2022年3月5日

第1040回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • COVID-19関連: 
  • WHO:男はモルヌピラビル服用後一定期間、妊娠させてはだめ 
  • オミクロン株の流行で外来治療試験が難航 
  • その他の領域: 
  • 低リスク児のRSV感染予防試験が成功 
  • ファイザー、CDIワクチンの第3相フェールも希望が残る 
  • sotagliflozinの承認申請が撤回に 
  • ギリアドのカプシド阻害剤は審査完了に 
  • カバノキ由来の表皮水疱症薬は審査完了に 
  • バルドキソロンはやっぱり承認されず 
  • FDA、オプジーボの肺癌術前療法を光速承認 
  • 血小板減少を伴う骨髄線維症の薬が承認 
  • 第2のBCMA標的型CAR-Tが承認 


【COVID-19関連】


WHO:男はモルヌピラビル服用後一定期間、妊娠させてはだめ
(2022年3月3日発表)

WHOはCOVID-19の予防・治療ガイドライン、Therapeutics and COVID-19: living guidelineを改訂し、MSDの経口抗ウイルス薬molnupiravirを重症ではないが入院のリスクが高い患者の治療薬として追加した。内容は概ねFDAと同じ。男性が女性を妊娠させた場合のリスクについては、FDAと同様に、一時的な精子毒性の可能性があるため女性と性的に活発な男性は治療完了後3ヶ月間、避妊するよう求めた。日本の添付文書や患者同意書、日本感染症学会のガイドライン(21年12月24日付)はこの懸念に言及していない。

EMAは治療効果が小さいことなどから承認自体に後ろ向きと一部で報道されている。抗体医薬も含めてSARS-CoV-2の抗ウイルス薬は症状を緩和したり罹患期間を短縮したりする効果は確立していない。重症化/入院の確率を引き下げる、ワクチンのような製品だ。臨床試験のデータ上では、100人に投与すると数人を入院/死亡から救うが残りの90人以上には特別な便益はない。それだけに、高い安全性が求められる。

リンク: WHOのダウンロードページ


オミクロン株の流行で外来治療試験が難航
(2022年3月3日発表)

ファイザーのPAXLOVID(nirmatrelvir、ritonavir)やMSDのmolnupirvirの第3相入院・死亡予防試験が行われた頃に流行していたのはデルタ株だった。入院・死亡リスクが比較的小さいオミクロン株に流行がシフトしたために、同様な試験を行っても上手くいかないケースが出始めた。対照群の入院・死亡率が解析計画の前提を大きく下回り、検出力不足に陥ってしまう懸念が生じたのだ。今週はNIH/NIAIDが推進するACTIV-2試験で二つの残念な動きがあった。

ACTIV-2試験は外来治療による入院・死亡抑制効果を検討するマスター・プロトコル試験で、様々な候補品を雁行的にテストしている。3月2日、SAB Biotherapeutics(Nasdaq:SABS)は、ウシ由来抗SARS-CoV-2ポリクローナル抗体であるSAB-185をテストする群が打ち切られたと発表した。第3相段階に進んでいたが、感染者や入院者が減少し検出力不足になったためであるようだ。SAB-185は、元々、非劣性検定を行う計画だったが、実薬であるリジェネロンのREGEN-COV(casirivimab、imdevimab)がオミクロン株にあまり効かないことが判明したため、2月に偽薬対照優越性試験に変更されたばかりだった。

翌日、英国のSynairgen(LSE:SNG)は、ベータ・インターフェロンの吸入用製剤SNG001について、第3相用の薬剤の用意を一次的に停止するようNIHから通知を受けたことを明らかにした。詳細は不明だが、臨床試験のデザインの見直しが必要になったようなので、SAB-185と同じ理由かもしれない。昨年10月に第2相の成果に基づきステージアップが決まったところなので、効果が無いとは考え難い。

SNG001は2月に第3相入院治療試験がフェールし、抗ウイルス薬なので外来治療試験は成功する可能性があると書いたばかりだが、結果が判明するのはまだ先になりそうだ。

リンク: SAB Biotherapeuticsのプレスリリース(3/2付)
リンク: Synairgenのプレスリリース

【新薬開発】


低リスク児のRSV感染予防試験が成功
(2022年3月3日発表)

