2017年6月25日

2017年6月25日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • PD-L1検査方法の違いが問題に 
  • ノバルティス、抗IL-1ベータ抗体のCVO試験成功 
  • ClovisのPARP阻害剤もBRCA変異不問 
  • 抗CD33ADCの第三相試験が中止に 
  • 抗CGRP受容体抗体、EUでも承認申請 
  • ギリアド、新規HIV治療薬を承認申請 
  • 遺伝子組換え型vWFを欧州でも承認申請 
  • アドセトリスの適応拡大申請 
  • CHMPが抗HCVコンビ薬などの承認を支持 
  • Brintellixの効能追加申請、米国はまたCRL 
  • PortolaのXa阻害剤も承認 
  • 湧永のキノロンが米国で遂に承認 
  • シャイアーのADHD治療薬が11年ぶりに承認 
  • BRAF V600E変異陽性肺癌に適応拡大 
  • ロシュ、FDAがリツキサンの皮注用製剤を承認 
  • 皮注用C1エステラーゼインヒビターが承認 


【今週の話題】


PD-L1検査方法の違いが問題に
(2017年6月22日発表)

抗PD-1抗体は従来の免疫療法に応答する黒色腫や腎細胞腫だけでなく様々な癌にも効果を示し、超大型薬化した。現在も適応拡大試験や併用試験が活発に進められているが、意外な結果も散見されるようになった。その一つがBMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)のCheckMate 026試験だ。

ステージIV・難治性非小細胞性肺癌の一次治療としての効能を化学療法と比較した第三相試験で、MSDのKeytruda(pembrolizumab、和名キイトルーダ)の同様な試験は成功したが、こちらはフェール。PFS(無進行生存期間)が有意に上回らなかった。何故か?

New England Journal of Medicine誌に掲載された治験論文のエディトリアルは、PD-L1の閾値やアッセイの違いを指摘している。BMSはDako社のPD-L1 IHC 28-8 pharmaDxを用いている。026試験では腫瘍細胞の1%以上でPD-L1が発現していることを組入れ条件とした。

一方、Keytrudaのコンパニオン診断薬はDako社のPD-L1 IHC 22C3 pharmDxで、非小細胞性肺癌の二次治療以降では発現1%以上が適応だが、一次治療は50%以上だ。

一次治療は生存期間が二次治療より長いので治療効果の多寡や副作用とのバランスが表面化しやすく、このため、一次治療の要件のほうが厳しかったとしても不思議はない。MSDは比較的早くからPD-L1検査に基づく応答予測に取り組んできたが、BMSがDakoとPD-L1アッセイの共同開発を始めたのは小野薬品と比べても遅く、一日の長が明暗を分けたのかもしれない。

尤も、話は単純ではなさそうだ。検査には偽陽性、偽陰性、判定の個人差、検体採取場所や方法の違いなど、ブレが付き物で、PD-L1アッセイも例外ではないからだ。

PD-L1アッセイは上記のほかに、ロシュのTecentriq(atezolizumab)はVentana PD-L1 (SP142)、アストラゼネカのImfinzi(durvalumab)はVentana PD-L1 (SP263)がコンパニオン診断薬としてFDAに承認されている。同じようなものを4種類もストックするのは非効率なので互換性を検証する試験が複数行われているが、既に色々な課題が浮上している。

IASLC(国際肺癌学会)などのBlueprintプロジェクトのフェーズI結果(Hirschら)、NCCN主導研究(Rimmら)、アストラゼネカの研究(Ratcliffeら)の三論文が刊行されており、うち2本は抄録しか読めなかったが、共通点が多い。Dakoの二つのアッセイとSP263アッセイは概ね同じ結果が出るがSP142は陽性率が低い。判定の個人差は腫瘍細胞では小さいが免疫細胞のPD-L1発現評価では比較的大きい。腫瘍細胞でも閾値を50%に設定するのと比べて1%だと判定一致率が低下する、などなどだ。

画像処理による自動判定など、工夫の余地がありそうだ。現段階では、PD-L1によるプリスクリーニングを過信せず、偽陽性の存在を頭の片隅に置いて、今後の治験結果発表や技術進歩を見守るしかなさそうだ。

尚、これは蛇足だが、上記はあくまで互換性の検討であり、優劣は別問題である。コンパニオン診断薬にとって大事なのは薬との相性で、陽性率が高いとか低いとかではなく、ピッタリであることが一番だ。

