2026年8月8日

第1271回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • Arrowhead社、優先審査バウチャを2.15億ドルで取得へ 
  • Jazz社、Zepzelcaの一部適応を返上へ 
  • 大塚のシベプレンリマブがIgA腎症の悪化を防ぐ 
  • ボックスゾゴを軟骨低形成症に適応拡大申請 
  • MSD、RSVワクチンの2年目接種を承認申請 
  • 多種類癌スクリーニング検査が諮問委員会上程へ7月のEU承認申請 
  • Replimune社、紆余曲折を経て最初のゴールに到達 
  • モデルナ、インフルエンザ・ワクチンが承認 
  • 武田薬品のナルコレプシー用薬が承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


Arrowhead社、優先審査バウチャを2.15億ドルで取得へ
(2026年8月4日発表)

米国カリフォルニア州のArrowhead Pharmaceuticals(Nasdaq:ARWR)は、apolipoprotein C-IIIの発現を妨げるsiRNA薬、Redemplo(plozasiran)の適応拡大を早期実現するため希少小児疾患優先審査バウチャを2.15億ドルで取得することで合意した。相手方は非公表。FDAの審査期間を10ヶ月から6ヶ月に短縮することができる優先審査バウチャの価格は当初は1億ドル前後が多かったが、2年前に1.5億ドル、最近では2億ドル程度で売買される事例が増えている。2.15億ドルというのは、当方は初耳の水準だ。

Redemploは25~26年に米国とEUで成人のカイロミクロン血症候群におけるトリグリセライド抑制薬として承認された。重度トリグリセライド血症の第3相試験が成功、26年内に適応拡大申請する考え。

競合薬はIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)のapolipoprotein C-III標的アンチセンス薬、Tryngolza(olezarsen)。24年に米国で、25年にはEUでも、家族性抗カイロミクロン血症に承認され、今年6月には米国で重度高トリグリセライド血症に適応拡大した。Arrowhead者がWAC(問屋取得価格)を著しく安価に設定したため、今年4月には対抗値下げを断行している。

リンク: 26年第2四半期決算発表リリース(関連記述はp20)


Jazz社、Zepzelcaの一部適応を返上へ
(2026年8月3日発表)

アイルランドに便宜置籍するJazz Pharmaceuticals(Nasdaq:JAZZ)は、26年第2四半期決算発表に合わせて、Zepzelca(lurbinectedin)の適応のうち転移小細胞性肺癌の進行/再発後治療を削除すべく第3四半期(7-9月)にFDAにレーベル変更申請する計画を公表した。市販後薬効確認試験がフェールしたため。もう一つの、進展期小細胞性肺癌の一次治療後維持療法は変更ない。

海洋生物から薬の種を見つけ出すスペインのPharmaMarからライセンスしたポリメラーゼII阻害剤。これまでの経緯は、

  • 20年6月、米国で第2相試験のORR(客観的反応率)などに基づき転移小細胞性肺癌の再発治療薬として加速承認。
  • 20年12月、市販後薬効確認試験候補の一つであった第3相doxorubicin併用実薬対照試験で優越性解析がフェール。FDAは、加速承認の用法と比べ用量が少なく単剤投与ではないことなどから、承認取消を求める市民請願を却下。
  • 24年10月、ロシュが主導した第3相IMforte試験が成功。進展期小細胞性肺癌の一次治療としてロシュの抗PD-L1抗体Tecentriq(atezolizumab)と化学療法を併用し疾病安定化以上の成果があった患者にTecentriqだけでなくZepzelca(用量は加速承認と同じ)も併用することで全生存期間などが改善した。25年10月に米国で適応拡大が承認。この試験も市販後薬効確認試験候補であったはずだが、FDAは加速承認の本承認切替を見送った。尚、本試験に基づき今年5月にEUでPharmaMarが承認取得、6月には日本でメルクバイオファーマが承認申請した。
  • 26年6月、第3相LAGOON試験がフェール。転移小細胞性肺癌再発治療における単剤群(用量は加速承認内容と同じ)およびirinotecan併用群の全生存期間を医師が選んだ薬(irinotecanまたはtopotecan)の群と比較したところ、irinotecan併用群は有意に上回らず、単剤群は数値上、下回った。

リンク: プレス・リリース

【新薬開発】


大塚のシベプレンリマブがIgA腎症の悪化を防ぐ
(2026年8月4日発表)

大塚ホールディングスはVoyxact(sibeprenlimab-szsi)がIgA腎症によるeGFR(推算糸球体濾過量)の悪化を防いだと発表した。6月に成功したことだけ発表していたが、今回、GlomCon Hawaii 2026学会でデータを公表した。

