2021年10月29日

第1023回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • Novavax、抗原ワクチンをまず英国で承認申請 
  • FDA諮問委員会、5~11歳のコミナティ接種を支持したが... 
  • その他の領域: 
  • アッヴィ、持続皮下注型パーキンソン病薬の第3相が成功 
  • 歯周病菌を治療すればアルツハイマーの進行を抑制? 
  • MSD、日本発の抗HIV薬の第3相が成功 
  • イミフィンジの胆道癌試験が成功 
  • デュピクセントの二本目の好酸球性食道炎試験が成功 
  • Rafael、第3相にジャンプしたが失敗 
  • イラリスの肺癌試験は二本目もフェール 
  • リリー、アルツハイマーと糖尿病の新薬承認申請 
  • 抗NGF抗体の開発を断念 


【COVID-19関連】


Novavax、抗原ワクチンをまず英国で承認申請
(2021年10月27日発表)

米国メリーランド州のワクチン開発会社、Novavax(Nasdaq:NVAX)は、英国でNVX-CoV2373の条件付き承認申請を行った。日本では武田薬品がライセンスし1.5億回分の供給を予定しているCOVID-19ワクチンのグローバル承認申請が始まったことになる。

受容体融合前の構造のスパイク蛋白の遺伝子を導入したバキュロウイルスを昆虫細胞に感染させて製造するナノ粒子状抗原ワクチンで、通常の冷蔵庫で保存可能。原薬は富士フィルムの米国の子会社が生産する。5mcgとサボニン・ベースのMatrix-Mアジュバント50mcgからなり、21日置いて2回筋注する。

第3相は英国で15000人規模、米墨で3万人規模の試験を行い、前者はワクチン効率が89.7%、重症はゼロ、偽薬群の5人と比べて100%防いだ。野生株に関するワクチン効率は96%、アルファ株は86%だった。米墨試験はワクチン効率90.4%、中等症・重症はゼロ対14人で100%防いだ。

EUやWHOでも承認申請手続きを進めている。

リンク: 同社のプレスリリース



FDA諮問委員会、5~11歳のコミナティ接種を支持したが...
(2021年10月26日発表)

FDAはワクチン及び関連生物学的製剤諮問委員会を開催し、ファイザーがドイツのBioNTech(Nasdaq:BNTX)からライセンスして共同開発したCOVID-19ワクチン、Comirnaty(tozinameran、開発コードBNT162b2)を5~11歳の健常者が接種する危険と便益について意見を聞いた。18人の委員のうち17人が便益が上回ると回答し、一人は棄権した。複数の委員がリスク因子を持つ人に限定することを打診したが、FDAは受け入れず、上回る、下回る、どっち?と迫った。

第2/3相試験では16歳以上の用量の1/3である10mcgを3週置いて二回接種したところ、免疫原性が16~25歳を組入れた別の試験のデータと非劣性だった。記述的解析として予防効果を検討したところ、ワクチン群の症候性感染は解析対象1450人中2人、偽薬群は736人中16人で、ワクチン効率は90%だった。重症感染者は両群ともゼロ。副作用は過去の治験と概ね同様だった。若年層で懸念されている稀な有害事象である心筋炎・心膜炎は、接種実績が全部で3000人程度と少ないせいか、報告されていない。

諮問委員が躊躇した理由は、第一に、この年代の罹患リスクは上の年代と比べれば高くないこと。米国の対象人口2800万人に対して過去1年間のCOVID-19関連死亡は66人と、インフルエンザ並みの脅威にはなっているものの、高齢者ほどではない。また、小児の4割以上は既に抗体を保有しているという調査もあるようで、現実の医療におけるワクチン効率は上記より低くなる可能性もある。

一方、危険面では、心筋炎・心膜炎が特に男子では女子や30代以上と比べれば多く発生するようだ。但し、疫学研究なので精度が低い可能性があり、実際、データソースによって数値が異なるのでハッキリしたことは言えない。また、発見されても入院や治療が必要な症例は少ないと言われている。それでも、何人においても便益が危険を上回ると断言するには裏付けが不十分かもしれない。

勿論、FDAの承認は使ってもよいと言っているだけで、使うべきかどうか決めるのは医師である。ワクチンの場合は医師のアドバイスを受けずに決める人も多いので、CDC(米国疾病管理予防センター)がACIP(ワクチン接種諮問委員会)の意見に基づき行う推奨を参考に、最終的な判断は個々人が決めることになる。