リンク: CarboneらのCheckMate 026治験論文(NEJM)
リンク: Garonのエディトリアル(NEJM)
リンク: Hirschらの試験論文(Journal of Thoracle Oncology誌、リンク先はPubMed)
リンク: Rimmらの試験論文(JAMA Oncology誌)
リンク: Ratcliffeらの試験論文(Clinical Cancer Research誌)


【新薬開発】


ノバルティス、抗IL-1ベータ抗体のCVO試験成功
(2017年6月22日発表)

ノバルティスは、ACZ885(canakinumab)の心血管アウトカム(CVO)試験成功を発表した。hsCRPの高い患者を組入れた点ではCrestor(rosuvastatin)のJUPITER試験と類似しているが、スタチンならともかく、抗IL-1ベータ完全ヒト化抗体が心筋梗塞再発リスクを削減したのは衝撃的だ。これを機に、アテローム硬化に関与する炎症・免疫・血栓反応のうち炎症免疫反応に介入する臨床研究が進むかもしれない。

データは学会・論文発表待ち。今回は事実関係だけを纏める。ACZ885はIlaris(和名イラリス)という製品名で複数の希少疾患に承認・承認申請されている。クリオピリン関連周期性症候群(CAPS)、周期熱症候群(PFS)、全身性小児特発性関節炎(SJIA)、成人発症型活性期Still病(AOSD)だ。

今回のCANTOS試験は、心筋梗塞を発症してから30日以上経った、hsCRPが2mg/L以上の患者約1万人を、偽薬、50mg、150mg、または300mgを3ヶ月に一回皮注する各群に無作為化割付して、心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的脳卒中の何れかが発生するリスクを比較したもの。二重盲検期間は9ヶ月で、その後は全員が150mgにスイッチする。

常識的に考えれば最初の9ヶ月間が勝負だろう。成功したということはカプランマイヤー・カーブが比較的早く乖離したことになる。

さて、ノバルティスのプレスリリースはIlarisという製品名ではなく開発コードと一般名で呼んでいる。もし適応拡大が承認された場合、年間の薬剤費が数百万円に達し費用対効果が悪くなるので、値下げを視野に入れているのだろう。同社は新規作用機序の薬の開発にあたって、その薬に最も適していて開発成功率が高そうな病気を患者数を問わずに最優先し、雁行的に他の用途を探索する戦略を取っている。canakinumabは好例であり、大きな適応拡大が実現して価格を引き下げるのは想定の範囲内だろう。

ノバルティスの発表を受けて、米国のリジェネロン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:REGN)がロイヤルティ権に関するアップデートを行った。リジェネロンはIL-1阻害剤Arcalyst(rilonacept)の開発などでノバルティスと提携していたことがあり、解消に際して、canakinumabの売上高の4~15%を得る権利を取得した。年商が15億ドルを超えると15%に上がる由であり、今回のCVO試験成功は同社にとっても商業的な意義が大きいことになる。

リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: CANTOS試験の治験登録(ClinicalTrials.gov)
リンク: リジェネロンのプレスリリース

ClovisのPARP阻害剤もBRCA変異不問
(2017年6月9日発表)

Clovis Oncology(Nasdaq:CLVS)は、Rubraca(rucaparib)の第三相卵巣癌維持療法試験が成功したと発表した。4週間以内に米国で適応拡大申請する予定。欧州でも申請する考えだ。

ファイザーがAG-014699あるいはPF-01367338という開発コードで臨床開発していたPARP阻害剤を2011年にライセンスしたもので、遺伝子の複製間違いの修復に関わるポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼを阻害することにより、細胞分裂・遺伝子複製が活発であるが故に複製ミスも頻発する癌細胞の増殖を妨げる。

昨年12月に米国で、末期卵巣癌の三次治療薬として承認された。適応になるのは生殖細胞系または体細胞系のBRCA有害変異を持つ癌で、コンパニオン診断薬としてロシュ・グループのFoundation Medicine社の次世代シーケンシング検査が承認されている。

今回のARIEL3試験は、白金感受性卵巣癌で白金薬による二次以降の治療に反応したが高リスクの患者を組入れて、偽薬またはRubraca(600mg)を一日二回、経口投与して、PFS(無進行生存期間)を比較したもの。担当医評価に基づく解析が主評価項目、第三者が盲検で中央査読したデータに基づく解析が副次的評価項目とされた。

