中枢神経症状の有無に応じて選択するが、fexinidazoleはどちらにも有効で経口投与可能なので利便性が高い。

リンク: サノフィのプレスリリース


【承認】


アラガン、複合セファロスポリンが適応拡大
(2018年2月1日発表)

アラガン(NYSE:AGN)は、Avycaz(ceftazidimeとavibactamの合剤、欧州名Zavicefta)をグラム陰性菌による院内感染肺炎(人工呼吸器関連肺炎を含む)の治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。

30年前に発売された第3世代セフェム系抗生物質と新開発の非ベータラクタム系ベータラクタマーゼ阻害剤を組み合わせた複合剤で、2時間点滴静注する。第三相試験では28日全死亡率が9.6%となり、meropenemによる治療を受けた群の8.3%と比べて統計的に非劣性だった(群間差の95%信頼区間は-2.4、5.3%)。

Avycazは米国では15年にグラム陰性菌による複雑腹腔内感染症と複雑尿道感染症の治療薬として初承認。翌年、欧州で院内感染肺炎を含む三適応症で承認された。

リンク: アラガンのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、オベチコール酸の用法遵守を警告
(2018年2月1日発表)

FDAは、インターセプト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ICPT)のOcaliva(obeticholic acid)に関する安全性情報を発出し、肝機能低下患者に用いる場合は投与頻度を減らす必要があることをレーベルで枠付き警告したことを通知した。通常は5mg一日一回で開始し3ヶ月後に効果が不十分なら10mg/日に増量できるが、Child-Pugh分類でBまたはCの患者は、5mg週一回で開始し、最大でも10mg週二回に抑えなければならない。

Ocalivaは胆汁酸誘導体で16年に欧米で原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療薬として承認された。市販後に死亡報告が19件あり、うち7例は肝機能低下にも関わらず毎日5mgを服用していた。PBC患者のうち、Child-Pugh分類でBまたはCは2~3%である模様。

Ocalivaは非アルコール性脂肪性肝炎でも第三相段階。一日25mgを投与する群も設定されるので安全性監視が重要だ。もし許容範囲内であったとしても、臨床試験の成績は選ばれた医療施設が選りすぐられた患者に通常以上の注意を払って治療・フォローアップした結果なので、現実の医療では治療効果はもっと低く、副作用や用法違反はもっと多く発生すると考えるべきである。

リンク: FDAの安全性通知






今週は以上です。

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2018年1月28日

2018年1月28日


【ニュース・ヘッドライン】

  • ノバルティス、アーゼラの販売を縮小へ 
  • アストラゼネカ、COPDトリプルセラピーの第三相成功 
  • アステラス、CMV予防薬の第三相がフェール 
  • アクトスのアルツハイマー予防試験がフェール 
  • CHMPがロシュの血友病薬などの承認を支持 
  • CHMPはPuma社のneratinibに否定的な傾向 
  • GEP-NETsの放射線療法薬が米国でも承認 
  • Synergy社、Trulanceが適応拡大 
  • EUでアドセトリスの適応拡大承認 


【今週の話題】


ノバルティス、アーゼラの販売を縮小へ
(2018年1月22日発表)

ノバルティスは、慢性リンパ性白血病薬Arzerra(ofatumumab、和名アーゼラ)の米国以外での販売を縮小する。デンマークのジェンマブ(OMX:GEN)が発表した。ノバルティスは、経過的措置として、現在治療中で便益を得ている患者が無償で引き続き使用できるように、CUP(人道的使用プログラム)導入に向けて当局と相談する。最終的には販売を中止するのではないか。

ArzerraはCD20を標的とする抗体医薬で、ロシュのRituxan(rituximab)とは結合するエピトープが異なり、キメラではなく完全ヒト化抗体で、適応も若干異なるものの、まあ似たような薬だ。前臨床試験ではrituximabより高い活性を示したが、臨床的な優越性は確認されなかった。Rituxanはバイオシミラーが登場。ロシュは糖鎖改変型など第二世代品を投入しており、Arzerraが注目を集めるのは難しくなっている。

Arzerraはジェンマブが創製、インライセンスしたグラクソ・スミスクラインが09年に米国で、10年にEUで、13年には日本でも、承認を取得した。ノバルティスは15年にGSKと事業交換を行い、Arzerraなどの腫瘍学製品・パイプラインを入手した。

リンク: ジェンマブのプレスリリース


【新薬開発】


アストラゼネカ、COPDトリプルセラピーの第三相成功
(2018年1月26日発表)

アストラゼネカは、COPD治療用の三剤配合新薬の第三相試験成功を発表した。この、PT010は、budesonide(コルチコステロイド)、glycopyrronium(長期作用性ムスカリン受容体拮抗剤)、そしてformoterol fumarate(長期作用性ベータ2作用剤)を各320mcg、14.4mcg、9.6mcgずつ配合しており、一日二回、各二回ずつ吸入する。13年に開発販売目標達成報奨金を含めて11.5億ドルで買収したPearl Therapeuticsの開発品で、HFA加圧噴霧式定量吸入器を使っていることが特徴。

