2025年12月27日

第1239回

【ニュース・ヘッドライン】

  • 新生児接種型vs.妊婦接種型RSVワクチン 
  • MSDがCNPVを取得 
  • 新たに9社がトランプ大統領の呼びかけに呼応 
  • アテトーゼ型脳性まひ試験がフェール 
  • アストラゼネカ、ATRキナーゼ阻害剤がまたフェール 
  • サノフィの多発性硬化症薬が一転して審査完了に 
  • 初のHSCT-TMA用薬が承認 
  • mitapivatがサラセミアに適応拡大 
  • 経口セマグルチドの体重管理用が承認 
  • 皮下注用ルンスミオが米国でも承認 
  • 小児用の経口鉄製剤が初承認 
  • BIのPDE4B阻害剤が進行性肺線維症に適応拡大 
  • 第2の心ミオシン阻害剤が承認 
  • ファイザー、ヒムペブジの死亡例を検討 
  • アストラゼネカ、米国でオンデキサの販売を中止 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


新生児接種型vs.妊婦接種型
(2025年12月22日オンライン刊行)

乳幼児のRSV感染症を予防する方法は、妊婦が接種するワクチンと新生児に筋注する抗体医薬の二種類あり、どちらも呼吸器疾患の発症を予防する十分な効果を持つが、直接比較試験は実施されていないため、どちらがより有効なのかは分からない。フランスで実施された疫学研究では後者に軍配が上がった。フランスのASSM(国立医薬品・保健製品安全庁)とCNAM(国立健康保険機構)の疫学研究グループであるEPI-PHAREのJabagiらが実施したもので、Journal of American Medical Association誌で電子刊行された。

フランスで24年9月から12月に生まれた107,778人のうち、出生後、退院前にアストラゼネカの抗RSV抗体Beyfortusを筋注した、または、母親が妊娠32~36週にファイザーのRSVワクチンAbrysvoを筋注した、合わせて42,560人の乳児を対象に、25年2月末まで追跡して、RSV関連気道感染症により入院するリスクを比較したもの。接種シェアはAbrysvoが27%と低いため、Abrysvo群の新生児とマッチするBeyfortus症例を同数選択した。ほとんどが正期産。メジアン84日の追跡期間中にBeyfortus群は212人、Abrysvo群は269人がヒットし、ハザードレシオは0.74(95%信頼区間0.61-0.88)と、比較的大きな差が見られた。PICU入室など重篤例に限定しても、サブグループ分析でも、整合的な結果になった。

安全性やフィージビリティの比較も必要だが、予防効果に関してはBeyfortusのほうが良いことになる。但し、疫学研究の成果が確立するためにはもう一つの試験で再現されることが重要である。

リンク: Jabagiらの疫学試験論文(JAMA)


MSDがCNPVを取得
(2025年12月19日発表)

FDAは二種類の医薬品候補に関してCNPV(FDA委員長の国家的優先事項バウチャ)を供与したと発表した。一つはMSDのMK-0616(enlicitide decanoate)。PCSK9阻害剤で、類似した作用機序を持つ既承認品と異なり経口投与が可能であることが最大の特徴。複数の第3相が進行中だが、LDL-C低下作用を主評価項目とする4本が既に成功しているので、2029年に心血管アウトカム試験の結果が判明する前に承認申請される可能性もあるのではないか。

もう一つはMK-2870/SKB264(sacituzumab tirumotecan)。TROP2を標的とする抗体医薬複合体で、中国のKelun-Biotech(Sichuan Kelun Pharmaceuticalの子会社)が中国で24年に承認を取得した。MSDが22年に中国外の権利を取得、数多くの第3相試験を実施中で、27年頃から結果が出る見込みだ。

後者が選定されたのは意外感がある。類薬であるギリアド・サイエンシズのTrodelvy(sacituzumab govitecan-hziy)や第一三共のDatroway(datopotamab deruxtecan-dlnk)が既に承認されているからだ。もしかしたら、抗菌剤Augmentin XR(amoxicillin、clavulanate potassium)の国内生産体制増強と同じような意味合いで、外国企業の開発品を米国企業が米国で開発すること自体を評価したのかもしれない。FDAは中国だけで実施された臨床試験の成績をエビデンスとして認めないスタンスを取っているからだ。

あるいは、もしかしたら、トランプ大統領の要請に応じて値下げや国産・国内研究開発体制の増強を発表したことも寄与したのかもしれない(次項参照)。イーライリリーやノボ ノルディスクなどもCNPV取得と要請応諾が相次いで公表された。

実際、FDAのプレスリリースは、この2製品は米国における医療のアクセサビリティやアフォーダビリティという政策目標に大きく貢献する可能性があると記している。

もしこれらが理由ならば、トランプ大統領の呼びかけに応えたり、中国企業から導入すれば、CNPVがもらえるのだろうか?CNPV制度は不透明感が高まるばかりだ。


図表:CNPV案件一覧
発表企業対象
25年10月Disc MedicineDISC-0974(bitopertin)、赤芽球性プロトポルフィリン症
EMD SeronoPergoveris(follitropin alfa、lutropin alfa)、LH/FSH欠乏性不妊症
サノフィTzield(teplizumab-mzwv)、一型糖尿病
Achieve Life Sciencescytisinicline、Eシガレット依存症
Regeneron PharmaceuticalsDB-OTO、otoferlin関連難聴
Dompé farmaceuticicenegermin、非動脈炎性前部虚血性視神経症の点鼻用新製剤
Revolution MedicinesRMC-6236(daraxonrasib)、膵癌
USAntibioticsAugmentin XR(amoxicillin、clavulanate potassium)、抗菌剤
不明全身麻酔用ketamine
25年11月ベーリンガー・インゲルハイムHernexeos(zongertinib)、her2陽性肺癌
ジョンソン エンド ジョンソンSirturo(bedaquiline)、幼児の薬物耐性肺炎
GSKJemperli(dostarlimab)、直腸癌
Vertex PharmaceuticalsCasgevy(exagamglogene autotemcel)、鎌状赤血球病
イーライリリーorforglipron、肥満症
ノボ ノルディスクWegovy(semaglutide)、肥満症
25年12月ジョンソン エンド ジョンソンTecvayli(teclistamab-cqyv)・Darzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)併用、多発骨髄腫
MSDMK-0616(enlicitide decanoate)、高脂血症用経口PCSK9阻害剤
MSD推MK-2870(sacituzumab tirumotecan)、MK-2870(sacituzumab tirumotecan)、中国のKelun-Biotechから導入した抗TROP2抗体薬物複合体


リンク: FDAのプレスリリース


新たに9社がトランプ大統領の呼びかけに呼応
(2025年12月19日発表)

トランプ米国大統領は製薬会社に米国の医薬品価格を他の高所得国(先進国)並みに引き下げることなどを呼びかけ、7月には大手17社に書面で要請した。先月までにファイザー、アストラゼネカ、セラノ、ノボ ノルディスク、イーライリリーが同意し大統領と共同会見を行ったが、今回、更に、アムジェン、ベーリンガー・インゲルハイム、ブリストル マイヤーズ スクイブ、ジェネンテック(ロシュの米国子会社)、ギリアド・サイエンシズ、GSK、メルク(北米外ではMSD)、ノバルティス、サノフィの9社が同意した。残りはアッヴィ、ジョンソン エンド ジョンソン、そしてRegeneron Pharmaceuticals。

内容は区々だが、低所得者向け医療制度メディケイドや高齢者・透析患者向けのメディケアの外来薬カバレッジにおける一部製品の価格を標準的な価格から大きく値引きする。政府が立ち上げる医薬品ECサイト、TrumpRx.comにも出品する。更に、向こう数年間、米国で製造設備と研究開発活動に巨額の投資を行う。見返りとして、政府が検討している、ブランド薬あるいは特許性薬の輸入に課す100%の関税を3年間、免除される。

良く分からないのはTrumpRx.comだ。大統領個人に出品料の一部が分配されるなどということは流石に無いだろうが、元々がビジネスマンで、ツイッター("X")などから出禁にされた時は自分でSNSサイトを立ち上げたこともある(後に譲渡したようだ)ので、油断はできない。

リンク: ホワイト・ハウスのファクト・シート


【新薬開発】


アテトーゼ型脳性まひ試験がフェール
(2025年12月22日発表)

Neurocrine Biosciences(Nasdaq:NBIX)はvalbenazineの第3相DCP(ジスキネジア型<別称アテトーゼ型>脳性まひ)試験がフェールしたと発表した。第14週のコレア(舞踏運動)を偽薬と比較した主評価項目も、副次的評価項目も、達成できなかった。

脳性まひの罹患率は小児1000人当り3人、うち15%がコレアを伴うDCPと推定されている。valbenazineはVMAT-2(小胞モノアミントランスポーター2阻害剤)阻害剤で、遅発性ジスキネジア用薬Ingrezza(日本ではジスバル)として日米で承認され、米国ではハンチントン病にも承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース


アストラゼネカ、ATRキナーゼ阻害剤がまた中途で打切り
(2025年12月22日発表)

アストラゼネカはAZD6738(ceralasertib)の第3相非小細胞性肺癌試験が中間で無益認定されたと発表した。

遺伝子修復や細胞の生存に関わるATR(ataxia telangiectasia and rad3 related)キナーゼが誘導するシグナル伝達を阻害するATR阻害剤。今回のLATIFY試験はEGFR阻害剤やALK阻害剤などの分子標的薬が適応にならない、局所進行/転移後に抗PD-(L)1抗体と白金化学療法歴を持つ非小細胞性肺癌の患者を組入れて、同社の抗PD-L1抗体Imfinzi(durvalumab)と併用する便益をImfinziだけの群と比較した。主評価項目は全生存期間。

AZD6738は第2相の転移トリプル・ネガティブ乳癌Lynparza(olaparib)併用試験や抗PD-(L)1抗体抵抗性黒色腫のImfinzi併用試験も無益中止されている。残る第3相は今年ロンチされたNCI(米国立がんセンター)のアジュバント試験だけ。ステージII~IIIBの非小細胞性肺癌で術前療法でpCRを達成しなかった630人を組入れて、Imfinziによる術後療法に追加する便益を検討するもの。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


サノフィの多発性硬化症薬が一転して審査完了に
(2025年12月24日発表)

サノフィはSAR442168(tolebrutinib)を無再発二次性多発性硬化症(nrSPMS)の治療薬として欧米で承認申請したが、米国は審査完了通知を受領した。経緯が異常だ。優先審査を受け、当初の審査期限は9月28日だったが追加データ提出により12月28日に延期され、更に、期限の2週間ほど前になって、FDAから、更に遅延する、26年第1四半期中に今後のガイダンスを連絡する、という連絡を受けた。どたばたもいいところだ。おそらく、今回も、上役が介入したのだろう。

下記プレス・リリースはFDAに振り回されたことに対する不満は記されているものの審査完了の理由については記されていない。おそらく、肝障害懸念だろう。

nrSPMSは、再発寛解型多発性硬化症の次のステージで、症状の大きな増悪はなくなるが徐々に障害が進行していく。tolebrutinibは炎症を抑制するブルトン型チロシン・キナーゼ阻害剤。既存薬と異なり中枢神経系に作用することができる。第3相HERCULES試験でEDSS(障害評価尺度)の悪化を3割ほど遅らせる効果を示した。可逆的な薬物誘導性肝障害疑い例が発生し臨床試験の新規組入れ中断したが、この試験は既に組入れを完了しており影響を受けなかった。

奇妙なのは、再発寛解型多発硬化症の第3相二本はフェールしたこと。主評価項目は再発頻度、対照群は偽薬ではなく同社のAubagio(teriflunomide)であることなど、対象疾患だけでなくデザインも異なるため整合性がないとは言えないが、数多くの直接比較試験で負けた実績を持つAubagioに勝てなかったことや、二本の試験のプール分析でEDSSが悪化していることなど、案外な点もある。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


初のHSCT-TMA用薬が承認
(2025年12月24日発表)

