ヘッダーナビゲーション

2025年2月8日

第1193回

【ニュース・ヘッドライン】

  • 4人目のブタ腎移植患者が退院 
  • ノボ、Mim8の幼小児試験も良好な結果に 
  • ガザイバのループス腎炎試験が成功 
  • Kura・協和もメニン阻害剤を承認申請へ 
  • ビラフトビのBRAF-V600E変異転移結腸直腸癌試験で延命効果確認 
  • インスメッド、DPP1阻害剤を気管支拡張症に承認申請 
  • 伊社が欧州でWiskott-Aldrich症候群用薬を承認申請 
  • 遅報:H3 K27M変異びまん性グリオーマ用薬が承認申請 
  • ベータ・ラクタマーゼ配合剤が米国でも承認 
  • 連続皮下注用アポモルヒネが承認 
  • Susvimoが糖尿病性網膜症に適応拡大 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【今週の話題】


4人目のブタ腎移植患者が退院
(2025年2月7日発表)

Massachusetts General Hospital(MGH)は同施設で2例目のブタ腎移植を受けた患者が退院したと発表した。遺伝子編集により免疫原性を緩和したブタ腎臓の移植はNew York大学と合わせて4例となり、最初の2人は心臓病の悪化で死亡したり透析を再開したり残念な結果になったが、昨年11月にNY大で移植を受けた患者は現在も生存している模様。健康状態がひどく悪くはない患者を組入れるようになり成果が表面化し始めたのかもしれない。

今回の移植は、第1症例と同様に、 Leonardo V. Riella教授のリーダーシップのもとにハーバード大の河合達郎教授らが実施した。移植腎も第1症例と同じeGenesisが提供。69遺伝子を編集し、ブタ抗原遺伝子の除去やヒト・トランスジンの導入、レトロウィルスの不活化処理を行ったEGEN-2784を用いた。免疫抑制剤も第1症例と同様にEledon Pharmaceuticals(Nasdaq:ELDN)の抗CD40L抗体tegoprubartなどを用いた。

患者は66歳男性のTim Andrews。移植用ヒト腎は待機リストに登録してから3~5年待ちとのことだが、血液型O型は5~10年待ちと長く、氏の場合、5年内に移植が可能になる確率が9%であるのに対して、悪化死亡でデ゙リストとなる確率は49%とのことだ。1月25日に施術し、2月1日に退院した。第3例(3ヶ月以上後に退院)と比べても早い。MGHはFDAから3例の拡大アクセス・プログラム(未承認の医療用品を他に治療法のない深刻な疾患に用いる)の認可を取得しており、ボランティアが現れれば、更に実績が積み重なることになる。

eGenesisの遺伝子編集ブタ腎技術は日本でも明治大学発ベンチャーであるポル・メド・テックがeGenesisの遺伝子改変ブタ細胞を元に体細胞核移植により3頭のクローン子豚を作成した旨、発表している。まだ前臨床に入る段階のようだ。

リンク: MGHのプレスリリース
リンク: eGenesisのプレスリリース
リンク: Eledon社のプレスリリース

【新薬開発】


ノボ、Mim8の幼小児試験も良好な結果に
(2025年2月7日発表)

ノボ ノルディスクは、抗第IXa因子・第X因子二重特異性抗体NN7769(通称Mim8)の第3相試験、FRONTIERの中間結果を発表した。1~11歳のA型血友病患者70人を組入れて、出血予防目的で週一回皮下注を26週間、反復したところ、治療が必要な出血イベントの年率発生率が平均で0.53、メジアン値はゼロだった。インヒビターを持つ14人では全員ゼロだった。26週後は月一回投与にスイッチすることが認められていたが、被験者の45%がスイッチした。

12歳以上のA型血友病患者254人を組入れた第3相FRONTIER 2試験は既に目的達成しており、予防的投与歴のない患者では年率出血率が出血時投与群と比べて月一回投与群は99%、週一回群は97%、低かった。予防的投与を受けていた患者では治験開始前と比べて月一回群は43%、週一回群は48%、低かった。

ノボは今年、承認申請する考え。

リンク: 同社のプレスリリース


ガザイバのループス腎炎試験が成功
(2025年月日発表)