今回の試験は中度から超重度のCOPD患者に対するFEV1(一秒量)改善効果をBevespi(glycopyrroniumとformoterol fumarateの合剤)やSymbicort(budesonideとformoterol fumarateの合剤)、PT009(budesonidとformoterol fumarateの別の製剤)と比較したところ、対照薬や観察時点が異なる7種類の評価項目のうち6項目で有意に上回った。

Bevespiとの比較は24週時点のデータがトレンドに留まったものの、24週間のデータや第12~24週のデータは有意に上回った。三剤併用が二剤併用を上回るのは当たり前だが、今回の試験のように百点満点を逃すことは珍しくなく、まあまあな結果だ。

アストラゼネカは日本や中国で今年下期に承認申請する考え。欧米は増悪予防試験の結果が出る19年に申請する予定。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

アステラス、CMV予防薬の第三相がフェール
(2018年1月22日発表)

アステラス製薬は、 Vical社(Nasdaq:VICL)と共同開発しているDNAワクチン、TransVax(ASP0113)の第三相試験がフェールしたと発表した。サイトメガロウイルス(CMV)抗体陽性の造血幹細胞移植患者のCMV感染・死亡リスク削減を狙ったが、主評価項目も、CMV血症だけの解析も、偽薬比有意な差がなかった。

TransVaxはCMVのpp65抗原とgB抗原の遺伝子を組み込んだ二つのプラスミドをポロキサマー・ベースのデリバリーシステムを用いて導入するもの。アステラスは11年に世界開発商業化権を取得した。

16年に腎移植患者を対象とした第二相試験がフェールしたが、造血幹細胞移植後のCMV血症予防は、第二相試験でワクチンでは初めて、良績を残した実績があるので、フェールしたは失望的だ。

リンク: アステラスのプレスリリース

アクトスのアルツハイマー予防試験がフェール
(2018年1月25日発表)

武田薬品とジンファンデル・ファーマシューティカルズは、Actos(pioglitazone、和名アクトス)の第三相アルツハイマー病予防試験、TOMMORROWがフェールしたと発表した。高リスク患者を組入れてMCI(軽度認知障害)の発症を遅らせる効果を検討したが、中間解析で無益性認定された。

糖尿病はアルツハイマー病のリスク要因の一つとも言われており、糖代謝障害が脳細胞ではアルツハイマー病の誘因になっているのかもしれない。pioglitazoneのようなPPARガンマ作動剤は免疫炎症反応にも関与しており、脳細胞に沈着したアミロイドの除去を促進する可能性が指摘されている。しかし、類薬であるrosiglitazoneの第三相アルツハイマー病治療試験はフェールした。

TOMMORROW試験の特徴は、老人性アルツハイマー病と関連するApoEやTOM40(translocase of outer mitochondrial membrane 40)の遺伝子多型と年齢に基づくアルゴリズムでスクリーニングした65歳以上の3500人を組入れて、Actos群と偽薬群のアルツハイマー性MCI発症リスクを比較したこと。進行中の他の予防試験は家族歴やMRI所見も考慮したり、主評価項目がアルツハイマー病発症、あるいは、YES/NOではなく症状評価スケールを用いて感受性を高めたりしている。

もう一つ、印象的なのは、0.8mgの徐放新製剤を用いたこと。二型糖尿病の治療における用量は一日15~45mgなので、だいぶ小さい。心不全のリスクや、一時期、膀胱癌のリスクが疑われたことに配慮したのかもしれないが、本当にこれで足りるのか?治験論文が発表されれば用量選択の根拠が明らかにされるかもしれない。

リンク: 武田のプレスリリース(英文)


【承認審査・委員会】


CHMPがロシュの血友病薬などの承認を支持
(2018年1月26日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、1月の会合で、ロシュの血友病薬などの新薬承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。一方、BMSがOpdivo(nivolumab)の大腸癌適応拡大申請を撤回したことが明らかにされた。

リンク: EMAのプレスリリース

ロシュのHemlibra(emicizumab)はA型血友病で出血リスクが高くルーチン予防的投与が必要だが第VIII因子のインヒビターを持っている患者のための、第IX因子/第X因子ヒト化二重特異性抗体。子会社の中外製薬が創製、昨年11月に米国で承認、日本でも昨年7月に承認申請された。既存薬であるバイパス剤は点滴だが、Hemlibraは皮注、週一回投与なので利便性も高い。

主な有害事象は注射箇所反応、血栓性微小血管症、発熱、下痢、筋骨格痛など。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース

