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2024年3月30日

第1148回

 

【ニュース・ヘッドライン】

  • BMS、KRAS G12C標的薬の市販後薬効確認試験が成功 
  • 網膜色素変性症の遺伝子療法を承認申請へ 
  • SNRIの第3相ナルコレプシー試験が成功 
  • S1PR調節剤のクローン病試験がまたフェール 
  • 発作性上室性頻拍治療薬を改めて承認申請 
  • リジェネロンの二重特異性抗体は審査完了に 
  • CHMP、週一回投与型インスリンなどの承認を支持 
  • CHMP、レケンビの討議をドタキャン 
  • バフセオが米国でやっと承認 
  • MSD、肺動脈高血圧用新薬が承認 
  • ユルトミリスがAQP4自己抗体陽性NMOSDに適応拡大 
  • COVID-19感染予防用抗体医薬がEUA 
  • 高脂血症薬の心血管リスク削減効果が承認 
  • 肺動脈高血圧の合剤が承認 
  • アッヴィのADCが本承認 
  • 当面の主なFDA審査期限、諮問委員会 


【新薬開発】


BMS、KRAS G12C標的薬の市販後薬効確認試験が成功
(2024年3月28日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、KRAS G12C阻害剤Krazati(adagrasib)の第3相KRYSTAL-12試験で主目的を達成したと発表した。第2相試験の反応率データに基づき22年に米国で、今年1月にはEUでも、成人のKRAS G12C変異のある局所進行/転移非小細胞性肺癌の二次治療薬として加速/条件付き承認されているが、本承認切替申請に向かうのではないか。

この試験は承認用途におけるPFS(無進行生存期間)をdocetaxelと比較した。副次的評価項目であるORR(客観的反応率、盲検独立中央評価)とともに、統計的有意かつ臨床的に意味のある差があった。

1月にMirati Therapeuticsを約48億ドルで買収して入手したコンパウンド。類薬であるアムジェンのLumakras(sotorasib)は同様なデザインの第3相でPFSがdocetaxelを有意に上回ったが、メジアン値の差は1ヶ月程度、全生存期間の解析は検出力不足やクロスオーバーの影響もあり大差なかったため、加速承認から本承認への切替は成就しなかった。Krazatiの治療効果はどの程度なものか、数値の公表が待たれる。

リンク: 同社のプレスリリース


網膜色素変性症の遺伝子療法を承認申請へ
(2024年3月26日発表)

米国テキサス州ダラスのナノスコープ・セラピューティクスは、MCO-010(sonpiretigene isteparvovec)の後期第2相進行網膜色素変性症試験で主評価項目と主要な副次的評価項目を達成したと発表した。FDAと相談し、下期に承認申請する考え。

同社は多特性オプシン (MCO) を用いた遺伝子療法技術を持ってる。MCO-010はAAV2ベクターとmGluR6プロモータ・エンハンサーを用いて網膜双極細胞において青、緑、赤を感受するオプシンを発現させ、低光感受性を誘導する。硝子体注射。

今回のRESTORE試験は進行網膜色素変性症で法的に盲人と見做される患者28人をシャム、低用量(0.9e11 gc/眼)、高用量(1.2E11 gc/眼)の3群に無作為化割付けして一回施行し、第52週のBCVA(最高矯正視力)をベースライン値と比較したところ、各群0.050、0.382、0.337 LogMAR改善した。各用量の偽薬比p値は0.029と0.021。副次的項目である第76週時点におけるBCVA改善は各群0.078、0.374、0.539 LogMAR改善となり、高用量だけp=0.0014と有意水準だった。同社は高用量を承認申請する考え。

尚、LogMARは少数視力値をLog変換して等差性を持たせたもので、数値が大きいほど視力が低い。EDTRS視力表の各行の文字は0.1LogMARだけ異なっている。

有害事象は軽中度の前房内細胞や高眼圧症など。治療関連深刻有害事象は発生しなかった。

5月のARVO(視覚と眼科学研究協会)で学会発表する考え。

リンク: 同社のプレスリリース(PR Newswire)


SNRIの第3相ナルコレプシー試験が成功
(2024年3月25日発表)