米国ワシントン州シアトルの新興医薬品会社、Omeros (Nasdaq:OMER)は、FDAがYartemlea(narsoplimab-wuug)を造血幹細胞移植関連血栓性微小血管症(HSCT-TMA)の治療薬として承認したと発表した。この疾患の治療は補体阻害剤などがオフレーベルで使用されているが正式に承認された薬は初めて。成人と2歳以上の小児が適応になる。体重50kg以上の患者の場合、370mg30分点滴静注を週一回施行し、改善が不十分なら週二回に増やす。

単群試験で完全反応率(検査値と臨床評価値が改善)が61%、100日生存率は73%だった。深刻有害事象の発生率は61%、致死的有害事象発生率は7%だった。警告事前注意事項は感染症。

HSCT-TMAは補体系活性化経路のうちレクチン経路が亢進する。重症例は命に係わる。Yartemleaはレクチン経路のイフェクター酵素であるMASP-2(mannan-binding lectin-associated serine protease-2)に結合する抗体。米国では20年に承認申請が完了したが、対照試験が実施されていないことがボトル・ネックとなり審査完了通知を受領した。同社は自然歴対照試験を実施して追加提出し、今回も審査期間が3ヶ月延長されたが、5年かけてゴールインした。

リンク: 同社のプレスリリース


mitapivatがサラセミアに適応拡大
(2025年12月23日発表)

Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)はFDAがAqvesme(mitapivat)を成人の輸血依存性/非依存性のアルファ/ベータ・サラセミア用薬として承認したと発表した。100mgを一日二回、服用する。輸血に依存する患者を組入れた第3相で輸血必要量を抑制し、依存しない患者の第3相でヘモグロビン値を改善した。

活性成分はPKR(ピルビン酸キナーゼR)のアロステリック・アクティベイター。22年に米欧でピルビン酸キナーゼ欠乏症における溶血性貧血症の治療薬Pyrukyndとして承認された。今回、製品名を変更したのは、薬物誘導性肝障害が見られREMS(リスク評価管理戦略)が導入されたため。ピルビン酸キナーゼ欠乏症では5mg一日二回経口投与で治療を開始しヘモグロビン値の改善が不十分なら最大で50mg一日二回まで漸増するが、サラセミアでは100mg一日二回と最初からもっと高量を投与する。そのせいか、第3相試験の偽薬対照期間中に301人中2人で可逆的な肝細胞障害疑い例が発生し、オープン・レーベル延長試験期間中にも偽薬から以降した患者3人で発生した。対策として、投与開始前と開始後も最初の24週間は4週毎に、その後は臨床評価に基づき、ALT/AST、ALP、総ビリルビン分画を検査する。肝障害の警告や検査はピルビン酸キナーゼ欠乏症用途でも今年1月に導入されている。

審査期限は12月7日だったが期日になっても音沙汰なく、2週間ほど遅延した。上記のtolebrutinibと共通するのは肝毒性懸念が絡む遅延であること。FDAのガイダンス資料によると慢性疾患病薬に求められるHyの法則該当例の発生頻度は3000人に一人未満だが、少なくとも本件は上回っている。高血圧薬やコレステロール治療薬と比べれば重篤な疾患の治療薬なので、リスク許容度は高いのだろうが、悩みどころにはなりうる。

リンク: 同社のプレスリリース


経口セマグルチドの体重管理用が承認
(2025年12月22日発表)

ノボ ノルディスクはFDAがWegovy(semaglutide)錠を肥満またはリスク因子を持つオーバーウェイトの体重管理として承認したと発表した。心血管疾患を併発する患者では主要有害心血管イベントのリスクも抑制する。第3相OASIS 4試験で体重が64週間に13.6%低下し、偽薬群の2.2%減を有意に凌いだ。

GLP-1作用剤semaglutideは皮下注用が体重管理薬Wegovyや二型糖尿病薬Ozempicとして販売され、サルカプロザート・ナトリウムをキャリアにして胃で吸収されるようにした経口剤も二型糖尿病薬Rybelsusとして承認されている。Rybelsusは3mg一日一回で開始、30日毎に7mgに増量し、必要に応じて14mgまで漸増できる。Wegovy錠は1.5mg一日一回で開始し、30日毎に4mg、9mg、25mgと漸増する。ドロップ・アウトが起きがちな疾患であるためか、目標最大用量が大きいせいか、漸増のペースが抑えめになっている。

リンク: 同社のプレスリリース


皮下注用ルンスミオが米国でも承認
(2025年12月22日発表)

ロシュはFDAがLunsumio VELO(mosunetuzumab-axgb)を承認したと発表した。抗CD20xCD3二重特異性抗体Lunsumioの皮下注用新製剤で、注射時間が1分と点滴静注用製剤の2~4時間から大幅に短縮される。適応は成人の再発性/難治性濾胞性リンパ腫の3次治療で静注用と同じ、加速承認である点も同じ。EUでは25年11月に条件付き承認、日本でも今月、承認された。

リンク: ロシュのプレスリリース


小児用の経口鉄製剤が初承認
(2025年12月22日発表)

FDAはAccrufer(ferric maltol)を10歳以上の小児鉄欠乏性貧血症用薬として承認したと発表した。この適応を持つ経口剤は初めて。最近のFDAのプレス・リリースはメーカー名が書いていないことが多いが、英国のShield Therapeutics(LSE:STX)の製品。1ヶ月児以上の患者を組入れた臨床試験でヘモグロビン値が回復した。9歳以下は適応になっていないが、同社は新開発の懸濁液製剤で適応拡大申請する考え。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: Shield Therapeuticsのプレスリリース


BIのPDE4B阻害剤が進行性肺線維症に適応拡大
(2025年12月19日発表)

FDAはベーリンガー・インゲルハイムのJascayd(nerandomilast)を成人の進行性肺線維症(PPF)に適応拡大したと発表した。昨年4月に承認申請され、優先審査指定された成人の特発性肺線維症の適応は10月に承認されている。

ホスホジエステラーゼ4B阻害剤。忍容性や薬物相互作用に問題がなければ18mgを12時間おきに経口投与する。第3相試験では偽薬、9mg、または18mgを52週間投与したところ、試験薬群のFVC(努力性肺活量)低下が偽薬比有意に小さかった。

第2次トランプ政権下の迷走ぶりがよく表れているのが、下記プレス・リリースと添付文書の数値の違い。製薬会社は言論の自由があるのでFDAが承認していない効能などを医療従事者に伝えることができるが、プレス・リリース作成者にも言論の自由があるのだろう。各群のFVC平均低下幅は処方情報(添付文書に相当)やBIのプレス・リリースによると152mL、69mL、86mLだがFDAのリリースでは151mL、85mL、72mL。因みに、New England Journal of Medicine誌に刊行された治験論文では165.8mL、84.6mL、98.6mLとなっている。

また、副次的評価項目である疾病増悪、呼吸器因入院、死亡の何れかが発生するまでの期間は処方情報によると9mg群のハザード・レシオが0.88、18mg群は0.77だが統計的に有意ではなかった。3項目夫々の解析でも有意水準には達していない。にもかかわらず、プレス・リリースには増悪や呼吸器因入院、死亡も少なかったと記されている。今までのFDAなら、せいぜい、悪化するトレンドは見られなかったと書くところだろう。

医師が頼るべきは処方情報でFDAのプレス・リリースなどどうでも良いのだが、なんとなく、FDAの首脳陣が原稿に手を入れたのかなー、と思ってしまう。

リンク: FDAのプレスリリース


第2の心ミオシン阻害剤が承認
(2025年12月19日発表)

Cytokinetics(Nasdaq: CYTK)はFDAがMyqorzo(aficamten)を成人の症候性閉塞性心筋症用薬として承認したと発表した。今月は中国で承認、欧州でCHMPが肯定的意見と大きく前進した。

心ミオシンをアロステリックに、そして可逆的に阻害して心臓の収縮性を抑え、左室流出路閉塞を緩和する。臨床試験でpVO2(最高酸素摂取量)が偽薬比有意に向上した。枠付き警告はLVEF(駆出率)の低下による心不全でREMS(リスク評価管理戦略)が義務付けられた。LVEFが55%未満には推奨しない、治療中に低下したり症状が表れたら程度に応じて減量・中止する。欧州では今月、CHMPが肯定的意見を出したところ。

類薬はブリストル マイヤーズ スクイブのCamzyos(mavacamten)が22~25年に米欧日で同じ適応症に承認されている。どちらもLVEFとバルサバLVOT-G(左室流出路圧較差)の検査値に応じて漸増、減量、または一時停止する必要があるがMyqorzoのアルゴリズムのほうがやや簡便。どちらも薬物相互作用リスクがあるが、Myqorzoの併用禁忌はrifampinのみ。

リンク: Cytokineticsのプレスリリース

【医薬品の安全性】


ファイザー、ヒムペブジの死亡例を検討
(2025年12月22日発表)

World Federation of Hemophilia(WFH)とNational Bleeding Disorders Foundation(NBDF)の共同声明によると、ファイザーの血友病薬Hympavzi(marstacimab-hncq)による出血のルーチン予防を受けていた患者が死亡し、同社が詳細を検討している由。TFPI(組織因子経路阻害剤)で、24年に米欧日でインヒビターを持たないA型やB型の血友病向けに承認され、インヒビター保有者向けにも米欧日で承認申請中。今回の患者はインヒビター保有のA型血友病で、2022年に臨床試験に参加した。用量は150mg週一回皮下注で、承認/適応拡大申請下の維持用量と同じ。軽微な手術後に血栓性脳卒中を発症、脳内出血を経て死去した。他の疾患や同時使用薬もあったようで、複雑な症例とされる。

リンク: WFHとNBDFの共同声明


アストラゼネカ、米国でオンデキサの販売を中止
(2025年12月18日発表)

FDAはアストラゼネカが米国でAndexXa(coagulation factor Xa (recombinant), inactivated-zhzo)の販売を終了したと発表した。市販後薬効確認試験で深刻な出血リスクが浮上したため、危険が便益を上回るとの評価を同社に通知したところ、商業的な理由により販売中止する旨の連絡があった。商業的な理由による自主的販売中止の前にFDAが安全性懸念を表明した事例は多いと推測されるが、明記されたのは今回が初めてではないか。これも今のFDAの方針と推測される。

同薬は遺伝子組換え型血液凝固第Xa因子。抗凝固薬の一種であるXa阻害剤の活性を中和する作用に基づき、18年に米国で加速承認、19年にEUでOndexxya名で条件付き承認、22年には日本でオンデキサ名で通常承認された。

市販後薬効確認試験となるANNEXA-I試験では、apixabanまたはrivaroxabanを服用後15時間以内に脳内出血を発症した成人に投与し、血腫の拡大やNIHSS(神経学的重症度を評価する尺度)の悪化を抑制する作用を複合評価したところ、奏効率が67%と通常医療群(プロトロンビン複合体濃縮製剤などを使用)の53.1%を有意に上回った。しかし、副次的評価項目のmRS(機能性の評価尺度)は数値がやや悪く、虚血性脳卒中の発生率が6.5%(対照群は1.5%)、血栓関連死亡率が2.5%(同0.9%)と、血栓形成に影響する薬の泣き所が表面化してしまった。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12/30Corcept TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)
25/12/31Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性)
26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
26/1/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
26/1/14Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病)
26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)


今週は以上です。

2025年12月19日

第1238回

【ニュース・ヘッドライン】

  • 光速審査バウチャを光速供与 
  • 武田薬品、TYK阻害剤の乾癬試験が成功 
  • 経口GLP-1作用剤の維持療法試験が成功 
  • MIBCではパドセブ・キートルーダ併用が白金CTを上回る 
  • ピーナツ・アレルギーの減感作療法試験が成功 
  • Immunomeもガンマ・セクレターゼ阻害剤のデスモイド腫瘍試験が成功 
  • CAR-Tのスティッフパーソン症候群試験が成功 
  • ヒフデュラは甲状腺眼症には効かない 
  • ノボ、GLP-1・アミリン合剤を承認申請 
  • メンケス病用薬を再申請 
  • Aldeyra社、承認がまたまた遅延 
  • サノフィの多発性硬化症用btk阻害剤、FDAの審査が遅延 
  • ライブリバントの皮下注版が米国でも承認 
  • GSKの長期作用性抗IL-5抗体、喘息だけ承認 
  • rucaparibがある種の前立腺癌に本承認 
  • 小型PCSK9阻害薬が承認 
  • エンハーツがher2+MBCの一次治療に承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