イタリアのChiesi FarmaceuticiのLamzede(velmanase alfa)は、軽中度アルファ-マンノシドーシスの成人・青少年のための酵素補充療法。13年に買収したデンマークの希少疾患用薬会社、Zymenexの開発品。

この疾患はマンノースを代謝できず糖蛋白が蓄積、知的障害や肝膵肥大、筋骨格異常などを齎す。世界で500人程度の超希少疾患。Lamzedeの臨床試験では血清オリゴ糖が正常水準まで減少した。運動能力や肺機能の改善も一部で見られた。脳血管関門を通過しないので神経学的効能は期待できない。

CHMPは、症例数が少なく薬効評価期間も一年と短いことに鑑み、例外的環境条項に基づく承認を勧告するとともに、6歳以下の患者に対する効能確認試験や患者登録制度による長期追跡試験を求めた。

リンク: EMAのプレスリリース

グラクソ・スミスクラインのShingrixは帯状疱疹ワクチン。帯状疱疹とヘルペス感染後神経痛を予防する目的で50歳以上に承認することが支持された。2ヶ月置いて2回接種する。

糖タンパクE抗原をAS01Bアジュバントでパワーアップしたもので、MSDの生ワクチンであるZostavaxより効果が高く、特に70歳以上で大きな差が出ている。対象年齢も60歳以上ではなく50歳以上と幅広い。主な有害事象は注射箇所反応、筋肉痛、疲労、頭痛など。

米国は昨年10月に承認され、政府のワクチン委員会がZostavaxより優先するよう勧奨した。日本は第一三共との合弁が昨年4月に承認申請した。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: GSKのプレスリリース

MSDが承認申請したSteglatro(ertugliflozin)は二型糖尿病の高血糖を治療するSGLT2阻害剤。ファイザーのコンパウンドだが開発販売提携パートナーであるMSDが利益の6割を得る取り決めだ。MSDはDPP-4阻害剤で高いシェアを持っており、販促シナジーを狙う意図だろう。Steglatroと同時に、metformin配合剤やsitagliptin配合剤も肯定的意見を得た。

SGLT2阻害剤は尿細管のトランスポーターを阻害してグルコースが尿から血液に戻るのを妨げる。主な有害事象は性器真菌感染など。

リンク: EMAのプレスリリース

アストラゼネカのLokelma(sodium zirconium cyclosilicate)は陽イオン交換剤。高カリウム血症の治療に用いる。昨年2月に肯定的意見を得たが、欧州委員会の審査手続き段階で工場のcGMP違反が表面化したため承認見送りとなった。違反が解消したため、今回、CHMPが改めて肯定的意見を纏めた。15年に27億ドルで買収したZS Pharmaの開発品。

リンク: EMAのプレスリリース

再審査が決定したのがPharmaMarのAplidin(plitidepsin)。再発性難治性多発骨髄腫に承認申請され、先月、否定的意見が出たが、再審査請求が認容された。CHMPの12月のプレスリリースによると、否定的意見の理由は、PFS(無進行生存期間)が偽薬比1ヶ月延びるだけで全生存の延命効果が不透明であること、深刻有害事象が増加すること、試験の実施方法や解析方法に疑念があることなど。

リンク: EMAのプレスリリース

一方、否定的意見となったのが、先月、Allergan(NYSE:AGN)による買収に同意したRepros Therapeutics(Nasdaq:RPRX)が承認申請したEncyzix(enclomifene)。再生産医療に用いられるclomifeneの異性体で抗エストロゲン作用が強い。BMIが25kg/m2以上の低ゴナドトロピン性性腺機能低下症の治療薬として欧米で承認申請されたが、米国と同様に、CHMPもエビデンスが不十分と認定した。

具体的には、テストステロン量は増加したが骨や体重、インポテンツや性欲を改善する効果が検討されていない。副作用面では静脈血栓リスクが見られる。

リンク: EMAのプレスリリース

また、スイスのSanthera Pharmaceuticals(SIX:SANN)のRaxone(idebenone)をデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療に用いる適応拡大申請は再び否定的意見を受けた。%ピークフローの低下を偽薬比有意に抑制したが、筋力や運動機能、QOL指標は改善せず、治験実施・解析方法にも懸念があったため、昨年9月に否定的意見を受けた。再審査が認められたものの、結論は覆らなかった。米国で承認申請するための試験が進行中で19年下期に結果が出る見込みなので、好首尾なら再申請されるだろう。

idebenoneは武田薬品が日本でアバン名で発売したが薬効確認再試験がフェールし販売中止となった。欧州の一部の国ではまだ使われており、EUでは11年にレーバー遺伝性視神経萎縮症治療薬として承認された。

リンク: Santheraのプレスリリース(1/24付け、pdfファイル)

