2015年5月2日

海外医薬ニュース2015年5月3日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • FDA、抗PCSK9抗体の諮問委員会を招集へ
  • バイオマリン、DMD治療薬の承認申請が完了
  • FDAが新種の多発性硬化症用薬の承認申請を受理
  • オプジーボ、悪性黒色腫一次治療の申請をFDAが受理
  • FDA諮問委員会が黒色腫遺伝子療法を支持
  • FDAはブリディオンを今回も承認せず
  • 米国で頤下脂肪治療薬が承認
  • MDCO、FDAが二製品を相次いで承認
  • レルベアが米で適応拡大
  • Lantus新製剤がEUで承認


【今週の話題】


FDA、抗PCSK9抗体の諮問委員会を招集へ

(2015年4月29日発表)

FDAは、6月9日と10日に内分泌代謝薬諮問委員会を招集してリジェネロン(Nasdaq:REGN)/サノフィとアムジェンが夫々、承認申請した抗PCSK9完全ヒト化抗体について意見を聞くことを発表した。

PCSK9(proprotein convertase subtilisin/kexin type 9)はLDL受容体の零落に関与する酵素。機能喪失変異を持つ人は心血管疾患のリスクが低いとされる。コレステロール治療薬はスタチンが世界で数千万人が服用するの超大型薬になり、また、高リスク患者を中心にLDL-C治療目標値が低下しているため、アドオン用薬として、あるいはスタチン不耐患者向けに、大型化が期待されている。

6月9日の会合はリジェネロン/サノフィが昨年承認申請したPraluent(alirocumab)を検討する。バイオマリン社から6750万ドルで購入した優先審査バウチャーを用いたため審査期限が7月24日と早いが、諮問委員会の後に1ヶ月以上あるので、大きな問題が浮上しない限り審査スケジュールには影響しないだろう。10日はアムジェンのRepatha(evolocumab)を検討する。承認申請は昨年8月と先だが標準審査なので審査期限は8月27日と1ヶ月遅い。

抗PCSK9抗体は心血管アウトカム試験が進行中で、治療目的である心筋梗塞などのリスクを削減する効果は確立していない。第三相試験などのメタアナリシスは良さそうなデータが出ているようだが、情報が断片的で鳥瞰が難しい。諮問委員会の2~3日前にブリーフィング資料が公開されれば全体像が明確になるだろう。

FDAは高脂血症/異脂血症治療薬の承認に際して心血管リスク削減効果のエビデンスを求めていない模様だ。作用機序が異なる薬でもLCL-Cが低下するならば心血管リスクも低下すると推定できると考えている。諮問委員会では、この仮説の妥当性や過去の臨床試験で稀に発生した神経認知障害や眼科系有害事象などに関する評価を議題にするのではないか。

リンク:FDAの公告(Praluent)

リンク:FDAの公告(Rapatha)

リンク:アムジェンのプレスリリース

【承認申請】


バイオマリン、DMD治療薬の承認申請が完了

(2015年4月27日発表)

米国の希少疾患用薬開発会社であるバイオマリン(Nasdaq:BMRN)は、米国でdrisapersenのローリング承認申請を完了したと発表した。DMD(デュシェンヌ型筋ジストロフィー)の患者の13%程度を占めるエクソン51スキップ型の治療に用いる皮注用アンチセンス薬で、ジストロフィン遺伝子の翻訳が途中で終了してしまうのを防ぎ、短いがある程度の機能を持つジストロフィンを作れるようにする。

初期、中期の試験では6分歩行距離が31~35メートル改善したが、第三相試験では偽薬比10メートルしか改善せず、二次的評価項目である運動機能などでも有意な差は見られなかった。エビデンスは明確ではないが、希少疾患なので、効果が小さくても承認される可能性はありそうだ。

EUでは15年央に条件付き承認申請を行う予定。

リンク:バイオマリンのプレスリリース

FDAが新種の多発性硬化症用薬の承認申請を受理

(2015年4月29日発表)

バイオジェン(Nasdaq:BIIB)とアッヴィ(NYSE:ABBV)は、抗CD25ヒト化抗体Zinbryta(daclizumab)を再発寛解型多発性硬化症の維持療法薬としてFDAに承認申請し受理されたと発表した。EUの申請も3月に受理されている。

この活性成分はPDLバイオファーマが創製、ライセンシーであったロシュが腎移植後の拒絶反応防止薬Zenapaxとして1997年に発売したが、売上が小さいため、09年に生産中止となった。両社は自己免疫疾患領域でも共同開発していたがロシュは離脱。PDLは生産プロセスを改良し、バイオジェンと共同で多発性硬化症の開発を進めた。アッヴィはPDLからスピンアウトされた新薬開発部門を買収、大手製薬会社同士の呉越同舟となった。

第三相試験ではベータインターフェロンより高い再発防止効果を示したが、深刻な皮膚毒性や肝機能検査値異常も見られた。過去の試験では自己免疫疾患も見られた。このため、承認審査では便益とリスクのバランスが論点になりそうだ。

リンク:両社のプレスリリース

オプジーボ、悪性黒色腫一次治療の申請をFDAが受理

(2015年4月29日発表)

BMSは、抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を悪性黒色腫の一次治療薬として米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査指定を受け、審査期限は8月27日。Opdivoは小野薬品との共同開発品で14年に二次治療薬として承認されている。

今回の申請は欧州やカナダで実施されたCheckMate-066試験に基づくもの。活性対照薬であるdacarbazineと比べて全生存のハザードレシオが0.42と有意に優れ、有害事象による治験離脱(6.8%対11.7%)も、グレード3以上の有害事象(11.7%対17.6%)も少なかった。

EUでは4月に一次治療と二次治療の両方でCHMPの肯定的意見を受けたが、前者はこの試験のエビデンスに基づいている。米国の申請が遅れたのは対照薬がdacarbazineであることがボトルネックなのだろう。同社のYervoy(ipilimumab)は11年に欧米で承認されたが、EUが二次治療に限定した(13年に解除)のに対してFDAは最初から一次治療も認めた。このため、米国ではYervoyが転移性進行性黒色腫一次治療の標準薬になっている。066試験に米国の施設が参加しなかったのはこのためだろう。

とは言え、Opdivoは小規模なYervoy対照試験でかなり良い反応率を示しており、様々な試験の結果を総合的に評価すれば、適応拡大を承認することが可能だろう。

リンク:BMSのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会が黒色腫遺伝子療法を支持

(2015年4月29日発表)

FDAの細胞・組織・遺伝子療法諮問委員会と腫瘍学薬諮問委員会の共催会議は、アムジェンが切除不能悪性黒色腫用薬として承認申請したT-VEC(talimogene laherparepvec)を検討し、22人対1人の大多数が承認を支持した。

T-VECは同社が11年に買収したBioVexの開発品で以前はOncoVEX(GM-CSF)と呼ばれていた。腫瘍細胞選択的に増殖するよう遺伝子操作したヘルペスウイルスにGM-CSFの遺伝子を組み込んだもので、黒色腫に直接注射するとウイルスが腫瘍を破壊し、腫瘍の各種抗原とGM-CSFに刺激された免疫細胞が他の黒色腫細胞も攻撃する、というアイディアだ。

第三相試験では主評価項目である持続的反応率が15.6%とGM-CSFだけを投与した群の1.4%を有意に上回ったが、全生存期間はメジアン23.3ヶ月対19.0ヶ月、ハザードレシオ0.79、p=0.051と有意な差が無かった。

FDAの評価はあまり良くないようだ。FDAは、通常、複数の独立した臨床試験で有意な治療効果を確認するよう求め、例外的に一本だけの時はp値が0.001とか著しく低いことを要求する。0.051では失格である。持続的反応率では大きな差があったが、オープンレーベル試験なので医師のバイアスが影響しているかもしれない。打切り例が多いこともこの影響かもしれない。それでも諮問委員が支持したのは、悪性黒色腫は難しい病気なので様々な治療オプションが必要という主張であるようだ。

この試験は一次治療の患者も含まれており、サブグループ分析では一次治療、内臓転移なし、腫瘍が小さい、などの患者の方が効果が高かったようだ。しかし、抗癌剤のサブグループ分析はあまりアテにならないので、これらの患者だけに承認するのは難しいだろう。

審査期限は10月27日。FDAがどのような結論を出すか、注目される。EUでは昨年9月に承認申請が受理された。

FDAはブリディオンを今回も承認せず

(2015年4月28日発表)

MSDは15年第1四半期の決算発表電話会議で、FDAからBridion(sugammadex、和名ブリディオン)の審査完了通知を受領したことを明らかにした。Bridionは筋弛緩剤の解毒剤で、術後の回復を早める。欧州で08年、日本での10年に承認され、特に日本で普及したようだ。米国は08年に承認申請したが過敏反応の懸念を指摘され、アレルギー感受性試験を実施することになった。13年に試験結果を提出したが、実施施設の査察で問題が発覚した模様で、再び審査完了通知を受領。

追加試験を実施して提出したが、ここでも査察で何か発覚した模様で、諮問委員会がキャンセルになり三度目の審査完了通知を受領することになった。

【承認】


米国で頤下脂肪治療薬が承認

(2015年4月29日発表)

FDAは頤下脂肪(二重顎)の治療薬を承認したと発表した。Kythera社(Nasdaq:KYTH)が開発したKybella(deoxycholic acid)で、天然の食物脂肪分解物質を化学合成したもの。顎の下の膨らんだ脂肪に注射すると細胞膜を破壊する。

脂肪を取る薬というと腹を凹ませることができないかとか、色々想像してしまう。FDAも乱用を気にしている模様で、顎以外の脂肪に対する効果や安全性は確立していないと警告している。承認された用途でも深刻な神経障害のリスクがあるようだ。医師は事前にトレーニング・プログラムを受講し、患者にリスクを伝えた上で施行する。治療は一回15~20分程度で終わるようだ。

リンク:FDAのリリース

リンク:Kytheraのプレスリリース

MDCO、FDAが二製品を相次いで承認

(2015年4月30日発表)

メディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)は同じ日に二度、FDA承認を発表した。

一つはIONSYS。術後の入院患者が用いるフェンタニル供給器で、クレジットカード・サイズのディバイスを上腕部や胸に貼付け、必要な時にボタンを押すとフェンタニルが微弱電流に乗って経皮供給される。ベッドサイドに据え置くPCAと呼ばれる静注用機器と異なり、針が無いので患者や医療従事者に安全で、また、ベッドを離れる邪魔にならない。元々はジョンソン・エンド・ジョンソンが06年に承認取得したものだが、誤作動が原因で販売中止になった。その後、権利を取得して改良に成功したIncline社をMDCOが12年に買収した。

もう一つはRaplixaというフィブリンシーラント。術中に軽中度出血を止血できない場合に用いる。Ventura社の技術を用いてフィブリノーゲンとトロンビンを乾燥粉末化したもので、出血箇所で溶解・混合し血栓を形成する。吸収性ゼラチンスポンジと共に用いる。乾燥粉末製剤が承認されたのは米国で初めて。13年に買収したProFibrix社の開発品。

リンク:FDAのリリース

リンク:MDCOのプレスリリース(IONSYS)

リンク:同(Raplixa)

レルベアが米で適応拡大

(2015年4月30日発表)

グラクソ・スミスクラインは、Breo(和名レルベア)を喘息症の維持療法として用いることが米国で承認されたと発表した。吸入用コルチコイドのfluticasone furoateと長期作用性ベータ2作用剤vilanterolの合剤で、同社のAdvair(fluticasone propionateとsalmeterol xinafoateの合剤、和名アドエア)と似ているが、一日二回ではなく一回の吸入で済む。

13年にCOPD維持療法薬として承認されたが、FDAは喘息症患者に対する長期作用性ベータ2作用剤の安全性に懸念を持っているため承認が遅れた。18歳以上が対象で、12~17歳は審査完了通知となった。

リンク:グラクソ・スミスクラインのプレスリリース

Lantus新製剤がEUで承認

(2015年4月28日発表)

サノフィは、Toujeo(insulin glargine)がEUで糖尿病治療薬として承認されたと発表した。持効性インスリンのベストセラーであるLantusの新製剤で300単位/mlと濃度が3倍。薬物動態が若干異なるようで、Lantusからスイッチする場合は量を10~18%増やす。米国は2月に承認、日本は昨年7月に承認申請。

Lantusはバイオシミラーが承認申請されているため需要をToujeoにシフトさせたいところだが、米国では価格がLantusと大差ないようなので、難しいだろう。勿論、バイオシミラーの普及速度もスローなのだろうが。

リンク:サノフィのプレスリリース

今週は以上です。

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2015年4月26日

海外医薬ニュース2015年4月26日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • AACR:オプジーボ、併用で効果も副作用も増強
  • AACR:Keytrudaのデータも続々と発表
  • MSD、Keytrudaを非小細胞性肺癌に適応拡大申請
  • アッヴィ、4型C型肝炎治療薬を米国で承認申請
  • CHMP、オプジーボなどの承認を支持
  • サイラムザが結腸直腸癌に適応拡大
  • CHMPもsofosbuvirとamiodaroneの相互作用を警告


【新薬開発】


AACR:オプジーボ、併用で効果も副作用も増強

(2015年4月20日発表)

BMSの末期黒色腫用薬、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)のYervoy(ipilimumab)併用一次治療第二相試験の結果がAACR(米国癌研究学会)とNew England Journal of Medicine誌で発表された。標準療法であるYervoyに追加すると反応率やPFS(無進行生存期間)が有意に向上するという大変良い内容だが、過去の併用試験と同様に、重篤な副作用も増加した。別途第三相試験が進行中。

このCheckMate-069試験は、初めて治療を受ける切除不能のステージ3と4の黒色腫患者142人をYervoy・偽薬併用群と両剤併用群に無作為化割付して反応率を比較した二重盲検試験。Yervoyは承認用法である3mg/kgを三週間に一回、合計4回点滴静注。OpdivoはYervoy併用期間中は1mg/kgを三週間に一回、その後は二次治療で承認されている用法である3mg/kgを二週間に一回、点滴静注。

末期黒色腫の半分を占めるbraf変異型はbraf阻害剤が有効なので、野生型と分けて考える必要がある。最初に野生型に対する効果を見ると、反応率は偽薬群が11%、併用群は61%と大きく向上した。過去の試験ではYervoyが10%台、Opdivoは30~40%なので、相乗効果がありそうだ。特に注目されるのは、完全反応がゼロ対22%と大きく改善したこと。PFSのハザードレシオも0.4と顕著に向上した。

次に、braf変異型では反応率52%、完全反応22%となり、どちらのタイプにも有効であることが判明した。また、Opdivoのような抗PD-1抗体はPD-L1陽性腫瘍に特に有効な可能性があるが、この試験では陽性陰性どちらにも効果が見られた。

一方で、グレード3/4の薬物関連有害事象の発生率は24%対54%、それによる治験離脱は17%対47%と大きく上昇した。また、併用群では3人が薬物関連死した。うち2例は肺炎、1例は心室不整脈で、肺炎はこの二剤を使う時に特に注意すべき副作用の一つである。尤も、有害事象例の80%はステロイドの使用などによって改善/解消し、投与中止例でも薬効が見られたようである。

この試験の商業的なインプリケーションは、両剤を同じスケジュールで投与する有効性が示されたこと。Opdivoの承認用法・他の試験の用法は二週間に一回投与なので、もし今回の用法で十分な効果が見られなかった場合、元々三週間に一回投与する薬として開発されたMSDのKeytruda(pembrolizumab)に見劣りしてしまう。第三相試験の成功に期待が高まった。

効果の点では素晴らしいのだが、忍容性を改善できないものだろうか。元々、YervoyもOpdivoも至適用量が明確ではなく、OpdivoをメインにしてYervoyの用量を調整するとか、工夫の余地があるのではないか。Yervoyのコストは4回投与で12万ドル、Opdivoは最初の4回分が8000ドル程度、その後は月1.2万ドルなので、減量できれば財布の負担も軽くなる。

尚、OpdivoはEUでCHMPの肯定的意見を獲得した(後述)。

リンク:BMSのプレスリリース

リンク:NEJMの治験論文(オープンアクセス)

AACR:Keytrudaのデータも続々と発表

(2015年4月19日発表)

最近の癌学会は抗PD-1抗体の一色に染まった感があるが、AACRではMSDのKeytruda(pembrolizumab)の様々な治験データも発表された。末期黒色腫の第三相Yervoy対照試験、非小細胞性肺癌の後期第一相試験、胸膜中皮腫の後期第一相試験などである。

まず、Yervoy対照試験。切除不能/転移性の黒色腫の一次/二次治療試験で、一次治療が65%を占めた。Keytrudaの承認用法は二次治療(braf変異型の場合は三次治療)として2mg/kgを三週間に一回、30分点滴静注だが、この試験では10mg/kgを二週間に一回投与する群と、同じく三週間に一回投与する群を設定し、Yervoy群と比較した。主評価項目はPFSと全生存期間。前者は一回目の中間解析で目的を達成、後者も二回目の中間解析で達成した。

PFSのメジアン値は各群、5.5ヶ月、4.1ヶ月、2.8ヶ月となり、Yervoy比ハザードレシオは二群とも0.58、統計的に有意だった。全生存期間の解析もハザードレシオが各0.63、0.69となり統計的に有意。各群の1年生存率は74.1%、68.4%、58.2%だった。反応率は各33.7%、32.9%、11.9%。投与頻度は二週に一回でも三週に一回でも効果は大差なさそうだ。サブグループ分析では、braf変異型にも有効性が見られたが、PD-L1陰性癌では、症例数が少ないせいか、有意な差は見られなかった。

グレード3以上の治療時発現有害事象の発生率は各13.3%、10.1%、19.9%。Yervoy群は結腸炎や下垂体炎などの発生率が高かった。

BMSは自社製品であるYervoyと比較するよりは併用法を探る方が有利であり、抗PD-1のモノセラピーの開発はMSDに期待せざるを得ない。直接比較試験が成功したのは朗報だが、効果はOpdivoの併用データの方が良さそうに見える。現状では、併用をチャレンジして忍容性面で問題があれば抗PD-1のモノセラピーに切り替えるのがベスト、ということになりそうだ。

最近の画期的新薬は異常に高価なので話題が学会発表だろうが何だろうが費用の話をせざるを得ない。Keytrudaは2mg/kgを三週間に一回という用法でOpdivoと同程度の価格が付けられた。10mg/kgだと月8万ドルになってしまうので、もしこれが至適用量ならば、価格体系の見直しは必至だろう。

リンク:MSDのプレスリリース

リンク:NEJMの治験論文(オープンアクセス)

MSDはKeytrudaを非小細胞性肺癌の二次治療薬として米国で適応拡大申請したと発表した。この根拠となったのがAACR/NEJMで発表された500人規模(!)の後期第一相試験だ。用法は10mg/kgを二週間に一回と三週間に一回などをテストしたが、効果は同程度であった模様で、用法毎のデータは公表されていない。

反応率は19.4%だったが、薬効に関する主評価項目であるPD-L1陽性細胞の比率が50%以上の患者では45%、メジアン反応持続期間12.5ヶ月だった。一方、1~49%の患者では16.5%、1%未満では10.7%だった。各サブグループのメジアンPFSは6.3ヶ月(うち一次治療患者は12.5ヶ月、二次治療は6.1ヶ月)、3.3ヶ月、2.3ヶ月、メジアン生存期間は未到達、8.8ヶ月、8.8ヶ月となっている。グレード3以上の有害事象の発生率は9.5%、うち9例(1.8%)が肺炎で、一人は死亡した。

MSDが検査した患者のうち、癌細胞の50%以上でPD-L1が発現していたのは23%だった。肺癌二次治療で反応率が45%というのは高く、このサブグループにとっては特に有効と言えそうだ。1~49%の患者(38%)の反応率も悪くないが、PFSや全生存期間は1%未満とそれほど違わないので、臨床的な意義は良く分からない。1%未満の反応率も悪くはないが、実薬対照試験のデータも見てみたいものだ。