光速審査バウチャを光速供与
(2025年12月15日発表)

FDAは、承認申請者ではなくFDAが主導して、ジョンソン エンド ジョンソンにCNPV(委員長の国家的優先バウチャ)を供与したと発表した。CNPVは売却できないので承認審査のスピードアップ(1~2ヶ月で完了)だけが取り柄である。承認審査期間の延長や超過が散見される中、CNPV案件だけが看板通りにスピードアップするものかどうか、注目される。

この、累計16番目の案件は、抗BCMA・CD3二重特異性抗体Tecvayli(teclistamab-cqyv)と抗CD38抗体Darzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)を1~3治療歴のある再発/難治多発骨髄腫に用いるもの。12月のASH(米国血液学会)での発表によると、第3相MajesTEC-3試験で、pomalidomideまたはbortezomibをdexamethasone及びDarzalex Fasproと併用した群と比べて、PFSのハザードレシオが0.17、全生存期間も中間解析で0.46と、大変良い成果を上げた。JNJは適応拡大申請済み。

CNPV供与の経緯は、FDAの『リーダー』が11月にASH抄録を読み組織内で検討の上、翌日にJNJに連絡してCNPVについて協議したとのこと。FDAのプレスリリースによると、"When a treatment demonstrates outstanding trial results, we have a duty to patients to move swiftly.”とのこと。分かっているなら、本件だけでなく数多くの重要案件について、審査期限をきちんと守ってほしいものだ。、

リンク: FDAのプレスリリース

【新薬開発】


武田薬品、TYK阻害剤の乾癬試験が成功
(2025年12月18日発表)

武田薬品はTAK-279(zasocitinib)が第3相中重度尋常性乾癬試験二本で主目的などを達成したと発表した。データは未公表。26年度から承認申請を開始する考え。

22~23年に米日欧で尋常性感染用薬として承認されたブリストル マイヤーズ スクイブのSotyktu(deucravacitinib)と同様に、IL-23やIL-12、タイプIインターフェロンによる細胞内シグナル伝達を調停する酵素、TYK2(tyrosine kinase 2)をアロステリックに阻害する。今回の日本も参加した3001試験と3002試験は、共同主評価項目のsPGA(医師の静的評価)とPASI75(乾癬範囲と重症度を評価)を偽薬群やアムジェンのPDE-4阻害剤Otezla(apremilast)と比較した。

Sotyktuと直接比較する3004試験も進行中で発売前に結果が判明する可能性がありそうだ。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


経口GLP-1作用剤の維持療法試験が成功
(2025年12月18日発表)

GLP-1作用剤は大人気で配合剤や経口剤の開発も活発だ。イーライリリーは、中外製薬からライセンスした経口GLP-1受容体作動剤、LY3502970(orforglipron)の第3相維持療法試験、ATTAIN-MAINTAIN試験(以下、メンテ試験)のヘッドラインを公表した。良く分からないところもあるが、注射用GLP-1作用剤からスイッチしても体重が急速にリバウンドする可能性は低そうだ。

この試験は、肥満症または有リスク・オーバーウェイトで二型糖尿病ではない患者における同社のGIP/GIP受容体作動剤Zepbound(tirzepatide)の体重管理作用をノボ ノルディスクのGLP-1受容体作動剤Wegovy(semaglutide)と比較したSURMOUNT-5(以下、S-5試験)試験に参加した患者を組入れて、偽薬またはorforglipronで52週間治療し、体重維持効果を比較したもの。

S-5試験でWegovy群に割付けられていた患者の平均体重は、同試験開始時には平均113.5kgだったが、メンテ試験の開始時の95.0kgが52週後には95.9kgとなり、大きなリバウンドは見られなかった。Zepbound群だった患者はS-5試験開始時は115.8kg、メンテ試験開始時は90.9kg、52週後は95.9kgだった。表面上の数値は、GLP-1受容体しか作動しないWegovyからスイッチする方が有益に見えるが、結論を出すのは早いだろう。

上記は投与を止めたり他剤を追加/スイッチしたら追跡を止めるEfficacy estimand法によるもの。止めたらリバウンドするだろうがデータには反映されない。効果も忍容性も良好に推移している期間/患者のデータなので、現実の医療で得られる成果とは必ずしも整合しないので、Wegovy患者はスイッチしたほうが良い、Zepbound患者はスイッチしなくてもよい、と考える前にもっと多くのデータを確認する必要がある。

リンク: イーライリリーのプレスリリース


MIBCではパドセブ・キートルーダ併用が白金CTを上回る
(2025年12月17日発表)

アステラス製薬、ファイザー、そしてMSDは、夫々、第3相EV-304/KeyNote-B15試験で主目的を達成したと発表した。筋層浸潤膀胱癌(MIBC)の術前術後療法として、前2社が共同開発販売している抗ネクチン-4抗体薬物複合体のPadcev(enfortumab vedotin-ejfv)とMSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)を併用する便益をcisplatin及びgemcitabineの併用術前療法と比較したところ、主評価項目のEFS(無イベント生存期間)や副次的評価項目の全生存期間とpCR(病理学的完全反応率)が統計的に有意かつ臨床的に意味のある改善を見た。データは今後、発表する予定。この併用法は、白金薬治療が不適または拒否の患者を組入れたEV-303/KeyNote-905試験が既に成功、11月に米国で適応拡大が承認されている。

ところで、『僕は常々思うのですが』、治験が成功したことだけ公表することにどんな意味があるのでしょうか?新興企業の主力薬なら株価が大きく動くこともあるので証券取引法上の開示義務が発生するかもしれないけど、この3社のような大企業にとってはこの程度の発表で顕著な影響は期待し難い。データが分からないので医師も患者も今すぐ使うことはできないでしょう。学会/論文発表する時にデータ未公表のほうが大きく扱ってもらえるくらいのメリットしかないんじゃないだろうか?来年以降は、今回のような発表は原則として取り上げないことにします。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: アステラス製薬のプレスリリース(和文、12/18付)


ピーナツ・アレルギーの減感作療法試験が成功
(2025年12月16日発表)

フランスのDBV Technologies(Euronext:DBV)はViaskin Peanutの第3相ピーナツ・アレルギー治療試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に米国で承認申請する考え。

ピーナツ蛋白を経皮投与する減感作療法。2018年に米国で承認申請したが、申請撤回、再申請を経て20年に審査完了通知を受領。その後EUでも申請したが22年に撤回と不調に終わった。CMC(化学、製造、管理)に関わる不足や薬効に関する疑問、そして減感作療法に付き物のアナフィラキシー・リスクがボトルネックになったようだ。

22年に1~3歳の患者362人を組入れた第3相EPITOPE試験が成功、ピーナツ蛋白投与量を段階的に増やしてアレルギーを発症する誘導用量(ED)が所定の水準を超えた患者の比率を調べたところ、67%と偽薬群を33.5%を有意に上回った(群間差の95%下限は22.4%、成功認定の閾値は15%)。今回の第3相VITESSE試験も、同様に、46.6%と偽薬群の14.8%を上回った(95%下限24.5%、閾値15%)。治療時発現有害事象による治験離脱は3.2%の患者で発生、偽薬群は0.5%だった。2人(0.5%)が治療関連アナフィラキシーを発現した。

リンク: 同社のプレスリリース


Immunomeもガンマ・セクレターゼ阻害剤のデスモイド腫瘍試験が成功
(2025年12月15日発表)

米国ワシントン州の医薬品開発会社、Immunome(Nasdaq:IMNM)は、AL102(varegacestat)が第3相RINGSIDE試験で主目的を達成したと発表した。26年第2四半期に承認申請する考え。

24年にAyala Pharmaceuticalsから取得したガンマ・セクレターゼ阻害剤。再発・難治性進行性のデスモイド腫瘍患者156人を組入れて1.2mgを一日一回経口投与したところ、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)の偽薬比ハザード・レシオが0.16(95%信頼区間0.017-0.375)だった。有害事象は下痢、疲労、ラッシュ、悪心などで、多くはG1、G2だった。

類薬はSpringWorks Therapeutics(Nasdaq:SWTX)のOgsiveo(nirogacestat)が23年に米国で、25年にはEUでも、成人の全身性治療が必要な進行性デスモイド腫瘍に承認されている。この希少軟組織腫瘍はガンマ・セクレターゼがクリバレッジするノッチにより成長が活性化されるようだ。

リンク: Immunomeのプレスリリース


CAR-Tのスティッフパーソン症候群試験が成功
(2025年12月15日発表)

米国カリフォルニア州のKyverna Therapeutics(Nasdaq:KYTX)はKYV-101(mivocabtagene autoleucel)が承認申請用第2相試験、KYSA-8で主評価項目とすべての副次的評価項目を達成したと発表した。26年上期に承認申請する考え。

対象疾患であるスティッフ・パーソン症候群は体幹や四肢で進行性の筋硬直や有痛性筋攣縮を引き起こす、米国の推定患者数6000人の希少疾患。脊髄運動ニューロンの調整に必要なGABAの合成を妨げる、抗GAD65(抗グルタミン酸デカルボキシラーゼ65)に対する抗体を持つことが多い。薬物療法は筋弛緩剤やbenzodiazepine、rituximabなどがオフレーベルで用いられている。KYV-101はCD19を標的としCD28を共刺激する自家CAR-T療法。リンパ枯渇後に1x10^8 CAR-Tセルを一回投与する。

KYSA-8試験は免疫調停薬に十分応答しない患者26人に施行した。被験者のメジアン年齢は56歳、88%がGAD65陽性。主評価項目は16週の25フィート歩行時間。ベースライン時点のメジアン11.2秒から46%改善した。健常者の水準とされる4~5秒に近づいたと推測される。mRSなどの副次的評価尺度も有意に改善した。補助歩行具装着の12人中67%は不要になった。サイトカイン放出症候群や免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群が見られたが、G3以上は発生しなかった。G3/4好中球減少症が62%で発生した。

リンク: 同社のプレスリリース


ヒフデュラは甲状腺眼症には効かない
(2025年12月15日発表)

オランダのargenx SE (Euronext/Nasdaq:ARGX)はVyvgart Hytrulo(efgartigimod alfa and hyaluronidase-qvfc)の第3相甲状腺眼症試験、UplifTEDを中止すると発表した。中間解析で独立データ監視委員会が無益認定した。Vyvgartは胎児性Fc受容体に対する抗体で静注用製剤も含めて筋無力症など様々な免疫関連疾患に承認されている。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


ノボ、GLP-1・アミリン合剤を承認申請
(2025年12月18日発表)

ノボ ノルディスクはCagriSema(semaglutide、cagrilintide)を肥満症やリスク因子を持つオーバーウェイトの体重管理薬として米国で承認申請したと発表した。Wegovyの活性成分であるGLP-1作用剤とアミリン類縁体を2.4mgずつ配合した合剤で、週一回皮下注する。二型糖尿病を併発していない患者を組入れたREDEFINE 1試験と併発患者のREDEFINE 2試験で体重が各20.4%と13.7%低下し、偽薬群の3.0%と3.1%低下を有意に上回った。イーライリリーのZepbount(tirzepatide)と直接比較する試験も進行中。

リンク: 同社のプレスリリース


メンケス病用薬を再申請
(2025年12月15日発表)

Zydus Lifesciencesの子会社であるSentynl Therapeuticsは、CUTX-101(copper histidinate)を米国で再申請したと発表した。審査期限は来年1月14日。

対象疾患であるメンケス病はATP7Aの遺伝子異常によるX染色体劣性遺伝性疾患で、腸管での輸送障害により銅が欠乏、重度中枢神経障害などが表れる。CUTX-101は今年1月に承認申請が受理されたが、製造施設におけるcGMP欠陥を指摘され9月に審査完了通知を受領していた。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


Aldeyra社、承認がまたまた遅延
(2025年12月15日発表)