米国で25年11月に加速承認された抗APRIL抗体。APRILがBCMA受容体に結合して形質細胞の生存を増強したり、TACI受容体に結合してB細胞の生存と分化を誘導するのを妨げる。18年にマサチューセッツ工科大学発in silico創薬ベンチャーであるVisterraを4.3億ドルで買収して入手した。加速承認のエビデンスとなった第3相VISIONARY試験は、標準療法を受けている成人患者510人を組入れて、400mgを4週毎皮下注する効果を検討した。主評価項目である第9月24時間uPCR(尿蛋白クレアチニン比)が50.2%低下、偽薬群の2.1%上昇を大きく上回る効果を示した。今回のデータは当試験の共同主評価項目である第24月のeGFR。年間スロープ分析でベースライン比+0.3mL/分/1.73m2となり、偽薬群の-4.2mL/分/1.73m2を有意に上回る悪化抑制作用を示した。48週段階のデータや、第2相ENVISION試験と同じような結果だ。

大塚は本承認切替に向けてローリング承認申請に着手している。

リンク: プレス・リリース

【承認申請】


ボックスゾゴを軟骨低形成症に適応拡大申請
(2026年8月6日発表)

バイオマリン(Nasdaq:BMRN)は、26年第2四半期決算発表に合わせて、最近米国でVoxzogo(vosoritide)を軟骨低形成症に適応拡大申請したことを明らかにした。27年のロンチを見込んでいる。修飾C型ナトリウム利尿ペプチド類縁体で、21~22年に欧米日で軟骨無形成症治療薬として承認されている。今回のエビデンスとなるCanopy-HCH-3試験では3~17歳の患者80人を組入れて身長の52週AGV(成長ベロシティ年率)を偽薬と比較したところ、2.33cmの有意な群間差があった。

リンク: プレス・リリース


MSD、RSVワクチンの2年目接種を承認申請
(2026年8月6日発表)

MSDは抗RSVワクチンEnflonsia(clesrovimab-cfor)を2回目のRSVシーズンを迎える幼児に用いる適応拡大をFDAに申請し受理されたと発表した。審査期限は27年3月22日なので、26/27年シーズンには殆ど間に合わない。EUで6月に適応拡大申請したことも公表した。

RSウイルスに結合して下部気道感染症を抑制する予防用抗体医薬。25~26年に米欧日で初めてのRSVシーズンを迎える乳幼児向けに承認された。2年目の薬効確認試験は専ら未熟児慢性肺疾患や先天性心臓疾患の患者を組入れてRSV関連下部気道感染症のリスクを観察したところ、180日間に7.3%が罹患、3.0%がRSV関連入院した。この数値はEnflonsia群の1年目のデータと同様だった。

リンク: プレス・リリース


7月のEU承認申請
(2026年8月4日付資料から抜粋)

EMAによると、7月に新薬承認審査を開始した品目は以下の通り。

申請者呼称一般名種類適応症米国
ノバルティスVanrafiaatrasentanエンドセリンA受容体拮抗剤成人の原発性IgA腎症25/4承認
Biodan Yelah推自家ケラチノサイトと他家線維芽細胞を他家血漿マトリクスに懸濁成人小児の部分深達性真皮熱傷と全層熱傷不明
PharvarisPHVS416deucrictibantBradykinin B2受容体拮抗剤12歳以上の遺伝性血管浮腫の治療26/7承認申請受理
不明不明不明抗IGF-1受容体抗体、IgG1成人の甲状腺眼症不明
エーザイDayvigolemborexantオレキシン1/2受容体拮抗剤成人の不眠症19/12承認
出所:EMAなど。一般名(呼称)と適応症以外は主として会社発表や当方の推測による。

【承認審査・委員会】


多種類癌スクリーニング検査が諮問委員会上程へ
(2026年8月7日発表)

米国のGrail(Nasdaq:GRAL)は1月にGalleri多種類癌早期探知(MCED)アッセイをFDAにPMA(市販前申請)したが、9月23日に諮問委員会(Molecular and Clinical Genetics Panel of the Medical Devices Advisory Committee)で討議されることが決まった。血中の循環無細胞DNAのメチル化と腫瘍の関係を機械学習させ、従来の方法では探知できない癌や早期段階の癌を検出する手がかりとするもの。実用化すれば早期発見に資するが、早期発見が患者の寿命の増加につながるかは未確認であり、また、偽陽性も多いので、論点になるだろう。