これが一般論だが、米国では、EUAではなく正式承認された対象人口に関して、従業員に接種を求める医療施設や自治体、企業が相次いでいる。多くの場合、定期的に感染検査を行う代替的な選択肢も用意されていて、米国は無料で検査できるので、接種義務付けではないが、諮問委員は、承認≒接種圧力となってしまうシナリオを懸念している様子だ。

興味深いことに、英国がアストラゼネカのワクチンについて行ったのと同様に、FDAも便益と危険の定量化を試みている。ワクチン効率は症候性感染が70%、入院予防効果は80%、心筋炎・心膜炎の発生頻度は30mcgを投与した12~15歳の疫学データと同じ、と前提した上で、流行度合いは現状、8月末のピーク水準、6月のボトム水準の三つのシナリオと、ワクチン効率90%シナリオ、COVID-19死亡率が高まるシナリオについて、便益と危険を100万人当たりの減少と増加で示した。

どちらも入院の数値に着目すると、心筋炎・心膜炎は接種100万人当たり92人増加する。男子は156人、女子は28人と大きな偏りがあるが、この病気の罹患率は、元々、10代男子が一番高いとのことだ。

流行がピーク水準の場合、ワクチンはCOVID-19入院を接種100万人当たり250人減らすことができる(男女とも同数)。ボトムの場合、同21人減る(同)。ワクチン効率が90%の場合、入院減少数が2~3割増える。

この指標では、ピーク時でも便益と危険の倍率は2~3倍で、女子は10倍近いが男子は2倍以下と接近する。

このような試算は一定の前提のもとに、リンゴとミカンを比べるものなので、数値だけ見て判断するのは誤りだ。かといって、何も調べず、何の根拠もなく便益や危険を上回ると断定するのも誤りだ。結局、個々人の事情に即して判断するしかないのだろう。

尚、FDAはICU入室や死亡に関する推計も行なっているが、疫学データのサンプル数が少ないことや、上記試験で重症感染症や死亡を防ぐ効果は確認されていないので、本稿では割愛した。興味のある人は下記リンクの資料を参照されたい。

リンク: 両社のプレスリリース
リンク: FDA諮問委員会関連情報


【新薬開発】


アッヴィ、持続皮注型パーキンソン病薬の第3相が成功
(2021年10月28日発表)

アッヴィは、ABBV-951(foslevodopa、foscarbidopa)の第3相進行パーキンソン病実薬対照試験が成功したと発表した。承認申請の主要構成要素となる予定。

同社はlevodopaとcarbidopaを胃瘻チューブ経由で16時間持続腸注入するDuopa(米国外ではDuodopa)を販売しているが、ABBV-951は両活性成分のプロドラッグを24時間持続皮下注入することができる。当試験は進行パーキンソン病患者130人を米国などの施設で組入れて、第24週のオン時間(薬剤が効いて症状を抑制できている時間。煩わしくない程度のジスキネジアが発現した時間も含む)を経口levodopa・carbidopa配合剤と比較した、無作為化割付二重盲検ダブルダミー試験。

結果は、2.75時間増対0.97時間増となり有意に上回った。オフ時間(症状が発現または煩わしいジスキネジアが発現した時間)も2.75時間減対0.96時間減だった。深刻有害事象発現率は8%対6%と大差なかったが、有害事象による治験離脱率は21.6%対1.5%と大きな偏りが出た。理由は不明。

リンク: 同社のプレスリリース



歯周病菌を治療すればアルツハイマーの進行を抑制?
(2021年10月26日発表)

米国南サンフランシスコの新興企業、Cortexyme(Nasdaq:CRTX)はCOR388(atuzaginstat)の第3相アルツハイマー病試験で主目的は達成できなかったものの、唾液検査でポルフィロモナス・ジンジバリスDNA陽性だったサブグループでは共同主評価項目の一つで用量依存的に悪化を抑制する効果が示唆されたと発表した。当局などと今後の方針を相談する考え。

COR388は歯周病とアルツハイマー病の関連を示唆する仮説に立脚したプロジェクトで、ポルフィロモナス・ジンジバリス菌が分泌するプロテアーゼ、リジン・ジンジパインを阻害する。第3相GAIN試験では欧米の施設で軽中度アルツハイマー病643人を組入れて、偽薬、40mg、または80mgを一日二回経口投与し、ADAS-Cog11とADCS-ADLの変化を48週間、観察したが、どちらもフェールした。

しかし、上記のサブグループ(242人)ではADAS-Cog11の悪化が40mg群は偽薬比42%、80mg群は57%小さかった(p=0.02と0.07)。一方、ADCS-ADLでは有意な差はなかった。