Aldeyra Therapeutics(Nasdaq:ALDX)はRASP(反応性アルデヒド種)調節剤ADX 102(reproxalap)をドライアイの点眼薬として開発、22年に米国で承認申請したが、FDAがガイダンス草稿で提唱した兆候改善試験(目の赤さなどを評価)と症状改善試験(目の不快感を評価)を二本ずつ実施という要件を満たしていなかったことなどから、審査完了通知を受領した。症状改善試験を実施して再申請したがベースライン値に群間の偏りがあることなど方法論的な指摘を受け、審査完了した。追加試験を実施して再申請したが、今回、審査期限が今月16日から26年3月16日に延期されたと公表した。

仮説検証試験は成功してもフェールしても承認申請資料に含めるのが通常だ。最後の追加試験のうち、チャンバー試験は成功したが、フィールド試験はトレンドに留まった。同社は後者を支持的証跡として提出する考えを示していたが、FDA会議で提出しないことで同意を得たため、通常の治験報告以外、提出しなかったようだ。審査期間中に要求され、提出したため、審査期間延長となった。

経緯は複雑で、事前会議はFDAの眼科部門と実施したが、提出要求したのはその上部組織である専門薬オフィスだという。第2次トランプ政権ではFDA委員長を筆頭に上役の積極的介入が散見されるが、本件も同じ現象なのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


サノフィの多発性硬化症用btk阻害剤、FDAの審査が遅延
(2025年月日発表)

サノフィは多発性硬化症などの自己免疫疾患向けに開発しているブルトン型チロシン・キナーゼ阻害剤、SAR442168(tolebrutinib)について、二本のプレスリリースを発出した。一本にまとめなかったのは片方の事象が遅れて発生したからなのか、それとも、関連があると思われたくなかったのか、現時点では明らかではない。

同剤は再発寛解を繰り返さずに進行するようになった無再発二次性多発性硬化症(nrSPMS)の第3相HERCULES試験が成功、病状進行(EDSSで評価)リスクを31%抑制し、米国で承認申請された。優先審査指定されたが追加データ提出に伴い審査期限が今月28日に延期され、今回、更に遅れる旨の連絡を受けた。26年3月末までにFDAから今後の見通しに関するガイダンスを期待しているとのことだ。何がボトルネックなのか、プレスリリースには記されていない。

もう一本は第3相PERSEUS試験がフェールしたことを明らかした。日本を含む施設で一次進行性多発性硬化症の患者を組入れ疾病進行リスクを評価したもの。主評価項目は複合評価項目で、EDSS、25フィート歩行時間テスト、9ホールペグテストの何れかが6ヶ月間に一定以上悪化するまでの期間を偽薬と比較した。初めて見る評価項目であり、適切なものなのか、分からない。

tolebrutinibは再発型多発性硬化症の第3相試験二本はフェールしており、ベータ・インターフェロンや抗CD20抗体とは異なった特徴を示している。しかし、PERSEUS試験のフェールが試験ではなく試験薬のフェールだった場合、進行抑制作用もどうなのか、疑問の声が上がっても不思議はない。薬物誘導性肝障害の懸念が見られ、Hercules試験ではHayの法則該当症例の一人が肝移植の合併症で死亡した。リスクもある薬なので便益を明確にすることが重要だ。

リンク: 同社のプレスリリース(審査長期化)
リンク: 同(PERSEUS試験)

【承認】


ライブリバントの皮下注版が米国でも承認
(2025年12月17日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンはFDAがRybrevant Faspro(amivantamab and hyaluronidase-lpuj)を承認したと発表した。点滴静注用抗EGFR・MET二重特異性抗体Rybrevantを皮下注できるように改良した製品で、注射時間が5分と点滴静注の数時間より短く済む。適応は静注用と同じ。EGFR阻害剤Lazcluze(lazertinib)と併用時のORR(客観的反応率)や薬物動態を静注用製剤と比較した試験で閾値をクリアした。JNJのリリースによると全生存期間はハザード・レシオ0.62、名目p=0.02と、何故か良かったが、FDAのリリースでは悪化を疑わせるエビデンスはなかったとだけ記されている。注射箇所反応の発生率は静注用の5分の1だった。

EUでは4月に承認されたが米国は承認前製造施設検査で所見事項があり、昨年12月に審査完了通知を受領したため遅れた。日本では8月に第2部会を通過したが別の理由で承認遅延している。

リンク: FDAのリリース
リンク:
JNJのプレスリリース


GSKの長期作用性抗IL-5抗体、喘息だけ承認
(2025年12月16日発表)

GSKはFDAがExdensur(depemokimab-ulaa)を12歳以上の好酸球性重度喘息症の維持療法として承認したと発表した、報道によると、CRSwNP(鼻ポリープを伴う慢性副鼻腔炎)の適応は審査完了通知を受領したようだ。同日、英国で両適応症に承認されたことも発表された。日欧でも両適応症で第2部会/CHMPを通過しており、FDAだけ異なった判断をしている。

同社のNucala(mepolizumab)やアストラゼネカのFasenra(dupilumab)と同じ抗IL-5抗体だが作用が長く半年に一回の皮下注で足りる。中高量吸入コルチコステロイドを含む複数の喘息症管理薬で治療しても増悪を十分に抑制できない、好酸球増加型の喘息症を組入れた試験で、Exdensurを追加投与した群は臨床的に重要な増悪が偽薬追加群比で半減した。
 
リンク: GSKのプレスリリース(米国承認)
リンク: 同(英国承認)


rucaparibがある種の前立腺癌に本承認
(2025年12月17日発表)

FDAはPharmaand GmbHのRubraca(rucaparib)のBRCA変異型転移去勢抵抗性前立腺癌における加速承認を本承認に切替えた。従来の出番はアンドロゲン受容体標的薬とタクサン系化学療法の後だったが、アンドロゲン受容体標的薬の後に変更された。

化学療法未施行の患者を組入れた第3相TRITON3試験でPFS(無進行生存期間、放射線学的独立評価)がメジアン11.2ヶ月と、対照群(docetaxelなどを投与)の6.4ヶ月を上回り、ハザード・レシオ0.50だった。全生存期間のハザード・レシオは0.91、有意ではない。

Rubracaはファイザーが創製したPARP阻害剤。Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)がライセンスし承認取得まで達したが、経営破綻し事業売却した。

リンク: Pharmaand GmbHのプレスリリース


小型PCSK9阻害薬が承認
(2025年12月15日発表)

米国オハイオ州の新興医薬品会社、LIB Therapeuticsは、FDAがLerochol(lerodalcibep-liga)を高脂血症患者のLDL-C治療薬として承認したと発表した。運動療法や食事療法と共に、月一回、自己注する。適応はヘテロ接合型家族性高脂血症も含む、と記されているが、第3相LIBERATE-HoFH試験でアムジェンの抗PCSK9抗体Repatha(evolocumab)と同程度のLDL-C低下作用を示したホモ接合型家族性高脂血症には言及されていない。レーベルに治験実績として掲載されているのも心血管疾患リスクが高い患者を組入れたLIBERATE-HR試験とLIBERATE-CVD試験、そしてヘテロ接合型家族性高脂血症のLIBERATE-HeFH試験だけだ。LDL-C値はホモ接合型家族性高脂血症が一番高く、本剤のニーズが最も高いように思われるが、どうしたのだろうか?

Lerocholは、同社のフィブロネクチン系ペプチド技術を用いて創製した、PCSK9に結合するアドネクチン(11kDa)をアルブミンと結合して半減期を2週間超に伸ばし安定性を向上した融合蛋白。分子量は77kDaなのでRepatha(144kDa)の約半分。効果はRepathaと大差無さそうだが、室温で3ヶ月保存可能など取扱いで上回る。

同社はブリストル マイヤーズ スクイブから取得した資産を元に2015年に設立された。BMSは07年にアドネクチン技術を持つAdnecus Therapeuticsを買収しているので、この会社の流れを汲んでいるのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース


エンハーツがher2+MBCの一次治療に承認
(2025年12月15日発表)

FDAは第一三共がアストラゼネカと共同開発販売している抗her2抗体薬物複合体、Enhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki)を成人のher2陽性(IHC法で3+またはISH法で陽性)の切除不能/転移性乳癌の一次治療に承認した。ロシュの抗2C4抗体Perjeta(pertuzumab)と併用する。今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)での発表によると、第3相DESTINY-Breast09試験でこの二剤を併用した群は標準療法群(pertuzumabをtaxane系抗癌剤及び抗her2抗体trastuzumabと併用)よりPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)が長く(メジアン40.7ヶ月対26.9ヶ月)、ハザード・レシオは0.56だった。全生存期間は未成熟だがハザード・レシオは0.84(95%信頼区間0.59-1.19)と望ましい方向を向いている。ボトルネックである間質性肺疾患/肺臓炎はG3/4はなかったがG5が0.5%で発生した(標準療法群はゼロ)。

尚、本試験はEnhertuと偽薬を投与する単剤投与群も設定されているが、未だ結果が出ていない模様で、レーベル上はinvestigational therapy群と記されている。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】



PDUFA
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
25/12/30Corcept TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)
25/12/31Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性)
26/1推Disc MedicineのDISC-0974(bitopertin、赤芽球性(骨髄性)プロトポルフィリン症、CNPV案件)
26/1/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
26/1/14Sentynl TherapeuticsのCUTX-101(copper histidinate、メンケス病)
26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病、CNPV案件)
26/2推JNJのTecvayli(teclistamab-cqyv)とDarzalex Faspro(daratumumab、hyaluronidase-fihj)、多発骨髄腫、CNPV案件)
26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)


今週は以上です。

2025年12月14日

第1237回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • オンデキサは米国で販売中止に 
  • オーグメンチンがCNPV承認第1号に 
  • イーライリリー、トリプルGが体重を減らし膝関節痛を緩和 
  • SABCS:ファイザー、her2阻害剤の適応拡大試験が成功 
  • SABCS:ロシュ、経口SERDの早期乳癌試験が成功 
  • ノバルティス、抗BAFF受容体抗体のITP試験が成功 
  • DMD用抗体医薬の承認申請用試験が成功 
  • フェンフルラミンのCDKL5欠損症適応拡大試験が成功 
  • BCMA標的DドメインCAR-Tが承認申請に向け順調な歩み 
  • Arcus社の抗TIGHT抗体も第3相がフェール 
  • Rezolute社、高インスリン血症試験がフェール 
  • オプジーボをcHLの一次治療に承認申請 
  • テクベイリとダルザレックスの併用が3剤併用に勝つ 
  • ファイザー、ヒムペブジをインヒビター保有者に適応拡大申請 
  • FDA、またまた承認遅延が発生 
  • CHMPがIL-15融合蛋白などの承認を支持 
  • 発作性上室性頻拍の吸入用薬が承認 
  • ニラパリブ配合剤がBRCA2有害変異mCSPCに適応拡大 
  • Innovia、経口淋病薬が承認 
  • GSK、淋病薬が適応拡大 
  • アムジェン、ユプリズナが重症筋無力症に適応拡大 
  • イタリアンNPOのWiskott-Aldrich症候群遺伝子療法が承認 
  • 臍帯血由来細胞療法が重度再生不良性貧血に適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


オンデキサは米国で販売中止に
(2025年12月12日発表)

MedPage Todayの報道によると、アストラゼネカはXa阻害剤の解毒薬Andexxa(欧州ではOndexxya、日本はオンデキサ、andexanet alfa)の米国販売を12月22日付で自主的に中止する。血栓に関わる薬は効きすぎても効かなさすぎてもダメで、効果が高く安全な薬は夢の中だけの謳い文句になっているが、Andexxaも例外ではなかった。EUや日本はどうするのだろうか?