アストラゼネカと開発パートナーのサノフィは、昨年6月、MEDI8897(nirsevimab)の第3相RSウイルス(RSV)感染症予防試験の成功を発表したが、治験論文がNew England Journl of Medicine誌に刊行された。早産や心臓/呼吸器疾患など合併症のリスクが高い乳児以外にも感染予防の便益があることが確認されたが、入院リスク抑制効果はトレンドに留まった。高リスク児を組入れたSynagis(palivizumab)対照試験が成功したので承認は取れるだろうが、Synagisが適応にならない低リスク児にも承認されるかどうかは不透明だ。

RSVは風邪の原因の一つで、多くの乳幼児が感染するが、自力で治癒することが多い。例外は早産だったり鬱血性心臓疾患や慢性肺疾患などの乳幼児で、RSV感染というよりは合併症を防ぐために、最初と二回目の冬に月一回、Synagisを筋注する。Synagisはそれ以外の乳児の試験も行われたが、元々のリスクが小さいことや、安全性懸念が浮上したことなどから、承認取得には至らなかった。MEDI8897はSynagisと同じ融合前F蛋白に対する抗体で、月一回ではなくひと冬に一回で足りる。

今回の試験は、在胎35週以上で健康な1歳未満を試験薬群と偽薬群に2:1割付して、一回筋注し、RSVによる下部気道感染症で受診するリスクを150日間追跡した。目標症例数は3000人だったが、COVID-19の流行により大衆の衛生志向が強まったのかRSV感染が減少したため、薬効解析は1500人、安全性データベースとして更に1500人、に変更された。

結果は、試験薬群の発生率は1.2%、偽薬群は5.0%で、74.5%抑制できた(p<0.001)。副次的評価項目のRSV感染による入院治療も0.6%対1.6%で62%抑制したがp=0.07と有意ではなかった。深刻有害事象の発生率は6.8%対7.3%で大差なかった。

RSV感染自体はそれほど深刻ではないので入院リスクで有意差が出なかったのは減点材料だが、在胎29~35週の健康な早産児1447人を組入れた後期第2相偽薬対照試験と合わせたプール分析(事前に計画されていた)では、0.6%対2.7%、p<0.001だった。第3相の点推定値も悪くなく、繰上げ完了で検出力が低下したことがフェールの理由であることが検証できれば、大きな問題にはならないだろう。

但し、150日間の追跡が未了で欠測データの補完が必要だった症例が両群合わせて21例と、感染者合計(37例)や入院者合計(14人)と比べて少ないとは言えないことは留意点だ(100日間とか130日間とかのデータが反映されているなら大きな問題にはならないが)。

今回の試験で偽薬群は感染25人、入院8人で入院治療率は32%だった。高リスク乳児を組入れた後期第2相では各46人と20人で入院治療率は43%だった。後者の方が重症者リスクが高いと言えば高いが、前者が低いとも言えない。安全性に問題がなければ、早産ではない健康児全てとは言わないまでも、適応が広がる可能性はあるのではないか。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース
リンク: Hammittらの治験論文抄録(NEJM)

ファイザー、CDIワクチンの第3相フェールも希望が残る
(2022年3月1日発表)

ファイザーはクロストリジウム・ディフィシル感染症(CDI)予防用ワクチンPF-06425090の第3相が主評価項目はフェールしたものの副次的評価項目で有望な成績を挙げたと発表した。承認審査機関と相談する考え。プレスリリースの記述が難しく、私には理解できない。

クロストリジウム・ディフィシルが分泌するA毒素とB毒素を抗原とする遺伝子組換え型ワクチンで、第3相は50歳以上の高リスク者17,500人を試験薬群と偽薬群に2対1割付して、第0月、1月、6月に3回接種し、14日経過後の感染状況を追跡した。17年に開始した段階では2年追跡して感染者が66人に達したら解析する予定だったが、COVID-19の流行などから、4年で42人に変更した。

主評価項目は3回接種後と2回接種後の最初のCDI(first primary episode of CDI)。ワクチン効率は前者が31%(96.4%信頼区間-38.7、66.6)、後者は28.6%(同-28.4、61.0)で、信頼区間がゼロを跨いだ。

会社側が注目しているのは、副次的評価項目の一つであるCDIによる受診(participants who sought medical attention for CDI)。試験薬群は17人が感染したが受診はゼロ、偽薬群は25人中11人が受診となっており、受診に関しては100%予防した計算になる。

罹患期間はメジアン値が各群1日と4日、平均は3日と16日だった。忍容性は良好で有害事象や深刻有害事象、死亡者数は両群同程度だった。

分からないのはCDIとCDI受診の違い。もし、前者は定期的な感染検査で発見されたもの、後者は下痢などの症状が出て受診時に発見されたものを指すのだとしたら、後者を重要視できるかもしれない。

