2015年2月22日

海外医薬ニュース2015年2月22日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • 武田、motesanibの第三相がフェール
  • 米国でアドセトリスの適応拡大申請
  • ファイザー、シロリムスを米国でLAMに適応拡大申請
  • ベンダムスチン新製剤が米国で承認申請
  • filbanserin、三度目の承認申請
  • レブラミド、欧米で一次治療承認
  • EUが幹細胞療法を初承認


【新薬開発】


武田、motesanibの第三相がフェール

(2015年2月17日発表)

武田薬品は、アムジェンからライセンスしたVEGF受容体阻害剤、motesanibの第三相非扁平上皮非小細胞性肺癌試験がフェールしたことを発表した。

VEGFを阻害する薬ではロシュのAvastin(bevacizumab)の第三相が成功して以降、多くの会社がチロシンキナーゼを阻害する小分子薬で第三相を行ったが、悉く失敗した。小分子薬は他の腫瘍関連遺伝子も様々なパターンで阻害するので一括りには扱えないが、それにしても、なぜ失敗経験が共有されないのか残念に思う。被験者や開発予算、研究者というリソースを徒にすべきではないだろう。

この試験は、paclitaxelとcarboplatinを併用する標準療法の一つと更にmotesanibを併用する三剤併用のPFS(無進行生存期間)を比較した。グローバルで実施された同様な第三相試験であるMONET1はフェールしたが、アジア人のサブグループ分析で良さそうな結果が出たため、武田が共同開発提携を単独開発販売契約に切り替えて日本、香港、韓国、台湾の施設で実施したのが今回のMONET-A試験だ。

MONET1のアジア人サブグループ分析は事前に計画されていた由であり、データマイニングで見つけた訳ではない。解析対象も227例なので少なくはない。全生存解析のp値は0.02なので有意性は高くないし、そもそも主評価項目がフェールしたのだから副次的分析の信頼性は統計学的には低いのだが、抗癌剤のサブグループ分析は当てにならないことを改めて痛感させられる。

リンク:武田のプレスリリース(和文)

リンク:MONET1試験のアジア人サブグループ分析論文(Annals of Oncology、オープンアクセス)

【承認申請】


米国でアドセトリスの適応拡大申請

(2015年2月18日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)は、米国でAdcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)の適応拡大申請を行ったと発表した。ホジキン型リンパ腫患者にASCT(自家幹細胞移植)を施行した後に、再発リスクが高い場合はAdcetrisを用いて地固め療法を行うというもの。

薬効のエビデンスとなるAETHERA試験では、3週間に一度の頻度で1年間投与したところ、PFSが43ヶ月と偽薬を投与した群の24ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.57、p値は0.001だった。主な有害事象は末梢知覚神経症や好中球減少症など。

Adcetrisは抗CD30抗体に細胞毒を結合した抗体薬品結合体(ADC)。CD30に結合しインターナライズすると内部の蛋白質分解酵素によりリンカーが零落し、細胞毒が腫瘍細胞選択的に作用する。2011年に米国で再発性難治性ホジキン型リンパ腫と全身性異形成大細胞リンパ腫に承認された。ADC技術を持つシアトル・ジェネティクスが創製、北米以外の権利は武田薬品がライセンスし日本でも発売した。

リンク:シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

ファイザー、シロリムスを米国でLAMに適応拡大申請

(2015年2月20日発表)

ファイザーは、米国でRapamune(sirolimus)をリンパ脈管筋腫症(LAM)に適応拡大申請し受理されたと発表した。順調なら6月までに承認されることになる由。

LAMは再生産年齢期の女性が稀に発症する進行性疾患で、致死的なことも少なくない。肺の平滑筋様細胞が異常増殖、組織を破壊する。Rapamuneは欧米で臓器移植後の拒絶反応抑制薬として承認されているmTOR阻害剤で、LAMの病理にmTORが関与していることから用途拡大が進められ、昨年7月に日本でLAM治療薬として世界で初めて承認された(ノーベルファーマのラパリムス)。