18年に米国で、19年にEUで、22年には日本でも、Xa阻害剤などで治療中に事故や病気、手術などで出血し、薬剤の効果をオフセットしなければならない時に用いる薬として承認された。PCC(プロトロンビン複合体濃縮製剤)も用いられているようだが、用法用量が確立し正式に承認されているのはAndexxaだけのようだ。薬効のエビデンスは健常者における抗Xa因子活性の変化。欧米承認時は臨床的便益が確立していなかったため承認が早かったFDAやEMAは加速/条件付き承認に留め、市販後に薬効確認するよう求めた。その時点ではANNEXA-4試験の結果が判明し、止血作用が認められた一方で血栓リスク懸念も浮上していたのだが、承認審査機関は万全なエビデンスとは決めかねたのかもしれない。

市販後薬効確認試験のANNEXA-I試験はXa阻害剤服用後に脳内出血を発症した患者を組入れて止血効果をPCCなどと比較した。血腫の増大を抑制する効果が有意に上回ったが、身体症状を評価するNIHSSは両群大差なく、mRSは数値上悪かった。懸念されるのは、血栓性イベントの発生率が10.3%対5.6%、虚血性脳卒中が6.5%対1.5%、血栓関連死が2.5%対0.9%と、Xa阻害剤解毒が裏目に出た症例が少なくないこと。臨床的便益に関する評価は同点または劣後となってしまっている。

アストラゼネカは市販後試験成績を提出したが、FDAは24年12月に審査完了通知を発出し本承認切替を承認しなかった。

リンク: MedPage Todayの報道


オーグメンチンがCNPV承認第1号に
(2025年12月9日発表)

FDAは、CNPV(委員長の国家的優先バウチャ)対象品目で初めて、Augmentin XR(amoxicillin, clavulanate potassium)を承認したと発表た。指定したのは10月なので、謳い文句通りに1~2ヶ月という光速承認を達成したことになる。但し、何を承認したのかは明記されていない。供給体制を強化するために国内生産を増強するという理由で指定したので、増産設備が承認されたのだろうが、開示内容がこうアバウトだと、バーニー・サンダース連邦議会上院議員とフランク・パロン下院議員がFDA委員長に書簡で問い質したように、仲良しに利益を供与しただけという疑いを招きかねない。

Augmentinはベータ・ラクタマーゼ配合複合ペニシリン。米国で1981年に承認、2002年に一日一回服用のXRが承認された。既にGE化している。当方はGSKが生産するものと勘違いしていたが、FDAは翌12月10日に発表文を加筆し、USAntibioticsであることを明らかにした。

改めて調べてみると、GSKの米国におけるペニシリン系抗生剤の生産拠点であるテネシー州のブリストル工場とAugmentinおよびAmoxil(amoxicillin)の米国権は、2010年にインドのDr. Reddy's Laboratoriesが取得していた。その後、2018年にUAEのNeopharmaが取得したが、輸入品との競合に破れ2020年に生産を中止、チャプター11申請に至った。救世主となったのが医療系人材会社Jackson Healthcareで、21年に事業を買収しUSAntibiotics名で工場を再稼働した。Augmentinはしばしば欠品が発生しており、同社は再三、国内供給体制の強化を訴えてきた。

残る疑問は2点。FDAのプレスリリースは様々な観点から承認審査したと言っているが、何を審査したのだろうか?新たに設備能力の増強/復旧が行われたのだろうか?また、USAntibioticsはCNPVをどう使うのだろうか?優先審査バウチャなどと異なり換金できないので、何かを承認申請しないと無駄になる。

リンク: FDAのプレスリリース

【新薬開発】


イーライリリー、トリプルGが体重を減らし膝関節痛を緩和
(2025年12月11日発表)

イーライリリーはLY3437943(retatrutide)が第3相Triumph-4試験で二つの主評価項目を達成したと発表した。26年には他の第3相の結果も判明する見込みで、承認申請が近づいている。

同社はGLP-1作用剤Trulicity(dulaglutide)やGLP-1・GIP作用剤Mounjaro/Zepbound(tirzepatide)を販売しているが、retatrutideはGLP-1とGIPの受容体に加えてグルカゴンの受容体も作動するため、トリプルGのニックネームを持つ。2~3種類の用量を週一回皮下注する第3相が進行中。今回の試験は、膝変形性関節炎を伴う肥満症/オーバーウェイト445人を偽薬、9mg、12mgに無作為化割付けして68週間投与し、体重や膝関節痛(WOMACで評価)の減少を図った。12mg群の場合は、2mgで開始し4週毎に4mg、6mg、9mg、12mgと漸増した。

同社のプレスリリースは薬自体の効果を示すefficacy estimandベースの解析結果に重点を置いている。体重(ベースライン平均は113kg)は各群2.1%、26.4%、28.7%低下し、WOMAC(同6.0)は40%、76%、74%低下した。米国のレーベルに掲載されるであろうtreatment-regimen estimandベース(投与を止めたりレスキュー・ドラッグにシフトした症例も継続追跡する、医師や患者が重視すべき指標)は体重が各群4.6%、22.9%、23.7%低下、WOMACは35.1%、67.2%、62.6%低下した。

有害事象による治験離脱率は各群4%、12%、18%。やせ過ぎによる中止を含む可能性があるようだ。特徴的な有害事象はジセステジア(皮膚のヒリヒリ感など)で発生率は各群0.7%、8.8%、20.9%だった。安全性と薬効のバランスを考えると、9mgで十分のように感じられる。Zepboundと比べた上乗せ効果は3剤÷2剤=1.5倍には見えないので、忍容性悪化とのバランスは重要だ。

リンク: 同社のプレスリリース


SABCS:ファイザー、her2阻害剤の適応拡大試験が成功
(2025年12月10日発表)

ファイザーは10月にTukysa(tucatinib)の第3相HER2CLIMB-05試験がポジティブな結果になったと発表したが、詳細をSABCS(サン・アントニオ乳癌シンポジウム)で発表した。her2陽性転移性乳癌の転移後一次治療としてtrastuzumab、pertuzumab、及びタクサン系抗癌剤による導入療法を受け疾病安定化以上の成果を得た患者約650人を組入れて、偽薬またはTukysaを併用する維持療法にTukysaを追加する便益を検討したところ、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.641、メジアン値は各群16.3ヶ月と24.9ヶ月と、統計的に有意且つ臨床的に意味のある改善を果たした。

副次的評価項目の全生存期間は未成熟で有意水準には達していないが、ハザード・レシオ0.539と点推定値は良好だ。適応拡大申請に向かう可能性もあるのではないか。

23年に買収したSeagenが18年にOncothyreon社を買収して入手していた、her2チロシン・キナーゼ阻害剤。her2標的薬による治療歴を持つher2陽性切除不能/転移乳癌用薬として20年に米国で承認、21年にはEUでも2剤以上のher2標的薬歴を持つ患者に限定で承認された。日本でも今年3月に化学療法歴のあるher2陽性切除不能/再発乳がんに承認申請された。

リンク: 同社のプレスリリース


SABCS:ロシュ、経口SERDの早期乳癌試験が成功
(2025年12月10日発表)

ロシュは11月にRG6171(giredestrant)が第3相lidERA Breast Cancer試験の中間解析で主目的を達成したと発表したが、詳細をSABCSで発表した。この日本も参加した試験は、ステージIからIIIまでの早期乳癌の切除術を受けたER陽性、her2陰性、そして中高リスク患者4100人以上を組入れて、30mgを一日一回、5年間投与する便益を医師が選んだ内分泌療法群と比較した。主評価項目のIDFS(侵襲性疾患なしで生存、乳房以外の二次性原発性癌はカウントしない)のハザード・レシオは0.70、p=0.0014だった。3年IDFS率は92.4%対89.6%でそれほどでもないが実薬対照試験なのでこの程度でもポジティブに受け止めるべきなのだろう。

この経口SERD(選択的エストロゲン受容体零落剤)は局所進行/転移乳癌のevERA試験が成功、ロシュは患者にいち早く届けるべく当局に提示する予定と9月に発表している。

リンク: 同社のプレスリリース


ノバルティス、抗BAFF受容体抗体のITP試験が成功
(2025年12月9日発表)

ノバルティスはVAY736(ianalumab)が第3相VAYHIT2試験で主目的を達成したと発表した。New Journal of Medicine誌にも論文刊行された。もう一本の結果を待って、27年頃に承認申請する考え。

BAFF(B-cell activating factor)受容体をブロックする抗体医薬。B細胞の機能やサバイバルを妨げる。MorphoSysとの共同研究の成果。様々な自己免疫性疾患で臨床開発されているが、最初にシェーグレン疾患を対象とした第3相試験2本が成功、26年上期に承認申請する予定。

今回の日本も参加した試験は、ステロイドによる治療に十分応答しなかった原発性免疫性血小板減少性紫斑症(ITP)患者152人を組入れて、同社のトロンボポエチン受容体作動剤Promacta(eltrombopag)と併用で、偽薬、3mg/kg、または9mg/kgを一ヶ月おきに4回静注する効果を比較した。主評価項目のtime to treatment failure(レスキュー治療が必要になるまでの期間)は、低用量群が偽薬比ハザード・レシオ0.58(p=0.023)、高用量群は0.55(p=0.021)、各群のメジアン値は4.7ヶ月、推定不能、13.0ヶ月だった。副次的評価項目のうち、血小板数持続的回復奏効率は各群39%、57%(偽薬比p=0.035)、62%(同0.023)。これらは片側p値なので、0.035はフェールとなる。NEJM論文抄録では数値が半分くらいなので、両側検定なのだろう。2用量を検定しているが、抄録やプレスリリースには多重性調整方法は記されていない。

有害事象は好中球減少症など。深刻有害事象の発生率は各群4%、6%、16%だった。

もう一本のVAYHIT1試験は一次治療においてコルチコステロイドと併用する便益を検討している。

8月にサノフィのBTK阻害剤Wayrilz(rilzabrutinib)が米国で他剤難治のITP要約として承認された。第3相LUNA3試験で持続的血小板反応率が23%と偽薬群の0%を大きく上回った。偽薬群の数値がかなり異なるが、こちらの試験は脾臓摘出を含むメジアン4治療歴を持つ難治性の患者が対象なので、成果が上がり難いのだろう。

リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: Cukerらの治験論文抄録(NEJM)


DMD用抗体医薬の承認申請用試験が成功
(2025年12月8日発表)

米国マサチューセッツ州のDyne Therapeutics(Nasdaq:DYN)はDYNE-251(zeleciment rostudirsen)が第1/2デュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)試験の承認申請用コフォートで ジストロゲン量や運動機能、呼吸機能を改善したと発表した。26年第2四半期に加速承認申請する考え。

DYNE-251は筋細胞で高発現するTfR1(transferrin receptor 1)に結合する抗体フラグメントにPMO(フォスフォロジアミデート・モルフォリノ・オリゴマー)を結合して特異性を向上したもの。米国でブレークスルー・セラピー指定、ファースト・トラック指定、希少小児疾患用薬指定され、米欧日でエクソン51スキップDMDに希少疾患用薬指定されている。

今回の解析は、4~16歳のエクソン51スキップ薬に応答する歩行可能/不能なDMD患者32人を20mg/kg群と偽薬群に3対1割付けして4週毎投与し、第6月のジストロフィン発現を比較した(ウエスタン・ブロット法)。主評価項目である筋組成修正後の数値がベースライン比で正常値の5.46%分、改善し、修正前でも2.87%分改善した。因みに、承認薬であるSarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)のExondys 51(eteplirsen)の試験では0.3%分の改善に留まった。

運動機能指標であるtime to riseや10メートル歩行走行テストもp<0.05だった。但し、もともと検出力不足であり、また、解析対象が試験薬群は21人、偽薬群は他のコフォートの被験者と合わせて18人と、評価対象が主評価項目と異なる。FVC%予測値は試験薬群の15人では維持されたが偽薬群20人では低下した。

現在のFDAは予測可能性が低下しており、Sareptaや日本新薬の薬と同じ評価項目を達成しても承認されるとは限らないのが要注意。

リンク: 同社のプレスリリース


フェンフルラミンのCDKL5欠損症適応拡大試験が成功
(2025年12月8日発表)

UCBは6月にfenfluramineが第3相GEMZ試験で主目的を達成し、できるだけ早く適応拡大申請したいと発表した。半年後、AES(米国癲癇学会)でデータ発表し、できるだけ早く適応拡大申請する考えを繰り返した。

Fintepla名でドラベ症候群やレノックス・ガストー症候群に承認されているセロトニン作用剤。今回の試験は、CDKL5(サイクリン依存性キナーゼ様5)の欠損により発達障害を齎す、新生児4~6万人に一人の希少疾患における便益を検討するために、日本を含むグローバルな施設で1~35歳で癲癇発作を上手く管理できていない患者86人を偽薬群と試験薬群に無作為化割付けして追加投与し、28日当たりCMSF(カウント可能な運動発作の頻度)を比較したところ、ベースライン比で各群2.8%減と47.6%減となり、有意な差があった。

