2023年8月27日

第1117回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • ウゴービ、今度は心不全試験が成功 
  • カボメティクス、NET試験が成功、mCRPC試験はフェール 
  • レットヴィモの甲状腺髄様腫試験が成功 
  • キイトルーダ・レンビマ併用試験がまたフェール 
  • Rybrevantの化学療法併用をsBLA 
  • イクスタンジを高リスク去勢感受性前立腺癌に適応拡大申請 
  • セルビエ、IDH1阻害剤の適応拡大を申請 
  • Geron社、テロメラーゼ阻害剤の優先審査ならず 
  • 胎児のRSV予防ワクチンが米欧で承認 


【新薬開発】


ウゴービ、今度は心不全試験が成功
(2023年8月25日発表)

ノボ ノルディスクはGLP-1作用剤Wegovy(semaglutide)のSTEP HFpEF試験の結果をESC(欧州心臓学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表した。駆出率を保持している心不全(HFpEF)の肥満症患者における心不全症状改善効果が確認された。既に承認されている適応と推測されるが、臨床的な便益が確立すれば保険還付を受けられるようになるだろう。先ごろ成功発表された心血管疾患再発予防試験、SELECTとともに、レーベル収載申請を行う考え。

今回の試験は、承認用量である2.4mgを週一回、52週間に亘り皮下注射して、KCCQ-CSS(カンザスシティ心筋症質問票-臨床要約スコア)の変化を偽薬群と比較したところ、各群16.6点と8.7点上昇(改善)し、有意な差があった。共同主評価項目である体重も各群13.3%と2.6%減少し有意差があった。副次的評価項目の6分歩行テストは各群21.5メートルと1.2メートル改善した。深刻有害事象の発生率は試験薬群より低かったが有害事象による治験離脱率は各群13%と5%だった。

SELECT試験の主評価項目は心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的卒中という重大イベントの複合評価項目だった。今回は症状や身体的制限に関する患者の主観的評価で、心不全の確立した評価手法とのことだが、客観性や迫力の点で見劣りする。

他剤では、ベーリンガー・インゲルハイム/イーライリリーのSGLT2阻害剤Jardiance(empagliflozin)がEMPEROR-Preserved試験でHFpEFの心血管死/心不全入院を2割抑制する効果を示し、欧米などで適応拡大した。探索的に実施されたKCCQ-CSSの解析は、52週間で4点程度上昇し、偽薬を1.56点上回ったと報告されている。

それと比べるとWegovyのKCCQ-CSSデータはかなり良いが、偽薬群のデータもかなり違うので、比較できるかどうか分からない。効果が高いとしても、心血管死/心不全入院を抑制する効果も上回るとは限らない。偽薬比上回るトレンドが見られたとのことだが、主評価項目に選ばなかったのは、大きな期待はしていなかったからだろう。

STEP HFpEF試験は二型糖尿病も併発している患者を組入れた試験も進行中。二本のプール分析で心不全入院抑制効果が有意水準に達するかどうか、注目される。

リンク: 同社のプレスリリース
リンク: Kosiborodらの治験論文要旨(NEJM)


カボメティクス、NET試験が成功、mCRPC試験はフェール
(2023年8月24日発表)

Exelixis(Nasdaq:EXEL)はCabometyx(cabozantinib)の第3相の神経内分泌腫瘍(NET)試験と転移去勢抵抗性前立腺癌の成功を公表した。

前者はCABINET試験。NCI(米国立腫瘍研究所)が組織した研究者グループがsomatostatin以外の承認されている薬による治療歴を持つ進行膵NET93人とカルチノイド腫瘍(膵外NET)197人を別のコフォートとして組入れ、PFS(無進行生存期間)を偽薬群と比較した。中間解析でデータ安全性監視委員会が成功認定し、盲検解除を勧告した。データは未公表。

リンク: 同社のプレスリリース(8/24付)

後者はTecentriq(atezolizumab)と併用する便益を検討するロシュとの臨床試験提携の一環であるCONTACT-02試験。新種ホルモン療法歴を持つ、軟組織疾患を伴う転移去勢抵抗性前立腺癌を組入れて、PFSや全生存期間を別の新種ホルモン療法(abirateroneとprednisoneの併用、またはenzalutamide)と比較した。PFSは有意に向上、全生存期間は未成熟だがトレンドが見られた。データは未公表。

CabometyxはVEGFR阻害剤の一つで欧州ではイプセン、日本では武田薬品が開発販売している。17~20年に米欧日で腎細胞腫に承認され、肝細胞腫などにも適応拡大した。

リンク: 同社ののプレスリリース(8/21付)


レットヴィモの甲状腺髄様腫試験が成功
(2023年8月22日発表)