リンク:ファイザーのプレスリリース

ベンダムスチン新製剤が米国で承認申請

(2015年2月17日発表)

イーグル・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:EGRX)は、EP-3102(bendamustine hydrochloride)を米国で承認申請したと発表した。旧藤沢薬品が買収したドイツの会社が開発し、北米ではテバ(NYSE:TEVA)が、日本ではシンバイオ製薬が開発しエーザイが販売するTreanda(和名トレアキシン)の新製剤。Treandaは慢性リンパ性白血病に用いる場合は30分以上、非ホジキン型リンパ腫の場合は60分以上掛けて点滴するが、EP-3102は10分で足りる由。

テバと特許紛争になっていたが和解。テバは米国の販売権を取得し、また、Treandaの希少疾患用薬排他権を放棄することで早期の承認・発売を可能にする。

Treandaはアルキル化剤で、承認されている二つの用途では標準治療薬の一つになっている。EP-3102の承認申請は生物学的同等性試験に基づく模様だが、抗癌剤は様々な副作用があるので、小規模な試験だけで足りるのか疑問を感じる。

リンク:イーグルのプレスリリース

filbanserin、三度目の承認申請

(2015年2月17日発表)

Sprout Pharmaceuticalsは、flibanserinを女性のHSDD(性的欲望低下障害)の治療薬として承認申請したと発表した。患者団体や医師を応援団として今度こそ承認を獲得できるかどうか、注目される。

この5-HT1A作動・5-HT2A拮抗剤はベーリンガー・インゲルハイムが数千人規模の第三相試験を実施して米国で承認申請したが、2010年に開催された諮問委員会が承認に反対、審査完了となり開発中止になった。薬効が穏やかで、便益と比べてリスクが大きいと判定された。Sproutは11年に権利を取得、13年に再申請したが再び審査完了。その後、FDAから要請のあった薬物相互作用試験や運転シミュレータ試験(傾眠リスクを評価)を行い、今回の再々申請に至った。

リンク:Sproutのプレスリリース

【承認】


レブラミド、欧米で一次治療承認

(2015年2月19日、20日発表)

セルジーン(Nasdaq:CELG)は、Revlimid(lenalidomide、和名レブラミド)が欧米で多発骨髄腫の一次治療薬として承認されたことを発表した。低量dexamethasoneを併用する。EUは幹細胞移植不適患者に限定したが、米国はしてない。

米国は正式に承認されていない用途・用法であってもコンペンディアなどの権威のある文献が便益を認めていれば保険還付の対象になりうる。Revlimidのような経口剤はややハードルが高いが、この二剤を併用するRdレジメンは既に標準療法の一つになっている。このため、EU承認の方が重要なマイルストーンになりそうだ。

承認の根拠となったMM-020試験では、Rd長期コースのメジアンPFSが25.5ヶ月と、MPT三剤併用レジメンの21.2ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.72だった。全生存期間は中間解析段階だが各58.9ヶ月と48.5ヶ月だった。G3以上の主な有害事象は好中球減少症、貧血、血小板減少症、肺炎など。

リンク:セルジーンのプレスリリース(米国承認、2/19付)

リンク:同(EU承認、2/20付)

EUが幹細胞療法を初承認

(2015年2月20日発表)

イタリアのChiesi Farmaceuticiは、EUがHoloclarを中重度角膜輪部幹細胞欠乏症(LSCD)の治療法として条件付き承認したと発表した。幹細胞療法がEUで承認されたのは初。

LSCDは火傷や化学物質による外傷で角膜と結膜の境界にある輪部の幹細胞が減り、角膜の新陳代謝ができなくなり代わりに結膜に覆われるようになる。Holoclarは患者の輪部を1-2平方ミリ採取して培養し、上皮として移植する。Chiesiとモデナ・レッジョ・エミリア大学の産学連携の成果とのことだ。

リンク:Chiesiのプレスリリース(アドレスに禁則文字が含まれるためニュース一覧ページを記載)

今週は以上です。

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