判定はDAKOのIHC法検査を用いており、MSDの適応拡大申請に合わせてPMA(医療機器の承認申請)が行われた。非小細胞性肺癌はEGFRやALKなどの遺伝子変異を調べて最適な治療法を選択する手法が普及しているが、PD-L1検査が加わることになる。

MSDのプレスリリースは承認申請の範囲について言及していないが、DAKOのPMAには言及しているので、おそらく、50%以上のサブグループだけなのだろう。それでもEGFR変異やALK変異より頻度が高いので、一次治療における治療効果が他の治療法より高いことが将来、立証されたならば、最初にPD-L1を検査し、陰性なら他の検査を行うプロトコルになりそうだ。

リンク:MSDのプレスリリース

リンク:NEJMの治験論文(オープンアクセス)

抗PD-1はIL-2やインターフェロン、Yervoyなどの既存の免疫強化療法と比べて効果が高く、また、様々な癌に効果がありそうなことが魅力だ。AACRではPD-L1陽性の末期胸膜中皮腫に反応率が28%、疾病安定化率48%であったことが発表された。数十人の小規模な試験だが、有効な薬が少ないので注目できる。

リンク:MSDのプレスリリース

抗PD-1抗体はBMS/小野薬品連合とMSDが開発競争を繰り広げているが、受容体ではなくレガンドをブロックする抗PD-L1抗体でも、ロシュ、アストラゼネカ、独メルク/ファイザー連合などが鎬を削っている。三番手、四番手の会社は先行会社の開発が進んでいない疾病に重点を置くことになるが、それにしても、第三相試験の対象は膀胱癌やトリプルネガティブ乳癌など多彩だ。臨床初期試験では頭頸部癌や胃癌、腎細胞腫、結腸癌などでも効果のシグナルが出ている。

併用薬の候補も多彩で、開発担当者に掛かる負荷や必要資金は大きいだろう。そのせいか、併用候補のメーカーとの開発提携が活発化している。更に、セルジーンはアストラゼネカのMEDI4736を血液学領域で開発する権利を取得した。同社の医薬品・開発品との併用試験が狙いだ。ファイザーが、決して先行しているとは言えない独メルクと開発提携したように、抗PD-1/PD-L1は製薬会社にとって無視できない分野になった。

【承認申請】


MSD、Keytrudaを非小細胞性肺癌に適応拡大申請

(2015年4月19日発表)

上記のように、MSDは抗PD-1抗体のKeytruda(pembrolizumab)を非小細胞性肺癌の二次治療薬として米国で適応拡大申請した。

リンク:MSDのプレスリリース

アッヴィ、4型C型肝炎治療薬を米国で承認申請

(2015年4月23日発表)

アッヴィは、ombitasvirとparitaprevir、ritonavirの合剤を遺伝子型4型の慢性C型肝炎の治療薬として米国で承認申請し、受理されたと発表した。日米欧は1型が多く、4型は米国の場合、6%を占めるだけ。後期第二相試験ではribavirin併用で12週間治療したところ、全員が持続的ウイルス学的奏効(SVR12)を達成した。

この合剤はEUでも4型向けに承認されている(製品名はViekirax)。日本では1型慢性C型肝炎に承認申請され、迅速審査指定された。また、米国ではこの合剤とdasabuvir錠をセットにしたものがViekiraパックとして1型向けに販売されている。

ombitasvirはNS5A阻害剤、paritaprevirはNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、ritonavirはCYP3A4阻害剤、dasabuvirはNS5Bポリメラーゼ阻害剤。ritonavir以外の三剤はウイルスのゲノムに含まれる複製に必要な酵素を阻害し、ritonavirはparitaprevirの代謝を遅らせて作用を長期化する。

リンク:アッヴィのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、オプジーボなどの承認を支持

(2015年4月24日発表)

欧州医薬庁EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは4月の会議でBMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU加盟国などで承認されることになる。

リンク:CHMPのプレスリリース

Opdivoは、Tセルの抑制刺激受容体であるPD-1に結合して、腫瘍細胞のPD-L1が結合して抑制するのを妨げる。適応は末期黒色腫。一次治療試験では1年生存率が73%とdacarbazineを投与した群の42%を上回った。二次治療試験では反応率が31%と化学療法群の10%を上回った。米国ではMSDのKeytrudaが先に承認されたが、EUはBMSが先になりそうだ。

小野薬品とメダレックスが共同開発、BMSは後者を買収してこの超大型薬候補を入手した。BMSはTセルの副刺激受容体や抑制刺激受容体の研究に基づいてYervoyや抗リウマチ薬Orencia(abatacept)の開発に成功しており、この分野では抜群の存在感を持っている。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:BMSのプレスリリース

第一三共のXa阻害剤、Lixiana(edoxaban)も肯定的意見を受けた。適応・効能は非弁性心房細動で脳卒中や全身性塞栓イベントのリスクが高い患者のリスク削減と、急性症候性深静脈血栓や肺塞栓の治療と再発予防。日米では販売されているがEUで承認されるのは初になる。先行品が多いので競争は激しいだろう。

リンク:CHMPのプレスリリース

Vanda(Nasdaq:VNDA)のHetlioz(tasimelteon)も非24時間睡眠覚醒障害の治療薬として肯定的意見を受けた。一日は24時間だが人間の体は25時間サイクルである模様。日の光を浴びることにより時間を調整するが、全盲の人は調整ができずにこの疾患になりやすい。Heltliozはメラトニン作用剤で、夜間の睡眠時間を長期化し昼間は減らす。04年にBMSからライセンスしたもの。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:Vandaのプレスリリース

一方、BiovestのLympreva(dasiprotimut-T)は否定的意見となった。患者のリンパ腫細胞から作製した自家細胞療法で、BiovaxID名で知られている。濾胞性非ホジキン型リンパ腫の導入療法後の地固め療法として申請されたが、CHMPは臨床試験のデザインや内容が適切ではなく、(治験が実施されたのは一昔前なので)今日の標準療法である抗CD20抗体を用いておらず、品質や生産体制にも懸念があると判定した。

Biovestも親会社のAccentiaも数年前に会社更生法の適用を申請したが、その後どうしているのだろうか?

リンク:CHMPのプレスリリース

【承認】


サイラムザが結腸直腸癌に適応拡大

(2015年4月24日発表)

イーライリリーは、抗VEGFR-2抗体のCyramza(ramucirumab、和名サイラムザ)が末期結腸直腸癌の二次治療薬として米国で承認されたと発表した。胃癌二次治療にモノセラピーとpaclitaxel併用、そして非小細胞性肺癌の二次治療にdocetaxel併用が既に承認されており、四番目の適応・用法となった。

Avastinやoxaliplatin、5-FUなどによる一次治療を受けた患者の二次治療として、irinotecanなどのFOLFIRIレジメンと併用する。臨床試験ではメジアン生存期間が13.3ヶ月とFOLFIRIだけの11.7ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.85、p=0.023だった。レーベルでは出血、胃腸穿孔、創傷治癒の阻害などが枠付警告されている。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

【医薬品の安全性】


CHMPもsofosbuvirとamiodaroneの相互作用を警告

(2015年4月24日発表)

EUの薬品監督機関であるEMAの医薬品専門家委員会、CHMPは、ギリアド(Nasdaq:GILD)の慢性C型肝炎治療薬であるSovaldi(sofosbuvir、和名ソバルディ)とledipasvir配合剤Harvoniに関する警告を発した。Harvoni、またはSovaldiとBMSの慢性C型肝炎治療薬Daklinza(daclatasvir、和名ダクルインザ)の両剤を抗不整脈薬amiodarone(和名アンカロン)と同時使用すると、重度の徐脈や心ブロックが発生することがある。

これまでに8例が報告され、一例は死亡、二例はペースメーカーが必要になった。リスクを回避するために、両剤の同時使用はamiodarone以外の抗不整脈薬が不適な患者に限定し、もし使わなければならない場合はモニタリングを強化する。

内容的には3月29日号で書いたFDAの警告と概ね同じ。FDAとEMA、そして日本は医薬品に関する情報交換を密に行っており、今回のように、欧米の監督機関が相次いで警告を発することが珍しくない。

リンク:CHMPのプレスリリース

今週は以上です。

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2015年4月19日

海外医薬ニュース2015年4月19日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • オプジーボ、二本目の肺癌試験も成功
  • ファーザー、Ibranceの二次治療試験が成功
  • FDA諮問委員会が短期作用性P2Y12阻害剤の承認を支持
  • FDA諮問委員会、DPP-4阻害剤の心不全データなどのレーベル収載を勧告
  • FDAがアムジェンの慢性心不全用薬を承認


【新薬開発】


オプジーボ、二本目の肺癌試験も成功

(2015年4月17日発表)

BMSは、小野薬品と共同開発しているOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の二本目の非小細胞性肺癌二次治療試験が成功したと発表した。適応拡大申請に向かうだろう。

米国では昨年12月に転移性黒色腫の二次治療薬として初承認され、今年3月には扁平上皮非小細胞性肺癌の二次治療薬としても承認された。今回のCheckMate-057試験は扁平上皮腫以外の非小細胞性肺癌の二次治療薬としての効果をdocetaxelと比較したもの。用法用量は既存用途と同じ3mg/kgを二週間に一回、点滴静注。独立データ監視委員会が主評価項目である全生存期間で有意に優れると認定、予定より早く完了することになった。

この試験ではPD-L1の発現状況と薬効の相関性も検討している筈だ。これまでのエビデンスは区々で、閾値をどこに置くで変わるように感じられる。ポストホックでも良いので十分な検討を行ってもらいたいものだ。

Opdivoと同じ抗PD-1完全ヒト化抗体であるMSDのKeytruda(pembrolizumab)も第三相非小細胞性肺癌二次試験の結果が年央に出る見込み。転移性黒色腫ではKeytrudaが先に承認されたが非小細胞性肺癌二次治療ではOpdivoのエビデンスの方が先んじた。

リンク:BMSのプレスリリース

ファーザー、Ibranceの二次治療試験が成功

(2015年4月15日発表)