米国ニューヨークの新興製薬会社、Axsome Therapeutics(Nasdaq:AXSM)は、AXS-12(reboxetine)の第3相ナルコレプシー試験が成功したと発表した。プレスリリースには明記されていないが、おそらく、もう一本実施してから米国で承認申請するのではないか。

ファルマシアが鬱病治療薬として開発した選択的ノルエピネフィリン再取込阻害剤で、欧州で97年に承認されたが米国は承認されなかった。同社はファルマシアを買収したファイザーからS異性体のesreboxetine(AXS-14)とともにライセンス、ナルコレプシーの脱力発作を抑制する用途で開発している。権利取得前に実施された21人のクロスオーバー試験、CONCERTで、週間脱力発作回数がベースライン時点の30回から第2週に14.6回減少、偽薬の2.6回減少を上回った。

今回のSYMPHONY試験は脱力発作を伴うナルコレプシー患者90人を偽薬群と5mg一日二回投与群(但し第1週は一日一回)に無作為化割付けして5週間治療し、第5週の週間脱力発作回数をベースライン値(メジアン20回)と比較した。試験薬群は83%減少、偽薬群は66%減、率比0.49、p=0.018と、高度とは言えないが有意だった。脱力発作寛解率や日中の過剰な眠気などの指標でも有意な差があった。有害事象はドライマウス、悪心、便秘など。

同社の調査によるとナルコレプシーの患者の4割程度が抗鬱剤をこの病気を治療する目的で服用しているとのこと。reboxetineの特許は現時点でも2039年まで有効とのことだが、潜在的な競合は多そうだ。

第3相の結果は23年第2四半期に判明する見込みだったが、ほぼ一年遅れとなった。AXS-14の線維筋痛治療薬としての承認申請もかなり遅延しており、世の中は同社の思うようにはならないようだ。

リンク: 同社のプレスリリース


S1PR調節剤のクローン病試験がまたフェール
(2024年3月28日発表)

ブリストル マイヤーズ スクイブは、S1PR1/5調節剤Zeposia(ozanimod)の第3相中重度活性期クローン病臨床的寛解導入試験がフェールしたと発表した。12週の治療でCDAIが150未満に低下した患者の比率を偽薬と比較したが、有意な差はなかった。もう一本の導入試験と寛解維持試験などが進行中。

再発性多発硬化症と潰瘍性大腸炎の治療薬として欧米で承認され、日本でも2月に後者の適応症で承認申請されたところ。潰瘍性大腸炎に有効な免疫調節剤はクローン病でも有効という先入観があるが、S1PR調節剤は例外のようだ。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認申請】


発作性上室性頻拍治療薬を改めて承認申請
(2024年3月28日発表)

カナダのMilestone Pharmaceuticals(Nasdaq:MIST)は米国でMSP-2017(etripamil、点鼻用)を発作性上室性頻拍(PSVT)の治療薬として再承認申請した。昨年10月に申請したが、有害事象のタイミングが不明確と見なされ受理されなかったため、指摘事項に対応した。

etripamilは短期作用性カルシウム・チャネル・ブロッカー。一本目の第3相偽薬対照試験は洞調律達成期限を5時間とゆるゆるにしたためかメジアン値では25分対50分と大きな差があったがp=0.12だった。そこで二本目のRAPID試験では30分に短縮したところ、洞調律達成率が64%と偽薬群の31%を大きく上回り、ハザードレシオ2.62、統計的に有意だった。様々な症状も改善した。主な有害事象は鼻の不快感や鼻詰まりなど。薬物関連深刻有害事象は発生しなかった。

PSVTは珍しくない疾患で、不快・不安以外に異常はないことが多いが、米国ではPSVTによる入院が年5万件と推測されている。上記試験二本のプール分析ではER入室リスクが39%抑制された(p=0.035)。

リンク: 同社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


リジェネロンの二重特異性抗体は審査完了に
(2024年3月25日発表)

Regeneron Pharmaceuticals(Nasdaq:REGN)はCD20とCD3に結合する二重特異性抗体、REGN1979(odronextamab)を成人の難治再発濾胞性リンパ腫と難治再発びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の3次治療薬として欧米で承認申請しているが、米国は審査完了通知を受領した。薬効や忍容性の問題ではなく、市販後薬効確認試験の組入れが十分に進捗していないことが原因のようだ。