仮説を考えれば、この細菌が関与するアルツハイマー病にしか効かなくても不思議はなく、サブグループ分析は悪魔が潜むと一蹴するのは躊躇する。それでも、ADAS-Cog11の絶対差は2ポイント程度なので治療効果が大きいようには感じられない。生活機能を評価するADCS-ADLの悪化を抑制できなかった点もネガティブだ。

このサブグループの症例数は各群82人、86人、74人と群間の偏りがあるので、患者背景に偏りがあっても不思議はない。また、アルツハイマー病の患者の一部は進行が速いようだが、事前に予測することはできないようなので、小規模な解析のかく乱要因になり得る。

ADAS-Cog11の解析はMixed-effects Model Repeated Measures方式だが、48週時点のnumber at riskは各群74人、62人、48人とドロップアウト率に大きな偏りが出た影響がないとも言えないだろう。

忍容性面では肝機能検査値異常(通常値上限の3倍以上)の発生率が各群2%、7%、15%と用量相関的に上昇し、80mg群では2人が説明できないビリルビン上昇を併発した。もしHayの法則に該当するなら、発現率1%は慢性疾患の治療薬としてはアウトなのではないかと危惧される。

リンク: 同社のプレスリリース



MSD、日本発の抗HIV薬の第3相が成功
(2021年10月25日発表)

MSDはMK-1439(doravirine)とMK-8591(islatravir)の固定用量合剤の第3相試験が二本、成功したと発表した。どちらも他の抗ウイルス剤のレジメンによりHIVの抑制に成功している患者を組入れたスイッチ試験で、一本はギリアド・サイエンシズのBiktarvy(bictegravir、emtricitabine、tenofovir)服用者だけを組入れた。どちらもウイルス抑制フェール率が従来レジメンを継続した群と同程度だった。

doravirineは非ヌクレオシド逆転写阻害剤で、Pifeltro(和名はピフェルトロ)として日米欧で多剤併用することが承認されている。islatravirはヌクレオシド逆転写酵素トランスロケーション阻害という新しい作用機序を持っている。横浜薬科大の大類洋博士らがヤマサ醤油と満屋裕明国立国際医療研究センター研究所長(世界で初めて抗HIV薬を発見)と共同で研究開発したもの。

リンク: 同社のプレスリリース



イミフィンジの胆道癌試験が成功
(2021年10月25日発表)

アストラゼネカは、抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)の第3相切除不能進行/転移胆道癌一次治療試験、TOPAZ-1が成功したと発表した。米州や欧州、そして日本を含むアジアの施設で、中国やタイで多い胆管腺腫と南米印日で多い胆嚢癌の685人を組入れて、gemcitabineとcisplatinの標準療法にImfinziを追加する効果を偽薬追加と比べたところ、中間解析で主評価項目の全生存期間も副次的評価項目のPFS(無進行生存期間)などでも有意な差があった。有害事象による治験離脱は増加しなかった由。データは未発表。

リンク: 同社のプレスリリース



デュピクセントの二本目の好酸球性食道炎試験が成功
(2021年10月25日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズとサノフィは、抗IL-4受容体アルファ・サブユニット抗体Dupixent(dupilumab)の第3相好酸球性食道炎(EoE)試験が成功したと発表した。12歳以上の患者159人を組入れて週一回、300mgを皮注したところ、主観的奏効率(自覚症状の改善)が64%と偽薬群の41%を上回り、もう一つの主評価項目である客観的奏功率(食道上皮内好酸球数が一定以下に低下)も59%(同6%)となり、有意な差があった。

有害事象は注射箇所反応、発熱、副鼻腔炎、COVID-19、高血圧など。二本目も成功したことから、22年に適応拡大申請する予定。

好酸球性食道炎は米国で16万人が治療中だが4.8万人は十分応答していない。薬はステロイドが用いられているが、この疾患に承認されているわけではない。患者の多くは他の二型炎症性疾患も罹患しており、アトピー性皮膚炎や好酸球性喘息症など複数の適応を持つDupixentは一石多鳥。

リンク: 両社のプレスリリース



Rafael、第3相にジャンプしたが失敗
(2021年10月28日発表)

Rafael Holdings(NYSE:RFL)は、合併する予定のRafael PharmaceuticalsのリードコンパウンドであるCPI-613(devimistat)の第3相が二本ともフェールしたと発表した。転移性膵腺腫の一次治療として減量FOLFIRINOXレジメンと併用する効果をFOLFIRINOXレジメンと比較したが、全生存期間のハザードレシオは0.95、メジアン値は各11.1ヶ月と11.7ヶ月と、ほとんど効果がなかった。