ファイザーは、Ibrance(palbociclib)の第三相転移性乳癌二次治療試験が成功したと発表した。米国では今年2月に一次治療で承認されているが、二次治療で別のホルモン療法薬と併用しても有効であることは重要な情報なので、データをレーベルに収載すべく申請することになるのではないか。未承認の欧州などでは今回のデータで承認申請できるかもしれない。

Ibranceは細胞周期進行を調停する酵素であるCDK4とCDK6を阻害し、G1期からS期に進むのを妨げる。in vitroでエストロゲン受容体を妨げる薬とシナジーが見られた。閉経後女性のエストロゲン受容体陽性、her2陰性転移性・局所進行性乳癌にFemara(letrozole)と併用した第1/2相一次治療試験でPFS(無進行生存期間)がFemaraだけの群を有意に上回り、米国で加速承認された。

今回のPALOMA-3試験はホルモン受容体陽性、her2陰性乳癌が対象で、併用薬はfulvestrant(アストラゼネカが開発したエストロゲン受容体零落剤Faslodex、和名フェソロデックス)。独立データ監視委員会がfulvestrantだけの群より薬効が優れると判定、繰上終了することとなった。

リンク:ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会が短期作用性P2Y12阻害剤の承認を支持

(2015年4月15日発表)

メディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)は、FDA心血管腎臓薬諮問委員会の12人の委員のうち9人がcangrelorの承認を支持したと発表した。苦節6年を経て、3月の欧州承認に続いて米国でも審査期限の6月に承認される可能性が出てきた。

cangrelorはアストラゼネカからライセンスした注射用のP2Y12阻害剤で、抗血小板作用のオンセットが15分、オフセットは60分と作用が早く短いことが特徴。PCI(経皮的冠介入術)による周術期心筋梗塞を防ぐ薬として06年に第三相入りしたが、09年に無益性が認定され中止、もう一本の第三相も打ち切られた。開発中止かと思われたがPHOENIX試験で再チャレンジ、名前の通り復活に成功し、13年に米国で承認申請された。

フェールした試験の方が多いのだから狐につままれたような感じだ。FDAも14年2月に開催された諮問委員会もエビデンスに懐疑的で、結局、審査完了となった。ところが、今回は審査官も諮問委員の多数も承認に前向きなスタンスに変わった。MDCO社が追加分析データを提出したとは言え、今回も狐につままれた感がある。

適応は、PCIの数時間前にPlavix(clopidogrel)のようなP2Y12阻害剤をプリロードすることができず、また、術中にReoPro(abcximab)のようなGPIIb/IIIa阻害剤を使う予定の無い患者に限定される。Plavixは作用のオンセットが遅いため事前に投与しておく必要があるが、もし検査の結果、PCIではなく開胸手術が決定した場合、薬が抜けるまで数日間、待つ必要がある。このため、医療施設や患者によってはプリロードを行わないことがあり、cangrelorの出番が来る。

PCIの対象の半分以上を占める安定期の患者では、事前の準備に時間を掛けられるので、出番は無いだろう。

cangrelorはEUでは3月にKengrexal名で承認。米国名はKengrealとなる模様。

リンク:MDCO社のプレスリリース

FDA諮問委員会、DPP-4阻害剤の心不全データなどのレーベル収載を勧告

(2015年4月14日発表)

FDA心血管腎臓薬諮問委員会は、アストラゼネカと武田薬品のDPP-4阻害剤の心血管アウトカム試験の結果を検討し、大多数の委員が、処方規制を強化する必要はないが心不全など安全性に関するデータをレーベルに記載すべきと回答した。MSDのDPP-4阻害剤の治験結果が明らかになった段階で必要があれば改めて検討することになるのではないか。

Onglyza(saxagliptin、和名オングリザ)はBMSが開発したDPP-4阻害剤で、14年2月にアストラゼネカが他の代謝学薬資産と共に買収した。FDAの要求に基づき実施した心血管アウトカム試験、SAVORで、心筋梗塞などのリスクが高まらないことが確認されたが、奇妙なことに、心不全による入院の発生率が3.5%と、Onglyzaを用いない対照群の2.8%より有意に高かった。ハザードレシオは1.27。また、全死亡のハザードレシオが1.11と、有意ではないが数値上は多かった。

一方、武田のNesina(alogliptin、和名ネシーナ)は第三相試験などで心血管安全性の要件を満たせなかったため米国では承認が遅延。心血管アウトカム試験EXAMINEの中間解析結果などを追加提出して13年に承認取得した。このEXAMINE試験では心筋梗塞などのリスクが高まらないことが確認された。Onglyzaとの関連で注目された心不全による入院は、2.6%と対照群の2.2%より若干多くハザードレシオは1.19だったが、95%信頼区間は1を跨いでおり有意ではなかった。

二型糖尿病は患者が多いので、1000人に一人、1万人に一人の副作用でも多くの被害を生む。大規模、長期間の試験を行ってリスクを精査する必要があるが、症例数や評価項目が多ければ多いほど、偶然に有意な差が出るリスクが高まる。回避策は、薬効に関しては評価項目を限定すること。実薬対照試験で時々見られる、主評価項目は非劣性、多数の二次的評価項目のうち一つ、二つで有意に優れていたという宣伝的研究発表は無視すればよい。一方、安全性については回避策は無い。薬効は一つで十分だが副作用が全てが重要だからだ。

もう一度安全性試験を行うのがベストだが、現実的ではない。幸い、DPP-4阻害剤についてはベストセラーであるMSDのJanuvia(sitagliptin)を始め、複数のコンパウンドの心血管アウトカム試験が実施されている。不確実なデータに基づいて議論しても結論は出ないので、これらのデータが発表されるのを待つのが賢明・・・これが今回の諮問委員会の判断のようである。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

リンク:武田のプレスリリース(和文)

【承認】


FDAがアムジェンの慢性心不全用薬を承認

(2015年4月15日発表)

FDAはアムジェンのCorlanor(ivabradine)を承認した。適応は、症候性安定性慢性心不全で安静時の心拍数が70bpm以上、且つ、耐容できる最大用量のベータブロッカーを服用している患者。効能は心不全の悪化による入院リスクの削減。

フランスのセルヴィエが開発したIfチャネル阻害剤で、ペースメーカーの電流を阻害して心拍数を抑制する。欧州では05年に慢性安定性狭心症の治療薬として初承認、ProcoralanまたはCorlentor名で販売されている。11年には慢性心不全に適応拡大が認められた。ところが、承認用量の1.3倍まで投与した慢性心疾患の試験で症候性狭心症を伴うサブグループの心血管疾患死・非致死的心筋梗塞が有意に増加、警告強化となった。

アムジェンは米国の権利を取得、SHIFT試験のデータに基づいて承認申請した。上記の条件に加えて、左心室機能が低下し、心房細動ではない患者を組入れて転帰を偽薬と比較したところ、心不全悪化による入院または心血管疾患による死亡のハザードレシオが0.82と有意に低かった(発生率24%対29%)。主な有害事象は徐脈、高血圧、一時的な視覚異常。妊婦は禁忌。

日本では小野薬品が11年にライセンス、ONO-1162として第二相試験中。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:アムジェン

今週は以上です。

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2015年4月11日

海外医薬ニュース2015年4月12日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • シャイア、ドライアイ治療薬の承認申請をFDAが受理
  • ギリアド、もう一つのTAF合剤を米国で承認申請
  • ロシュ、アバスチンがEUで子宮頸癌に承認
  • アムジェン、Vectibixの新用法がEUで承認
  • FDA諮問委員会がDPP-4阻害剤の安全性を検討へ


【承認申請】


シャイア、ドライアイ治療薬の承認申請をFDAが受理

(2015年4月9日発表)

英国のシャイアは、FDAがlifitegrastの承認申請を受理したと発表した。ドライアイの治療に用いる。優先審査指定されたが、審査期限は10月25日と通常より遅いのが奇異。第三相試験の結果が明快ではないので承認されるかどうかは微妙だろう。

経口インテグリン阻害剤で、白血球の表面分子であるLFA-1に結合、ドライアイの角膜結膜組織で過剰発現しているICAM-1の結合を妨げて、Tセルが活性化して組織に移行するのを抑制する。第三相試験は二本実施され、夫々光学的評価と症状・機能評価を共主評価項目としたが、一本は光学的評価、一本は症状改善効果だけしか有意な効果が見られなかった。事前にFDAと相談した上での申請なので勝算が無い訳ではないのだろう。

13年に1.6億ドルで買収したSARcode Bioscienceの開発品。

リンク:シャイアのプレスリリース

ギリアド、もう一つのTAF合剤を米国で承認申請

(2015年4月7日発表)

HIV/AIDS治療薬の最大手であるギリアド(Nasdaq:GILD)は、F/TAF(emtricitabine<F>とtenofovir alafenamide fumarate<TAF>の合剤)を米国で承認申請したと発表した。12歳以上のHIV/AIDS患者に用いる。

TAFはViread(tenofovir disoproxil fumarate<TDF>、和名ビリアード)の類縁体でどちらも体内で同じ活性成分に変わるプロドラッグ。用量が10分の1と小さく、また、腎機能に対する副作用が小さそうだ。Vireadは米国で17年にジェネリック化するため特許切れ対策という側面もありそうだ。昨年11月には4種類の薬剤を配合したコンビ薬も米国で承認申請されている。

抗HIV薬にはアルファベットの略称が付けられる。emtricitabineがFなのは奇妙な感じだが、EはJTから導入して開発したVitekta(elvitegravir)に譲ったようだ。

リンク:ギリアドのプレスリリース

【承認】


ロシュ、アバスチンがEUで子宮頸癌に承認

(2015年4月8日発表)

ロシュは、Avastin(bevacizumab、和名アバスチン)の適応拡大がEUで承認されたと発表した。持続性難治性転移性子宮頸癌に、cisplatin(白金薬不耐の場合はtopotecan)及びpaclitaxelと併用する。米国でも昨年8月に承認されている。

承認の根拠となったGOG-024試験ではメジアン生存期間が16.8ヶ月とAvastin以外の二剤だけを用いた群の12.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.74、p値は0.013だった。副作用面ではグレード3以上の胃腸、泌尿器、生殖器の瘻の発生率が6%(対照群は0%)、同じくG3以上の血栓塞栓が8%(1%)だった。