承認申請のエビデンスとなる二本の試験は第1相と第2相試験。FDAは、加速承認の食い逃げを防ぐために、加速承認の時点で市販後薬効確認試験の患者組入れがある程度進捗していることを要求している。REGN1979の場合、複数の試験が多くは昨年11月と12月に開始されたばかり。FDAとの相談を踏まえて併用試験では至適用量決定フェーズと仮説検証フェーズの二段階に分けて実施することになったため、従来より時間がかかることになる。現況では前者のフェーズの組入れ中だが、FDAは後者のフェーズの組入れがある程度進むことを求めており、今後のタイム・スケジュールを明確にした上で再承認申請するよう求めた。

FDAは抗体医薬の至適用量検討が十分ではないという問題意識を持っており、今回の承認遅延に影を落とした可能性がある。病気が進行し適切な薬が存在しないunmet medical needの段階の患者の最後の手段を最初の目標適応症にすることで素早く加速承認を取り、市販後薬効確認試験は早期段階の併用試験で代用するという開発方針はごく一般的なだけに、幅広いインプリケーションがありそうだ。

同社はREGN5458(linvoseltamab)を難治再発多発骨髄腫の4次治療薬として第1/2相試験のエビデンスに基づき承認申請しているが、一部報道によると、こちらの市販後薬効確認試験には同様な問題はない模様だ。

リンク: 同社のプレスリリース


CHMP、週一回投与型インスリンなどの承認を支持
(2024年3月22日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、以下の新薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

ノボ ノルディスクのAwiqli(insulin icodec)は成人の糖尿病に用いる週一回皮下注用インスリン。アルブミンに強力かつ可逆的に結合するため末端半減期が196時間と長く、注射頻度を大幅に減らすことができる。臨床試験でHbA1c管理が一日一回投与型インスリンを用いた群と非劣性だった。但し、一型糖尿病患者では低血糖が増加したため、便益が明白な場合にだけ用いる。米国でもEUと同時期に承認申請されたが、審査期限が7月頃に延長された模様だ。

リンク: EMAのプレスリリース

ファイザーのEmblaveo(aztreonam、avibactam)は点滴静注用新規組み合わせ製品で、活性成分のうち前者は30年以上前に発売されたグラム陰性菌用モノバクタム、後者はベータ・ラクタマーゼ阻害剤でceftazidimeと組み合わせた製品が欧米で承認されている。Emblaveoの適応症は複雑性腹腔内感染症、複雑性尿路感染症、院内感染症、そして多剤抵抗性で治療手段が限定的な好気性グラム陰性菌感染症となる予定。

EMAのプレスリリースによると、承認のエビデンスは各剤の薬効・安全性データと第3相の安全性及び補完的データ。第3相実薬対照試験二本で治癒率が非劣性、死亡率は少なくとも数値上は低かったが、何かノイズが見つかったのだろうか?

リンク: EMAのプレスリリース

ノバルティスのFabhalta(iptacopan)は経口可逆的B因子阻害剤。成人のPNH(発作性夜間ヘモグロビン尿症)における溶血性貧血症の治療に用いる。抗C5抗体に十分応答しない患者を組入れたスイッチ試験や、未治療患者を組入れた単群試験で良好な成果を挙げた。未治療患者における抗C5抗体との優劣は不明だが、経口投与できる点は便利。

リンク: EMAのプレスリリース

以下の適応拡大も肯定的意見を得た。

  • UCBのBimzelx(bimekizumab):成人の既存治療に応答不十分な活性期中重度化膿性汗腺炎。米国でも申請中。

  • 第一三共のNilemdo(bempedoic acid)とezetimibe配合剤のNustend:成人のアテローム性心血管疾患又はそのリスクが高い患者に、スタチン忍容なら最大忍容量と併用、不耐・禁忌の場合は単剤またはezetimibeと併用する。アウトカム試験の成果を反映。米国では3月に承認。

  • セルビエのOnivyde pegylated liposomal(irinotecan hydrochloride trihydrate):未治療の転移膵管腺腫に5-FU、leucovorin、oxaliplatinと併用する。