そもそもの疑問としては、主評価項目の検出力は維持されているのか?time to first event試験の検出力はイベント数と相関するので、フェールしたのは66例を42例に変更したことが響いたのかもしれない。

CDIワクチンは数年前にジェンザイム(サノフィ)の第3相がフェールするなど難航しているので希望が残っているのは良いことだ。詳細発表が待たれる。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


sotagliflozinの承認申請が撤回に
(2022年2月28日発表)

Lexicon Pharmaceuticals(Nasdaq:LXRX)は、21年決算発表に合わせて、LX4211(sotagliflozin)の米国における承認申請を撤回したことを公表した。技術的な不備に気付いたため。近い将来に改めて申請する予定。

SGLT-1とSGLT-2を阻害する小分子薬。既に多くのSGLT-1阻害剤が存在するため同社は一型糖尿病をリード・インディケーションとして承認申請し、EUでは19年に承認されたが、米国は審査完了となった。SGLT-1阻害剤と同様に糖尿病性ケトアシドーシスのリスクが高まることがボトルネックになった。

今回の申請は心不全を合併する二型糖尿病のアウトカム試験二本に基づくもの。心不全症状が悪化している、あるいは他のリスク因子を持つ高リスク成人患者の心血管死・心不全入院/緊急受診を偽薬と比較したところ、SOLOIST試験ではハザードレシオが0.84、SCORED試験では0.74だった。

どちらもCOVID-19流行の影響を受けて繰上げ完了を余儀なくされ、途中で主評価項目を変更した経緯があり、不透明さを感じる。

リンク: 同社の21年決算発表プレスリリース


ギリアドのカプシド阻害剤は審査完了に
(2022年3月1日発表)

ギリアド・サイエンシズはGS-6207(lenacapavir)をHIV/AIDSのサルベージ治療薬としてFDAに承認申請していたが、審査完了通知を受領した。12月のクリニカル・ホールドと同じ、ガラス・パーティクル混入問題が原因のようだ。容器を代えて再び申請する考え。

長期作用性抗ウイルス剤で、ウイルス複製に必要な、RNAを包むカプシドを阻害する、斬新な作用機序を持つ。第1日、2日、8日に錠剤を服用し、その後は6ヶ月毎に皮注する。臨床試験では第52週時点で36人中30人(83%)がウイルス検出不能(50コピー/mL未満)になった。

注射用液のバイアルはホウケイ酸を用いているが、薬剤と反応して目に見えないガラス・パーティクルを生じる懸念が発生。第3相暴露前予防試験などが停止された経緯がある。

リンク: 同社のプレスリリース


カバノキ由来の表皮水疱症薬は審査完了に
(2022年2月28日発表)

Amryt Pharma(Nasdaq:AMYT)は昨年3月に欧米でOleogel-S10を表皮水疱症の治療薬として承認申請したが、審査が長引き、米国は結局、審査完了通知を受領した。詳細は不明。

カバノキ抽出物のゲル製剤で、200人規模の第三相試験で創傷閉鎖奏効率が41%と偽薬群の29%を有意に上回った(p=0.013)。劣性栄養障害型サブグループ175人では44%対26%と比較的大きな差があったが優性栄養障害型や接合部型では大差なかった。有害事象は創傷部位合併症、掻痒、貧血などが増加し、重症有害事象発生率は11.9%と偽薬群の5.3%を上回った。

リンク: 同社のプレスリリース


バルドキソロンはやっぱり承認されず
(2022年2月25日発表)

Reata Pharmaceuticals(Nasdaq:RETA)はRTA 402(bardoxolone methyl)をアルポート症候群の慢性腎疾患用薬として米国で承認申請したが、審査完了通知を受領した。FDAは腎機能低下や腎不全リスクを抑制する便益やQT延長リスクの評価が不十分と指摘した。

同社は1年治療後のeGFR(推定腎濾過率)改善をエビデンスとして承認申請したが、FDAは、一時的に改善してもやがて疲弊してむしろ腎障害を加速することを懸念。2年間の追跡データを求めていた。安全性面では、糖尿病性腎症の第3相試験が心不全有害事象や死亡者の増加で中止になった経緯がある。心臓腎臓薬諮問委員会も13人の委員全員が承認に反対した。

bardoxoloneは日本では協和キリンが開発中。昨年7月にアルポート症候群に承認申請したのには驚かされた。

リンク: Reataのプレスリリース

【承認】


FDA、オプジーボの肺癌術前療法を光速承認
(2022年3月4日発表)