ロシュは、抗CD20低フコース化抗体Gazyva(obinutuzumab)の第3相活性ループス腎炎試験、REGENCYの成果を学会と医学誌で発表した。標準療法に追加で76週間投与したところ、完全腎反応率が46.4%と、標準療法だけの群の33.1%を有意に上回った(修正差のp=0.0232)。完全腎反応だけでなくステロイド減量にも奏功した患者は各群42.7%対30.9%、蛋白尿反応率は55.5%と41.9%だった。死亡と腎関連イベントの複合発生率は18.9%対35.6%と大きな差があったが、先行解析がフェールしたため統計的に有意とは言えなくなってしまった。

ロシュは昨年9月に上記試験で目的を達成した旨だけ公表した時に、Gazyvaの適応拡大を申請中であることを明らかにしている。

ロシュの抗CD20抗体はループス腎炎に関しては苦戦したが、rituximabは未承認のまま利用されているようだ。

リンク: ロシュのプレスリリース


Kura・協和もメニン阻害剤を承認申請へ
(2025年2月5日発表)

米国カリフォルニア州のKura Oncology(Nasdaq:KURA)と協和キリンは、KO-539(ziftomenib)のKOMET-001試験で主目的を達成したと発表した。第2四半期に米国で承認申請する考え。

選択的menin阻害剤で、協和は米国での共同販売権と海外での開発販売権を持っている。この試験は難治/再発NPM1変異急性骨髄性白血病に単剤投与した時のCR/CRh(完全反応/血液学的回復が部分的な完全反応)を検討したもの。データは第2四半期に学会発表する考え。

menin阻害剤はSyndax Pharmaceuticals(Nasdaq:SNDX)のRevuforj(revumenib)が昨年11月に米国で1歳以上のKMT2A転座のある難治再発急性白血病に承認された。NPM1変異とKMT2A転座(再編成)は一部重複するのでKO-539とバッティングする。両社とも、25年にNPM1変異且つ又KMT2A再編成陽性急性骨髄性白血病の新患に他剤と併用する試験を開始する予定だが、venetoclax及びazacitidineとの併用に加えて、KO-539陣営は高強度化学療法併用試験も開始する考え。

リンク: Kura・協和のプレスリリース


ビラフトビのBRAF-V600E変異転移結腸直腸癌試験で延命効果確認
(2025年2月3日発表)

ファイザーは、Braftovi(encorafenib)の第3相BREAKWATER試験において、共同主評価項目であるPFS(無進行生存期間、盲検独立中央評価)と主要副次的評価項目である全生存期間が対照群比で統計的に有意且つ臨床的に意味のある便益が確認されたと発表した。本試験のORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)に基づき昨年12月に米国で加速承認されたばかりだが、本承認切替申請する考え。

この経口BRAF阻害剤はBRAF-V600E変異のある黒色腫や結腸直腸癌、非小細胞性肺癌などに併用することが承認されている。BREAKWATER試験はBRAF-V600E変異のある転移結腸直腸癌の一次治療としてmFOLFOX6とcetuximabの標準療法に追加する便益をmFOLFOX6など3種類の標準療法のいずれかを施行する群と比較した。FDAのProject FrontRunnerというイニシアティブに呼応して、早く結果が出るORRで加速承認を取り、PFSまたは全生存期間で本承認に切替えるステップ・バイ・ステップ戦略を採用している。

加速承認制度は癌の場合、既存薬を使い果たした患者のための薬が対象になることが多く、最初に加速承認を取ってから、早期の癌に適応拡大していくのが一般的である。Project FrontRunnerブは、一本の試験を兼用することで早期がんにおける臨床開発をスピードアップする狙いだ。複数の独立した試験で有意差を出すという模範的な開発方針には反するが、抗癌剤は複数の用途用法に試験されるのが一般的なので、いずれは複数のエビデンスができる。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


インスメッド、DPP1阻害剤を気管支拡張症に承認申請
(2025年2月6日発表)

Insmed(Nasdaq:INSM)は、米国でINS1007(brensocatib)を非嚢胞性線維症気管支拡張症用薬として承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は25年8月12日。年内にEU、英国、日本でも承認申請する考え。