リンク:ロシュのプレスリリース

アムジェン、Vectibixの新用法がEUで承認

(2015年4月6日発表)

アムジェンは、Vectibix(panitumumab)の用法追加がEUで承認されたと発表した。野生kras型の転移性結腸直腸癌の一次治療薬として、FOLFIRIというirinotecanベースのレジメンと併用する。この組み合わせは初期の第三相試験で深刻な有害事象が多く見られたため開発が遅れていたが、その後、抗EGFR抗体は変異kras型には無効・有害だが野生型なら大丈夫ということが判明した。

リンク:アムジェンのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA諮問委員会がDPP-4阻害剤の安全性を検討へ

(2015年4月10日発表)

FDAは4月14日に内分泌学代謝学薬諮問委員会を招集してアストラゼネカのOnglyza(saxagliptin、和名オングライザ)と武田薬品のNesina(alogliptin、和名ネシーナ)の心血管アウトカム試験のデータを検討する。4月10日にブリーフィング資料が公開されたが、心不全リスクとOnglyzaの試験で見られた死亡リスクのシグナルが主な議題である模様だ。

FDAは血糖治療薬を開発している企業に心血管アウトカム試験の実施を求めている。承認申請前の第三相試験などで大きな懸念が見られなかった場合は承認・発売後に、見られた場合は申請前に実施して、心筋梗塞などのリスクが高まらないことを確認しなければならない。二型糖尿病は患者が多く、薬物療法を何十年も続ける可能性があるため、心血管疾患リスクだけでなく様々な副作用を評価する価値がある。

OnglyzaのSAVOR試験も、NesinaのEXAMINE試験も、心筋梗塞や脳梗塞などのMACE(主要有害心血管イベント)が増えも減りもしなかったが、意外なことに、SAVOR試験では心不全による入院が有意に増加した。発生率は3.5%、他の薬で治療した対照群は2.8%、ハザードレシオ1.27、p値は0.007だった。また、更に意外なことに、二次的評価項目である全死亡のハザードレシオは1.11だった。有意ではないが、死亡のような発生数の少ないイベントは有意差が出難いので、慎重に受け止めることが必要だ。

EXAMINE試験では心不全入院に有意差は無かったが、発生率2.6%対2.2%、ハザードレシオ1.19、95%信頼区間0.9~1.6なので、これもイベント数が少ないために有意差が出なかった可能性を考えざるを得ない。

もしリスクが現実のものであった場合、メカニズムは何なのか?ブリーフィング資料によると、二種類のDPP-4作用剤の試験で、二型糖尿病患者の心血管疾患リスク因子の一つである内皮機能障害を誘導する可能性が浮上したとのこと。

となると、心不全入院リスクはDPP-4阻害剤のクラス・イフェクトかもしれない。MSDのJanuvia(sitagliptin、和名ジャヌビア/グラクティブ)の心血管アウトカム試験の結果が6月のADAで発表されるので、注目したい。諮問委員会当日にFDAが公表する可能性もありそうだ(ブリーフィング資料は1ヶ月前までに委員に配布することになっているため、情報は最新ではない)。

EXAMINE試験ではMACEに群間差が無かったが、北米の施設だけのサブグループ分析はハザードレシオが1.28と、有意ではないがあまり良くなかった。この点も討議される予定。

長期大規模試験は検出力が高いので、偶然にノイズを拾ってしまうことがある。今回もその可能性はあるが、もし現実のリスクであった場合は危険にさらされる潜在人口が多いので、軽々には結論を出せないだろう。血糖治療薬の選択肢は多いので尚更だ。諮問委員の判断が注目される。

リンク:FDA諮問委員会用ブリーフィング資料

今週は以上です。

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2015年4月5日

海外医薬ニュース2015年4月5日



【ニュース・ヘッドライン】

  • メディベーション/アステラス、イクスタンジがbicalutamideに勝つ
  • ノバルティスの鉄キレート剤第三弾、米国で承認


【新薬開発】


メディベーション/アステラス、イクスタンジがbicalutamideに勝つ

(2015年4月2日発表)

メディベーション(Nasdaq:MDVN)とアステラス製薬は、Xtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)が第二相試験でbicalutamide(和名カソデックス、ジェネリックもある)より優れた進行遅延効果を示したと発表した。先に結果が出た別の第二相でも上回っており、第二相とはいえ説得力がある。実際の医療でbicalutamideとバッティングする非転移性・無症候性のCRPC(去勢抵抗性前立腺癌)は第三相偽薬対照試験が進行中で、年内に結果が出そうだ。

前立腺癌は高齢者に多く、進行が緩徐であることや切除や放射線療法、leuprolideのようなLH-RH作用剤が有効であるため寿命にはあまり影響しないことが多い。しかし、一部はやがてPSA値が上昇し、CRPCと診断されるようになる。

介入のタイミングや方法は国や患者特性により異なるが、PSAが上昇し続けるならbicalutamideのようなアンドロゲン受容体拮抗剤を単剤投与・追加するかもしれない。更に、転移したり症状が重くなったらXtandiやジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone、和名ザイティガ)、Taxotere(docetaxel)などを用いるかもしれない。

Xtandiは転移性症候性CRPCの患者にTaxotereのような化学療法の次に施行する薬として12年に米国で承認され、14年には転移性CRPCだが未だ症状が出ていない、あるいは軽症状の患者に用いることも承認された。前者はキモセラピーの後なのでポスト・キモ、後者は、症状が顕著になるまでは化学療法の適応にならないため、プリ・キモと通称されている。

今回の第二相STRIVE試験は、転移性のCRPC257人と非転移性CRPC139人を組入れた無作為化割付二重盲検試験。Xtandi群はメジアンPFS(無進行生存期間)が19.4ヶ月、bicalutamide群は5.7ヶ月、ハザードレシオ0.24、95%信頼区間は0.18~0.32となった。p値は0.0001未満。

1月に結果が発表されたTERRAIN試験(転移性CRPCのみ)では15.7ヶ月対5.8ヶ月、ハザードレシオ0.44、95%信頼区間0.34~0.57だった。対象疾患が一部異なることや小規模な試験であるせいか数値に多少の違いはあるものの、概ね同じような結果だ。

深刻な有害事象や心臓有害事象はXtandiの方が若干多く発生している。また、今回の試験でも癲癇が一例、発生したようだ。これらのリスクは注意しなければならないが、Xtandiの方が優れた選択肢であるように感じられる。

Xtandiはbicalutamideと同じアンドロゲン受容体拮抗剤で、力価が高く、bicalutamideが持たない作用も持っている模様だ。前立腺癌の臨床試験は観察期間が長く、また、使うタイミングも色々あるので複数の試験を実施して適応を一歩一歩拡大していかなければならないが、将来的には、LH-RH作用剤と同様に更に早い段階で使われるようになるのではないか。

リンク:両社のプレスリリース

リンク:同(和文)

【承認】


ノバルティスの鉄キレート剤第三弾、米国で承認

(2015年3月30日発表)

ノバルティスは、FDAがJadenu(deferasirox)を慢性鉄過剰症の治療薬として承認したと発表した。Desferal(deferoxamine)、Exjade(deferasirox、和名エクジェイド)に次ぐ鉄キレート剤の第三弾。

地中海貧血や鎌状赤血球貧血などを罹患し頻繁に赤血球輸血を必要とする患者は、鉄が過剰になり臓器に蓄積、障害を与えるリスクがある。Desferalは鉄に結合して排泄を促す重要な治療手段だが、携帯ポンプを使って8時間連続点滴を週5日間施行する必要があった。05年に米国で承認されたExjadeは錠剤を液体に溶かして空腹時に一日一回飲むだけで足りるので、日常生活の自由度が高まる。但し、残念ながらDesferalとの生物学的同等性が完全ではないため、用途が制限されている。

Jadenuは錠剤をそのままで一日一回、服用する。Exjadeが発売された時ほどは感動しないが、錠剤の方が良い場合もあるのだろう。空腹時以外にも服用することができる。適応はExjadeと同じで、頻回輸血患者、または、輸血依存ではない地中海貧血患者の慢性鉄過剰症の治療。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

今週は以上です。

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2015年3月29日

海外医薬ニュース2015年3月29日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • MSD、抗PD-1抗体がBMSの抗CTLA-4抗体に勝つ
  • ノボ、もっと速効性のインスリンの試験が成功
  • 抗CD25抗体を多発性硬化症用薬として欧州で申請
  • CHMPがエーザイのレンビマなどの承認を支持
  • ノボ、デグルデクのアウトカム試験の中間データを提出へ
  • 肺炭疽治療薬が米国で承認
  • オレキシジェン、EUで体重管理薬が承認
  • ノボの体重管理薬もEUで承認
  • FDA、抗HCV薬とアミオダロンの併用を禁忌に
  • CHMP、骨粗鬆症用薬の注意事項をアップデート


【新薬開発】


MSD、抗PD-1抗体がBMSの抗CTLA-4抗体に勝つ

(2015年3月24日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)が末期黒色腫一次治療試験でBMSのYervoy(ipilizumab)より大きな延命効果を示したと発表した。内容は4月19日にAACR米国腫瘍研究協会で公表される予定。

同じ抗PD-1モノクローナル抗体であるBMSのOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)もdacarbazine対照試験で全生存期間ハザードレシオ0.42という良い結果を出しており、Yeovoy対照/併用試験も進行中。抗CTLA-4抗体のYervoyが米国で承認されてから4年、braf変異型を除いて悪性黒色腫の一次治療は抗PD-1抗体が主流になりそうだ。

このKEYNOTE-006試験は、末期黒色腫で薬物療法未経験、またはYervoy以外の一次治療を受けた患者を組入れて二剤の効果を比較した第三相オープンレーベル試験。Keytrudaは10mg/kgを二週間に一回点滴静注する用法と、三週間に一回の用法を検討した。二次治療で承認されているのは2mg/kgを三週間に一回なので5~7.5倍に相当する。Yervoyは承認用法通りで、3mg/kgを三週間に一回、90分点滴静注した。主評価項目はYervoy群に対する全生存期間とPFS(無進行生存期間)の両方。