イーライリリーは、Retevmo(selpercatinib)のLIBRETTO-531試験が中間で目的達成したと発表した。進行/転移RET変異甲状腺髄様腫の一次治療試験で、PFS(無進行生存期間、独立データ監視委員会評価)が医師が選んだ薬(cabozantinibまたはvandetanib)を有意に上回った。数値は未発表。

Loxo Oncologyを買収して入手したRET阻害剤で、20~22年に米欧日で上記適応などで承認されている。米国は加速承認、EUは条件付き承認なので、本承認切替申請を行うことになる。尚、EUは当初はcabozantinibまたはvandetanib歴を持つ患者にしか条件付き承認しなかったが、昨年、限定解除し、米国と同様になった。

リンク: 同社のプレスリリース


キイトルーダ・レンビマ併用試験がまたフェール
(2023年8月25日発表)

MSDとエーザイは18年に前者のKeytruda(pembrolizumab)と後者のLenvima(lenvatinib)の併用法などの共同開発で合意し、様々な腫瘍の臨床試験を実施している。子宮内膜腫や腎細胞腫では良績を上げ承認に結び付いたが、他はパッとせず、今回また、LEAP-010試験のフェールが公表された。PD-L1陽性の難治/転移頭頚部扁平上皮腫の一次治療に用いる効果をKeytruda・偽薬併用と比較し、第一次中間解析ではPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)やORR(客観的反応率、同)で有意な差が見られたが、第二次中間で全生存期間の目的達成は困難と判定された。別途進行中の二次治療試験は続行する。

これまでに、切除不能肝細胞腫(Lenvima・偽薬と比較)、PD-L1陽性非小細胞性肺癌一次治療(Keytruda・偽薬と比較)、PD-L1陽性cisplatin不適進行尿路上皮腫一次治療(同)、切除不能/転移黒色腫一次治療(同)、ミスマッチ修復機能を持ちマイクロサテライト不安定性も見られない切除不能/転移結腸直腸癌(同)の試験もフェールしており、低い枝にある取り易い実はもうあまり残っていないのかもしれない。

リンク: 両社のプレスリリース

【承認申請】


Rybrevantの化学療法併用をsBLA
(2023年8月25日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソン・グループのヤンセンは、Rybrevant(amivantamab-vmjw)の用法追加と本承認切替を米国で申請した。EGFRにエクソン20挿入変異のある転移非小細胞性肺癌に単剤投与することが21年に米国で加速承認、EUで条件付き承認されているが、新患用標準療法であるcarboplatinとpemetrexedの併用レジメンに追加する便益を検討した第3相PAPILLIN試験で、PFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)を有意に伸ばすことができた。数値は未発表。

ジェンマブのDuoBody技術を適用して開発したEGFRとMETの二重特異性抗体。

リンク: JNJのプレスリリース


イクスタンジを高リスク去勢感受性前立腺癌に適応拡大申請
(2023年8月24日発表)

アステラス製薬はXtandi(enzalutamide)の適応拡大をFDAに申請した。根治的前立腺全摘または放射線療法を受け転移も抵抗性も示していないがPSA値が9ヶ月間に倍増以上など生物学的検査で再発リスクが高いと診断された前立腺癌に、ホルモン療法薬と併用するもの。第3相EMBARK試験でleuprolide併用群の5年無転移生存率が83.5%とleuprolide・偽薬併用群の71.4%を上回り、ハザードレシオは0.42だった。副次的評価項目の全生存期間は、少なくともAUA(米国泌尿器学会)でデータ発表された時点では、トレンドに留まっていた。今回の申請に含まれているかどうかは明らかではないが、Xtandi単剤投与群の数値は併用より見劣りはするものの悪くはなく、leuprolide不耐患者には有益かもしれない。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)


セルビエ、IDH1阻害剤の適応拡大を申請
(2023年8月15日発表)

セルビエの米国子会社は、Tibsovo(ivosidenib)をIDH1に変異を持つ難治再発骨髄異形成症候群に適応拡大申請し、FDAに受理されたと発表した。第1相試験で薬効解析対象18人の寛解率が38.9%、客観的反応率が83.3%だった。寛解継続期間はまだメジアン値に達していない。

IDH1(イソクエン酸脱水素酵素1)による腫瘍性代謝物の生成を抑制する経口剤で、18年に米国で、23年にはEUでも、IDH1変異を持つ難治再発急性骨髄性白血病や局所進行性/転移性胆管癌などに承認された。20年にAgios Pharmaceuticalsから買収した腫瘍学ポートフォリオの一つ。

リンク: セルビエのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Geron社、テロメラーゼ阻害剤の優先審査ならず
(2023年8月22日発表)

