2017年2月12日

2017年2月12日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イグザレルトの冠動脈疾患予防試験が成功 
  • アコーダ、吸入レボドパの第三相が成功 
  • インターセプト、組入れ遅延の対応策を公表 
  • アムジェン、パーサビブが米国でも承認 
  • EMA、ウプトラビの安全性検討を開始 



【新薬開発】


イグザレルトの冠動脈疾患予防試験が成功
(2017年2月8日発表)

バイエルとジョンソン・エンド・ジョンソンは、Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)の冠動脈疾患予防試験、COMPASSが成功したと発表した。独立データ監視委員会が中間解析で主目的達成を認定した。詳細は今後、発表される予定。

Xareltoは両社が共同開発した経口Xa阻害剤。08年に欧州などで静脈血栓塞栓予防向けに承認された後、心房細動患者の脳卒中予防などに適応を拡大してきた。冠動脈疾患では急性冠症候群を発症してから数日経った亜急性期の患者を組入れたATLAS ACS2-TIMI 51再発予防試験が成功。FDAは承認しなかったが、EUは心臓バイオマーカー上昇例に用いることを認めた。

COMPASSは冠動脈疾患又は末梢動脈疾患で、DAT(dual antiplatelet therapy:アスピリンとADP受容体拮抗剤を併用する)が適応にならない患者27402人を、アスピリン群(100mg一日一回)、Xarelto群(5mgを一日二回)、併用群(Xareltoは半量)の三群に無作為化割付して、主要有害心臓イベント(心血管死、非致死的心筋梗塞または非致死的脳卒中)のリスクを比較した大規模アウトカム試験。

虚血性冠動脈・脳血管疾患の予防はアスピリンとPlavix(clopidogrel)のようなADP受容体拮抗剤が主役になる。何れも出血リスクを伴うので、患者毎に治療の便益とリスクを検討して、単剤か併用かを決める。リスクが特に高い患者、あるいは心房細動で脳卒中も予防する必要がある場合は、ワーファリンと三剤同時使用もオプションになるが、これまでに行われたアウトカム試験の結果は芳しくなく、二剤併用に留めたほうがよさそうだ。

ワーファリンと同じ抗血栓薬であるXa阻害剤を追加した試験も似たような結果になった。XareltoのATLAS試験は成功したものの、FDAや諮問委員会が指摘するように、効果が小さく、追跡不能例が比較的多く、2.5mg一日二回投与群は有意に優れていたが5mg一日二回群はフェールするなどデータの頑強性があまり高くない。

このような流れの中で、COMPASS試験は、三剤併用ではなく二剤併用あるいはXareltoのみをアスピリンと比較したことが最大の特徴だ。但し、もし二剤併用の便益がリスクを上回った場合に、本当はDATが適応になる患者だったのではないか、DATと比べても優れているのかという疑問が生まれるかもしれない。

また、ATLAS試験と同様に、Number Needed to Treatの多寡やNumber Neeeded to Harmとのバランス、治験の実施状況などによっては、いろいろな議論を呼ぶ可能性がある。

リンク: バイエルらのプレスリリース

アコーダ、吸入レボドパの第三相が成功
(2017年2月9日発表)

アコーダ・セラピュティクス(Nasdaq:ACOR)は、CVT-301の第三相パーキンソン病試験が成功したと発表した。レボドパの吸入用乾燥粉末で、14年の企業買収により入手したもの。第三相では進行パーキンソン病のオフタイム削減効果を検討したところ、主解析の対象である84mg群のUPDRS IIIスコアが12週間後に9.83低下と、偽薬群の5.91低下を有意に上回った。

主な有害事象は咳、下部気道感染症、悪心、痰変色。肺安全性は特に問題なかったとのこと。1年安全性試験の結果を見て6月までに米国で、年末までにEUでも、承認申請する予定。

リンク: アコーダのプレスリリース

インターセプト、組入れ遅延の対応策を公表
(2017年2月10日発表)

インターセプト・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ICPT)はOcaliva(obeticholic acid)を原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療薬として販売しているが、並行して、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の適応拡大試験も実施中。組入れが遅い模様だが、報道によると、中間解析の症例数を減らすことでFDA側の承諾を取ったようだ。

当初の計画では主評価項目は肝線維症の改善奏効率とNASH解消奏効率の二つあったが、どちらかが奏功した患者の比率に変更した。また、中間解析の対象症例数を1400人ではなく750人に減らすことを決定、それに伴い実施見込み時期が今年後半から年央に若干前倒しになった。

主評価項目を二つから一つに変えれば目標症例数を減らすことができるが、データの頑強性は低下する。製薬会社や研究者、承認審査機関は詳細なデータを見ることができるが部外者はヘッドラインしか見れないので細部に潜む悪魔を見逃すリスクが高まる。このため、治験のデザインを途中で変更するのは好ましいことではない。にもかかわらず同社の株価が上昇したところを見ると、組入れ遅延は以前から心配されていたのだろう。

【承認】


アムジェン、パーサビブが米国でも承認
(2017年2月7日発表)

アムジェンは、FDAがParsabiv(etelcalcetide、和名パーサビブ)を承認したと発表した。カルシウム感受受容体アゴニストで、慢性腎疾患透析期の患者の二次性副甲状腺機能亢進症の治療に用いる。同社のSensipar(cinacalcet、和名レグパラ)と異なり、透析終了後に透析回路経由で投与できることが特徴。EUは昨年11月、小野薬品が承認申請した日本は昨年12月に、承認。

リンク: アムジェンのプレスリリース

【医薬品の安全性】


EMA、ウプトラビの安全性検討を開始
(2017年2月10日発表)

EMAは肺動脈高血圧症用薬Uptravi(selexipag、和名ウプトラビ)の安全性検討を行うと発表した。入手可能なデータの予備的検討に基づき、現時点ではUptraviの使用を認めている。

発端は、フランスで5名が治療開始後に死亡したこと。規制当局であるANSMは、EMAに検討を要請するとともに、当面の施策として、新規に投与を開始しないこと、服用中の患者については有効性や耐容性を確認すること、禁忌や警告を遵守することを1月に勧告している。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ANSMのリリース(フランス語)





今週は以上です。

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