安全性は過去の試験と同様。心臓弁膜症や肺動脈工血症は報告されなかった。(フェンフルラミンは高量をphentermineと併用で不満症の治療に当てるフェン・フェン法が米国で流行したが心臓弁膜症や肺動脈高血圧症のリスクが表面化し1997年にリコールされた。数百億ドル規模の損害賠償訴訟となり、メーカーのAmerican Home ProductsはWyethに社名変更後、ファイザーに買収された。)

リンク: UCBのプレスリリース


BCMA標的DドメインCAR-Tが承認申請に向け順調な歩み
(2025年12月6日発表)

Arcellx(Nasdaq:ACLX)がギリアド・サイエンシズ傘下のKiteと共同開発しているBCMA標的DドメインCAR-T(キメラ抗原受容体-T細胞療法)の第2相iMMagine-1試験の中間解析が今年もASH(米国血液学会)で発表された。3種類の代表的な抗癌剤による治療歴を持ち最終治療難治性の多発骨髄腫を組入れた単群試験で、ORR(全般的奏効率)は117人中96%、IMWG基準による厳格完全反応/完全反応率は74%だった。MRD(最小残存病変)が評価された96人中95%が陰性(閾値:1/100000セル)だった。

通常のCAR-Tは標的に結合する抗体可変領域を用いるのに対して、同社は免疫原性が低い8000Daの合成タンパク、D-Domainを用いており、結合後に解離するため免疫毒性を示しにくいことに期待している。本試験では遅延性神経毒性(パーキンソン症状、脳神経麻痺、ギラン・バレー症候群など)は見られなかった由。同社は26年の上市を狙っているため、来年前半には承認申請すると見込まれる。

リンク: 同社のプレスリリース


Arcus社の抗TIGHT抗体も第3相がフェール
(2025年12月12日発表)

Arcus Biosciences(NYSE:RCUS)はギリアド・サイエンシズと共同開発している抗TIGHT抗体、AB154(domvanalimab)の第3相胃腸食道癌試験が中間解析で無益認定され中止すると発表した。今後は他のパイプラインに注力する。抗TIGHT抗体は抗PD-(L)1抗体とシナジーの見込める大型薬候補として期待を集めたが、各社の開発品が続々、行き詰っている。

同社は中国のWuXi Biologics(薬明生物技術)が創製し中国のGloriaBio(誉衡生物)がライセンス開発している抗PD-1抗体zimberelimabの中国外の市場における権利をライセンスし、domvanalimab併用試験を進めてきた。今回のSTAR-221試験は局所進行、切除不能、転移性の胃・食道・胃食道接合部の腫瘍を対象に、FOLFOX/CAPOXレジメンにこの2剤を追加する便益をnivolumabを追加する群と比較した。主評価項目は全生存期間。非小細胞性肺癌の第3相試験も進行中。

リンク: 同社のプレスリリース


Rezolute社、高インスリン血症試験がフェール
(2025年12月11日発表)

米国カリフォルニア州の医薬品開発会社、Rezolute(Nasdaq:RZLT)はRZ358(ersodetug)の第3相試験がフェールした。インスリン受容体にアロステリックに結合して過剰作動を抑制するフル・ヒト抗体で、先天性や腫瘍による高インスリン血症の治療薬として第3相入りした。今回のsunRIZE試験は、標準療法(インスリン分泌抑制剤diazoxideやソマトスタチン類縁体など)でも低血糖が続く生後3ヶ月以上45歳以下の先天性高インスリン血症患者63人を組入れて、偽薬、5mg/kg、または10mg/kgを追加投与する便益を検討した。当初3回は2週毎、その後は4週毎投与したところ、最大用量群は週次低血糖イベント数が45%減少したが、偽薬群も40%低下した。副次的評価項目である連続グルコース・モニターによる時間加重評価も25%減と5%増でフェールした。有害事象は多毛症など。試験薬群は2名が深刻過敏反応により離脱した。

後期第2相では低血糖イベントが用量により最大7割減少したので、意外な結果。株価は暴落した。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


オプジーボをcHLの一次治療に承認申請
(2025年12月11日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは米国でOpdivo(nivolumab)を12歳以上の未治療ステージIII/IV古典的ホジキン型リンパ腫(cHL)に適応拡大申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は26年4月8日。23年のASCO(米国臨床腫瘍学会)での発表によると、研究者主導試験であるSWOG S1826試験で、doxorubicin、vinblastine、dacarbazineの3剤併用に追加する便益をファイザーの抗CD30抗体薬物複合体Adcetris(brentuximab vedotin)の追加と比較したところ、PFS(無進行生存期間)のハザード・レシオが0.48、片側p=0.0005だった。申請まで間が開いたが、死亡率のデータが今一つだったので、成熟またはそれに近づくまで待ったのかもしれない。。

リンク: BMSのプレスリリース


テクベイリとダルザレックスの併用が3剤併用に勝つ
(2025年12月9日発表)

ジョンソン エンド ジョンソンは、皮下注用抗BCMA・CD3二重特異性抗体Tecvayli(teclistamab-cqyv)と皮下注用抗CD38抗体Darzalex Faspro(daratumumab, hyaluronidase-fihj)の併用を再発/難治多発骨髄腫の2~4次治療としてテストした第3相MajesTEC-3試験で主目的を達成したと10月に公表したが、データをASH(米国血液学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表するとともに、米国で適応拡大申請したことを明らかにした。

この試験の対照群はpomalidomideまたはbortezomibをdexamethasone及びDarzalex Fasproと併用した。主評価項目のPFS(無進行生存期間)はハザード・レシオ0.17、副次的評価項目である全生存期間も同0.46と、大きな差をつけた。深刻有害事象の発生率は71%(対照群は62%)、致死的治療時発現有害事象の発生率は7.1%(同5.9%)だった。

Tecvayliは米欧で多発骨髄腫4次治療のモノセラピーとして承認、日本でも標準的治療が困難な多発骨髄腫に承認されている。

リンク: JNJのプレスリリース


ファイザー、ヒムペブジをインヒビター保有者に適応拡大申請
(2025年12月6日発表)

ファイザーは6月にHympavzi(marstacimab-hncq)が第3相BASIS試験のインヒビターを保有するA/B型血友病を組入れたコフォートで出血を93%抑制したことを明らかにしたが、ASH(米国血液学会)で学会発表すると共に、欧米で適応拡大申請したことを明らかにした。時期は明らかではないが、12月にFDAが申請受理、標準審査と仮定すると、審査結果は26年10月となる。

TFPI(tissue factor pathway inhibitor)を標的とする抗体医薬。24年に米欧日でインヒビターを持たない12歳以上のA型またはB型の血友病で、出血リスクが高くルーチン予防的投与が必要な患者向けに承認された。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA、またまた承認遅延が発生
(2025年12月8日発表)

Agios Pharmaceuticals(Nasdaq:AGIO)は米国でPyrukynd(mitapivat)を成人のアルファ/ベータ・サラセミアに適応拡大申請し、12月7日に審査期限が到来したが、連絡はなかったと発表した。審査期間中に肝臓障害リスクに関するREMS(リスク評価緩和戦略)を追加提出したため審査期間が3ヶ月延長されたが、その後は薬効・安全性データの追加提出はしていない由であり、純粋な回答遅延のようだ。

Prescription Drug User Fee法はカテゴリー毎に承認申請の90%以上について審査期限内に回答するよう求めている。逆に言えば1割足らずなら遅延してもよいし、過去にはそれ以上であったこともあるので、珍しいことではない。それでも、またまたと書かなければならないのは、現体制下で承認審査の帰結が波乱万丈だからだ。

欧州では10月にCHMP(医薬品科学的評価委員会)が肯定的意見を出している。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMPがIL-15融合蛋白などの承認を支持
(2025年12月12日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

ImmunityBio(Nasdaq:IBRX)のAnktiva(nogapendekin alfa inbakicept)はIL-15の変異体をIL-15受容体の一部や免疫グロブリンの一部と融合したもの。成人のBCG不応/再発高リスクNMIBC(筋層非浸潤性膀胱癌)に用いる。エビデンスは単群試験の反応率で、長期追跡データを提出し審査を受ける条件付き承認が支持された。米国では24年4月に承認。

リンク: EMAのプレスリリース

SFL PharmaceuticalsのAumseqa(aumolertinib)は不可逆的EGFRチロシン・キナーゼ阻害剤。成人のEGFR変異のある進行非小細胞性肺癌に用いる。Ex19欠損やL858R置換の場合は一次治療と明記されているが、T790Mは限定なしと文言が一部異なっている。活性成分はHansoh Pharma(翰森製薬集団、3692.HK)が2020年に中国で承認を取得した。2020年にEQRxが中国外の権利を取得したが、FDAが中国だけで実施された試験の信憑性を厳しく見るようになり、経営が行き詰った。SFLはHansohの子会社とする報道もあり、開発を継承したのかもしれない。

リンク: EMAのプレスリリース

GSKのExdensur(depemokimab)は抗IL-5抗体。Fc領域を改変し血漿半減期を延長、半年に一回の皮下注で足りるようにした。12歳以上の、高量吸入コルチコステロイドを含む複数の管理薬を用いても管理不十分な好酸球性喘息症に追加、または、成人の管理不十分な鼻茸を伴う慢性副鼻腔炎に用いる。日本では11月に第二部会通過、米国の審査期限は今月16日。

リンク: EMAのプレスリリース

Cytokinetics(Nasdaq: CYTK)のMyqorzo(aficamten)は心ミオシン阻害剤。成人の症候性閉塞性肥大性心筋症に用いる。心臓の収縮性を抑制し、左室流出路閉塞を緩和する。有害事象は眩暈やLVEF低下、頻脈、高血圧など。米国は審査期限が12月26日に延期された。日本はバイエルがライセンス。

リンク: EMAのプレスリリース

モデルナのmNEXSPIKEはmRNA型COVID-19ワクチン。同社のSpikevaxはウイルスのスパイク蛋白の遺伝子を配合し冷凍保存が必要だが、mNEXSPIKEはスパイク蛋白の一部の遺伝子だけで有効成分量が5分の1と少なく、クリニックでは冷蔵保存が可能。第3相Spikevax対照試験で予防効果が非劣性であることを確認、米国では5月に承認、日本でも承認審査中。

リンク: EMAのプレスリリース

一方、否定的意見となったのはAnavex Life Sciences(Nasdaq:AVXL)のANAVEX2-73(blarcamesine)。経口sigma-1受容体アゴニストで早期アルツハイマー病薬として承認申請されたが、第3相試験でADAS-cog13やADCS-ADLの改善が見られず、会社側はSIGMA1遺伝子に変異の無いサブグループだけでも承認を望んだが、このグループでも十分な薬効は見られなかったようだ。nitrosmaine生成リスクも十分に排除されていない(検討不十分)。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大で肯定的意見となったのは、

  • SOBIのAspaveli(pegcetacoplan)・・・12歳以上のC3腎症と原発性免疫複合体膜性増殖性糸球体腎炎(MPGN)。禁忌や不耐でない限りRAS阻害剤と併用する。臨床試験で蛋白尿やeGFRが改善した。米国ではライセンス元のApellis Pharmaceuticals(Nasdaq:APLS)が7月に適応拡大。
  • MylanのDovprela(pretomanid)・・・成人のrifampicin抵抗性結核菌による肺結核にbedaquiline、linezolid、及びmoxifloxacinと併用。
  • バイエルのEylea(aflibercept)・・・網膜中心静脈閉塞症(CRVO)、網膜静脈分枝閉塞症(BRVO)、半側網膜静脈閉塞症を含む網膜静脈閉塞症(RVO)に伴う黄斑浮腫。対象は114.3mg/mL液、すなわち、米国の製品名ではEylea HD。
  • GSKのNucala(mepolizumab)・・・成人の管理不良好酸球性COPDの維持療法として吸入コルチコステロイド、長期作用性ベータ2アゴニスト、長期作用性ムスカリン受容体拮抗剤と併用。4週毎皮下注。
  • アムジェンのUplizna(inebilizumab)・・・成人の抗AChR抗体又は抗MuSK抗体を持つ重症筋無力症。米国で承認されたところ(下記)。
  • MSDのWinrevair(和名エアウィン、sotatercept)・・・成人の肺動脈高血圧症のうち、既承認のWHO機能クラスIIとIIIに加えて、IVも適応とし、運動能力改善という効能を除外(限定を止める趣旨か)。同IIIとIVの患者を組入れたZENITH試験で運動能力だけでなくこの機能クラスや増悪による入院リスクというハードな評価項目も改善した。米国では10月に限定解除。

