(リンク先は殆どが英文です。改行で切れてしまう場合があります)
【ニュース・ヘッドライン】
- GSKが二種類の黒色腫用薬を承認申請へ
- 顎の脂肪を分解する薬の第三相試験が成功
- FDAがVotrientの適応拡大を承認
- FDAがヴィーヴァスのED治療薬を承認
- 武田のDPP-4阻害剤は又も承認見送りに
- デノスマブを前立腺癌の骨転移予防に使うのは時期尚早
- アストラゼネカがArdeaと買収で合意
【新薬開発】
GSKが二種類の黒色腫用薬を承認申請へ
グラクソ・スミスクラインは4月25日の決算発表資料の中で、二種類の転移性黒色腫用薬を承認申請する考えであることを明らかにした。
一つはbraf阻害剤GSK2118436(dabrafenib)。BREAK-3試験の結果を検討し、承認申請できると判断した。承認されれば2011年8月に米国で承認されたロシュのZelboraf(vemurafenib)に次ぐbraf阻害剤の第二号となる。
もう一つはMEK阻害剤GSK1120212(trametinib)で、この試験も承認申請できる結果になったようだ。
注目されるのは、この二剤の作用が補完的で、共に経口剤であることからコンビ薬を開発する可能性もあることだ。
Zelborafは高い抗腫瘍作用を持つが癌が遺伝子変異を経て抵抗性を獲得してしまうことがある。MAP/ERKパスウェイだけでなくRAS/RAF/MEK/ERKパスウェイも同時にブロックすれば、作用の持続性を高めることができるかもしれない。
このような期待から、GSKはこの二剤の併用第三相試験を開始する予定。
リンク: 2012年第1四半期決算発表資料(pdfファイル)
顎の脂肪を分解する薬の第三相試験が成功
ロサンジェルスのバイオ企業Kythera Biopharmaceuticalsとバイエルが共同開発している頤(おとがい)下脂肪治療薬、ATX-101の欧州第三相試験が二本とも成功した。詳細は学会発表される予定。
ATX-101は体内に存在する食物脂肪分解物質であるデオキシコロール酸ナトリウムを化学合成したもの。臨床試験では頤の脂肪領域に月一回、最大四回に亘って注射したところ、脂肪スケールや患者満足度スケールが偽薬比有意に改善した。
主な有害事象は疼痛、腫脹、しびれ、挫傷、硬化など、注射部位の軽中度、一時的なものが多かった。実用化されれば頤下脂肪で初の美容治療薬となる。
リンク:両社のプレスリリース
【承認申請・承認】
FDAがVotrientの適応拡大を承認
FDAはGSKのVEGF受容体阻害剤、Votrient(pazopanib)の適応拡大を承認した。2009年の切除不能腎細胞腫に続いて、末期軟組織肉腫の化学療法後アジュバント療法に用いることも可能になった。消化管間質腫瘍と脂肪肉腫は適応外。
臨床試験では無増悪生存期間がメジアン4.6ヶ月と偽薬群の1.6ヶ月を有意に上回った。従来同様に致死例を含む肝毒性が枠付警告されている。
リンク:
FDAがヴィーヴァスのED治療薬を承認
FDAはヴィーヴァス(NASDAQ: VVUS)が田辺三菱製薬から導入して開発したED治療薬、Stendra(avanafil)錠を承認した。
ファイザーのViagra(sildenafil)、バイエルのLevitra(vardenafil)、イーライリリーのCialis(tadalafil)に次ぐ第4のPED-5阻害剤だ。30分前に服用すれば間に合うので、Viagraと同程度に作用のオンセットが早い。
ヴィーヴァスは導出を検討している模様。Viagraに14年遅れで発売される割には長所が明確ではなく、差別化が難しそうだ。Viagraは7年後、他の薬はその前にGE化しそうなので、Stendraに残された時間は限られている。
リンク:
武田のDPP-4阻害剤は又も承認見送りに
FDAは、武田薬品のDPP-4阻害剤alogliptin(和名ネシーナ)とpioglitazone配合剤の承認を又も見送った。