抗PD-1抗体と抗CTLA-4抗体は何れも癌細胞がTセルの活性を抑制するために用いる表面分子に結合し、ブロックすることで免疫力を強化する。どちらも至適用量が良く分からず、Yervoyはdacarbazine併用一次治療試験で10mg/kgが有意な延命効果を示したが、この併用法は欧米の何れでも承認されていない。免疫調停性有害事象の増加が懸念されるところだ。

Keytrudaの指摘用法も依然として検討段階と言わざるを得ない。この試験でOpdivoと同じ二週間に一回投与をテストしたことは両剤の今後の競争力を考える上で重要であり結果を見てみたいが、そもそも、2mg/kgではダメなのか、この試験だけでは分からない。MSDのプレスリリースによるとKeytruda群の安全性プロファイルは過去の治験と類似していた由であり、本当にそうなら10mg/kgでも良いかもしれないが、過去の試験では10mg/kgのほうが有害事象が多かった。

薬は副作用だけでなく金銭的支出も伴う。投与量が5~7.5倍ということは年間の薬剤費が現行の15万ドルから75~113万ドルに増加することを意味するので、薄ら寒い。Yervoyは4回投与するだけだが抗PD-1は癌が進行、または有害事象に不耐となるまで続ける。これだけ高価になると、もう一つ、患者が破産するまでを追加しなければならなくなる。もし10mg/kgが至適となったら価格体系見直しを求める声が高まるだろう。

リンク:MSDのプレスリリース

ノボ、もっと速効性のインスリンの試験が成功

(2015年3月25日発表)

ノボ ノルディスクは、FIAspの第三相試験が二本とも成功したと発表した。15年末頃に欧米で承認申請する予定。このインスリンは、NovoRapid(insulin aspart、和名ノボラピッド)の作用のオンセットを更に早くしたもの。

第三相試験は一型糖尿病と二型糖尿病に分けて実施され、後者ではHbA1cの低下がNovoRapidと非劣性だった。一型糖尿病ではNovoRapidより有意に低下したが差は0.32%対0.17%なので小さい。食後に投与する群も設定され、NovoRapid比で非劣性だった(0.13%)。

NovoRapidのような短期作用性インスリンも、サノフィのLantus(insulin glargine)のような持効性インスリンも、近い将来にバイオシミラーが登場するだろう。新製剤を開発して既存製品との違いを十分に明確にしておくことが重要だ。

リンク:ノボのプレスリリース(pdfファイル)

【承認申請】


抗CD25抗体を多発性硬化症用薬として欧州で申請

(2015年3月27日発表)

バイオジェン(Nasdaq:BIIB…3月23日付で社名変更)とアッヴィ(NYSE:ABBV)は、Zinbryta(daclizumab)を多発性硬化症の維持療法薬としてEUで承認申請し受理されたと発表した。

この抗CD25ヒト化モノクローナル抗体はロシュがプロテイン・デザイン・ラボ(PDL)からライセンスし97年に臓器移植後の急性拒絶反応防止薬Zenapaxとして発売したが、あまり普及せず、販売中止となった。ロシュは自己免疫疾患での権利も取得したが06年に返還、PDLはバイオジェンを新たなパートナーとした。その後、PDLは新薬開発事業とヒト化抗体技術をライセンスする事業に分社化。前者はバイオジェンから買収オファーを受けたが拒否、結局、アッヴィが7億ドル余で買収した。

Zinbrytaの開発は決して順調ではなく、安全性に懸念がある。CHMPがどのように評価するか、米国でも承認申請するのか、続報に注目したい。

リンク:バイオジェンのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPがエーザイのレンビマなどの承認を支持

(2015年3月27日発表)

EUの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは3月の会議でエーザイの抗癌剤などについて肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク:CHMPのプレスリリース

エーザイのLenvima(lenvatinib、和名レンビマ)は進行性の局所末期/転移性分化甲状腺癌で放射性ヨウ素に反応しなかった患者に用いる。臨床試験ではメジアンPFS(無進行生存期間)が偽薬比14.7ヶ月長かった。高血圧や蛋白尿による減量が多く、CHMPは開始用量の検討を要請した。

分化甲状腺癌は乳頭腺や濾胞腺などの癌で甲状腺癌の9割を占める。症状を伴わない緩徐なものが多く、また、切除や放射性ヨウ素が有効だが、これらの治療に反応しない進行性の癌は予後があまり良くない。LenvimaはVEGF受容体をブロックする小分子薬で、類薬は数多く存在するが、同じ用途で承認されているのはバイエルのNexavar(sorafenib)だけ。Nexavarの試験では偽薬群の患者が進行後にNexavarを用いることが認められたためか、延命効果が確認されなかった。Lenvimaはどうなのだろうか?

Lenvimaは米国では優先審査の対象になり2月に承認、日本では迅速審査を経て先週承認、EUでも加速評価の対象になっている。

リンク:CHMPのリリース

Helsinn社のAkynzeoも肯定的意見を得た。NK1拮抗剤のnetupitantと5-HT3受容体拮抗剤palonosetronの合剤で、癌の化学療法の副作用である悪心嘔吐を予防する。5-HT3受容体拮抗剤は遅発性悪心嘔吐を防ぐ効果が弱いため、NK1拮抗剤で補完するアイディア。米国では昨年10月に承認、米国の共同販促権を持つエーザイが販売している。

MSDのGardasil 9を9歳以上の男女に用いることも支持された。ヒトパピローマウイルスによる子宮頸部や外陰部、膣、肛門の癌や性器いぼを予防するワクチンで、Gardasilは4種類のウイルス型の抗原を含有しているが、9は9種類。子宮頸癌の原因ウイルスの87%をカバーできるようだ。男も適用になるのは性的感染するから。

Gardasilを接種した人はどうすればよいのか、CHMPのリリースには記されていない。

リンク:CHMPのリリース

ベーリンガー・インゲルハイム/イーライリリーのSynjardyも支持された。SGLT-2阻害剤empagliflozinとmetforminの合剤で、二型糖尿病でmetforminだけでは血糖値を十分に管理できない場合に用いる。

適応拡大では、ロシュのTamiflu(oseltamivir)を1歳未満のインフルエンザ患者の治療に用いることが支持された。

ノボ、デグルデクのアウトカム試験の中間データを提出へ

(2015年3月26日発表)

ノボ ノルディスクは、Tresiba(insulin degludec、和名トレシーバ)とRyzodeg(degludecとaspartの合剤、和名ライゾデグ)の米国承認に必要な長期大規模試験の中間解析結果を4月に提出することを決めた。

EUや日本で承認されているが、米国は未承認。原因は明らかではないが、心血管安全性に関する米国独自の基準をクリアしていないのではないか。同社は13年にFDAから審査完了通知を受領した後に心血管アウトカム試験DEVOTEを開始、完了は16年下期の予定。事前に中間解析を行う旨定められていたが、当初は、中間解析をFDAに提出するか最終解析まで待つか、決めていなかった。

良好な内容なら年内に承認されることになる。尤も、ノボのプレスリリースは慎重なトーンだ。中間解析はイベント数が少ないため、偶然に良い数値や悪い数値が出てしまうリスクがある。そもそも、中間解析結果は一部の人たちしか知らず、経営陣も見ていない由。治験の厳格性を維持するために当然の措置だが、吉と出るか凶と出るか、分からないことになる。

リンク:ノボのプレスリリース(pdfファイル)

【承認】


肺炭疽治療薬が米国で承認

(2015年3月25日発表)

FDAはAnthrasilを肺炭疽治療薬として承認した。炭疽菌を吸入してしまった患者に抗菌剤と併用する。エマージェント・バイオソリューションズ(NYSE:EBS)の開発品で、同社の炭疽ワクチンを接種した健常者から採取・精製した免疫グロブリンG。米国保健福祉省で細菌兵器などの治療法を研究しているBARDA生物医学先端研究開発局の補助金を得て開発したもので、主用途は国家備蓄になる。

肺炭疽は発生率が極めて低く、また、致死率が高いため偽薬対照試験を行うのは困難。このため、薬効のエビデンスはヒト以外の霊長類の試験だ。偽薬群は全て死亡したが、Anthrasil群は36~70%が生存し、高用量の方が生存率が高いトレンドが見られた由。

EBS社は13年にCangene社を2.2億ドルで買収して入手した。

リンク:FDAのリリース

リンク:EBS社のプレスリリース

オレキシジェン、EUで体重管理薬が承認

(2015年3月26日発表)

オレキシジェン(Nasdaq:OREX)は、Mysimba(米名Contrave)がEUで体重管理薬として承認されたと発表した。bupropionとnaltrexoneの徐放性合剤で、肥満症または太り過ぎで心血管リスク因子を持つ患者に用いる。管理不良高血圧、癲癇、中枢神経系腫瘍、アルコールやベンゾジアゼピンの離脱を施行している患者、オピオイド依存、双極障害歴のある患者などは禁忌。米国では14年10月に共同販売権を持つ武田薬品が発売した。心血管アウトカム試験が進行中。

リンク:オレキシジェンのプレスリリース

ノボの体重管理薬もEUで承認

(2015年3月23日発表)

ノボ ノルディスクのSaxenda(liraglutide)もMysimbaと同様な適応症でEUで承認された。二型糖尿病薬Victozaの高用量版。ここ数年、次々と新しい体重管理薬が発売されているが、プレイヤーは日欧の大手製薬会社と米国の新興企業で、英米の大手製薬会社は静観している。各社の売上は今のところ低調だが、Saxendaは二型糖尿病薬の適応拡大なのでイメージは良い。

リンク:ノボのプレスリリース(pdfファイル)

【医薬品の安全性】


FDA、抗HCV薬とアミオダロンの併用を禁忌に

(2015年3月24日発表)

FDAは、NS5Bポリメラーゼ阻害剤sofosbuvirを含有するSovaldi(和名ソバルディ)やHarvoni(ledipasvir配合剤)を抗不整脈薬amiodaroneと同時使用しないよう警告した。