また、解析対象ユニバースとしては、生殖細胞系/体細胞系BRCA有害変異型196例→HRD陽性(BRCA有害変異を含む相同組換え不全)354例→intent-to-treat564例と、シーケンシャルに対象を拡大していくプロトコルが採用された。

結果は、何れの解析でもPFSが偽薬比有意に延長。BRCA変異は生殖細胞系、体細胞系を問わず有効、変異のない患者だけの解析も良好な結果になった。

PARP阻害剤ではTesaro(Nasdaq:TSRO)がMSDからライセンスして開発したZejula(niraparib)が一足先に同様な試験に成功、今年3月に米国で承認された。アストラゼネカのLynparza(olaparib)を含む三剤のうち二剤が有効だったのだから、PARP阻害剤を再発性卵巣癌の維持療法に用いる場合はBRCA変異を問わないと考えるべきなのだろう。

リンク: Clovisのプレスリリース

抗CD33ADCの第三相試験が中止に
(2017年6月19日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)は、SGN-CD33A(vadastuximab talirine)の第三相試験を途中で打ち切ることを発表した。死亡リスクに群間の偏りが見られたため独立データ監視委員会が中止勧告したもの。昨年、治験許可停止を受けた時は静脈閉塞性疾患など肝毒性が理由だったが、今回は肝臓疾患ではなく感染症などによる死亡が対照群より増えた由だ。何れにせよ、このADC(抗体薬物複合体)の開発は中止あるいは大幅後退するのではないか。

同社の抗CD33抗体プログラムは05年にPDL(当時)からライセンスしたもの。PDLより高量を使ってヒト化抗体であるlintuzumabの急性骨髄性白血病試験に再挑戦したがフェール。改良抗体に薬物を結合した複合体で再挑戦したが、残念な結果になった。

抗CD33ADCといえば、ワイス(後にファイザーが買収)がセルテック(UCBが子会社化)と共同開発したMylotarg(gemtuzumab ozogamicin)は2000年に米国で加速承認された後、市販後薬効確認試験が次々とフェール。FDAの働きかけによりファイザーが自発的に販売承認返上する事態になったが、その後も研究者主導試験が続けられ、遂に適切な用量用法を発見。欧米で昨年、承認申請された。

米国の審査期限は今年9月。承認されれば17年ぶりの復活となる。ダメと決め付けず、リコールの必要なしとも決め付けず、研究を続けた医師たちは称賛に値する。一方で、SGN-CD33Aの第三相中止を聞いて改めて感じるのは、抗CD33ADCの難しさだ。

リンク: シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

【承認申請】


抗CGRP受容体抗体、EUでも承認申請
(2017年6月21日発表)

ノバルティスはAMG 334(erenumab)をEUで承認申請し受理されたと発表した。抗CGRP受容体完全ヒト化抗体で、慢性/反復性片頭痛の予防に用いる。米国は創薬者であるアムジェンが5月に承認申請済み。両社はアルツハイマー病や片頭痛領域で共同開発提携を結んでおり、AMG 334は米国では共同販売、それ以外はノバルティスが販売する(日本は除く)。CGRPやその受容体をブロックする抗体は複数の製薬会社が前後して承認申請しており、開発販売競争が激化している。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ギリアド、新規HIV治療薬を承認申請
(2017年6月12日発表)

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)は、新開発のインテグラーゼ・ストランド・トランスファー・インヒビターであるbictegravirを配合した三剤合剤を米国で承認申請した。HIV/AIDSの治療に用いる。欧州でも7~9月に承認申請の予定。

核酸系逆転写阻害剤のemtricitabine(200mg)とtenofovir alafenamide fumarate(25mg)にbictegravir(50mg)を加えたもので、一日一回服用。JTからライセンスしたインテグラーゼ阻害剤elvitegravirを配合したGenvoya(和名ゲンボイヤ)と似た組み合わせだが、cobicistatを配合する3A4ブーストを用いていないことが特徴で、薬物相互作用の懸念が小さいかもしれない。

第三相試験ではGSKのインテグラーゼ阻害剤であるdolutegravirを標的に直接比較試験やスイッチ試験などを行ったが、前者は非劣性に留まり優越性を示すことはできなかった。

リンク: ギリアドのプレスリリース

遺伝子組換え型vWFを欧州でも承認申請
(2017年6月22日発表)