添付文書の記述の一部変更が支持されたのはファイザーの抗真菌薬Vfend(voriconazole)。ある種の薬剤に過敏反応する患者は本剤にもリスクがあるため禁忌となるが、例示にeplerenoneとvoclosporinを追加するもの。

リンク: EMAのプレスリリース

適応拡大承認に否定的意見となったのは、Vanda Phaarmaceuticals(Nasdaq: VNDA)のHetlioz(tasimelteon)。3~15歳のスミス・マギニス症候群における夜間の睡眠障害という適応効能について、臨床試験のデザインや実施状況、解析手法に疑問を呈した。米国でも一度はrefuse to file(申請却下)となったがその9ヶ月後に承認された。

リンク: EMAのプレスリリース

申請撤回はカナダのOctane Medical Groupのグループ企業であるTissue Engineering Technologies AGが申請したJelrix(autologous cartilage-derived articular chondrocytes, in-vitro expanded)。症候性膝軟骨欠損の治療法で、患者自身から採取した軟骨細胞を培養したもの。7月にCHMPが臨床試験のデザインや生産管理に疑問を呈し、否定的意見を出していた。

リンク: EMAのプレスリリース

【承認】


発作性上室性頻拍の吸入用薬が承認
(2025年12月12日発表)
カナダのMilestone Pharmaceuticals(Nasdaq:MIST)はFDAがCardamyst(etripamil)をPVST(発作性上室性頻拍)治療薬として承認したと発表した。短期作用性カルシウム・チャネル・ブロッカーで、発症時に自己判断で点鼻噴霧する。臨床試験で洞調律までのメジアン時間が17分と偽薬群の54分を大きく下回った。26年第1四半期に上市予定。

23年に承認申請したが第3相の治験記録に不備があった模様で受理されず、24年に修正して申請したものの今年3月に審査完了となった。承認申請後にnitrosamine生成に関する基準が変わり追加情報の提出が必要になったことや出荷前検査施設のオーナー変更に伴う査察が必要になったため。手間取ったが最初のゴールに到達、次は心房細動適応拡大試験を実施する考え。

リンク: FDAのプレスリリース


ニラパリブ配合剤がBRCA2有害変異mCSPCに適応拡大
(2025年12月12日発表)

FDAはジョンソン エンド ジョンソン・グループのJanssen BiotechのAkeega(niraparib、abiraterone acetate)をBRCA2有害変異のある(疑い例も含む)成人のmCSPC(転移去勢感受性前立腺癌)に用いる適応拡大を承認した。prednisoneと併用する便益をabiraterone acetateとprednisoneだけのレジメンと比較した第3相AMPLITUDE試験のサブグループ323人に対する探索的解析で、PFS(無進行生存期間、治験医評価)のハザード・レシオが0.46、メジアン値は未達、対照群は26ヶ月だった。本試験はBRCA1/2変異以外にも様々な生殖細胞系/体細胞系相同組換不全を持つ患者を組入れたが、BRCA2変異以外の373人ではハザード・レシオ0.88で有意差がなかった。

昔と比べて、サブグループ分析に基づき承認される事例が増えたが、おそらく、臨床試験のデザイン自体が洗練されて、分子プロファイリングの事前プロトコル、実施、解析がきちんと行われるようになったのだろう。

niraparibはTesaroがMSDからライセンスして開発したPARP阻害剤。Tesaroは19年にGSKに買収されたが、その3年前にJanssen Biotechに前立腺癌領域の開発販売権を供与していた。日本市場は対象外で1年後に武田薬品が全領域でライセンスしたが、今回の用途・用法は開発されているのだろうか?

リンク: FDAのプレスリリース


Innovia、経口淋病薬が承認
(2025年12月12日発表)

Innoviva(Nasdaq:INVA)の子会社であるInnovia Speciality Therapeuticsは、FDAがNuzolvence(zoliflodacin)を12歳以上、体重35kg以上の非複雑性尿性器淋病の治療薬として承認したと発表した。標準的第1選択療法が禁忌、不耐、あるいは患者拒否の場合に適応になる。経口懸濁液を一回投与する。薬剤耐性感染症の新薬を開発する、日本政府も資金拠出しているスイスの非営利法人、Global Antibiotic Research & Development Partnershipが主導した第3相試験で、azithromycinとceftriaxoneを併用する群と比較して、微生物学的治癒率が非劣性だった。

アストラゼネカの感染症パイプラインを継承してスピンアウトしたEntasis Therapeuticsを22年に買収して入手したもの。

リンク: 同社のプレスリリース


GSK、経口淋病薬が適応拡大
(2025年12月11日発表)

GSKはナイセリア淋病治療薬Blujepa(gepotidacin)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。今年3月に12歳体重40kg以上の小児と成人の女性の感受細菌による非複雑性尿路感染症の経口治療薬として承認されたところだが、12歳45kg以上の感受淋菌による非複雑性尿性器淋病(但し、標準療法が禁忌、不耐、拒否の場合)が追加された。第3相EAGLE-1試験で微生物学的奏効率が対照群(ceftriaxoneとazithromycin)比で非劣性だった。

リンク: 同社のプレスリリース


アムジェン、ユプリズナが重症筋無力症に適応拡大
(2025年12月11日発表)

アムジェンは、FDAがUplizna(inebilizumab-cdon)を成人のAChR陽性またはMuSK陽性の重症筋無力症に用いることを承認したと発表した。第3相MINT試験で300mgを最初は2週おいて2回、その後は半年毎に点滴静注したところ、第26週MG-ADLが偽薬比1.9点低下した。この試験は多くがAChE阻害剤などを開始前から継続使用した。ステロイド治療を受けていた患者は24週までに5mg/日まで漸減するプロトコルになっており、これが可能な点も便益になりうる。

Upliznaは抗CD19 afucosylated抗体。抗AQP4抗体陽性視神経脊髄炎スペクトラム障害やIgG4関連疾患の治療にも承認されている。

リンク: アムジェンのプレスリリース


イタリアンNPOのWiskott-Aldrich症候群遺伝子療法が承認
(2025年12月9日発表)

FDAはFondazione Telethon ETSのWaskyra(etuvetidigene autotemcel)をWiskott-Aldrich症候群の治療薬として承認した。6ヶ月児以上でWAS遺伝子変異を持ち、造血幹細胞移植が適切だがHLA適合近親ドナーが見つからない場合に適応になる。臨床試験で重度感染症や中重度出血が治療前より大きく減少した。有害事象は感染症や熱性好中球減少症などの骨髄抑制関連イベント、ラッシュや過敏反応、肝障害など。

この疾患は出生男児25万人に一人の超希少疾患。免疫細胞や血球細胞におけるWAS遺伝子の異常により感染症や出血を罹患しやすい。造血幹細胞移植で治癒する可能性があるが、ドナーが見つかるとは限らない。Waskyraは患者から採取したCD34陽性幹細胞/造血細胞にレンチウイルスを用いてヒトWASのcDNAを導入し、培養して患者に戻すもの。

この団体はイタリアで様々な社会活動を行っているTelethonグループの希少疾患研究財団。非営利法人の薬が米国で承認されたのは初めて。FDAは小児希少疾患優先審査バウチャを供与した。

リンク: FDAのプレスリリース


臍帯血由来細胞療法が重度再生不良性貧血に適応拡大
(2025年12月8日発表)

FDAはGamida Cell社のOmisirge(omidubicel-onlv)を6歳以上のSAA(重度再生不良性貧血)に用いることを承認した。RIC(骨髄非破壊的前処置)を受け、適合ドナーが見つからない患者が適応になる。14人に投与した試験で12人が好中球数の安定的回復を達成、施行のメジアン11~12日後には好中球数が回復し赤血球輸血や血小板輸血に依存しなくなった。

臍帯血由来の細胞療法。通常の臍帯血輸血は十分な量を確保するのが困難で好中球生着に時間がかかり、感染症のリスクを負うことが弱点。同社はニコチンアミドを用いて機能や培養量を増強する技術を応用してOmisirgeを開発、23年に米国で血液癌の臍帯血移植用薬として承認を取得した。イスラエル起源の企業だが、24年にHighbridge Capital Managementの完全子会社となり、25年には英国のAyrmid Ltd.の子会社になった。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)・・・回答遅延
25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
25/12/30Corcept TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)
25/12/31Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性)
26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
26/1/23第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、her2乳癌一次治療を追加)
26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)
26/2推サノフィのTzield(teplizumab-mzwv、8歳以上の最近診断されたステージ3の一型糖尿病)
26/2/8RegenxbioのRGX-121(clemidsogene lanparvovec、MPS II型)
26/2/20MSDのKeytruda(pembrolizumab、白金抵抗性卵巣癌)
26/2/21Vanda PharmaceuticalsのBysanti(milsaperidone、統合失調症と双極障害I型)
26/2/25大鵬薬品のInqovi(decitabineとcedazuridine、新患急性骨髄性白血病一次治療)
26/2/28Regeneron PharmaceuticalsのDupixent(dupilumab、アレルギー性真菌性鼻副鼻腔炎)
25/2/28Ascendis PharmaのTransCon CNP(navepegritide、軟骨無形成症)



今週は以上です。

2025年12月6日

第1236回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • HPVワクチンは一回接種で足りる 
  • FDA、重金属含有アーユルヴェーダ製品に警告 
  • 発達性癲癇性脳症の承認申請用試験が成功 
  • アンドロゲン受容体拮抗剤のAGA試験が成功 
  • 経口ブラジキニン受容体拮抗剤の第3相HAE治療試験が成功 
  • Capricor、deramiocelの第3相が成功 
  • スタルガルト病薬の第3相が成功 
  • アストラゼネカ、難治高血圧症用薬を承認申請 
  • ブレヤンジがMZLに適応拡大 
  • ジャイパーカが米国でもCLL/SLLに承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


HPVワクチンは一回接種で足りる
(2025年12月3日論文刊行)

NIH(米国国立衛生研究所)などが実施したヒト・パピローマ・ウイルス(HPV)ワクチンの第3相試験論文がNew England Journal of Medicine誌で刊行された。16型と18型のウイルスの持続感染を予防する効果は1回接種でも2回接種でも同じであることが確認された。

このESCUDDO試験はコスタリカで12~16歳の女性約2万人を2価HPVワクチン(GSKのCervarix)1回接種群、同2回接種群、9価HPVワクチン(MSDのGardasil 9/和名シルガード9)1回接種群、同2回接種群の4群に無作為化割付けしてHPV16またはHPV18の持続的感染リスクを5年間追跡したもの。結果は、Cervarixは1回接種群と2回接種群の100人当り感染率群間差が-0.13(95%信頼区間-0.45, 0.15)で非劣性p<0.001、Gardasil 9は0.21(同-0.09, 0.51)でp<0.001と、両製品とも非劣性仮説が支持された。

CervarixはEUでは9-14歳は2回接種、15歳以上は3回接種、日米は年齢不問で3回接種とされ、Gardasilは日米欧ともに9~14歳は2回又は3回、15~45歳は3回となっているが、少なくとも12~16歳の女性は、一回接種で済ませて接種を受ける手間やおそらくは接種費用も軽減できることになる。

リンク: Kreimerらの治験論文抄録(NEJM)


FDA、重金属含有アーユルヴェーダ製品に警告
(2025年12月2日発表)

FDAは、アーユルヴェーダ製品の一つから高水準の重金属が検出されたことを公表した。高血圧、腎臓障害、胃腸症状、神経症状が現れるリスクがある。

アーユルヴェーダはインド発祥の代替療法。米国では病気の予防、治療、診断、治癒用に販売することは違法である。消費者の有害事象報告に基づきFDAがNavaFresh.comで購入したRheumacare Ayurvedic Proprietary Medicineを検査したところ、重金属中毒を起こしかねないほど高水準の鉛や水銀、ストリキニーネ、ヒ素などが検出された。

このような場合、FDAは消費者保護のためメーカーにリコールを推奨するとともに、製造業者に警告状を送付し輸入アラートの対象とすることで米国市場に持ち込まれないようにするのだという。有害なら販売を禁止できないのだろうか?