Geron(Nasdaq:GERN)はGRN163L(imetelstat)を低/中度リスク骨髄異形成症候群の成人患者の輸血依存貧血症の治療薬として6月に米国で承認申請し、優先審査を要求したが、標準審査で審査期限は24年6月16日となった。テロメラーゼを阻害するファースト・イン・クラスの薬で、適応を赤血球生成因子による治療に応答しないまたは不耐の患者に絞ったが、他の薬がないわけではないことなどが減点材料になったのだろう。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認】


胎児のRSV予防ワクチンが米欧で承認
(2023年8月21日発表)

ファイザーのAbrysvoはRSVによる下部気道感染症を予防する2価RSVワクチンで5月に米国で60歳以上を対象に承認されたが、ユニークなのは、妊婦に接種して胎児の出生後のリスクを抑制する用途でも開発され、今回、米国で適応拡大、EUで両用途で承認された。日本も申請中だが、高齢者向けは見送られたようだ。

妊娠第24週以降の妊婦に120mcgを一回筋注した第3相試験の中間解析では、RSVによる医療が必要な重度下部気道感染症の90日間の発生率が0.2%、偽薬群は0.9%で、ワクチン効率は81.8%と算出された。6ヶ月間の追跡でも69%だった。一方で、7ヶ月目以降は十分な効果は見られなかった。尤も、臨床的に重要なRSV性下部気道感染症の発生率は生後3ヶ月間が最も高いとのことなので、効果が持続しなくても大きな問題はないのかもしれない。

重症以外もカウントした共同主評価項目は90日間が57%、6ヶ月間が51%で有意水準に届かなかった。妊婦や新生児の安全性懸念は浮上しなかった。

5月に開催された諮問委員会では、第24週から第36週の妊婦に接種する便益を14人全員が支持。安全性は10人支持、4人が不支持だった。有害事象や深刻有害事象に群間の偏りは見られなかったが、早産の発生率が5.6%と偽薬群の4.7%を数値上上回ったことなどが響いたのだろう。第2相試験や、フェールしたがGSKのワクチンの類似試験でもトレンドが見られた。米国における早産発生率は10%とのことなので5.6%が真の値なら高くはないが、臨床試験は選ばれた医療施設が厳選された被験者を対象に行うので現実の医療より良い数値が出る可能性があり、本試験も偽薬群の数値を見るとバイアスが感じられる。イベント発生率の有意性検定はイベント発生数に左右されるので、現実の医療で偽薬群の発生率が10%、試験薬群が12%だとしたら、有意水準に達するかもしれない。

この懸念が影響したのか、FDAは妊娠32~36週に接種することとした。サブグループ分析では第24~27週で接種した人から生まれた新生児における90日重症例ワクチン効率は65%で全体の81.8%より見劣りした。しかし28~31週は91%と、32週以降の91%と同程度で、他の評価項目でも特に劣っていない。従って、接種時期を限定したのは、早産となっても第32週以降なら深刻な影響が生じるリスクがそれほど高くないという判断と推測される。

欧州は第24~36週に接種することを認めた。日本はどうだろうか?そもそもの問題として、偽薬群の発生率が6ヶ月間でも2%足らず、ワクチンを接種しても6ヶ月後以降の効果は期待できないのならば、発症後に抗RSV抗体で治療するのとどちらが妥当か、判断が難しい。

リンク: ファイザーのプレスリリース(米国承認)
リンク: 同(EU承認、8/24付)

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA:
  • 23年8月推 ファイザーのTalzenna(talazoparib、転移ホルモン抵抗性前立腺癌に適応拡大)
  • 23年8~9月 UCBのBimzelx(bimekizumab、プラク乾癬)
  • 23年8~10月推 ファイザーのetrasimod(中重度潰瘍性大腸炎)
  • 23/8/19  アステラス製薬のZimura(avacincaptad pegol、加齢性黄斑変性による地図状萎縮)
  • 23/8/28  BMSのReblozyl(luspatercept-aamt、MDSにおけるESA不応不耐限定解除)
  • 23/9/9   BioLineRxのAphexda(motixafortide、多発骨髄腫の自家造血幹細胞移植に伴う得率向上)
  • 23/9/15  ロシュの皮下注用Tecentriq(atezolizumab)
  • 23/9/16  GSKのmomelotinib(骨髄線維症)


諮問委員会:
  • 23/9/11-12 NPDAC:OTC鼻詰まり治療経口剤phenylephrineの有効性について
  • 23/9/13 CRDAC:アルナイラムのOnpattro(patisiran、ATTR心筋症適応拡大)
  • 23/9/21 EMDAC:Intarcia Therapeuticsの二型糖尿病用exenatideインプラント
  • 23/9/27 CTGTAC:BrainStorm Cell TherapeuticsのNurOwn(ALS)



今週は以上です。

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