2018年7月15日

2018年7月15日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • Acceleron/セルジーン、luspaterceptのベータサラセミア試験も成功 
  • イムブルビカ、リンパ腫試験がフェール 
  • CTI、EUでの条件付き承認を失うリスク 
  • キイトルーダ、肝細胞腫に適応拡大申請 
  • アッヴィ/ジェネンテック、bcl-2阻害剤をAML一次治療に適応拡大申請 
  • 天然痘の初の治療薬が米国で承認 
  • イクスタンジ、米国で転移前CRPCに適応拡大 
  • BMSのチェックポイント阻害コンビ、MSI-H/dMMR結腸直腸癌に承認


【新薬開発】


Acceleron/セルジーン、luspaterceptのベータサラセミア試験も成功
(2018年7月9日発表)

セルジーン(Nasdaq:ASDAQ: CELG) は、Acceleron Pharma(Nasdaq:XLRN)と共同開発しているACE-536(luspatercept)の第三相ベータサラセミア試験が成功したと発表した。輸血量を33%以上減らすことに成功した患者の比率が偽薬群を有意に上回った。データは学会で発表される予定。

ACE-536はactivin receptor type IIBとマウスの免疫グロブリンG2の融合蛋白で、TGFベータスーパーファミリーの作用をブロックする。6月には、低・低中度リスクのMDSで環状鉄芽球を持ち、貧血症でESA(エポエチンなど)に不応不耐不適の患者を組入れた第三相貧血治療試験の成功も発表された。来年上期に欧米で承認申請する予定。

リンク: セルジーンのプレスリリース

イムブルビカ、リンパ腫試験がフェール
(2018年7月11日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンとアッヴィは、Imbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)のPHOENIX試験(アッヴィ側ではDBL3001試験と呼んでいる)がフェールしたと別々のプレスリリースで発表した。

びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一種で難治性の非GCB(germinal center B cell)型またはABC(activated B-cell)型と診断され初めて治療を受ける患者を組入れた試験で、代表的なレジメンであるR-CHOP多剤併用療法と更にImbruvicaを追加する療法の無イベント生存期間を比較したが、大差なかった。

この二社の関係は、ファーマサイクリクスがジョンソン・エンド・ジョンソンと共同開発販売契約を結んだ後にアッヴィに210億ドルで買収され、呉越同舟となった。新興企業が有望新薬をアウトライセンスする時は、自社を敵対的に買収しないよう契約で拘束することが多い。身売りするなら複数の会社の入札にするほうが高く売れるからだ。その結果、Imbruvicaのような捻じれた提携が増えている。

リンク: アッヴィのプレスリリース

CTI、EUでの条件付き承認を失うリスク
(2018年7月9日発表)

CTI BioPharma(Nasdaq:CTIC)とセルビエは、Pixuvri(pixantrone)の第三相PIX306試験がフェールしたと発表した。アンスラサイクリン系の抗癌剤で、12年にEUで再発性難治性アグレッシブ型非ホジキンリンパ腫のサルベージ療法として条件付き承認された。今回の試験が成功すれば本承認に切り替わっただろうが、フェールしたことによって、承認を喪失するリスクが浮上した。

但し、前例を見る限りでは、執行猶予を受ける可能性もありそうだ。セカンドチャンスにチャレンジしたり、特許や排他権が失効するまで素知らぬ顔で販売し続ける戦略オプションが生まれる。

米国はこの試験で再承認申請する考えだったが、断念した。

リンク: CTIのプレスリリース

【承認申請】


キイトルーダ、肝細胞腫に適応拡大申請
(2018年7月11日発表)

MSDは、抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)の適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。治療歴のある末期肝細胞腫に用いるもので、第二相のKN224試験では客観的反応率が17%と、そこそこの効果があった。審査期限は11月9日。

リンク: MSDのプレスリリース
リンク: Zhuらの治験論文(Lancet Oncology)

アムジェン/UCB、抗スクレロスチン抗体の追加データをFDAに提出
(2018年7月12日発表)