次に、否定的意見が正式にまとまる前の段階で申請撤回となったのがPierre FabreがArray Biopharma(Nasdaq:ARRY)から欧州などの権利を取得して承認申請したBalimek(binimetinib)。MEK阻害剤で、NRASにQ61変異を持つ転移性切除不能黒色腫の治療薬として欧米で承認申請されたが、米国同様に、CHMPも、効果が小さく有害事象が増加するため否定的意見に傾いていた。

BRAF阻害剤のLGX818(encorafenib)併用試験が成功、米国で昨年6月に承認申請されたので、EUも、併用に切り替えるのではないか。

リンク: EMAのプレスリリース

BMSはOpdivo(nivolumab)をdMMR(ミスマッチ修復不十分/マイクロサテライト不安定性高)の結腸直腸癌の四次治療薬として欧米で適応拡大申請を行い、米国では昨年8月に承認されたが、EUは12月に申請撤回していたことが明らかになった。CHMPは、エビデンスとなる試験が対照試験ではないこと、dMMRの判定方法に疑義があることなどから、否定的意見に傾いていた由。

ライバルであるMSDのKeytruda(pembrolizumab)も米国では承認されたがEUは未承認。今週はFDAとCHMPの評価が重なる事例が多かったが、この種の代理マーカーによる評価は米国のほうが積極的になったように感じられる。

リンク: EMAのプレスリリース

CHMPはPuma社のneratinibに否定的な傾向
(2018年1月23日発表)

Puma Biotechnology(Nasdaq:PBYI)は、乳癌の術後延長アジュバント療法として承認申請したNerlynx(neratinib)がCHMPでnegative trend voteを受けたことを明らかにした。エビデンスとなる臨床試験が一本だけであることや、リスク抑制効果が限定的で副作用リスクと釣り合わないことなどが理由のようだ。2月の会合で正式採決するとのことだが、申請撤回の可能性もあるのではないか。

Nerlynxはファイザーが買収したワイスのパイプラインで、Pumaは11年にライセンスした。CEO兼社長兼取締役会会長であるAuerbach氏はCougar Biotechnologyを設立して前立腺癌用薬Zytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の臨床開発に成功し、会社ごとジョンソンエンドジョンソンに売却した実績を持つ。

承認申請の根拠となったExteNET試験は、her2陽性の早期乳癌を切除しHerceptin(trastuzumab)などによるアジュバント療法を終えた患者を組入れて、Nerlynxの1年コースの再発予防効果を検討した。2年経過後に浸潤性乳癌を再発せずに生存していた患者の比率は93.9%で偽薬群の91.6%を有意に上回ったが、差は2ポイント程度で、感受性分析の結果も頑強ではなかった。それでも、米国では諮問委員会に支持されて昨年7月に承認された。

リンク: Pumaのプレスリリース(1/23付け)


【承認】


GEP-NETsの放射性医薬品が米国でも承認
(2018年1月26日発表)

FDAは、フランスのAdvanced Accelerator Applications(Nasdaq:AAAP)が承認申請したLutathera(lutetium Lu 177 dotatate)をソマトスタチン受容体陽性胃腸膵神経内分泌腫瘍(GEP-NETs)用薬として承認した。

ソマトスタチン類縁体をルテチウム177で標識した放射性医薬品。欧州では昨年9月に承認された。日本は15年に富士フイルムRIファーマが導入。

AAA社はノバルティスに39億ドルで買収される予定。

リンク: FDAのプレスリリース

Synergy社、Trulanceが適応拡大
(2018年1月25日発表)

Synergy Pharmaceuticals(Nasdaq:SGYP)のTrulance(plecanatide)をIBS-C(便秘型過敏性腸症候群)の治療に用いる適応拡大がFDAに承認された。uroguanylinというナトリウム利尿ペプチドの類縁体で、GC-C受容体を作動しCFTRクロライド・チャネルを開口する。昨年、慢性特発性便秘治療薬として初承認された。

3mgを一日一回、経口投与する。6mgも申請されたが承認されなかった。第三相試験の一本では総合反応率が21%と偽薬群の14%を上回り、もう一本も30%対17%で上回った。有害事象は下痢など。

前臨床で若年マウスに脱水が見られたため、6歳未満は禁忌、6~18歳は使用を回避すべきとの枠付き警告が記されている。

リンク: Synergyのプレスリリース

EUでアドセトリスの適応拡大承認
(2018年1月23日発表)

シアトルジェネティクス(Nasdaq:SGEN)が創製し欧州では武田薬品が販売するAdcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)を再発性CD30陽性皮膚T細胞リンパ腫に用いる適応拡大がEUで承認された。米国でも11月に承認されている。

Adcetrisは抗CD30抗体に細胞毒を結合した抗体薬物複合体。ホジキンリンパ腫や全身性異形成大細胞リンパ腫の再発治療薬として承認されている。皮膚T細胞リンパ腫の5割がCD30を発現している。