  • イーライリリーのRetsevmo(selpercatinib):RET融合陽性の進行固形癌。但し、多の薬を用いても臨床的便益が限られているであろう、あるいは、使い果たした患者に用いる。

  • アステラス製薬のXtandi(enzalutamide):サルベージ放射線療法が適応とならない、生化学的再発のリスクが高い、成人男子の非転移性ホルモン感受性前立腺癌。単剤、またはアンドロゲン枯渇療法と併用する。

  • 一方で、以下の適応拡大申請が撤回された。

  • 武田薬品のAdcetris(brentuximab vedotin):未治療CD30陽性末梢T細胞リンパ腫(PTCL)のうちNOS(他の分類に該当しない)型。様々なタイプのPTCL等を組入れた試験に基づく申請だが、CHMPはNOSの組入れ数が少なく、数や患者背景に群間の偏りがあり、他の型のPTCLにおける治験成績が外挿できるかどうか不確かであるため否定的に考えていた。米国では未分化大細胞リンパ腫などと共に18年に、適応拡大申請の11日後という光速審査で、承認された。

  • ポルトガルのBial-PortelaのOngentys(opicapone):オフタイムを伴わない早期パーキンソン病に申請したが、CHMPは臨床試験における効果が限定的であるため否定的に考えていた。

  • ブリストル マイヤーズ スクイブのOrencia(abatacept):他家造血幹細胞移植に伴う急性移植片宿主病の予防に申請したが、CHMPは、180日の試験中に効果が減衰していること、それ以上の期間の持続性が検討されていないこと、慢性移植片宿主病のリスクに悪影響を与える可能性があることから否定的に考えていた。米国では21年にHLA適合/1アレル不適合造血幹細胞移植を受ける2歳以上の患者に承認された。


  • CHMP、レケンビの討議をドタキャン
    (2024年3月22日発表)

    CHMPは3月の会合でエーザイが早期アルツハイマー病の治療薬として承認申請したLeqembi(lecanemab)に関する口頭説明を予定していたが、キャンセルした。3月11日に行われた『神経学における科学的諮問グループ(SAG)』での討議を踏まえて、3月19日にCHMPで検討という段取りだったが、ECJ(欧州司法裁判所)が3月14日に別の案件で示した判断の余波で、EMAがSAGの推奨を無効化、改めて招集することを決めたため。純粋に手続き上の問題のようだ。

    ECJの決定は、D and A Pharmaがアルコール依存治療薬としてsodium oxybateを承認申請したが肯定的意見を獲得できず、EMAを提訴した件に関わるもの。ECJはCHMPが諮問した専門家グループの一人における利益相反を認めるとともに、『精神疾患におけるSAG』に代えてアド・ホックな会議を開いて諮問することを審査手続き違反と認定した。具体的に何がLeqembiの審査手続きに影響したのかは不明。

    リンク: BioArcticとエーザイのプレスリリース
    リンク: 欧州司法裁判所の決定(3月14日付、pdfファイル)

    【承認】


    バフセオが米国でやっと承認
    (2024年3月27日発表)

    米国マサチューセッツ州ケンブリッジの新興医薬品開発会社、Akebia Therapeutics(Nasdaq:AKBA)は、FDAがVafseo(vadadustat)を3ヶ月以上透析を受けている慢性腎疾患の成人の貧血治療薬として承認したと発表した。承認申請から足掛け3年、EU承認から1年弱、日本での承認からだと4年近く遅れた。錠剤なのでESA(赤血球生成刺激剤)より簡便だが、この長所が最大に生きる保存期慢性腎疾患は、EUと同様、適応外とされた。1年早く承認されたGSKの競合品、Jesduvroq(daprodustat)も透析期限定で、死に至ることもある主要心血管イベントが枠付き警告されている点も同じだ。

    FDAは一巡目の審査で安全性に懸念を表明、追加試験を要求した。同社は透析前の患者も適応とする計画だったが心血管安全性試験でESA比非劣性ではなかった。薬物誘導性肝障害や高血圧、癲癇などのリスクが見られたこともネックになった。同社は公式紛争解決手続きの適用を請求し、却下されたものの、追加試験無しで再申請する道筋を示唆され、日本における数万人分の市販後安全性データなどを追加提出、ついに承認に漕ぎ着けた。