リンク: FDAのプレスリリース

【新薬開発】


発達性癲癇性脳症の承認申請用試験が成功
(2025年12月4日発表)

米国ボストンのPraxis Precision Medicines(Nasdaq:PRAX)は、PRAX-562(relutrigine、経口液)がEMBOLD試験の中間解析でポジティブな成果を上げたと発表した。FDAと相談した上で承認申請の時期を決定する考え。

この試験は、2歳以上のSCN2AまたはSCN8A変異を持つ発達性及び癲癇性脳症(DEE)の小児における安全性や癲癇発作抑制作用を検討している。承認申請用コフォートでは70人を偽薬群または試験薬群(1mg/kg/日)に無作為化割付けして28日間経口/経胃瘻投与して、癲癇発作のリスクを比較した。中間解析の薬効データに基づきデータ監視委員会が中止を勧告した。

同社は特殊な癲癇の治療薬を開発している。電位依存性Naチャネルの遺伝子であるSCNに2A変異または8A変異を持つDEE患者数は米国で5000人程度と推定されている。別途、遺伝子型不問でDEE患者も組入れたEMERALD試験も進行中。更に、核酸薬なども開発中。

リンク: 同社のプレスリリース


アンドロゲン受容体拮抗剤のAGA試験が成功
(2025年12月3日発表)

ダブリン籍スイス上場の製薬会社、Cosmo Pharmaceuticals N.V.(SIX: COPN)は、clascoterone 5%局所用溶液が第3相AGA(アンドロゲン性脱毛症)試験二本で主評価項目を達成したと発表した。1年安全性試験を完了して26年に欧米で承認申請する考え。

活性成分は局所性アンドロゲン受容体阻害剤で、同社からスピンアウトしたCassiopeaが1%局所用クリーム製剤を尋常性挫創用薬として開発、20年に米国でWinlevi名で承認取得している。今回のScalp 1と2試験は、二本合計で1465人を組入れて1日二回、6ヶ月塗布し、TAHC(標的エリア毛髪数)の変化を偽薬と比較した。一本は偽薬比539%、もう一本は168%増加した。共同主評価項目の患者評価も2本合計で有意に上回った。有害事象は偽薬並みだった。

既存のAGA薬と薬効評価方法が異なるが、比較可能なデータはあるのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


経口ブラジキニン受容体拮抗剤の第3相HAE治療試験が成功
(2025年12月3日発表)

スイスのPharvaris(Nasdaq:PHVS)は、PHA-022121(deucrictibant)が第3相HAE(遺伝性血管浮腫)発作治療試験で主目的を達成したと発表した。26年上期に承認申請する考え。

bradykinin B2受容体の拮抗剤。即放性経口カプセルを発作治療に、持効性経口錠を発作予防に、第3相試験中。今回の日本も参加したRAPIDe-3試験は12歳以上のHAE患者134人を偽薬群と20mg群に無作為化割付けして、発作時に服用する便益を検討した。被験者の23%はHAE発作予防薬である武田薬品の抗カリクレイン抗体Takhzyro(lanadelumab-flyo)などを同時使用していた。主評価項目のTOSR(投与から症状緩和までの時間)は試験薬群がメジアン1.28時間、偽薬群は12時間追跡期間中にはメジアン未達だった。試験薬関連治療時発現有害事象は偽薬群の1%、試験薬群は5%で、報告された。

作用機序は武田/シャイアのFirazyr(icatibant)と同じだが、他の条件が同じなら皮下注用ではなく経口投与できることが長所になる。

リンク: 同社のプレスリリース


Capricor、deramiocelの第3相が成功
(2025年12月3日発表)

Capricor Therapeutics(Nasdaq:CAPR)は CAP-1002(deramiocel)が第3相HOPE-3試験で主目的を達成したと発表した。デュシェンヌ型筋ジストロフィーによる上腕機能の低下を抑制し、左心機能の悪化も大きく抑制した。第2相試験に基づく承認申請はFDAから審査完了通知を受領したが、完全回答する考え。

他家心細胞塊由来の細胞療法。体内でエクソソームを分泌し、酸化ストレスや炎症、線維化を抑制、筋細胞の生成を刺激することで運動機能や新機能を改善するとされる。日本と欧州市場は日本新薬がライセンスしている。

第3相は米国で106人を組入れて、1.5億セルを3ヶ月毎に4回投与する効果を偽薬と比較した。主評価項目はPUL(Performance of the Upper Limb ver. 2.0)総スコア。進行が偽薬比54%小さかった。p値は0.029であまり低くない。副次的評価項目のLVEF(左室駆出率)の低下も91%小さかった。p=0.041とこれも十分に低くはない。

第2相試験でも薬効主評価項目である12ヶ月間のPULの悪化が偽薬より有意に小さく、LVEFの悪化も抑制したが、FDAはフェールと判定した。同社は非パラメトリック検定では有意と反論しているが、検定方法次第とは当方には初耳だった。今回の結果もp値があまり低くないので非パラメトリック検定なのだろうか?

リンク: 同社のプレスリリース


スタルガルト病薬の第3相が成功
(2025年12月1日発表)

米国の医薬品開発企業Belite Bio(Nasdaq:BLTE)は、LBS-008(tinlarebant)の第3相スタルガルト病試験で主目的を達成したと発表した。来年上期に米国で承認申請する考え。既に中国や英国では中間解析に基づく承認申請に同意を得ている。

スタルガルト病の患者の多くはABCA4遺伝子の変異を持ち、ビタミンAの代謝物が網膜に蓄積することにより萎縮性病変が発生、中心視力等が低下する。tinlarebantはビタミンAの輸送に関わるRBP4(レチノール結合蛋白4)のアンタゴニスト。今回のDRAGON試験は、12~20歳の、STGD1(スタルガルト病1型)で、ABCA4遺伝子に一つ以上の変異を持ち、萎縮性病変が認められ、法的失明には至っていない患者104人を、5mg錠を一日一回経口投与する群と偽薬群に2対1割付けして2年間投与した。試験薬群は主評価項目である萎縮病変の拡大が偽薬群を35.7%下回った。プレスリリースに添付されたグラフを見ると、各群0.6mm2と1mm2程度の増加になっている。

本試験は視力の変化も観察したが、事前の予想通り、両群ともそれほど悪化しなかったとのこと。承認されている薬がない難病であることが追い風になる一方で、臨床的便益は未確認ということにならないか危惧される。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


アストラゼネカ、難治高血圧症用薬を承認申請
(2025年12月2日発表)

アストラゼネカはbaxdrostatを成人の管理不良/治療抵抗性高血圧症の治療薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。優先審査バウチャを用いたため、26年第2四半期に審査結果が判明する見込み。

19年にロシュからライセンスしたCinCor Pharmaを23年に買収して入手した、経口アルドステロン合成酵素阻害剤。日本も参加した第3相BaxHTN試験で成人の管理不良(2種類の降圧剤を併用しても血圧管理目標未達)または治療抵抗性(3種類以上併用でも未達)の高血圧症患者796人を組入れて追加投与したところ、1mg1日1回投与群は座位収縮期血圧が偽薬比8.7mmHg低下、2mg1日1回投与群も同9.8mmHg低下した。有害事象はカリウム値上昇やナトリウム値低下など。

2mgだけをテストした第3相Bax24試験も成功したが、下記プレスリリースは言及していない。BaxHTN試験では1mgも2mgも効果は大差ないように見えるので1mgだけ承認申請したのかもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


ブレヤンジがMZLに適応拡大
(2025年12月4日発表)

FDAはブリストル マイヤーズ スクイブの子会社であるJuno TherapeuticsのBreyanzi(lisocabtagene maraleucel)を辺縁帯リンパ腫(MZL)に適応拡大することを承認した。成人の再発/難治MZLで2次以上の全身性治療歴を持つ患者が適応になる。エビデンスとなるTRANSCEND FL試験のMZLコフォートで、intent-to-treatベース(アフェレーシスが施行された全77人)におけるORR(客観的反応率)が84.4%だった。Breyanziを投与できた66人におけるORRは95.5%、反応持続期間はメジアン値未達、95%下限は25ヶ月。。

リンク: FDAのプレスリリース


ジャイパーカが米国でもCLL/SLLに承認
(2025年12月3日発表)

FDAはイーライリリーのJaypirca(pirtobrutinib)を共有結合性BTK阻害剤歴を持つ成人の慢性リンパ性白血病/小リンパ球性リンパ腫(CLL/SLL)に適応拡大した。第3相BRUIN CLL-321試験でPFS(無進行生存期間、独立評価委員会方式)がメジアン11.2ヶ月と、idelalisibまたはbendamustineをrituximabと併用した対照群の8.7ヶ月を上回り、ハザード・レシオは0.58、p=0.01だった。全生存期間はハザード・レシオ1.09(95%信頼区間0.68-1.75)と冴えないが、対照群の4割強が進行後に試験薬にスイッチしたので、効果が希薄化されたのかもしれない。

Jaypircaは米国で23~24年に難治/再発マントル細胞腫の3次治療薬として加速承認、23年にはCLL/SLLの3次治療でも加速承認されたが、今回の適応はEUが今年3月、日本も9月なので、後れを取った。

リンク: FDAのプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25/12推ノボ ノルディスクのSogroya(somapacitan、低出生体重児等に適応拡大)
25/12/7Agios PharmaceuticalsのPyrukynd(mitapivat、サラセミア)
25/12/11GSKのGSK2140944(gepotidacin、淋病)
25/12/12LIB TherapeuticsのLIB003(lerodalcibep、高脂血症)
25/12/13Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)・
25/12/14アムジェンのUplizna(inebilizumab-cdon、重症筋無力症追加)
25/12/15Innovivaのzoliflodacin(淋病)
25/12/16GSKのGSK3511294(depemokimab、好酸球性喘息症と慢性副鼻腔炎)
26/12/16Aldeyra TherapeuticsのADX 102(reproxalap、ドライアイ)
25/12/22ロシュのLunsumio(mosunetuzumab皮下注用、濾胞性リンパ腫3次治療)
25/12/26OmerosのOMS721(narsoplimab、HSCT関連血栓性微小血管症)
25/12/26CytokineticsのCK-3773274(aficamten、閉塞性肥大性心筋症)
25/12/28サノフィのSAR442168(tolebrutinib、非再発性二次性多発硬化症)
25/12/30Corcept TherapeuticsのCORT-125134(relacorilant、クッシング症候群)
25/12/30Vanda Pharmaceuticalsのtradipitant(乗り物酔い)
25/12/31Outlook TherapeuticsのLytenava(bevacizumab-vikg、加齢性黄斑変性)
26/1/5Denali TherapeuticsのDNL310(tividenofusp alfa、ハンター症候群)
26/1/10Atara Biotherapeuticsのtabelecleucel(移植後リンパ増殖性疾患)
26/1/13Travere TherapeuticsのRE-021(sparsentan、巣状分節状糸球体硬化症を追加)
26/1/17JNJのTAR-200(gemcitabine 膀胱内留置用、非筋層浸潤膀胱癌)
26/1/23第一三共のEnhertu(fam-trastuzumab deruxtecan-nxki、her2乳癌一次治療を追加)
26/1/28Tenpoint TherapeuticsのBrimochol PF(carbacholとbrimochol tartrate、老視)
26/1/31Aquestive TherapeuticsのAnaphylm(dibutepinephrine、アナフィラキシー等)
26/1/31Pharmingのleniolisib(4-11歳の活性期phosphoinositide 3-kinase deltaに適応拡大)



今週は以上です。