SovaldiとHarvoniは13~14年に承認された慢性C型肝炎治療薬で、インターフェロンを併用しなくても経口剤だけで高い奏効率を期待できる。今回の警告は市販後に9例の徐脈の有害事象報告があったため。1例の転帰は心停止、3例はペースメーカー埋込を受けた。発生メカニズムも因果関係も確立していないが、6例は治療開始後24時間以内に発症、残りも二週間以内だった。また、amiodaroneだけを止めた1例では軽快し、sofosbuvirを止めた後に再開した3例では再び発症したため、関連性が疑われる。

9例中7例はベータブロッカーを同時使用していた。また、sofosbuvirだけでなくBMSのdaclatasvir(日本でC型慢性肝炎治療薬ダクルインザ名で承認)またはジョンソン・エンド・ジョンソンのOlysio(simeprevir、和名ソブリアード)などの直接作用的抗C型肝炎ウイルス剤を併用していた模様だ。

amiodaroneを同時使用しなければならない患者は多くないだろうが、該当する場合は要注意だ。

リンク:FDAのリリース

CHMP、骨粗鬆症用薬の注意事項をアップデート

(2015年3月27日発表)

CHMPは、ビスフォスフォン酸やアムジェンのdenosumabで稀に発生する顎骨壊死(ONJ)を防ぐための注意事項をアップデートした。稀とはいえ発生すると日常生活に大きな足枷となるので、治療開始前・治療中に注意すべき事項を纏めて、また、患者が忘れないようにするためカードを用意することも発表した。

内容は、治療前に歯や口腔内をチェックすること、衛生を保つこと、など。抜歯が切っ掛けで発生することがあるからだ。リスク要因としては、薬の力価(骨吸収阻害作用が高いほどリスクが高い)、投与経路(注射用薬の方が経口剤より高リスク)、累積投与量。患者側のリスク因子は、癌、貧血、凝固障害、感染症、喫煙など。併用薬で注意すべきなのは、コルチコステロイド、化学療法薬、血管新生阻害剤、頭頸部癌の放射線療法など。抜歯以外にも歯周病や不安定な義歯、歯の病歴もリスク因子とのこと。

リンク:CHMPのプレスリリース

今週は以上です。

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2015年3月22日

海外医薬ニュース2015年3月22日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗アミロイドベータ抗体が早期試験で効果の兆し
  • ACC:抗PCSK9抗体の心血管安全性データが発表
  • ACC:BrilintaのDAT試験が成功
  • Imbruvicaの併用試験が成功
  • サノフィ、リキスミアの心血管アウトカム試験が成功
  • GSK、諮問委員会がレルベアを成人向けに承認することを支持
  • コール酸補充療法が米国で承認


【新薬開発】


抗アミロイドベータ抗体が早期試験で効果の兆し

(2015年3月20日発表)

バイオジェン・アイデックは、2015 AD/PD(アルツハイマー病パーキンソン病及び関連神経学的障害国際会議)で、BIIB037(aducanumab)の後期第一相試験のデータを発表した。アミロイドプラクが投与量依存的に減少しただけでなく、高用量は臨床的評価項目でも良さそうな結果を出した。抗アミロイドベータ薬では久々の朗報だが、一群30~40例の小規模な試験なので過信はできないだろう。バイオジェンは第三相試験を開始する予定。

BIIB037はスイスのNeurimmune社が長寿で認知機能が正常な健常者から発見・創製した抗体で、アルツハイマー病患者でしばしば見られるアミロイド凝集体に結合して、脳内の免疫細胞であるミクログリアに攻撃・除去させる。バイオジェンは07年に世界開発商業化権を取得した。

エーザイもスウェーデンのニューロサイエンス社から抗アミロイド・ベータ抗体BAN2401の開発販売権を取得、後期第二相試験を実施している。バイオジェンとエーザイは昨年、BAN2401など二剤の共同開発商業化で合意し、同時に、エーザイがBIIB037のライセンス・オプションを取得した。この結果、アミロイドベータ凝集体を標的とする抗体医薬の中で最も開発が進んでいる二品を両社が独占できるようになった。

今回の後期第一相試験は、前駆・軽度アルツハイマー病でアミロイドベータ検査で陽性だった患者を組入れて、偽薬又は試験薬を54週間、反復投与したもの。試験用量は体重1kg当り1、3、6、10mgで、4週間に一回、1時間点滴静注した。マウスの試験では3mg/kg以上でアミロイドベータ除去効果が見られた。6mg群は途中で追加されたため、まだ54週のデータはない。

学会では中間解析結果が発表された。まず、アミロイドプラクを削減する効果(26週時点、偽薬群との差)は、1mg/3mg/6mg/10mgの各群が0.030/0.087/0.143/0.205となり、1mg以外は統計的に有意だった。54週時点では1mg/3mg/10mgの各群が0.056/0.139/0.266でここでも1mg以外は有意だった。54週時点の方が減少が大きく、効果が累積的であることを示唆している。

臨床的評価は探索的解析で、CDR-SBとMMSEの二種類の病状診断スコアを用いた。CDR-SBは身体機能と認知機能の評価スコアで、前駆・軽度アルツハイマー病治療薬の有効な評価方法として欧米の承認審査機関に支持されている。MMSEはアルツハイマー病の診断に広く用いられているが、病状変化を定量的に測定する手法としてはあまり鋭敏ではないと考えられている。

54週時点の解析なので6mg群のデータはない。CDR-SBは偽薬/1mg/3mg/10mgの各群で2.01/1.70/1.33/0.59悪化した。10mg群は偽薬比でp<0.05だった(多重性補正が行われていないので厳密には統計学的に有意とは言えない)。MMSEは各群、3.14/2.21/0.75/0.58悪化となり、3mgと10mgはp値が0.05を下回った。

過去の抗アミロイドベータ抗体医薬の試験では、血管浮腫の副作用が特にApoE4という加齢性アルツハイマー病関連遺伝子多型を持つ患者で、多く発生した。免疫細胞が凝集体を攻撃する時に血管が流れ弾に当たるのだろう。ApoE4型は元々、血管浮腫のリスクが高いと言われており、副作用が出やすいのかもしれない。造影検査で発見できるため、今日ではARIA(アミロイド関連映像異常)と総称されている。

BIIB037は血管のアミロイドベータ凝集体には結合し難いため、損傷を与えるリスクは小さいと考えられてきたが、そうでもなさそうだ。1/3/6/10mg群のARIA関連浮腫発生率はキャリアでは5/5/43/55%、これを理由とする投与中止の発生率は5/0/10/35%だった、一方、ノンキャリでは0/9/11/17%と0/0/11/8%だった。全般的に症状を伴わない、あっても軽度で一時的に終わることが多く、過半の症例は用量を減らして投与を続行できたとのことだが、今後も要注意だろう。

この試験は症例数が少ないので信頼性が低いが、後期第一相段階のデータとしては良好だ。3mg/kg以上が有効というマウス試験の所見が裏付けられ、アミロイドプラク除去効果も、臨床的効果も、用量相関しているように見える。

留意点は三点。臨床試験のデータを見る時は偽薬群の数値を過去の試験と照らし合わせて確認することが重要だが、偽薬群のCDR-SBの1年間の悪化はやや大きいように感じられ、この試験に参加した患者に何らかの特殊性があった可能性を感じさせる。証券アナリストの事前の想定と比べると、相対リスク削減率の点では想定をはるかに上回ったが絶対差はレンジの真ん中辺りであり、どちらを重視すべきか難しくなっている。これも、この試験の悪化が想定より大きかったことが原因と推測される。

第二は、治療効果の臨床的意義。CDR-SBも前駆アルツハイマー病も過去の臨床試験の実績が少なく、どの程度の効果があれば臨床的に意義があるのか良く分からない。尤も、FDAは統計学的に有意な差があれば治療効果の多寡は問わないスタンスのようであり、この問題は承認審査の段階では重要ではないだろう。

第三は、血管浮腫だ。BAN2401もアミロイドベータ・モノマーに対するプロフフィブリル選択性が1000倍以上高い模様であり、もしBAN2401のARIA浮腫リスクが小さいなら、こちらの方が有望になるだろう。

もう一つ指摘したいのは、この試験の隠れた意義だ。アミロイドベータに作用する薬はアミロイドベータ蓄積を持つ患者に特に有効である可能性があるが、これまで、軽視されていた。今回の試験は事前に検査・スクリーニングを行っており、これが成功の陰の立役者かもしれない。過去の失敗から学び同じことを繰り返さないことの重要性を示した。

リンク:バイオジェン・アイデックのプレスリリース

ACC:抗PCSK9抗体の心血管安全性データが発表

(2015年3月15日発表)

欧米で承認審査中である二種類の抗PCSK9抗体の長期試験データがACC米国心臓学会とNew England Journal of Medicine誌で発表された。どちらも明確なエビデンスとは言えないが、心血管疾患のリスクを削減する可能性を示唆する好ましい内容だ。

リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発しているPraluent(alirocumab)は、ODYSSEY LONG TERM試験の結果が発表された。LDL-Cが70mg/dL以上で心血管リスクの高い患者2341人を150mg(二週間に一回、皮注)群と偽薬群に2対1割付し、78週間に亘ってフォローした二重盲検試験。

被験者の7割が冠状心疾患、3割が二型糖尿病、ほぼ全員がスタチンを服用し、半分近くが高用量を用いていた。ezetimibeは14%が服用。LDL-Cはベースライン時点で平均120mg/dだったが、24週間で試験薬群は61%低下、偽薬群は0.8%上昇し、夫々平均48mg/dLと119mg/dLとなった。著高リスク患者を70mg/dL未満に引き下げる、アグレッシブ療法試験の一つと言えるだろう。

投与中止は各群28%と24%で、皮注薬であるせいかやや多いように感じられるが、有害事象による投与中止は7%と6%なので、全般的には忍容性は良好だった。

事前に設定された心血管有害事象の解析は、発生頻度が4.6%対5.1%で大差なかった。しかし、進行中の心血管アウトカム試験と同じ項目(冠状心疾患死、心筋梗塞、脳卒中、不安定狭心症による入院)だけをカウントする事後的解析では、1.7%対3.3%、ハザードレシオ0.52、名目p値は0.02だった。なぜ結果が食い違ったのが論文では検討されていないが、各項目のデータを見ると、前者の解析で一番発生数が多い『虚血による冠血行再建術』で大差なかったことと、数は少ないが鬱血性心不全による入院が多かったことが影響したのだろう。