もう一本は60歳以上の急性骨髄性白血病に高量cytarabine・mitoxantrone併用レジメンに追加することで寛解率向上を図ったが、中間解析で独立データ監視委員会が無益認定した。

どちらもごく小規模な臨床試験が終わるや第3相に進んだので、元々高リスクプロジェクトだった。

CPI-613は腫瘍細胞の増殖や生存に係るミトコンドリアのTCA回路に介入、抗癌剤の作用を増強することなどが期待されている。アジアでの開発商業化権は小野薬品が取得、ONO-7912として韓国で上記二適応症の第3相試験を開始したとのことだがClinicalTrials.govにはそれらしき試験は見つからない。

リンク: Rafaelのプレスリリース



イラリスの肺癌試験は二本目もフェール
(2021年10月25日発表)

ノバルティスは抗IL-1ベータ抗体Ilaris(canakinumab)の第3相局所進行/転移非小細胞性肺癌一次治療試験がフェールしたと発表した。白金ベースの化学療法とpembrolizumabのレジメンに追加して全生存期間とPFS(無進行生存期間)の延長を図ったが、果たせなかった。hsCRP高値の患者には効果の兆しが見られたようだが、抗癌剤のサブグループ分析はあまりアテにならない。

Ilarisは二次三次治療docetaxel併用試験もフェールした。もう一本、術後アジュバントの第3相が進行中。

リンク: 同社のプレスリリース



【承認申請】


リリー、アルツハイマーと糖尿病の新薬承認申請
(2021年10月26日発表)

イーライリリーは、第3四半期決算発表に合わせて、LY3002813(donanemab)のローリング承認申請を開始したことと、LY3298176(tirzepatide)を欧米で承認申請したことを発表した。前者はアミロイド・ベータのp3-42部位に結合する抗体医薬で、早期症候性アルツハイマー病の適応を想定。第3相試験の結果が判明するのは23年の見込みとまだ先だが、バイオジェン/エーザイのAduhelm(aducanumab-avwa)がFDAに加速承認されたことに着目、第2相試験のアミロイド・ベータ抑制データに基づき申請する考えだ。この効果をAduhelmと直接比較する試験もロンチする。

前例を作ってしまったのでFDAが加速承認しない事態は、安全性などに何か問題がない限り、考え難い。Aduhelmの足元の売上は惨憺たるものなので、イーライリリーの売上も第3相が成功するまで期待し難い。

tirzepatideはGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の受容体を作動するデュアル・アクション薬。二型糖尿病の治療にも強いる。高用量はノボの競合薬の高用量より血糖降下作用が高そうだが、ノボは更なる高用量を米国で5月に承認申請した。

リンク: イーライリリーの決算発表プレスリリース


【承認審査・委員会】


抗NGF抗体の開発を断念
(2021年10月26日発表)

ファイザーとイーライリリーは抗ヒトNGF抗体tanezumabを変形性関節炎の治療薬として日米欧で承認申請していたが、開発中止を決めた。イーライリリーが決算発表に際して公表したもの。

元々はジェネンテックのコンパウンドで、NGFのALS治療試験で痛みの感受性が高まる主訴が見られたことから、一転して、阻害薬の開発を始めた。その後、スピンアウトされた中枢神経系の研究開発事業をファイザーが買収、本格的な開発に着手した。しかし、一部の患者でRPOA(急速進行性変形性関節炎)が発生、他社の開発品も含めてクリニカル・ホールドとなり、開発が大幅遅延した。

抗NGF抗体のブームが終わり他社が開発中止する中、ファイザーはイーライリリーとリスク・シェアリング契約を結び、第3相を経て、既存の鎮痛剤に不応不耐な中重度変形性関節炎の疼痛治療薬として承認申請した。しかし、RPOA一型(関節が裂隙狭小化)の発生率が2.3%と非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)群の1.1%、偽薬群のゼロより高く、二型(関節損傷・破壊)も各群0.4%、0.1%、ゼロと上回り、投与を中止しても損傷が進行したことや、追跡期間が1年に留まり長期的な転帰が不明であること、NSAIDs不応患者を組入れたスイッチ試験で効果がNSAIDs継続群と大差なかったことなどから、米国では承認されず、欧州でも9月にCHMPが否定的意見をまとめた。

リンク: イーライリリーの決算発表プレスリリース





今週は以上です。

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