気管支拡張症で増加が見られる好中球エステラーゼなどの酵素の活性化を担う、DPP1を阻害する経口剤。アストラゼネカからライセンスした。日本の施設も参加したグローバル第3相試験、ASPENで、偽薬、10mg、または25mgを一日一回、52週間投与して肺の増悪頻度を比較したところ、10mg群は偽薬比21.1%、25mg群は19.4%、低かった(p値は各0.0019と0.0046)。副次的評価項目である気管支拡張剤投与後のFEV1の変化は25mg群だけ統計的に有意、重度肺増悪は両群とも26%前後少なかったが有意水準には達しなかった。第2相では歯周歯肉や、角化症などの皮膚有害事象が増加したが、今回はそれほどは増えなかった模様だ(定義が異なるのかもしれないが)。

リンク: 同社のプレスリリース


伊社が欧州でWiskott-Aldrich症候群用薬を承認申請
(2025年2月3日発表)

イタリアの希少疾患用薬開発会社、Fondazione Telethonは、Telethon 003(etuvetidigene autotemcel)をWiskott-Aldrich症候群用薬としてEMA(欧州薬品庁)に承認申請した。米国でも申請する予定。

この疾患は男児新生児25万人に一人の希少遺伝子疾患で、血球が欠乏し感染症や出血を被り易く、自己免疫疾患やリンパ腫のリスクが高い。HLA適合ドナーがいれば治癒的造血幹細胞移植が可能だが、適応にならない症例には対症療法しかない。Telethon 003は自家CD34陽性幹細胞/前駆細胞にレンチ・ウイルス・ベクターを用いてヒトWAS遺伝子のcDNAを導入するもの。23年にイタリアで、30人程度の投与実績に基づき、6ヶ月児以上のHLA適合近親ドナーがいない重症Wiskott-Aldrich症候群に用いることが認可された(拡大アクセス・プログラムに基づくもので正式承認ではない)。

リンク: 同社のプレスリリース


遅報:H3 K27M変異びまん性グリオーマ用薬が承認申請
(2024年12月30日発表)

米国のChimerix(Nasdaq:CMRX)はONC201(dordaviprone)を難治H3 K27M変異型びまん性グリオーマ用薬としてFDAに承認申請した。希少小児疾患用薬指定を受けており、加速承認を求めている。

H3 K27M変異は脳幹や脳室、視床、脳橋、脊髄などの腫瘍の過半で観察され、米国では年2000人が診断される。幼小児に多い。診断後のメジアン生存期間は1年と言われる深刻な疾患。dordaviproneは腫瘍の生存力に関わるミトコンドリア蛋白分解酵素ClpPを増強し、rasシグナル伝達を制御するドパミン受容体D2を拮抗する、経口カプセル剤。放射線療法後に投与した5本の第2相試験のプール分析で、50人中14人、28%がORR(客観的反応、Response Assessment in Neuro-Oncology 2.0ベース)を達成した。完全反応はゼロ、部分反応が10人、小反応が4人だった。メジアン反応持続期間は10.4ヶ月。

23年に市販後薬効確認試験となるべき第3相ACTION試験が開始された。米欧亜日の施設で新患H3 K27M変異びらん性グリオーマ患者450人を組入れて、125mgカプセル5個を第2相と同様に週一回投与する用法と、週二回、2日連続投与する用法を偽薬と比較している。主評価項目はPFS(盲検独立中央評価による)と全生存期間。

同社は21年にOncoceuticsを買収して入手した。日本は大原薬品、中台は華潤三九医薬がライセンスしている。

リンク: Chimerixのプレスリリース

【承認】


ベータ・ラクタマーゼ配合剤が米国でも承認
(2025年2月7日発表)

アッヴィは、FDAがEmblaveo(aztreonamとavibactamの点滴静注用固定用量合剤)を成人の複雑性腹腔内感染症用薬として承認したと発表した。他に適切な治療手段がない、または限定的な場合に用いる。25年第3四半期にロンチする予定。

aztreonamはグラム陰性菌用モノバクタム。1984年にグアテラマで世界初承認、86年に米国で、87年には日本でも、承認と長年の使用歴がある。avibactamはベータ・ラクタムと異なった構造を持つベータ・ラクタマーゼ阻害剤で、米欧では15~16年に、日本でも昨年6月に、ceftazidimeとの合剤が承認された。両剤の開発主体は企業買収・スピンアウトや導出により激しく変遷したが、最終的に、北米はアッヴィ、欧州や日本などはファイザーとなったようだ。