リンク: 武田のプレスリリース


今週は以上です。

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2018年1月21日

2018年1月21日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • キートルーダ、肺癌一次治療化学療法併用試験が成功 
  • ウベニミクスの新用途探索試験がフェール 
  • PharmaMar、lurbinectedinの第三相卵巣癌試験がフェール 
  • シャイアー、アディノベイトがEUでも承認 
  • ジオトリフ、適応となるEGFR変異型が増加 


【新薬開発】


キートルーダ、肺癌一次治療化学療法併用試験が成功
(2018年1月16日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab、和名キートルーダ)の第三相KEYNOTE-189試験が中間解析で成功したと発表した。3ヶ月前に解析計画が変更され完了見込み時期が19年に先送りされた経緯があるので、サプライズ。データは今後、学会発表される見込みで、現時点では効果のほどが不明だが、肺癌領域におけるBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)との差をまた一歩、広げることになりそうだ。

189試験は進行性・転移性非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療を受ける患者614人を組入れた。EGFRやALKの活性化変異を持つ患者は対象外。PD-L1発現は不問。

介入方法は白金薬(cisplatinまたはcarboplatin)とAlimta(pemetrexed)を併用する標準療法にKeytrudaを追加する三剤併用療法、対照群は標準療法のみ、2対1割付。主評価項目はPFS(無進行生存期間)、そして、全生存期間が昨年10月に追加された。

この適応・用法は米国では第1/2相試験の結果に基づいて昨年5月に承認されており、189試験は薬効確認試験という位置づけになる。欧州は承認されず申請撤回となったので、今回の試験が承認申請用試験となる。主評価項目に全生存期間を追加したのは、エビデンスを頑強にする意図だろう。

抗PD-1/PD-L1抗体はMSD、BMS/小野、ロシュ、アストラゼネカ、ベーリンガー・インゲルハイム/ファイザーなど多くの製薬会社が開発・販売に鎬を削っている。様々な癌に有効で、併用レジメンも様々な作用機序の薬との組み合わせが考えられるため、競争に勝つためには適応症と併用法の優先順位決定が重要だ。

BMSはYervoy(ipilimumab)を持つ強みを生かしてYervoy併用レジメンに重点を置いているが、免疫性副作用が増強されるのが難点だ。アストラゼネカはYervoyと類似した薬の開発権をファイザーから取得し併用試験を行ったが、これも今一つだった。

MSDは、様々な会社と協業してその会社の製品・開発品と併用試験を行っている。今回の189試験はAlimtaを販売するイーライリリーと共同で実施した。少なくとも非小細胞性肺癌に関しては、抗CTLA4抗体ではなく白金系併用レジメンと併用する戦略に軍配が上がったと言えよう。

今後の課題は、PD-L1スクリーニングの妥当性だ。一次治療化学療法併用は不問、単剤投与する場合は強発現のみ、再発に単剤投与する場合は強度でなくても陽性なら良しと、区々だが、本当にこれで良いのか?それとも、もっと良い閾値があるのか?知りたいところだ。

リンク: MSDのプレスリリース

ウベニミクスの新用途探索試験がフェール
(2018年1月16日発表)

アイガー・バイオファーマシューティカルズ(Nasdaq:EIGR)は、ubenimexの第二相肺動脈高血圧症試験がフェールしたことを明らかにした。肺血管抵抗性も6分歩行テストも改善しなかった。サブグループ分析でも有効性は示唆されなかった。並行して実施されている第二相リンパ浮腫試験の結果を待って開発続行の当否を決めることになるのではないか。

アイガーはスタンフォード大学の研究成果を活用して有望な作用機序を特定、薬は既存のものを再利用することで開発時間やリスクを抑制する戦略。現在は四品の第二相試験を実施中。この中から幾つ第三相入りするか、ステージアップやドロップの補充を上手く進めて第二相四品というスケール感を維持できるか、が今後の注目点になる。類似の戦略を取るメディシノバはステージアップ実績だけでなくパイプラインの補充の面でも期待外れだった。

ubenimexは日本化薬が成人性急性非リンパ性白血病薬ベスタチンとして販売しているロイコトリエンA4加水分解酵素阻害剤。この酵素により産生されるロイコトリエンB4が肺動脈高血圧症に関与するというスタンフォード大の基礎研究に基づき、15年にこれらの疾患向けに欧米の開発販売権を取得したもの。

リンク: アイガー社のプレスリリース

PharmaMar、lurbinectedinの第三相卵巣癌試験がフェール
(2018年1月18日発表)

スペインのPharmaMar社は、PM1183(lurbinectedin)の第三相白金薬抵抗性卵巣癌試験、CORAILがフェールしたと発表した。主評価項目であるPFS(無進行生存期間)がtopotecan群やPLD(ドキソルビシンのリポソーム製剤)群を有意に上回らず、同程度だった。一方、安全性は対照群より良好だった。

