2016年2月7日

2016年2月7日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • EMA、ROCKET-AF試験の結論に変更なし
  • アムジェン、Blincytoの延命効果を確認
  • ツルバダをHIV感染予防用途でEUに承認申請
  • FDA諮問委員会、抗鬱剤の認知機能改善効果を支持
  • Kalydeco、今度は適応拡大が認められず

【今週の話題】


EMA、ROCKET-AF試験の結論に変更なし
(2016年2月5日発表)

EMA(欧州薬品庁)はROCKET-AF試験のデータを再検討し、Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)の安全性や便益危険バランスの評価に変更なしと結論した。

この試験はバイエル/ジョンソン・エンド・ジョンソンのXa阻害剤、Xareltoの心原性脳卒中予防効果をワーファリンと比較した大規模アウトカム試験。予防効果も出血リスクも非劣性であることが確認され、欧米では2011年に、日本でも2012年に、この用途に用いることが承認された。

EMAが再評価に踏み切ったのは、ワーファリン群の一部で用いられたINR検査機器に欠陥が見つかり、リコールされたことがきっかけ。ワーファリンは定期的にINR検査を行って用量を加減しなければならないが、検査間違いが原因で過剰投与になり出血事故が増加してしまった可能性がないか、吟味する必要が生じた。

結果は、EMAによると、試験結果に与えた影響はごく限定的だった。また、Xareltoの相対的安全性やワーファリン群の出血発生率は他の大規模試験でも同様であった。

今回の判定を喜んでいるのは患者や医師だけではないだろう。Xa阻害剤はバイエル/ジョンソン・エンド・ジョンソン陣営とBMS/ファイザー陣営が世界中で戦っているので、そよとの風でも無視できない。この試験を主導した研究員がFDA長官候補になったため、政治的色彩も帯びており、第三者であるEMAの評価は重要だ。

リンク: EMAのプレスリリース

【新薬開発】


アムジェン、Blincytoの延命効果を確認
(2016年2月4日発表)

アムジェンはBlincyto(blinatumomab)の第三相延命効果確認試験が中間解析で成功したと発表した。14年に米国で加速承認、15年にはEUでも条件付き承認されたが、本承認に切り替わることになるだろう。データ自体は未発表。

BlincytoはB細胞のCD19に結合する可変領域と細胞傷害性T細胞のCD3に結合する可変領域を持つBiTE抗体。フィラデルフィア染色体陰性の再発性難治性前駆B急性リンパ性白血病の第二相試験で完全寛解率32%を記録し、承認された。加速承認/条件付き承認された薬は市販後に改めて臨床的に重要な効果(抗癌剤なら延命効果)を持っていることを立証しなければならない。それが今回の試験だ。標準的支持療法だけを施行した群より延命した模様。

ミューニッヒ大学発のバイオベンチャーで12年にアムジェンに11.6億ドルで買収されたMicrometのパイプライン。日本ではアムジェンとアステラス製薬が共同開発。

リンク: アムジェンのプレスリリース

【承認申請】


ツルバダをHIV感染予防用途でEUに承認申請
(2016年2月1日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)はTruvada(tenofovir DFとemtricitabineの合剤、和名ツルバダ)をHIV/AIDSの暴露前予防に用いる適応拡大申請をEMAに行ない受理されたと発表した。HIV/AIDS治療薬として承認されている二種類の逆転写阻害剤の合剤を、感染者のセックスパートナーなどの感染予防に用いるもの。米国では12年に承認、医療保険の対象にもなっている。

リンク: ギリアドのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、抗鬱剤の認知機能改善効果を支持
(2016年2月4日発表)

FDAは精神学薬諮問委員会を招集し、鬱病の認知機能障害を改善するという効能及びその評価方法の妥当性とルンドベック/武田薬品の効能追加申請について意見を聞いた。諮問委員の多くが肯定的で、効能追加については8対2で賛成の委員が反対を上回った。承認されれば史上初。

鬱病患者の認知機能障害は珍しいことではないらしい。両社のプレスリリースによると、鬱病患者を3年間追跡した前向き研究で、思考・集中力の低下や優柔不断のような認知症状が、急性鬱症状期には94%の患者で、寛解期でも44%の患者で、報告された。

効能追加申請されたBrintellix(vortioxetine)は13年に欧米で鬱病治療薬として承認。認知機能改善効果については二本の偽薬対照試験のエビデンスを持っているようだ。

リンク: 両社のプレスリリース

Kalydeco、今度は適応拡大が認められず
(2016年2月5日発表)

ヴァーテックス・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:VRTX)は嚢胞性線維症用薬Kalydeco(ivacaftor)の適応拡大をFDAに申請していたが、審査完了通知を受領したと発表した。

このCFTRポテンシエイターは、CFTR遺伝子の様々な変異のうち10種類について適応を取得している。今回は更に23種類について2歳以上の患者に承認を求めたが、臨床試験のエビデンスは8種類に関する19症例のみで、残りは前臨床データだけである模様。承認を待つ患者のために早道を探したが、無理があったのだろう。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース



今週は以上です。

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