Emblaveoはファイザーが24年4月にEUで承認取得。日本でも申請中。奇妙なことに、EUも米国も、第3相REVISIT試験を薬効の主要エビデンスとは見なさなかった。丁度、Lancet Infectious Diseasesで刊行された論文の抄録にも明記されているように、正式な仮説検定が計画されていなかったことがネックになったのだろう。合剤の薬効確認試験は、通常、各配合成分単剤とも比較して必要性を確立するが、REVISIT試験の対照群はmeropenemで、avibactamを追加する便益はin vitroと動物試験でしか検討されていない模様だ。米国のレーベルには、REVIST試験の薬効関連データは一切、記されていない。レーベル非記載の効能を宣伝するのが違法と見なされていた時代だったら、大変な話だった。

リンク: アッヴィのプレスリリース
リンク: Carmeliらの治験論文抄録(Lancet Infectious Diseases)


連続皮下注用アポモルヒネが承認
(2025年2月4日発表)

Supernus Pharmaceuticals(Nasdaq:SUPN)は、FDAがOnapgo(apomorphine hydrochloride、開発コードSPN-830)を成人の進行パーキンソン病における運動症状の日内変動の治療薬として承認したと発表した。最初の承認申請から足掛け4年半、遂に米国初の皮下点滴システムが承認された。第2四半期に発売する予定。欧州で実施された第3相TOLEDO試験で試験薬群のオフタイム(レボドパ治療効果が薄れ運動症状が発現した時間)が2.6時間/日減少し、偽薬群の0.9時間/日減少を有意に上回った。有害事象は点滴箇所反応、悪心、傾眠/不眠、ジスキネジアなど。

同社は20年前にShire(のちに武田薬品が子会社化)からスピンアウトした。Onapgoは20年にUS WorldMedsのCNSポートフォリオを買収してパーキンソン病薬のApokyn(apomorphine hydrochloride)やXadago(safinamide)、B型ボツリヌス毒素薬Myobloc(rimabotulinumtoxinB)などとともに取得したもの。

リンク: Supernusのプレスリリース


Susvimoが糖尿病性網膜症に適応拡大
(2025年2月4日発表)

ロシュはFDAがSusvimo(ranibizumabポート・デリバリー・システム)を糖尿病性網膜症に適応拡大したと発表した。抗VEGF抗体フラグメント薬Lucentisの活性成分を持続放出する眼内インプラントで、6ヶ月毎に薬剤をリフィルする。Lucentisを2回以上硝子体内注射し応答した患者が適応になる。米国で実施された第3相Pagoda試験で、BCVA(最良矯正視力)が1年後に9.6字改善し、ranibizumabを月一回、継続投与群の9.4字改善と非劣性だった。

Susvimoは21年に米国で湿潤性加齢性黄斑変性用薬として承認された。EUでも承認申請されたが23年に撤回され、その後音沙汰がない。

リンク: 同社のプレスリリース

【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


PDUFA
25/2/8大塚製薬のRexulti(brexpiprazole、PTSD追加)
25/2/14GSKの髄膜炎菌A/B/C/W-135/Yワクチン
25/2/14Bavarian NordicのCHIKV VLP(チクングニア熱ワクチン)
25/2/17小野薬品のvimseltinib(腱滑膜巨細胞腫)
25/2/28SpringWorks Therapeuticsのmirdametinib(神経線維腫症1型)
25年3月推アッヴィのABBV-399(telisotuzumab vedotin、cMET陽性非扁平上皮非小細胞性肺癌)
25/3/18Neurotech PharmaceuticalsのNT-501(revakinagene taroretcel、黄斑部毛細血管拡張症2型)
25/3/20Elevar Therapeuticsのcamrelizumabとrivoceranib(肝細胞腫1L併用)
25/3/23Alnylam社のAmvuttra(vutrisiran、ATTR-CM追加)
25/3/26GSKのGSK2140944(gepotidacin、女性の非複雑尿路感染症)
25/3/27Milestone PharmaceuticalsのCardamyst(点鼻用etripamil、発作性上室性頻拍)
25/3/27Soleno Therapeuticsのdiazoxide choline(プラダー・ウィリ症候群)
25/3/28Mirum PharmaceuticalsのChenodal(chenodiol、脳腱黄色腫症)



今週は以上です。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。