同社は海洋生物の分泌物などを元に抗癌剤を創製・開発しており、アルキル化剤のYondelis(trabectedin、和名ヨンデリス)を卵巣癌用薬として商業化した実績がある。PM1183も天然の海洋物質を雛形にして合成したアルキル化剤。日本は中外製薬が16年にライセンスした。

PharmaMarは小細胞性肺癌や内膜腫でも第三相試験を実施しており、元々、この二用途のほうが期待が大きいようだ。

リンク: PharmaMarのプレスリリース(pdfファイル)


【承認】


シャイアー、アディノベイトがEUでも承認
(2018年1月15日発表)

英国のシャイアーは、Adunovi(rurioctocog alfa pegol、米国名Adynovate、和名アディノベイト)がEUで承認されたと発表した。遺伝子組換え型血液凝固第8因子で、PEG化により半減期を既存製剤の1.4~1.5倍に長期化、投与頻度を週3-4回から2回に削減した。12歳以上のA型血友病患者の出血の治療または予防に用いる。シャイアーが16年に買収したバクスアルタ社の製品。

リンク: シャイアーのプレスリリース

ジオトリフ、適応となるEGFR変異型が増加
(2018年1月16日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムは、FDAがGilotrif(afatinib、和名ジオトリフ)の適応拡大を承認したと発表した。不可逆的EGFR/her2阻害剤で、13年にEGFRのエクソン19欠損またはL858R置換を持つ非小細胞性肺癌の一次治療薬として承認。16年には白金薬治療歴を持つ扁平上皮非小細胞性肺癌にEGFR変異の有無を問わず用いる適応拡大が承認されている。

今回の適応は、EGFRにL861Q、G719X、またはS768I変異を持つ転移性非小細胞性肺癌の一次治療。肺癌のEGFR変異は13年に承認された二つのタイプが多く、今回の三種は一割程度を占めるだけである模様だが、予後が比較的悪いとのことだ。

Gilotrifは様々な第三相試験が実施されたが、今回の承認はこれらの治験のサブグループ分析に基づくもの。

リンク: ベーリンガー社のプレスリリース






今週は以上です。

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2018年1月14日

2018年1月14日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • Ionis、FDAがhATTR用薬の承認申請を受理 
  • アムジェン、欧州でも抗スクレロスチン抗体を承認申請 
  • FDA諮問委員会は経口テストステロンに厳しい評価 
  • FDA、アストラゼネカのPARP阻害剤を乳癌に適応拡大 
  • ロシュ、OcrevusがEUでも承認 
  • アストラゼネカ、協和発酵由来の喘息治療薬がEUでも承認 


【承認申請】


Ionis、hATTR用薬の承認申請をFDAが受理
(2018年1月8日発表)

Ionis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、FDAがIONIS-TTRRx(inotersen)の新薬承認申請を受理し、優先審査指定したと発表した。審査期限は7月6日。欧州でも昨年11月に承認申請済み。

hATTR(先天性トランスサイレチン調停アミロイドーシス)の治療薬で、トランスサイレチンの発現をアンチセンスすることによって、末梢神経や心臓などに蓄積して線維化が進行するのを抑制する。172例を組入れて15ヶ月間投与した試験では、病状評価スコアやQOLスコアの悪化が偽薬群より有意に小さかった。深刻な有害事象は血栓性血小板減少症や腎障害。早期に発見し介入するプロトコルを導入後は減少した由。

グラクソ・スミスクラインがインライセンス・オプションを保有していたが、血栓性血小板減少症リスクが表面化したためか行使を見送った。Ionisは販売パートナーを探索している。

Alnylam(Nasdaq:ALNY)も昨年12月にALN-TTR02(patisiran)をhATTR用薬として承認申請している。各々の臨床成績を横目で見比べるとpatisiranのほうに軍配が上がりそうだ。

リンク: Ionisのプレスリリース

アムジェン、欧州でも抗スクレロスチン抗体を承認申請
(2018年1月18日発表)

アムジェンとUCBは、EUでEvenity(romosozumab)を骨粗鬆症治療薬として承認した。骨粗鬆症の閉経後女性と男性で骨折リスクの高い患者に用いる。Wntなどのパスウェイに関わるスクレロスチンを標的とする抗体医薬で、造骨を促進し破骨を抑制することによって骨密度を改善、骨粗鬆症性骨折のリスクを削減する。臨床試験のデザインを見る限りでは、1年コースを想定しているように感じられる。

第三相試験のうち、ARCH試験では1年間の心血管深刻有害事象発生率が2.5%とアレンドロン酸群の1.9%を上回った。そのせいか、16年7月に承認申請された米国では、審査完了に留まった。

