2014年12月14日

海外医薬ニュース2014年12月14日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ASH:ノバルティス、CAR-Tのフォローアップデータ発表
  • ASH:アドセトリスの地固め療法が成功
  • 大塚・ルンドベック、OPC-34712のデータ発表
  • SABCS:アフィニトールの一次治療試験はフェール
  • SABCS:afatinibの乳癌試験がフェール
  • ガーダシル9が米国で承認
  • リリーの抗癌剤が適応拡大
  • アストラゼネカ、オピオイド誘導性便秘薬がEUで承認


【新薬開発】


ASH:ノバルティス、CAR-Tのフォローアップデータ発表

(2014年12月6日発表)

ノバルティスはASH(米国血液学会)でCTL019の小児急性リンパ芽球性白血病試験の追加データを発表した。再発性難治性の39例中36例、92%が完全寛解し、1年生存率は75%だった。

CTL019はペンシルバニア大学の研究者が開発したCAR-T(キメラ抗原受容体-Tセル)療法で、Bセル腫瘍の治療法として注目されている。Bセル特異的な抗原であるCD19とTセル受容体の細胞内シグナル伝達ドメインであるCD137及びCD3ゼータをリンカーで結んだ蛋白の遺伝子を、レンチウイルスを用いて患者から採取したTセルに導入、培養・活性化した上で患者に戻すと、Tセルが体内で増殖しBセルを攻撃する。ノバルティスはペン大とCAR-Tの研究開発商業化で提携しており、CTL019の権利を保有している。

副作用は、応答したすべての患者でサイトカイン放出症候群が発生、1/3は治療が必要だった。IL-6受容体拮抗剤(中外のアクテムラのことではないか)が有効である模様だ。

自家細胞療法ではデンドレオンのProvenge(sipuleucel-T)が2010年に米国で前立腺癌用薬として承認されたが、高価であることや、抗原提示細胞をex vivoで抗原に感作した後の培養が上手く行かないケースがあることなどから期待されたほど売れず、経営が破綻した。CTL019は培養しやすいのかどうか、何時頃商業化できるのか、気になるところだ。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

ASH:アドセトリスの地固め療法が成功

(2014年12月8日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)と武田薬品は、Adcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)のホジキンリンパ腫地固め療法試験が成功したと発表した。PFS(無進行生存期間)リスクを43%削減する良い内容で、標準療法になるのではないか。

Adcetrisは2011年に米国でホジキンリンパ腫の三次治療及び未分化大細胞性リンパ腫の二次治療向けに承認された抗体薬物複合体で、CD30に結合してリンパ球の内部に入り、タンパク質分解酵素によりリンカーが零落してMMAEが毒性を発揮する。今回の試験は自家造血幹細胞移植を受けたが再発リスクの高い患者を対象に、最長1年間投与した。結果は、試験薬群のメジアンPFSが43ヶ月、偽薬群は24ヶ月、ハザードレシオ0.57でp=0.001。2年無進行生存率は63%対51%でこちらもp=0.001だった。

偽薬群の患者は進行後にAdcetrisを用いることが可能であったせいか、全生存の中間解析は両群大差なかったようだ。最終解析は2016年の予定。主な有害事象は末梢神経症や好中球減少症など。尚、米国のレーベルでは致死的なPML(進行性多病巣性白質脳症)が枠付警告されている。1回100万円以上の薬なので費用も掛かる。

リンク:武田薬品のプレスリリース(pdfファイル、和文)

大塚・ルンドベック、OPC-34712のデータ発表

(2014年12月10日、11日発表)

大塚製薬と開発販売パートナーであるルンドベックは、OPC-34712(brexpiprazole)の第三相試験結果を学会発表した。鬱病アジャンクト治療試験(抗鬱剤に十分に反応しない患者に追加投与)は2mgを投与した試験が成功、1mgと3mgをテストした試験は後者が成功。統合失調症治療試験は0.25/2/4mgをテストした試験は2mgと4mgが成功、1/2/4mgの試験は4mgだけ成功。

承認を取得するためには二本の独立した試験で偽薬比有意な治療効果を確認する必要があるが、この二つの疾患は病状評価スコアの感受性があまりよくなく、治験がしばしばフェールする。今回の試験では二本成功したのは統合失調症の4mgだけであり、用量反応相関域も明確ではないが、成功しただけで立派だ。今年7月に米国で承認申請された。

OPC-34712は大塚/BMSのベストセラー非定型向精神薬Abilify(aripiprazole、和名エイビリファイ)の類縁体で、D2受容体に対する活性が低く、5-HT1A/2A受容体結合力が高い由。臨床的なプロファイルがどう異なるのかは不明だが、承認後に実際に使ってみて確かめることになるだろう。向精神薬は用量に関しても承認内容通りに使われるわけではなく、承認さえ取ってもらえればあとは自分たちで至適用量を調べる、というのが専門医の考え方だ。

リンク:両社のプレスリリース(鬱病試験、10日、pdfファイル、和文)

リンク:両社のプレスリリース(統合失調症試験、11日、pdfファイル、和文)