主エビデンスは北米で実施されたPATHFINDER2試験と英国のNHS-Galleri試験。前者は50歳以上の過去3年間に癌と診断されていない25878人を対象に、標準的なスクリーニング検査(マンモグラフィーやPSA検査など)に追加する便益を検討した。今年のASCO(米国臨床腫瘍学会)における発表によると、Galleri群では287人が陽性判定され、うち173人が癌と診断された。PPV(陽性的中率)は60%、特異度99.6%、腫瘍部位推定の正確度91%だった。英国試験は14.2万人の巨大試験で、年1回、3年間検査してステージIII/IVの腫瘍を減らす便益を確認しようとしたが、フェールした。罹患率比は1.03。腫瘍と診断されたのはGalleri群が706人、対照群688人で、うち、ステージIIIは364人対291人で上回った。PATHFINDER2試験と同様な指標を見ると、陽性判定1801人、937人が癌と診断され、陽性的中率は52%、特異度98.9%、腫瘍部位推定の正確度は92%だった。有害事象は390人で発生し、うち276人は採血に伴うものだった。陽性判定例のうち侵襲的検査に至った例は少なかった模様。

米国ではメディケア加入者を対象とする非無作為化割付け試験、REACHも進行中で、ステージIV腫瘍罹患率を対照群と比較する。

リンク: プレス・リリース

【承認】


Replimune社、紆余曲折を経て最初のゴールに到達
(2026年8月6日発表)

FDAはReplimune Group(Nasdaq:REPL)のTudriqev(vusolimogene oderparepvec-wtpg、通称RP1)を切除不能進行皮膚黒色腫用薬として加速承認した。抗PD-1抗体による8週間以上の治療中に進行した患者に、BMSの抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab)と併用する。市販後薬効確認試験である第3相IGNYTE-3試験は抗PD-1抗体だけでなく禁忌でなければBMSの抗LAG-3抗体relatlimab歴も持つ患者400人を組入れて、全生存期間を医師が選んだ薬を投与する群と比較するもので、結果が出るのは29年と遅い。

単純ヘルペスウイルス1型にGM-CSFとテナガザル白血病ウイルスのエンベロープ蛋白の遺伝子を組入れて免疫原性を高めたもの。腫瘍の最大長1cm当り1mL、最大10mLを2週毎腫瘍内投与する。第2相IGNYTE試験で140人に投与したところ、薬効解析対象91人におけるORR(客観的反応率)は24.2%、メジアン反応持続期間は14.1ヶ月だった。尚、過去に会社側は、FDAが要請したRECIST 1.1ベースの解析でORR32.96%、メジアン反応持続期間は35ヶ月と発表していた。治験論文でも解析対象は140人だった。なぜこんなに変わったのか、なぜFDAは91人のデータしか認めなかったのか、不思議だ。

同社は24年11月に承認申請したが、IGNYTE試験のデザインが不十分として審査完了通知を受領した。一部報道によると、25年12月にCDER(小分子薬の審査部門)のヘッドを退任したRichard Pazdurが承認に反対したとのことだ。同社は僅かなデータを追加して25年10月に再申請し、初回とは異なるメンバーの審査を受けたが、今年4月に再び審査完了通知を受領した。同社は、一部報道によるとホワイト・ハウスにおける陳情を経て、今年6月に再申請したところ、7月の諮問委員会(OCTGTAC)で13人中10人の委員の支持を獲得、今回の承認に繋がった。

承認は最初のゴールだが本当のゴールは医師や患者の支持を得ることだ。加速承認なので本承認を取得することも次の課題になる。

リンク: プレス・リリース


モデルナ、インフルエンザ・ワクチンが承認
(2026年8月5日発表)

モデルナはFDAがmFlusiva(開発コードmRNA-1010)を50歳以上における季節性インフルエンザ予防用ワクチンとして承認したと発表した。26年1月に承認申請、2月に不受理との通知を受けた経緯がある。65歳以上の感染予防効果を検討する試験の対照薬が高量抗原ワクチンではなかったことが主因のようだが、FDAは、65歳以上に関しては免疫原性試験に基づく加速承認申請に変更して不受理を取消す大岡裁きが断行、6月の諮問委員会(VRBPAC)で9人全員の支持を獲得、承認に至った。mRNAワクチンの強みでサイクルタイムが短いため、今シーズンに余り遅れないで発売できるのではないか。