UCBが買収した英国のセルテックが創製、アムジェンは前臨床段階でインライセンスした。日本はアムジェンとアステラスの合弁会社が16年12月に製造販売承認申請した。

リンク: 両社のプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会は経口テストステロンに厳しい評価
(2018年1月10日発表)

FDAのBRUDAC(骨再生産泌尿器用薬諮問委員会)は、Lipocine(Nasdaq:LPCN)が承認申請したテストステロン補充療法用経口剤、Tlando(testosterone undecanoate)を検討し、19人の委員中13人が便益がリスクを上回るとは言えない(承認反対)と判定した。前日には類薬であるClarus Therapeutics社のJatenzo(testosterone undecanoate)も19人中10人が反対している。諮問委員会は決定権を持たないのでFDAが承認する可能性はゼロではないが、かなり低そうだ。

Clarusは14年に、Lipocineは15年に夫々承認申請したが第一巡の承認審査は審査完了に終わった。前者は諮問委員会で討議されたが21人中17人が反対した。問題は大きく二点ある模様だ。第一はテストステロン補充療法がアンチエイジングの名目で乱用されている現実。両社は性腺機能低下などによるテストステロン欠乏症の治療薬として承認申請しているが、経口剤が発売されればオフレーベル使用に拍車がかかる懸念がある。

第二は経口剤の薬物動態上の問題。脂溶性を高めることで肝臓による代謝を回避しているが、食中服用だと食物中の脂肪量により血清テストステロンが変動する。どちらも一日二回服用だが、朝食と夕食だと脂肪摂取量はかなり異なるのが普通だろう。また、治療の目的はテストステロンを正常レンジに上げることだが、少なからぬ患者でレンジを超過してしまう。テストステロンはゲル製剤なども存在するので、不完全な薬を敢えて使う必然性はない。

この二点の背景は、テストステロン補充療法には心血管リスクが高まる懸念があることだ。二剤の試験では血圧や心拍数、ヘマトクリットの上昇やHDL-Cの低下が見られた。このため、心血管アウトカム試験の実施を求める諮問委員もいた。

Clarusは未上場で財務状況などは不明だが、Lipocineは厳しい状況にあるため、株価が暴落した。

リンク: Lipocineのプレスリリース


【承認】


FDA、アストラゼネカのPARP阻害剤を乳癌に適応拡大
(2018年1月12日発表)

FDAはアストラゼネカのLynparza(olaparib、和名リムパーザ)を転移性乳癌の再発治療に適応拡大した。生殖細胞系BRCA有害変異を持ち、her2が陰性で化学療法歴(ホルモン受容体陽性は内分泌療法歴も)を持つ患者が適応になる。BRCA変異型卵巣癌の再発治療や地固め療法に承認されているPARP阻害剤で、PARP阻害剤が乳癌に承認されたのは初。

BRCAは遺伝子修復に係る遺伝子で、機能低下変異を持つ患者は卵巣癌や乳癌のリスクが高い。乳癌のうちBRCA変異型は5~10%。

MSDが開発販売提携しており、今回、達成報奨金をアストラゼネカに払うことになる。Lynparzaのコンパニオン診断はMyriad Genetic社の血液検査システム、BRACAnalysis CDxで、この適応拡大も承認された。

日本でも昨年11月に第二部会を通過したので、早晩承認されるだろう。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アストラゼネカのプレスリリース

ロシュ、OcrevusがEUでも承認
(2018年1月12日発表)

ロシュはOcrevus(ocrelizumab)がEUで活性期再発型および早期段階の一次進行型の多発性硬化症の治療薬として承認されたと発表した。CD20と標的とするヒト化抗体で、再発型の臨床試験では再発リスクと障害進行がRebif(interfeon β-1a)より小さく、一次進行型試験では障害進行が偽薬より小さかった。3月に承認された米国のレーベルには、乳癌のリスクが存在するかもしれないと記されている。

リンク: ロシュのプレスリリース

アストラゼネカ、協和発酵由来の喘息治療薬がEUでも承認
(2018年1月10日発表)

アストラゼネカは、Fasenra(benralizumab、和名ファセンラ)がEUで承認されたと発表した。好酸球性喘息症で高量吸入ステロイドと長期作用性ベータ2作用剤を併用しても喘息発作を十分に管理できない患者に追加する。

協和発酵がPOTELLIGENT技術を用いて開発した、好酸球のIL-5受容体アルファチェーンを標的とするヒト化抗体。皮注用薬で最初の3回は4週毎、その後は8週毎に投与する。米国では昨年11月に承認されている。日本は昨年11月に第二部会を通過したので早晩承認されるだろう。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース






今週は以上です。

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2018年1月7日

2018年1月7日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • Progenics社、傍神経節腫用薬の承認申請が受理 
  • GW社、経口カンナビジオール液を承認申請 
  • Achaogen社、新規抗生物質を承認申請 
  • ChemoCentryx、ANCA関連血管炎治療薬をEUに承認申請 
  • ランマークを多発骨髄腫に用いることが米国でも承認 