ネシーナは2010年に日本で承認され、翌年にはpioglitazone配合剤もリオベルとして承認されたが、他の国では未承認である。米国は2007年に承認申請されたが、rosiglitazoneの心筋梗塞リスク騒動の余波を浴びて遅延した。
alogliptin自体に心臓疾患リスクがあるようには見えない。2010年のADA米国糖尿病学会で臨床試験の心血管メタアナリシスが発表されたが、数値上は偽薬群よりリスクが小さかった。但し、該当症例数が少ないために信頼区間は広い。
武田は2011年7月にEXAMINE心血管アウトカム試験の中間解析結果等をFDAに提出した。当時のプレスリリースによるとFDAの安全性要件を満たす内容であったはずだった。
筆者が三年前に行ったシミュレーションでも、もしリスクがADAで発表されたデータ通りならば、EXAMINE試験中間解析とSU剤対照長期投与試験のデータで症例数が充足され、心血管疾患リスクが偽薬比非劣性であることを証明できるはずだった。
日本だけで承認される薬が再び増加し始めた今日では、海外の承認審査機関の評価を精査することが必要だが、残念なことに、情報は限られている。
リンク:
2010年ADAの抄録(William Whiteら、抄録番号391-PP)
デノスマブを前立腺癌の骨転移予防に使うのは時期尚早
アムジェンは抗RANKL完全ヒト抗体denosumabを骨粗鬆症治療薬Prolia及び癌の骨転移治療薬あるいはホルモン療法誘導性骨粗鬆症治療薬Xgevaとして販売している。米国で骨転移予防の適応拡大申請を行ったが、承認されなかった。
諮問委員会で13人の委員中12人が反対したことを考えれば不思議は無い。去勢療法抵抗性前立腺癌でPSA値が高い患者を組み入れた臨床試験では、主評価項目である骨転移リスク削減効果は確認されたものの、延命効果や無増悪生存期間を延ばす効果は確認されなかった。
懸念されるのは、顎骨壊死が15人に一人という高い頻度で発生したことだ。同剤やビスフォスフォン酸のように骨の新陳代謝を抑制する薬は、抜歯の後のヒーリングも妨げてしまう。
腫瘍学用途では120mgを4週間に一回皮注と高量を投与するので、60mgを半年に一回の骨粗鬆症治療用途よりリスクが高まる。
既に骨転移した患者に対して使う場合は便益が大きいが、未転移は治療をしないリスクが比較的小さい分、便益も小さくなる。このため、諮問委員会は顎骨壊死のリスクを正当化できないと判定した。
Xgevaは日本では第一三共がランマーク名で2012年4月に発売した。
リンク:アムジェンのプレスリリース
【製薬会社の動き】
アストラゼネカがArdeaと買収で合意
アストラゼネカはArdea Biosciences(Nasdaq: RDEA)と買収で合意した。株主には一株当り32ドル、総額12.6億ドルを現金で支払う。狙いは、第三相段階の尿酸治療薬、RDEA594(lesinurad)だろう。
痛風の原因である高尿酸血症は尿酸の生産過剰や分解・排泄不足によって引き起こされる。典型的な尿酸降下薬であるキサンチンオキシダーゼ(XO)阻害剤は尿酸合成を阻害するメカニズムなので、前者に適しているはずだが、後者にも用いられている。
後者に適した薬が無いからだ。RDEA594はURAT1という、腎臓のトランスポータを阻害することによって尿酸の排泄を促す新しいメカニズムを持っているので、分解・排泄不足型に適している可能性があり、また、併用もできそうだ。
2011年に開始された第三相試験では200mg又は400mgを一日一回、経口投与で、XO阻害剤を服用している患者に追加したり、不耐患者に単剤投与する用法を試験している。2013年から結果が出始める見込み。
アストラゼネカには馴染みの無い分野だろうが、CEOが退任しなければならないほど新薬開発に苦戦しているので、選り好みはできないのだろう。
リンク:両社ののプレスリリース
今週は以上です。