    米国ではCSLの子会社のVifor Pharmaが販売する。尚、日本では田辺三菱製薬が開発販売。

    リンク: Akebiaのプレスリリース


    MSD、肺動脈高血圧用新薬が承認
    (2024年3月26日発表)

    MSDはFDAがWinrevair(sotatercept-csrk)を成人の肺動脈高血圧症治療薬として承認したと発表した。activinの受容体を免疫グロブリンの固定領域と結合した融合蛋白で、血管の増殖に関わる促進シグナルと抑制シグナルのバランスを調停、血流を改善する。標準療法と併用で3週毎に皮下注する。

    WHO機能分類がII/III(通常/通常より軽い身体活動を行うと呼吸困難や疲労などの症状が発生)の患者324人を組入れて24週治療し効果を偽薬と比較した第3相で6分歩行距離が偽薬調整後で40メートル改善した。副次的評価項目である死亡/治療強化リスクが低下し(ハザードレシオ0.16)、主要な構成要素である増悪やそれによる入院、全死亡だけの解析でも、発生数が少なかった。WHO機能分類が一段階以上改善した患者数も偽薬群より多かった。有害事象は頭痛、鼻血、ラッシュ、毛細血管拡張症など。ヘモグロビンの増加や血小板の減少が見られるため少なくとも最初の5回は投与前に検査を行う。胚胎毒性あり、授乳は非推奨、男女とも妊娠能力に影響する可能性がある。

    21年に115億ドル(エクイティ・バリュー・ベース)で買収したAcceleron Pharmaの開発品。セルジーンと共同開発していた時期があり、セルジーンを買収したBMSが売上高の20%台前半の技術料を得る権利を持っている。

    企業買収や提携により入手した薬にはしばしば見られることだが、報道によると、Winrevairも年間の問屋取得価格が22~46万ドルと著しく高価に設定される。

    リンク: 同社のプレスリリース


    ユルトミリスがAQP4自己抗体陽性NMOSDに適応拡大
    (2024年3月25日発表)

    アストラゼネカは、長期作用性抗C5抗体Ultomiris(ravulizumab-cwvz)を抗アクアポリン(AQP)4自己抗体陽性の視神経脊髄炎(NMOSD)に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。EUと日本では昨年5月に承認されたが、米国は副作用対策についてFDAが改善を求めたため周回遅れとなった。

    同日に類薬であるSoliris(eculizumab)のレーベルも変更されているが、変更点は、REMS(リスク評価・緩和戦略)の呼称がSoliris REMSからUltomiris and Soliris REMSに変わったことと、REMSの主要要件に、REMSで資格認定された薬局等は処方者が資格認定されていることを確認した上で交付するという項目が追加されたことくらいだ。Ultomirisの枠付き警告やREMS言及箇所はSolirisと同内容なので、おそらく、これが遅延の理由なのだろう。半年遅れても抵抗したいような変更ではないように感じられるので、FDAのほうが譲歩したのかもしれない。

    リンク: アストラゼネカのプレスリリース


    COVID-19感染予防用抗体医薬がEUA
    (2024年3月22日発表)

    米国マサチューセッツ州の新興医薬品開発会社、Invivyd(Nasdaq:IVVD)は、FDAがPemgarda(pemivibart)をCOVID-19の曝露前予防薬としてEUA(非常時使用認可)したと発表した。免疫力が低下する病気や治療を受けていて、ワクチンを接種しても十分な効果が期待できない、年齢12歳以上、体重40kg以上の人に4500mgを60分点滴静注する。効果は逓減していくので必要な場合は3ヶ月毎に反復投与する。アナフィラキシーが枠付き警告されている(臨床試験での発生率0.6%)。

    EUAの前提となる公衆衛生危機宣言は既に解除されたがEUAは未だ続いている。同社はADG20(adintrevimab)の第3相試験が成功、曝露前と後の発症リスク抑制に成功したが、流行株が同剤が苦手なBA.2にドリフトしたため、半減期の長いpemivibartにスイッチした。薬効のエビデンスは免疫ブリッジングで、pemivibartの中和抗体力価がadintrevimabと非劣性であることと、後者の感染・曝露前の人における臨床試験で発症リスク削減効果が見られたことから、薬効を認定した。比較はJN.1株に対する力価を用いた。