【承認申請】


Progenics社、傍神経節腫用薬の承認申請が受理
(2017年12月29日発表)

米国NYの新興医薬品開発会社、Progenics Pharmaceuticals(Nasdaq:PGNX)は、FDAがAzedra(iobenguane I 131)の承認申請を受理し審査期限を18年4月30日に設定したと発表した。ノルエピネフィリン再取込トランスポータの基質にiodine-131を標識した放射線療法薬で、悪性/再発性の切除不能な、褐色細胞腫などの傍神経節腫に用いる。

後期第二相試験では、25%の患者が降圧剤を半減することができた。二次的評価項目であるRECISTベース疾病安定化率は92.2%、完全反応はなかったが部分反応率は23.4%だった。

リンク: Progenics社のプレスリリース

GW社、経口カンナビジオール液を承認申請
(2017年12月28日発表)

英国ロンドンのGW Pharmaceuticals(Nasdaq:GWPH)は、Epidiolex(cannabidiol)を欧米で承認申請し、米国の審査期限は18年6月27日に設定されたと発表した。大麻の成分の一つであるカンナビジオールの経口液で、幼小児期に発症する難病であるレノックス・ガストー症候群やドラベ症候群の治療に用いる。

レノックス・ガストー症候群の171人(平均15歳)を組入れた第三相試験では、20mg/kg/日を投与した群の失立発作頻度が44%減少し、偽薬群の22%減を有意に上回った。ドラベ症候群試験(120人、平均10歳)では痙攣発作頻度が各39%と13%減少し、これも統計的に有意。主な有害事象は下痢、傾眠、食欲低下、発熱、嘔吐など。

リンク: GW社のプレスリリース(米国申請、12/28付け)
リンク: 同(欧州申請、12/29付け)

Achaogen社、新規抗生物質を承認申請
(2018年1月2日発表)

米国サンフランシスコのAchaogen(Nasdaq:AKAO)は、FDAがACHN-490(plazomicin)の承認申請を受理したと発表した。多剤耐性菌にも活性を持つアミノグリコシド系抗生剤で、複雑性尿道感染症(腎盂腎炎を含む)やカルバペネム耐性腸内細菌などによる菌血症で、他に治療方法がない、あるいは限られる患者に用いる。

複雑性尿道感染症の第三相では奏効率がmeropenem比で非劣性だった。カルバペネム耐性腸内細菌による菌血症では、全死亡率が11.8%とcolistin群の40.0%を有意に下回った。前者の試験では腎臓有害事象が増加したが、後者はcolistin群のほうが多かった。

EUでも2018年に承認申請する予定。

リンク: Achaogenのプレスリリース(pdfファイル)

ChemoCentryx、ANCA関連血管炎治療薬をEUに承認申請
(2018年1月4日発表)

ChemoCentryx(Nasdaq:CCXI)は、CCX168(avacopan)をEUで承認申請し受理されたと発表した。C5a受容体を選択的に阻害する経口薬で、ANCA(抗好中球細胞質抗体)関連血管炎の治療に用いる。第二相のCLEAR試験などに基づいて条件付き承認を求めている。米国は16年に開始した第三相試験の結果を待って承認申請する考え。

ANCA関連血管炎は自己免疫疾患の一つで、欧米の患者数は9万人と推定されている。C5a受容体は補体カスケードに係る受容体の一つ。CLEAR試験では、rituximabまたはcyclophosphamideによる標準療法に加えてprednisone(開始用量60mg/日)、prednisone(半量)とCCX168(20mgを一日二回投与)の併用、またはCCX168だけを投与したところ、12週時点の奏効率が各70%、86.4%、81.0%となり、CCX168の二群ともprednisone群比非劣性だった。

CCX168はドイツのフレゼニウス(Xetra:FRE)とスイスのVifor Pharmaの合弁会社が米国や中国以外の商業化権を保有している。

リンク: ChemoCentryx社のプレスリリース


【承認】


ランマークを多発骨髄腫に用いることが米国でも承認
(2018年1月5日発表)

アムジェンは、FDAが抗RANKL完全ヒト化抗体のXgeva(denosumab、日本は第一三共のランマーク)を多発骨髄腫の骨合併症予防に用いる適応拡大を承認したと発表した。

第三相の482試験に基づくもので、骨関連事象(骨折や骨の放射線治療あるいは手術など)がゾレドロン酸群と非劣性だった。副次的評価項目として優越性解析も行われたが有意差はなかった。

一番良かったのは死亡者が増えなかったこと。ハザードレシオ0.90、95%信頼区間は0.70~1.16だった。過去に行われた試験で浮上した疑惑が払拭されたことになる。

リンク: アムジェンのプレスリリース





今週は以上です。

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