2022年5月14日

第1050回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • その他の領域: 
  • UCB、抗nFC受容体抗体とC5阻害剤の筋無力症試験が成功 
  • ロシュ、抗TIGHT抗体の第3相がNSCLCでもフェール 
  • エーザイ/バイオジェンが第2の抗アミロイド・ベータ抗体を承認申請 
  • ビンゼレックスは米国では承認されず 
  • イーライリリーのGLP-1/GIP作用剤が承認 
  • エダラボン経口懸濁液が米国で承認 


【新薬開発】


UCB、抗nFC受容体抗体とC5阻害剤の筋無力症試験が成功
(2022年5月10日発表)

UCBはMGFA国際会議で全身性重症筋無力症(gMG)の新薬候補二剤の第3相試験結果を発表した。年内に米欧日で承認申請する考え。どちらも治療効果が既存薬と大きく違うようには見えないが、併用試験でシナジーが確認されれば朗報だ。抗nFC抗体はもし長期反復投与が可能なら既存薬と差別化できるが、どうなのだろうか?

UCB7665(rozanolixizumab)はヒトのneonatal Fc受容体に結合する自己皮注用抗体医薬。第3相のMycarinG試験はAChR又はMuSK(muscle-specific tyrosine kinase)に対する自己抗体を持ちMG-ADL病状診断スコアが3以上の患者200人を偽薬、7mg/kg、10mg/kgの3群に無作為化割付して第43日のMG-ADLスコアを比較した。低量群は偽薬比2.586ポイント、高量群は同2.619ポイント、改善が大きく、統計的に有意だった。各群67.2%、81.3%、82.6%の患者で治療時発現有害事象が報告された。

RA101495(zilucoplan)は補体系C5を阻害する一日一回自己皮注用の環状ペプチド。19年にRa Pharmaceuticalsを25億ドルで買収して入手した、第3相RAISE試験は抗AChR自己抗体を持ちMG-ADLが6以上の患者174人を偽薬と0.3mg/kg群に無作為化割付して第12週のMG-ADLスコアを比較した。結果は偽薬比2.12ポイント改善した。各群70.5%と76.7%で治療時発現有害事象が報告された。

抗nFc受容体抗体ではArgenx(Euronext:ARGX)のVyvgart(efgartigimod alfa-fcab)が昨年12月に米国で承認された。週一回、4週間に亘って静注する。必要に応じて再投与するが、3週間以内に再開する時の安全性は確立していない。第3相の主評価項目はMG-ADLベースの奏効率だが、MG-ADL自体の推移を示すグラフを見ると、6週時点の治療効果は2ポイント程度でUCB7665と大きくは変わらない。尚、群間差は第4週にピークを付けた後に縮小、第8週時点では大差なくなっている。長期反復投与できれば良いのだが、安全性懸念があるのかもしれない。

C5阻害剤はアストラゼネカ・グループのアレクシオン・ファーマシューティカルズの抗体医薬、Soliris (eculizumab) が17年に米欧日で適応拡大した。第3相試験は薬効解析方法が特殊であったためかフェールしたが、元々は感受性分析のために事前に計画されていた解析で有意差が見られ、試験薬群はMG-ADLがベースラインの10から4.2ポイント低下、偽薬群は2.3ポイント低下し治療効果は1.9だった。

異なった試験のデータを比較するのは難しいのでよほど大きな差がない限り、効果は同程度と考えるべきだろう。自己注可能なのはよいが頻度が高いのは難点。

リンク: 同社のプレスリリース


ロシュ、抗TIGHT抗体の第3相がNSCLCでもフェール
(2022年5月11日発表)

ロシュはRG6058(tiragolumab)の第3相SKYSCRAPER-01試験の共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間)がフェールしたと発表した。もう一つの全生存期間は未成熟であるため続行する。残念な結果だが、どちらも数値上は偽薬群を上回っている模様であり、また、免疫強化療法の効果は癌の縮小より延命のほうが表れやすいので、まだ諦めるには早いだろう。

この試験はPD-L1を高発現する未治療の局所進行/切除不能/転移性非小細胞性肺癌534人を組入れてTecentriq(atezolizumab)とRG6058の併用をTecentriq・偽薬併用と比較した。PD-L1陽性の同様な患者を組入れた第2相試験ではPFSがメジアン5.6ヶ月と偽薬併用群の3.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.62だった。PD-L1高発現サブグループでは各16.6ヶ月、4.1ヶ月、0.29とさらに良さそうな数値が出ていた。全生存の解析結果も有望なものだった。

RG6058は2月に進展型小細胞性肺癌の第3相化学療法併用試験がフェールしたが、今回は第2相の裏付けがあっただけに意外な結果だ。

上記二剤を併用する第3相試験はステージIII非小細胞性肺癌の化学放射線療法後維持療法や未治療進行非扁平上皮非小細胞性肺癌の化学療法併用、そして食道扁平上皮腫の化学放射線療法後維持療法や一次治療化学療法併用が進行中。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


エーザイ/バイオジェンが第2の抗アミロイド・ベータ抗体を承認申請
(2022年5月10日発表)

エーザイとバイオジェンは、BAN2401(lecanemab)の米国における段階的生物学的製剤承認申請を完了したと発表した。アミロイド・ベータの凝集体に対するヒト化モノクローナル抗体で、脳内にアミロイド病変が確認されたアルツハイマー性軽度認知障害(MCI)と軽度アルツハイマー病の治療に用いることを想定している。加速審査が認められた場合、年内にも承認が見込まれる。