不受理が受理に代わったの背景は明らかではないが、承認申請から承認までの間にFDAのCBER(生物学的製剤審査部門)のヘッドであるVinay Prasadが4月をもって退任、5月にはMarty Makary長官も退任しており、様々なサプライズを引き起こしてきたメンバーが残り2名になったことが関連しているのかもしれない。

尚、EUではCOVID-19ワクチンとの二種混合製品、mCOMBRIAXが4月に承認されている。同ワクチンは日欧でも承認申請中。

リンク: プレス・リリース


武田薬品のナルコレプシー用薬が承認
(2026年8月5日発表)

FDAは武田薬品のOrzeyful(oveporexton)を成人のナルコレプシータイプ1の治療薬として承認した。オレキシン産生ニューロンの減少によりオレキシンが欠乏、日中でも覚醒を維持するのが困難になったり、情動脱力発作を発現したりする疾患で、覚醒剤系などの薬は承認されているが、オレキシン欠乏を補い様々な症状を改善する薬が承認されたのは初めて。DEA(麻薬取締役局)における管理物質指定の決定後に発売される。

オレキシン2型受容体作動薬。1mgまたは2mgを起床時と3~5時間後に経口投与する。臨床試験では眠ってしまうまでの時間が偽薬比20分前後長期化し、脱力発作頻度が6割程度低下した。有害事象は過半の患者で不眠と頻尿が発生、1割程度で無症候性のクレアチン・フォスフォキナーゼ異常上昇(5xULN超)が見られた。CYP3A4強阻害剤の併用は禁忌。

7月に中国で承認、日本も第1部会を通過したところ。

リンク: プレス・リリース

【当面の主なFDA審査期限と諮問委員会】


PDUFA
26下ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV/AIDS)
26/8推Intra-Cellular TherapeuticsのCaplyta(lumateperon、統合失調症増悪予防)
26/8推武田薬品のrusfertide(真性多血症)
26/8推Priovant Therapeuticsのbrepocitinib(皮膚筋炎)
26/8推Regeneron PharmaceuticalsのREGN2477(garetosmab、進行性骨化性線維異形成症)
26/8推JNJのImaavy(nipocalimab-aahu、温式自己免疫性溶血性貧血)
26/8推アストラゼネカのAZD9833(camizestrant、ESR1変異乳癌)
26/8/13LantheusのMK-6240(MCIにおけるtau NFTのPET検査)
26/8/17BMSのiberdomide(多発骨髄腫)
26/8/17Mandos LLCのVTS-270(adrabetadex、幼児発症型ニーマン・ピック病C型)
26/8/22Capricor TherapeuticsのCAP-1002(deramiocel、DMD)
26/8/23Ultragenyx PharmaceuticalのDTX401(pariglasgene brecaparvovec、糖原病Ia型)
26/8/25Jazz PharmaceuticalsのZiihera(zanidatamab-hrii、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/25BeOne MedicinesのTevimbra(tislelizumab、her2陽性胃、胃食道接合部、胃食道腺腫)
26/8/27ギリアド・サイエンシズのbictegravir・lenacapavir合剤(HIV)
26/8/28ITMのITM-11(177Lu-edotreotide、胃腸膵神経内分泌腫瘍)
26/8/30ファーマエッセンシアのBesremi(ropeginterferonalfa-2b-njft、本源性血小板血症追加)
26/9推アッヴィのtavapadon(パーキンソン病)
26/9推ノボ ノルディスクのNN7769(denecimig、A型血友病)
26/9推ノバルティスのRhapsido(remibrutinib、皮膚描記型慢性刺激性蕁麻疹適応拡大)
26/9/11TelixのTLX101-Px(foretyrosine F 18、神経膠腫造影剤)
26/9/19UltragenyxのUX111(rebisufligene etisparvovec、サンフィリッポ症候群A型)
26/9/21Winrevair(sotatercept-csrk、診断1年以内の肺動脈高血圧症のHYPERION試験成績)
26/9/22Ionis PharmaceuticalsのION373(zilganersen、アレキサンダー病)
26/9/26IncyteのINCB000928(zlurgisertib、進行性骨化性線維異形成症)
26/9/27Elevar Therapeuticsのlirafugratinib(FGFR2融合/再編成胆道癌)
26/9/28Egetis TherapeuticsのEmcitate(tiratricol、MCT8欠乏症)
26/9/30BMSのCamzyos(mavacamten、12-17歳の症候性oHCMに適応年齢拡大)
26/9/30Scholar RockのSRK-015(apitegromab、脊髄筋萎縮症)
諮問委員会
26/9/23MCGP:Grail者のGalleri多癌種早期探知血液検査


今週は以上です。

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