    リンク: 同社のプレスリリース


    高脂血症薬の心血管リスク削減効果が承認
    (2024年3月22日発表)

    Esperion Therapeutics(Nasdaq:ESPR)はFDAがNexletol(bempedoic acid)とNexlizet(ezetimibe配合錠)の適応・効能を追加したと発表した。CLEAR心血管アウトカム試験に基づくもので、米国の対象患者数が数倍に膨らんだ。

    コエンザイムAと結合してコレステロール生合成パスウェイのカギとなる酵素であるATP citrate lyase(ACL)を阻害する、新規作用機序のコレステロール治療薬。20年に欧米でヘテロ接合型高脂血症とアテローム硬化性心血管疾患の患者のLDL-C抑制薬として承認された。CLEAR試験では心血管疾患リスクを持ちLDL-Cが100mg/dL以上の、二種類以上のスタチンに不耐な患者13970人を組入れて、心血管死/非致死的心筋梗塞/非致死的卒中/冠再建術のリスクをメジアン40.6ヶ月追跡したところ、発生率が11.7%と偽薬群の13.3%より低く、ハザードレシオは0.87、p=0.004だった。

    FDAは、心血管疾患又は高リスク患者でスタチンの推奨用量を服用できない成人患者に用いることと、ヘテロ接合型以外の原発性高脂血症の成人に用いることを承認した。

    上記の通り、第一三共が販売するEUでもCHMPが効能追加に肯定的意見をまとめた。

    リンク: 同社のプレスリリース


    肺動脈高血圧の合剤が承認
    (2024年3月22日発表)

    ジョンソン・エンド・ジョンソンはFDAがOpsynvi(macitentan、tadalafil)を成人の肺動脈高血圧症の治療薬として承認したと発表した。エンドテリンA/B受容体拮抗剤Opsumitの活性成分と、イーライリリーのPDE5阻害剤Adcircaの活性成分を配合したもので、従来は前者を1錠、後者を2錠、一日一回服用する必要があったが、一錠で足りるようになる。カナダでは21年に承認、欧州や日本でも承認申請中。

    リンク: 同社のプレスリリース


    アッヴィのADCが本承認
    (2024年3月22日発表)

    アッヴィは22年に米国で加速承認されたElahere(mirvetuximab soravtansine-gynx)が本承認されたと発表した。1~3剤までの治療歴のある葉酸受容体アルファ陽性白金抵抗性卵巣癌の治療薬で、第3相単剤投与試験で全生存期間のハザードレシオがpaclitaxelなどから医師が選んだ薬を投与した群と比べて0.67、メジアン生存期間は各16.4ヶ月と12.7ヶ月だった。

    2月に買収したImmunoGenの製品。

    リンク: アッヴィのプレスリリース

    【当面の主なFDA審査期限、諮問委員会】


    PDUFA
    24年3-4月ロシュのRG6107(crovalimab、発作性夜間ヘモグロビン尿症)
    24年4-6月ファイザーのPF-06838435(fidanacogene elaparvovec、B型血友病)
    24年4月推JNJのSkyrizi(risankizumab-rzaa、潰瘍性大腸炎)
    24年4月推JNJのBalversa(erdafitinib、FGFR陽性尿路上皮腫本承認切替)
    24/4/2Vanda PharmaceuticalsのFanapt(iloperidone、双極障害一型追加)
    24/4/3Basilea Pharmaceuticaのceftobiprole medocaril(黄色ブドウ球菌性菌血症など)
    24/4/5 JNJのCarvykti(ciltacabtagene autoleucel、多発骨髄腫2~4次治療)
    24/4/5 Supernus PharmaceuticalsのSPN-830(apomorphine、パーキンソン病)
    24/4/23ImmunityBioのN-803(BCG不応筋層非浸潤性膀胱癌)
    24/4/30X4 PharmaceuticalsのX4P-001(mavorixafor、WHIM症候群)
    24/4/30Day One BiopharmaceuticalsのDAY101(tovorafenib、小児神経膠芽腫)
    24/4/30Neurocrine BiosciencesのIngrezza(valbenazine顆粒製剤、ジスキネジアなど




    今週は以上です。

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