薬効のエビデンスは後期第2相試験のアミロイド・ベータ削減作用で、米国で昨年6月に加速承認されたが欧日では承認されなかった抗アミロイド・ベータ抗体Aduhelm(aducanumab)と同様。10mg/kgを2週毎に点滴静注する治療を18ヶ月間続けたところ、画像診断による脳内アミロイド・ベータ蓄積量の指標であるSUVR(Standard Uptake Value Ratio)がベースラインの平均1.37ユニットから0.36ユニット減少し、80%以上の患者で陰性化した。

特徴的な有害事象であるARIA-E(アミロイド関連画像異常-浮腫)の発生率は9.9%(161人中16人)で、アルツハイマー病の疾病関連因子であるApoE4ホモ接合型の10人では50%と高かったがヘテロ型39人では5%、ノンキャリア112人では8%、偽薬群245人では0.8%だった。ARIA-H(アミロイド関連画像異常-出血)は6.2%(161人中10人)でApoE4キャリア49人は12.2%、ノンキャリア112人は3.6%、偽薬群は4.9%だった。

同社は市販後薬効確認試験となるべき第3相CLARITY AD試験を実施中。トップライン・データが判明するのは今秋の見込みなので、この解析が成功しない限り、もし加速承認されたとしても、Aduhelmと同様に、売れないだろう。Aduhelmの諮問委員会ではアミロイド・ベータ削減作用に基づく加速承認に賛成票を投じた委員は一人もいなかった。今回も諮問委員会が招集されるだろうが、大荒れは必至だ。しかし、主評価項目であるCDR-SB(認知機能と日常生活機能の診断スコア;MCIや軽度アルツハイマー病の薬効評価尺度に適しているとされる)や副次的評価項目のADAS-cog(認知機能スコア)で統計的に有意な差があれば、効果の多寡に関わらず、世評が一変するだろう。

リンク: 同社のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


ビンゼレックスは米国では承認されず
(2022年5月13日発表)

UCBは抗IL-17A・IL-17F二重特異性抗体Bimzelx(bimekizumab)を既存治療に十分応答しない中重度プラク乾癬の治療薬として承認申請し、欧州では昨年8月、日本では今年1月に承認を取得した。米国は昨年10月が審査期限だったが渡航制限で欧州工場の査察ができなかったため遅延、今回、審査完了通知を受領した。承認前検査は実施されたが指摘事項があった模様だ。

IL-17標的薬はノバルティスのCosentyx(secukinumab)やイーライリリーのTaltz(ixekizumab)が乾癬など様々な自己免疫疾患で承認され、幾つかの試験では既存のバイオ薬を上回る成績を挙げている。Bimzelxも乾癬の第3相でヤンセンの抗IL-12/IL-23抗体Stelara(ustekinumab)を上回る効果を示した。

リンク: UCBのプレスリリース

【承認】


イーライリリーのGLP-1/GIP作用剤が承認
(2022年5月13日発表)

FDAはイーライリリーのMounjaro(tirzepatide)を二型糖尿病治療薬として承認した。血糖値や食欲の制御に係るホルモンのうち、GLP-1(グルカゴン様ペプチド-1と)とGIP(グルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド)の受容体を作動するデュアル・アクション薬で、週一回2.5mg皮注で開始し、4週以上後に5mgに増量、効果が不十分なら更に2.5mgずつ、各回4週以上後に、最大15mgまで増量できる。

第3相試験ではHbA1cが偽薬比1.5~1.6%低下した。有害事象は悪心嘔吐など。GLP-1作用剤と同様に前臨床試験で甲状腺C細胞腫瘍リスクが見られたことが枠付警告されている。

FDAの今回のプレスリリースは意外な点が二つある。一つは、直接比較試験で15mg群はノボ ノルディスクのGLP-1作用剤Ozempic(semaglutide)やノボやサノフィの持効性インスリンよりHbA1c低下が体重減が大きかったことに数値付きで言及していること。

確かにOzempic対照試験ではHbA1cで0.5%の群間差があったが、Ozempicの用量は1mgで、試験後の今年3月に承認された2mgではない。2mgの効果は1mgを0.2%上回るだけなので、おそらくMounjaroの15mgには勝てないが、FDAは、これまで、メーカーが効果が優れると宣伝するためには直接比較試験で対照薬の最大承認用量と比較したエビデンスが必要としていたはずだ。FDAのプレスリリースは宣伝ではないが、エビデンス重視に変わりはないだろう。

インスリン対照試験の解釈については、FDAは他剤の諮問委員会用ブリーフィング資料の中で、インスリンの用量や効果には上限がないのだからインスリン群のほうがHbA1cが高かったとしたら用量調節が適切でなかったのではないか、と疑問を呈したことがあるが、今日では受け入れるようになったのだろう。添付文書に上限が記載されていなくても、使い過ぎたら低血糖などの反動が出るのだから、現実の医療では効果の上限があるはずだ。

もう一つは、優先審査指定について。イーライリリーはバウチャを使って審査期間短縮を狙ったが、FDAのプレスリリースの文言を読む限りでは、純粋に薬の重要性に基づいて優先審査指定したように感じられる。このような場合、バウチャは返してもらえるのだろうか?

リンク: FDAのプレスリリース


エダラボン経口懸濁液が米国で承認
(2022年5月12日発表)

FDAは田辺三菱製薬のRadicava ORS(edaravone)をALS(筋萎縮性側索硬化症)治療薬として承認した。フリーラジカル・スカベンジャーedaravoneの新製剤で、朝の空腹時に105mg/5mLを経口/経栄養チューブ投与する。60mgを点滴静注する製剤と同様に、28日サイクルで第1サイクルは14日、その後は10日、連続投与する。エビデンスは生物学的同等性試験。日本でも承認申請中。

リンク: FDAのプレスリリース





今週は以上です。

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