英国のシャイアは、遺伝子組換え型vWFをEUで承認申請し受理されたと発表した。米国で15年にVonvendi名で承認された重度先天性フォン・ヴィレブランド病用薬だが、EUではVeyvondi名となる模様だ。遺伝子組換え型は初。適応は、18歳以上の患者の出血予防・治療そして周術期の出血管理を求めたが、米国では予防は認められなかった。

リンク: シャイアのプレスリリース

アドセトリスの適応拡大申請
(2017年6月20日発表)

シアトル・ジェネティクス(Nasdaq:SGEN)はAdcetris(brentuximab vedotin、和名アドセトリス)をCD30陽性の再発皮膚T細胞リンパ腫に単剤投与する適応拡大を米国で申請した。第三相試験ではORR(客観的反応率、4ヶ月以上持続例のみ)が56.3%と、化学療法群(methotrexateまたはbexaroteneを医師が選ぶ)の12.5%を大きく上回った。

Adcetrisは抗CD30抗体と抗癌剤のMMAEを結合した抗体薬物複合体で、ホジキン型リンパ腫などに承認されている。北米以外ではミレニアム・ファーマシューティカルズが、日本はその親会社である武田薬品が販売。

リンク: シアトル・ジェネティクスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが抗HCVコンビ薬などの承認を支持
(2017年6月23日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、6月の会議で以下の新薬や適応拡大について肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全加盟国などで承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

新薬は、まず、アッヴィのMaviret(glecaprevir、pibrentasvir)は慢性C型肝炎の治療薬で、配合成分のうち前者はEnanta Pharmaceuticals(Nasdq:ENTA)提携の成果であるNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、後者はNS5A複製複合体阻害剤。1型から6型まで有効な汎遺伝子型直接作用性抗ウイルス剤で、初治療/再発治療を問わず、代償性肝硬変や重度慢性腎疾患にも有効。ribavirinを併用する必要がなく、治療期間は8~12週間と短い。一日一回、三錠服用する。

リンク: アッヴィのプレスリリース

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)のVoseviも慢性C型肝炎治療用コンビ薬で、Sovaldi(和名ソバルディ)の活性成分であるNS5Bポリメラーゼ阻害剤、sofosbuvirと、汎遺伝子型NS5A複製複合体阻害剤のvelpatasvir、そして新開発の汎遺伝子型NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、voxilaprevirを配合している。こちらも遺伝子型1~6型の初回・再発治療に一日一回、8~12週間投与する。直接作用性抗ウイルス剤未経験者に対する効果はsofosbuvirとvelpatasvirの併用だけでも十分高く、三剤併用の出番は8週間コースの価値が確立している用途に限定されるのではないか。

リンク: ギリアドのプレスリリース

抗ウイルス剤の輩出はヒト・ゲノム・プロジェクトなどによるゲノム研究技術の進歩が齎したものだ。もう一つの成果が抗癌剤で、今月は比較的最近の新作用機序であるCDK4/6阻害剤と一昔前のVEGFR阻害剤が肯定的意見を得た。ノバルティスのKisqali(ribociclib)はCDK4/6阻害剤で、ホルモン受容体陽性、her2陰性の閉経後転移性乳癌の一次治療にアロマターゼ阻害剤と併用する。第三相試験ではPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.556とアロマターゼ阻害剤だけの群より有意に優れていた。

CDKは細胞周期に関わる酵素で、Kisqaliは、CDK4の結晶構造を解明したAstex Pharmaceuticalsとの細胞周期制御に関する共同研究の成果。尚、Astexは13年に大塚製薬が子会社化した。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

Fotivda(tivozanib)はVEGFR阻害剤で、末期腎細胞腫の第三相一次治療試験でメジアンPFSが11.9ヶ月とNexavar(sorafenib)の9.1ヶ月を有意に上回ったが、p値は0.04とボーダーライン上で、全生存のハザードレシオが1.24と有意ではないが好ましくない結果となったため、FDAは承認しなかった。第三相試験が進行中で来年、結果が出る見込み。今回、CHMPが肯定的意見を出したことは大番狂わせと言えるだろう。一次治療、またはVEGFR阻害剤以外の治療歴が適応。

tivozanibはアヴェオ・オンコロジー(Nasdaq:AVEO)が協和発酵キリンからアジア以外の権利を取得して開発したもの。アステラスが一時期、共同開発していたが、治験フェールを経て解消。代わって、欧州の権利は専門薬専業の新興企業、EUSA Pharmaが取得した。

リンク: アヴェオのプレスリリース(pdfファイル)