FDAは、Opdivo(nivolumab)を切除可能非小細胞性肺癌のネオアジュバント療法に白金薬などと併用する適応拡大を承認した。360mgを3週毎に3回投与したCheckMate-816試験に基づくもので、pCR(病理学的完全奏効率、盲検独立中央評価)が24%と偽薬併用群の2.4%を上回り、EFS(イベントフリー生存率、盲検独立中央評価)もハザードレシオ0.63、p=0.0052、メジアン値は31.6ヶ月対20.8ヶ月と、大きく改善した。G3/4治療時発現有害事象の発生率は同程度だった。

早期非小細胞性肺癌のネオアジュバント療法薬がFDAに承認されたのは初めて。

もう一つ、驚かされたのは、光速の承認。ブリストル マイヤーズ・スクイブが承認申請受理を発表したのは2月28日のことで、本号に掲載する予定だったが、申請・承認同時掲載となった。審査期限は7月13日なので、4ヶ月以上の前倒しだ(FDA側は5ヶ月早く承認と書いている)。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: BMSの承認申請に係るプレスリリース(2/28付)

血小板減少を伴う骨髄線維症の薬が承認
(2022年3月1日発表)

FDAはCTI BioPharma(Nasdaq:CTIC)のVonjo(pacritinib)を加速承認した。経口JAK2/FLT3阻害剤で血小板数が5万個/mcL未満の中間/高リスク原発性または二次性の骨髄線維症の治療に、200mgを一日二回投与する。臨床試験では脾臓量35%減達成率が35%と、標準療法群の3%を上回った。リウマチなどの治療に用いるJAK阻害剤と同様に主要有害心血管事故や血栓性疾患、感染症、癌などのリスクが警告されているが、枠付警告にはならなかった。CYP3A4強阻害剤/誘導剤やP-gpなどの基質になる薬の併用は禁忌。

フェーズIVのPACIFICA試験で臨床的便益を確認する。

米国では16年に承認申請したが、上記を含む二本の試験で死亡率に偏りがあったことからクリニカル・ホールドを命じられ、欧州と共に申請撤回した。欧州は17年に改めて申請も、19年にCHMPがトレンド採決で否定的な評価を示したため、撤回した。米国で承認されたのは正直、意外だが、400mg一日一回ではなく200mg一日二回ならリスクが緩和するのだろう。何よりも、米国の骨髄線維症患者21000人の3分の1が該当するといわれる血小板数5万個/mcL未満の患者に使える薬が無いという充足されない必要性を重視したのだろう。

pacritinibは12年にシンガポールのS*BIO pteから資産取得した。翌年にバクスター社と共同開発販売提携したが、シャイア合併後に権利返還となった。

リンク: FDAのプレスリリース


第2のBCMA標的型CAR-Tが承認
(2022年2月28日発表)

Legend Biotech(Nasdaq:LEGN)とジョンソン・エンド・ジョンソン子会社のヤンセンは、夫々、FDAがCarvykti(ciltacabtagene autoleucel)を再発難治多発骨髄腫用薬として承認したと発表した。プロテアーゼ阻害剤、免疫調停薬、抗CD38抗体の全てを含む4次以上の治療歴を持つ患者が適応になる。

骨髄腫細胞などが発現するB細胞成熟抗原(BCMA)を標的とする二種類の抗体と4-1BB共刺激ドメインを患者から採取したT細胞に発現させたキメラ抗原受容体T細胞。Legendが開発、ヤンセンは共同開発販売権を持っている。P1a/2試験でORR(客観的反応率)が98%、完全反応率78%、メジアン反応持続期間は21.8ヶ月と、ファースト・イン・クラスである2seventy bio/BMSのAbecma(idecabtagene vicleucel、和名アベクマ)のデータを上回る数値を出した。一方で、有害事象リスクも上回りそうだ。

Abecmaと同様に、致死的/命に係わる、サイトカイン放出症候群、ICANS(免疫イフェクター細胞関連神経毒性症候群)、パーキンソン症状、ギラン・バレー症候群、HLH/MAS(血球貪食性リンパ組織球増多症/マクロファージ活性化症候群)、そして持続的/再発性血球減少症のリスクが枠付警告されている。

リンク: JNJのプレスリリース
リンク: FDAのプレスリリース(3/1付)





今週は以上です。

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