アムジェンとUCBは、抗スクレロスチン抗体Evenity(romosozumab)を骨粗しょう症治療薬として16年に日米で承認申請し、米国では審査完了通知を受領した。申請後に結果が判明した大規模直接比較試験、ARCH試験で、心血管イベント発生率が2.5%とalendronate群の1.9%を上回ったことが影響した。

両社はARCH試験の解析を進め、今回、FDAに追加提出した。他の試験ではリスクは見られたかった模様だが、症例数も追跡期間の面でも一番大きな試験の、治験医の判定を第三者が査読したデータで懸念が浮上したことは意味が大きい。

リンク: 両社のプレスリリース

アッヴィ/ジェネンテック、bcl-2阻害剤をAML一次治療に適応拡大申請
(2018年7月12日発表)

アッヴィとジェネンテックは、慢性リンパ性白血病(CLL)の二次治療薬として承認されているbcl-2阻害剤、Venclexta(venetoclax)を一次治療薬に昇格させる適応拡大をFDAに申請したと、それぞれに発表した。

強化化学療法不適の患者に脱メチル化薬または低量cytarabineと併用する。それぞれ後期第1相試験と第1/2試験のデータに基づくもの。

リンク: アッヴィのプレスリリース

【承認】


天然痘の初の治療薬が米国で承認
(2018年7月13日発表)

FDAはTPOXX(tecovirimat)を天然痘治療薬として承認した。アニマルルールに基づき、臨床試験は健常者安全性確認試験だけで、薬効はウイルスに感染させた動物を使って確認した

天然痘はWHOを中心に世界的なワクチン接種キャンペーンが推進され、1980年代に駆除が宣言された。しかし、原因ウイルスは米国以外の研究所でも生存しており、生物兵器として使われるリスクが残っている。

このため、SIGA Technologies(Nasdaq:SIGA)が04年にViropharmaから資産を取得して、米国政府のプロジェクト・バイオシールドの一つとして資金や非臨床試験ファシリティの支援を受けてTPOXXを開発。国家備蓄用に販売する。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: SIGA社のプレスリリース

イクスタンジ、米国で転移前CRPCに適応拡大
(2018年7月13日発表)

ファイザーとアステラス製薬は、FDAがXtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)の適応拡大を承認したと発表した。前立腺癌のアンドロゲン枯渇療法を受けていてPSA値が急上昇し始めたが未だ転移や症状が見られない段階の患者に追加投与するもの。

PROSPER試験では、無転移生存期間がメジアン36.6ヶ月と偽薬を追加投与した群の14.7ヶ月を大きく上回った。G3以上の有害事象の発生率は31%で偽薬群の23%を上回り、有害事象による死亡の発生率も3.4%対0.6%で上回った。

抗癌剤の開発はサルベージ用途を最初の目標として、雁行的に、一歩ずつ前の段階で用いる適応拡大を進めることが多い。Xtandiも順調に前進しており、前の段階のほうが対象患者数も平均投与期間も増えるので市場規模拡大に成功している。

リンク: ファイザーのプレスリリース

BMSのチェックポイント阻害コンビ、MSI-H/dMME結腸直腸癌に承認
(2018年7月11日発表)

BMSは、抗PD-1抗体Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)と抗CTLA-4抗体Yervoy(ipilimumab)をMSI-H/dMMR型結腸直腸がんの三次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。CM142試験では、独立放射線学的委員会の査読によるORR(客観的反応率)が46%だった。

MSI-H(マイクロサテライト不安定性-高)は塩基配列の繰返し箇所の繰返し回数が腫瘍と正常細胞で異なる。同様に、dMMRは塩基配列ミスマッチの修復が異なる。何れも細胞分裂時に発生しやすい遺伝子複製ミスが十分に修復されず癌化したことを示唆しており、免疫強化療法にとって重要な、異常蛋白の発現が多い可能性がある。 切除不能転移性結腸直腸癌の5%程度が該当する由だ。

リンク: BMSのプレスリリース






今週は以上です。

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