SABCS:アフィニトールの一次治療試験はフェール

(2014年12月12日発表)

ノバルティスはサン・アントニオ乳癌会議でAfinitor(everolimus)の第三相her2陽性末期乳癌一次治療試験の結果を発表した。第二相二次治療試験では良さそうな結果が出たのが、併用薬が異なるせいか、フェールした。

Afinitorは09年に腎細胞腫、12年には乳癌に承認されたが、乳癌の適応・用法はエストロゲン受容体陽性でher2陰性の再発癌にアロマターゼ阻害剤Aromasin(exemestane)と併用する。今回の試験は対象が異なるため、併用薬はpaclitaxelとHerceptin(trastuzumab、和名ハーセプチン)だった。

結果は、メジアンPFSが15.0ヶ月と偽薬を併用した群の14.5ヶ月と大差なく、ハザードレシオは0.89に留まった。事前に設定されたホルモン受容体陰性のサブグループ分析は各20.3ヶ月と13.1ヶ月となり、数値上は良さそうだが有意差は出なかった。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

SABCS:afatinibの乳癌試験がフェール

(2014年12月12日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムはSABCSで、Gilotrif/Giotrif(afatinib)の乳癌適応拡大試験がフェールしたことを発表した。昨年4月に独立データ監視委員会が中止を勧告した。

GilotrifはEGFRとher2を不可逆的に阻害する小分子薬で、EGFR活性化変異型腺腫非小細胞性肺癌の一次治療薬として欧米で承認されている。今回の試験はher2阻害力に期待したもので、Herceptinレジメンを既に受けたher2陽性患者を組入れて、vinorelbineと併用する効果をHerceptin併用と比較した。中間解析で全生存期間が短く、忍容性も悪かったため中止となった。

ベーリンガーは乳癌におけるvinorelbine併用レジメンの開発を断念した。マルチキナーゼ阻害剤はデュアルアクション、トリプルアクションが期待されるが、副作用も多彩になるので良し悪しである。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

【承認】


ガーダシル9が米国で承認

(2014年12月10日発表)

FDAは、9種類のHPV(ヒト・パピローマ・ウイルス)型をカバーしたMSDのワクチン、Gardasil 9を承認したと発表した。06年に承認されたGardasilは4種類のHPV型(6、11、16、18)の抗原を含有しているが、新たに子宮頸癌の2割を占める5型(31、33、45、52、58)の抗原も入れることによって、子宮頸癌原因型の87%をカバーできるようになった。

接種対象となるのは9~26歳の女性と9~15歳の男性(性的感染するので根絶には男も接種した方が良い)。効能は、7種類のHPVによる子宮頸、外陰上皮、膣上皮、肛門の癌と6型、11型による

尖圭コンジローマ(性器いぼ)の予防。既にGardasilを接種した人はGardasil 9を接種すべきなのか?おそらく、ACIP(米国のワクチン勧奨委員会)が議論することになるだろう。

HPVワクチンは既にHPV感染している人に対する効果が明確ではないが、事前検査するわけではないので無駄打ちになっても表面化しない。ワクチンは治療薬より安価で忍容性も高く、個々人だけでなく社会全体を守るという意義もあるため、細かいことは気にしない傾向がある。接種後に稀に神経障害や失神が発生することはGardasilやCervarixが日本より先に発売された国でも騒ぎになったが、日本発売時には軽視された。

リンク:FDAのリリース

リリーの抗癌剤が適応拡大

(2014年12月12日発表)

FDAは、イーライリリーのCyramza(ramucirumab)を非小細胞性肺癌の二次治療に用いる適応拡大を承認したと発表した。docetaxelと併用する。第三相試験では全生存期間がメジアン10.5ヶ月とdocetaxelと偽薬を併用した群の9.1ヶ月を1ヶ月強上回り、ハザードレシオは0.857、p=0.0235だった。グレード3以上の有害事象は好中球減少症(発熱性を含む)、疲労、白血球減少症、高血圧など。扁平上皮腫では肺出血が若干増加した。

CyramzaはVEGFR-2を標的とする完全ヒト化抗体で、抗VEGF抗体のAvastin(bevacizumab、和名アバスチン)に似ている。今回の試験の延命効果は決して大きくないが、扁平上皮腫はAvastinの効果が確認されておらず恐らく肺出血リスクが高いだろうから、このタイプに関しては意義がありそうだ。

Cyramzaは末期胃癌用薬として今年、欧米で承認された。

リンク:FDAのプレスリリース

アストラゼネカ、オピオイド誘導性便秘薬がEUで承認

(2014年12月9日発表)

アストラゼネカは、Moventig(naloxegol oxalate)がEUでオピオイド誘導性便秘の治療薬として承認されたと発表した。緩下剤に反応しない成人患者に、一日一回経口投与する。ネクター社(Nasdaq:NKTR)が開発したPEG化naloxoneで脳血管関門通過性が低いため末梢選択的にMuオピオイド受容体を阻害、オピオイド常用者の8割で発生する便秘副作用を中和する。米国でもMovantik名で9月に承認された。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

今週は以上です。

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