好ましい結果だが、釈然としない点もある。PCIが普及した今日では、早めに施行して症候性心筋梗塞などを未然に防ごうとするのが一般的であるが、当然、費用が掛かる。アテローム硬化の転帰を改善できるなら冠血行再建術の必要性や医療費を減らせそうなものだが、異なった結果になった。

また、発生頻度が低いので偶然かもしれないが、鬱血性心不全による入院が増加したことは要注意だ。ソフトなエンドポイントで主観や医療施設の方針に左右される可能性があるが、心血管項目は第三者の検証を受けているので通常の試験よりは信頼性が高い。心血管疾患だけでなく、筋痛や神経認知イベント(無気力、記憶障害、混乱など)、眼科的事象も若干増加した。これらの事項はアウトカム試験でもう一度チェックすることになるだろう。

もう一つ、アムジェンのRepatha(evolocumab)は、第二相と第三相の延長試験のプール分析が発表された。本試験の割付とは関係なしに4465人を試験薬と標準療法だけの群に2対1無作為化割付してメジアン11ヶ月追跡したもの。デザイン面での留意点は、盲検ではないこと、本試験を無事に終了した患者だけが対象というスクリーニングバイアスがあること、第二相の延長試験では420mgを4週間に一回皮注したが第三相延長試験では患者が望めば140mgを2週間に一回でも可とされたため用量用法が一定していないこと。

心血管疾患は心血管死、心筋梗塞、不安定狭心症による入院、冠血行再建術、卒中、TIA、心不全による入院をカウントした。結果は、1年時点のカプランマイヤー推定で発生率0.95%対2.18%、ハザードレシオ0.47、95%信頼区間0.28~0.78となった。評価項目はalirocumabの事前に設定された解析と類似しているが、結果は事後的解析と同様なものになった。

深刻な有害事象は各群大差なかった。有害事象全体では当然のことながら注射箇所反応が増加。筋痛、神経認知イベント、頭痛、肢痛、疲労も若干増加しているが、このうち幾つかは注射箇所反応と関連しているのかもしれない。

スタチンは米国で数千万人が服用しているので、数万人に一人の副作用リスクでも1000人が発症する計算になる。抗PCSK9抗体を必要とする患者は一部に過ぎないが、著高リスク患者に70mg/dL未満を目指すアグレッシブ療法の有効性が明らかになってきたこともあり、広く使われる可能性が残っている。それだけに、両剤の心血管アウトカム試験で稀だが深刻なリスクを明確にする必要がある。

リンク:ODYSSEY LONG TERM試験論文(NEJM、オープンアクセス)

リンク:OSLER試験論文(NEJM、オープンアクセス)

リンク:N. Stoneのエディトリアル(NEJM、オープンアクセス)

リンク:リジェネロンとサノフィのプレスリリース

ACC:BrilintaのDAT試験が成功

(2015年3月14日発表)

ACCとNEJM誌では、アストラゼネカの抗血小板薬、Brilinta(ticagrelor)の適応拡大試験の結果も発表された。心筋梗塞発症後1~3年経った患者にアスピリン(75~150mg)と偽薬、60mg、90mgの何れかを一日二回投与して心血管イベントを追跡したもの。8割超がPCI経験者。高リスク患者に長期的に二種類の抗血小板薬を投与するDAT(Dual Anti-platelet Therapy)の有効性を検討した試験の一つと言えるだろう。日本の施設も参加した。

主評価項目は心血管死、心筋梗塞、脳卒中というハードなものだけ。結果は、3年時点のカプランマイヤー推定による発生率が各群9.04%、7.77%、7.85%となり、偽薬比ハザードレシオは60mgが0.84、90mgは0.85。低量、高量、共に偽薬比有意。用量間の差は小さそうだ。尚、Brilintaは急性冠症候群に承認されているが、承認されている維持療法は90mg一日二回。

DATは出血リスクが高まるので便益とのバランスが問題になる。この試験はTIMI(米国の血栓学共同研究グループ)が主導したが、このTIMIの定義に基づく大出血の発生率は各群1.06%、2.30%、2.60%となり、偽薬比有意に増加した。NEJMのエディトリアルが指摘するように、1万人に1年間投与すると42人を心血管イベントから救うことができるが31人が大出血を被るため、良し悪しである。結局、昨年のAHAで発表されたDAPT試験と同じような結果になった。

有害事象による治験離脱は各群8.9%、16.4%、19.0%で、理由としては出血や消化不良が多かった。消化不良はBrilintaの特徴的な有害事象で、clopidogrelやEffient(prasugurel)のようなP2Y12受容体拮抗剤なら回避できるだろう。

アストラゼネカは欧米で適応拡大申請を行った。高リスク患者には有益だろうが、問題は、スクリーニング基準だ。医師の判断に委ねることになるが、医師は何に基づいて判断すべきなのか?今回の試験のような、年3%の確率で発症すると予想される患者は、出血リスクを覚悟してもDATを受けるべきなのか?個々の判断に任せるなら、そもそも何のためのEBMなのか?難しい問題を投げかけている。

リンク:PEGASUS-TIMI 54試験論文(NEJM、オープンアクセス)

リンク:J. Keaneyのエディトリアル(NEJM、オープンアクセス)

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

Imbruvicaの併用試験が成功

(2015年3月16日発表)

ファーマサイクリクス(Nasdaq:PCYC)は、Btk阻害剤Imbruvica(ibrutinib)の適応拡大試験が成功したと発表した。慢性リンパ性白血病(CLL)と小リンパ球性リンパ腫(SLL)、マントルセルリンパ腫(MCL)の三種類の血液癌にモノセラピーで使うことが承認されている。

今回の試験は、CLL/SLLの二次治療薬としてRituxan(rituximab)及びTreanda(bendamustine、和名トレアキシン)と併用する効果をこの二剤だけの併用と比較したもので、中間解析でPFS(無進行生存期間)を有意に延ばす効果が認められた。データはASCO米国臨床腫瘍学会で発表される予定。適応拡大に向かうことになりそうだ。

Imbruvicaはジョンソン・エンド・ジョンソンと共同開発販売。ファーマサイクリクスはアッヴィに210億ドルで買収されることで合意している。

リンク:ファーマサイクリクスのプレスリリース

サノフィ、リキスミアの心血管アウトカム試験が成功

(2015年3月19日発表)

サノフィは、二型糖尿病の治療に用いるGLP-1作用剤、Lyxumia(lixisenatide、和名リキスミア)の心血管アウトカム試験が成功したと発表した。二型糖尿病の高リスク患者を組入れてLyxumiaと偽薬を比較したもので、心血管リスクが偽薬比非劣性だった由。データは未発表。

Lyxumiaは欧州や日本では13年に承認されたが、米国は申請撤回となった。FDAは糖尿病薬の承認審査に際して心血管安全性に関わる臨床試験のメタアナリシスを要求、一定のハードルを満たしていない場合は心血管アウトカム試験の結果(中間解析でも可)が出て懸念が払拭されるまで承認しない方針を採用している。

EUの審査文書によるとLyxumiaのMACE(主要有害心血管イベント)のハザードレシオは1.25(95%信頼区間0.67~2.35)であった模様で、ハードルをクリアできていない。脳卒中が多かった模様であり、脳卒中のリスクが高い国では懸念すべき材料だろう。

しかし、きちんとした試験で懸念を排除できたならば、今回は承認される可能性がありそうだ。

リンク:サノフィのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がGSKのレルベアを成人向けに支持

(2015年3月19日発表)

グラクソ・スミスクラインは吸入ステロイドのfluticasone furoateと長期作用性ベータ2作用剤vilanterolの合剤であるBreo(欧州ではRelvar、日本ではレルベア)を開発、米国ではCOPDの維持療法として、日本では喘息症維持療法として、EUではその両方の用途で販売している。

承認用途が区々だが、日本でCOPDで承認されなかったのは日本の試験でfluticasoneの単剤投与群がフェールしたことが原因である模様。米国で喘息症が承認されなかったのはFDAが長期作用性ベータ2作用剤の喘息増悪リスクを懸念していることが原因。GSKは14年に12歳以上の喘息症患者を対象に適応拡大を申請、FDAは肺・アレルギー薬諮問委員会と薬品安全性・リスク管理諮問委員会の共催会議を開き、意見を聞いた。

結果は、18歳以上の成人患者に関しては20人の委員中16人が承認を支持したが、12~18歳の青少年は18人が反対、残りの二人のうち一人も正式採決後に実際は反対であることを表明したようだ。青少年に対する効果は16人が、安全性については19人が立証不十分と判定した。FDAは長期作用性ベータ2作用剤のメーカーに市販後安全性試験を求めているが、Breoに関しても、成人については13人、青少年は17人が実施すべきと回答した。

適応拡大の審査期限は4月30日。FDAのこれまでのスタンスを考えると、成人向けに諮問委員会の支持を受けたとは言え、承認に青信号が点ったとは言えないだろう。

リンク:GSKのプレスリリース

【承認】


コール酸補充療法が米国で承認

(2015年3月15日発表)

FDAは、Cholbamカプセル(cholic acid)を単一の酵素の欠乏による胆汁酸合成障害とペルオキシソーム障害の成人及び小児の治療薬として承認した。これらの遺伝性希少疾患は、コール酸合成酵素を産生できず、成長障害や命に係る肝疾患のリスクが高まる。Cholbamの単群試験では肝機能検査値と体重を尺度に奏効率を検討。被験者の3年生存率は胆汁酸合成障害試験が66%、ペルオキシソーム障害試験は42%だった。

承認申請したAsklepion社は希少小児疾患優先審査バウチャーを取得した。Retrophin(Nasdaq:RTRX)がオプト・イン・オプションを保有しており、無事承認されたため行使してCholbam関連資産を取得する予定。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:Retrophinのプレスリリース

今週は以上です。

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