ドイツのメルクのMavenclad(cladribine)は高活性度再発性多発硬化症用薬。抗癌剤を経口投与に変えて転用するもので、承認申請は2009年、8年かけてやっとここまで来た。再発リスク削減効果の点では問題ないが、癌など深刻な副作用の懸念が中々払拭できなかった。今回の肯定的意見はCLARITY試験の事後的サブグループ分析に基づくもので、年率再発リスクが偽薬比67%低下、EDSS病状評価スコアの悪化が82%抑制とのことだが、逆に言えば、全ユニバースに承認するのは躊躇われたのだろう。

リンク: メルクのプレスリリース

適応拡大では、カナダのアレクシオン・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ALXN)のSoliris(eculizumab、和名ソリリス)を難治性全身性重症筋無力症に用いることが支持された。AChR(アセチルコリン受容体)に対する抗体を持つ患者が適応になる。第三相試験はフェールしたが、有効な薬が少ないこともあり、様々な分析の総合的な評価に基づいて是認したのではないか。米国や日本でも適応拡大申請中。

Solirisは補体系のC5に結合するヒト化抗体で、発作性夜間血色素尿症や非定型溶血性尿毒症症候群など、補体系の過剰活性が関与する疾患の治療に承認されている。筋無力症における作用機序も、抗体が神経筋接合部のAChRに結合して補体系を動員、攻撃させるのを抑制する模様だ。

リンク: アレクシオンのプレスリリース

最後に、バイエルのStivarga(regorafenib、和名スチバーガ)を肝細胞腫に用いる適応拡大。切除不能でNaxavar(sorafenib)による治療を既に受けた患者に用いる。第三相試験では全生存のハザードレシオが0.63(95%信頼区間0.50-0.79)、メジアンは10.6ヶ月で偽薬群の7.8ヶ月を上回った。米国では4月に承認、日本でも5月に第二部会を通過した。

StivargaはNexavarの水素原子をフッ素に置換したもので、どちらもOnyx(後にアムジェンが買収)との共同研究の成果。結腸直腸癌や消化管間質腫瘍のサルベージ療法薬として承認されている。ファイザーのSutent(sunitinib)などVEGFR阻害剤の多くが肝癌試験では苦戦しており、Stivarga/Nexavarは他の作用が貢献しているのかもしれない。

リンク: バイエルのプレスリリース

Brintellixの効能追加申請、米国はまたCRL
(2017年6月23日発表)

ルンドベックと共同開発販売パートナーである武田薬品は、抗鬱剤のTrintellix(vortioxetine、欧州などではBrintellix)のレーベル追加申請を行っていたが、FDAから二度目のCRL(審査完了通知)を受領した。2年前の諮問委員会で10人中8人が支持したことを考えると意外だが、理由は今回も公表されなかった。

FOCUS試験やCONNECT試験で鬱病患者の認知障害症状を改善したことをレーベルに収載すべく申請したのだが、初めての効能なので慎重になっているのかもしれない。

EUのレーベルには掲載されているが、臨床成績の箇所に様々な評価スコアの変化が列挙されているだけで、効能として記されているわけではない。承認と非承認の境界線は曖昧のように感じられる。

リンク: ルンドベックのプレスリリース


【承認】


PortolaのXa阻害剤も承認
(2017年6月23日発表)

Portola Pharmaceuticals(Nasdaq:PTLA)はFDAがBevyxxa(betrixaban)を承認したと発表した。心不全や脳卒中、深刻な感染症や肺疾患などで入院した要安静患者の静脈血栓塞栓を予防するのに用いる。

第三相試験では80mgを一日一回、35~47日間に亘って経口投与するコースをサノフィの低分子量ヘパリン、Lovenox(enoxaparin)の40mg皮注、6~14日コースと比較したところ、シーケンシャルな解析の最初であるD-dimer上昇コフォートの解析がフェールした。その後のより大きな母集団に関する解析はp値が0.05を下回ったが、治験成功とは言えず、FDAの評価が注目されていた。

04年にミレニアム・ファーマシューティカルズからライセンスした経口Xa阻害剤プログラムの成果で、09年にMSDにライセンスアウトしたが、競合が多いせいか、提携解消となった。最優先プロジェクトではなかったため他のXa阻害剤より開発が遅れた。

Portolaによると、この薬の適応である静脈血栓塞栓リスクが高い『メディカル』患者はG7の合計で年2400万人、うち100万人が発症し15万人が死亡するとのことだ。薬物療法は出血リスクを伴うため、電気刺激や弾性ストッキングなども広く用いられており、Bevyxxaの市場性はそれほど大きくないだろう。

リンク: Portolaのプレスリリース

湧永のキノロンが米国で遂に承認
(2017年6月19日発表)

米国コネチカット州の未上場新興製薬会社、Melinta Therapeuticsは、FDAがBaxdela(delafloxacin)を急性細菌性皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認したと発表した。湧永製薬が創製したキノロン系合成抗菌剤で、過去には大日本製薬やアボット(何れも当時の社名)に導出したこともあるが返品。06年にRib-X Pharmaceuticalsが世界権を取得し、経口剤に加えて新たに点滴用製剤を開発して承認申請。社名変更を経て、今回、遂に承認に漕ぎ着けた。

フルオロキノロンと比べて耐性菌や肺炎球菌に対する力価が高く、広スペクトラムとされる。QT延長や光毒性は見られない由。第三相試験ではvancomycinとatreonamを用いるレジメンと比べて治療効果が非劣性だった。

キノロン系なので腱炎や腱断裂、末梢神経症や中枢神経副作用に関する枠付き警告が付された。

リンク: Melintaのプレスリリース

シャイアーのADHD治療薬が11年ぶりに承認
(2017年6月20日発表)

シャイアーは、FDAがMydayis(混合amphetamine)を注意欠陥/多動性障害(ADHD)治療薬として承認したと発表した。13歳以上が適応になる。作用が最大16時間と長く、ADHD患者の半数を占める大人に適している。シャイアーによると、米国成人のADHD有病率は4.4%、推定1000万人とのこと。

申請は06年なので、承認まで11年かかったことになる。何か問題があったわけではなく、米国で07年に承認されたVyvanse(lisdexamfetamine dimesylate)のライフサイクルマネジメントを優先して、その特許切れ後の穴を埋める薬として取っておいたのである。

リンク: シャイアーのプレスリリース

BRAF V600E変異陽性肺癌に適応拡大
(2017年6月23日発表)

ノバルティスのBRAF阻害剤であるTafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMEK1/2阻害剤のMekinist(trametinib、和名メキニスト)の適応拡大がFDAに承認された。BRAF V600変異陽性悪性黒色腫に承認されている併用療法を、BRAF V600E変異陽性非小細胞性肺癌に用いるもの。

該当するのは非小細胞性肺癌の1~3%程度なので、ちゃんと検査してもらえるか心配していたのだが、丁度良いコンパニオン診断薬が同時に承認された。Thermo Fisher Scientific社のOncomine Dx Target Testで、BRAF V600Eに加えて、ROS1やEGFRも診断できるとのこと。

第二相試験では、Tafinlarは150mgを一日二回、Mekinistは2mgを一日一回投与したところ、一次治療患者ではORR(客観的奏効率、第三者査読後)が61%、メジアン反応持続期間は未達(95%下限6.9ヶ月)、二次治療では各63%と12.6ヶ月だった。

この二剤は元々、グラクソ・スミスクラインが承認取得・販売していたものだが、ノバルティスのワクチン事業と同社の腫瘍学事業をアセットスワップした。

リンク: ノバルティスのプレスリリース
リンク: FDAのリリース(診断薬についても言及)

ロシュ、FDAがリツキサンの皮注用製剤を承認
(2017年6月23日発表)

ロシュはRituxan HycelaがFDAに承認されたと発表した。血液癌などに承認されているrituximabの皮注用製剤で、Halozyme(Nasdaq:HALO)の遺伝子組換え型ヒト・ヒアルロニダーゼが配合されており、2時間半の点滴静注ではなく5~7分で自己注可能。フル用量の点滴静注を一回以上受けた患者がスイッチできる。欧州ではMabThera皮注用として14年に承認されたが、FDAは、静注用と取り違え事故を懸念して名前を変えたのかもしれない。

リンク: ロシュのプレスリリース

皮注用C1エステラーゼインヒビターが承認
(2017年6月23日発表)

CSL(ASX:CSL)は、FDAがCSL BehringのHaegardaを承認したと発表した。遺伝性血管浮腫の発作予防に用いるヒト血漿由来のC1エステラーゼインヒビターで、同社のBerinertの皮注用製剤という位置づけ。週二回、自己注することができる。米国の遺伝性血管浮腫の患者数は6000~10000人とのこと。

リンク: CSLのプレスリリース






今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。