2018年6月24日

2018年6月24日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • サレプタ、初のR&Dデイを開催 
  • PTC、SMAパイプラインが初期試験で良績 
  • ノボ、経口GLP-1作用剤がビクトーザに勝つ 
  • 第一三共、FLT阻害剤の第三相が成功 
  • アレクシオン、第二のソリリスを承認申請 
  • オプジーボとヤーボイの併用を高TMB肺癌に承認申請 
  • FDAもキイトルーダとテセントリクの膀胱癌一次治療を制限 


【新薬開発】


サレプタ、初のR&Dデイを開催
(2018年6月19日発表)

Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)が初のR&Dデイを開催した。ジストロフィン遺伝子のエクソン51をスキップする核酸医薬を開発し、特定のタイプのデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の治療薬、Exondys 51(eteplirsen)として16年に発売した会社で、別のタイプの患者向けにエクソン45やエクソン53をスキップする薬も各々第三相試験を実施中だ。

R&Dデイで印象的だったのは、遺伝子療法で実績を持つNationwide Childern's Hospitalからライセンスした、GALGT2やマイクロジストロフィンの遺伝子療法だ。まだ初期試験が始まったばかりで数例の実績しかないが、少なくとも、各々の遺伝子を発現させることとクレアチンキナーゼ値の削減はできそうだ(DMDは筋細胞疾患なので血清CK値が数万U/Lと著しく高い)。

特に印象的だったのは、マイクロジストロフィン症例のビデオだ。疾病モデル犬は顎の高さほどの柵も越えられなかったが、飛び越えられるようになった。小学校入学前後とお思しき少年は、最初のビデオでは階段を一歩ずつ慎重に上っていたが、次のビデオでは友達に付いて一緒に上がることができた。同じ子供かどうかは分からないが、広場を走っているビデオもあった。

たった一例、二例に過ぎず、ビデオだって第三者が本物であることを確認した訳ではないだろうから、妄信は禁物だが、私は目頭が熱くなった。医学者が、製薬会社が、そして私たちが望んでいるのは、このようなシーンを実現することではなかったか。

ベクターは筋細胞向性の高いアデノ随伴ウイルスrh74、プロモーターは、心臓病や肺炎で死亡する患者が多いことを考慮して、筋、心、横隔膜特異性を持つMHCK7を採用した。ジストロフィンの遺伝子は大きすぎてベクターに組み込めないため、ベッカー型筋ジストロフィー患者から発見された短いがある程度機能する変異遺伝子をヒントに、3.6kbまで短縮・最適化した。

第一相の最初のコフォートは、過去の遺伝子療法治験で抗体ができにくかったエクソン18-58に変異があるDMDの7割程度を占めるタイプの4~7歳の患者6人に投与する。次の段階は4~7歳の患者24人を組入れて偽薬対照1年クロスオーバー試験を行い、結果次第で承認申請に向かうことも考えているようだ。

近年、遺伝子療法の存在感が高まっている。承認されたのに殆ど使われない残念なケースが先行したが、筋ジストロフィーや血友病などで多くのパイプラインが臨床に上がってきたからだ。もう一つの背景は、エクソンスキップの効果が明確でないことだ。Exondys 51はFDAのナンバー2の鶴の一声で承認されたが、審査担当者やその部署のヘッドは効果の立証が足りないと考えていた。この人たちは既にFDAを去った模様だが、今度はEUのCHMPが、否定的意見を出した。他のアプローチに期待がシフトするのは自然の成り行きだろう。

リンク: Sareptaのプレスリリース

PTC、SMAパイプラインが初期試験で良績
(2018年6月16日発表)

PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)は、risdiplamの第2/3相脊髄性筋萎縮症(SMA)試験であるFIREFISH試験の予備的薬効解析結果を発表した。CHP-INTENDスコアが4ポイント以上改善した患者の比率が第56日時点で20人中75%、第182日時点では11人中91%となりベースライン比でメジアン14ポイント改善した。

risdiplamは同社がSMA財団と提携・開発した小分子薬で、SMN2のスプライシングに介入してsurvival motor neuronの生成を増やし、SMN遺伝子の代わりを務めさせる。経口投与可能。ロシュがライセンスしてRG7916あるいはRO7034067という開発コードで臨床開発している。FIREISH試験はI型(月齢3~7ヶ月)でSMN2を2コピー持つ患者21人を組入れて実施している。

SMAではバイジェンがIONIS社からライセンスしたSpinraza(nusinersen)が16年に米国で承認された。I型SMAを組入れた試験では、CHP-INTENDスコアの4ポイント改善達成率が第694日時点で71%、偽薬群は3%だった。ベースライン時点のスコア26.5が平均で16.9ポイント改善した。症例数や期間が異なるものの、risdiplamのデータはなかなか良いと言える。

リンク: PTCのプレスリリース

ノボ、経口GLP-1作用剤がビクトーザに勝つ
(2018年6月20日発表)

ノボ ノルディスクは長期作用性GLP-1作用剤Ozempicの活性成分をEmisphere Technologiesの技術を用いて経口錠化、二型糖尿病薬として第三相試験を行っている。今回、同社の一日一回皮注用GLP-1作用剤Victoza(liraglutide)やMSDのDPP4阻害剤Januvia(sitagliptin)との直接比較試験の成功が発表された。

FDAは血糖治療薬の薬効解析方法を変更しているが、このFDA方式ではHbA1c引き下げ作用がVictozaと非劣性、従来の方法(血糖管理が失敗しレスキューメディスンを使った場合はその段階で薬効評価を打ち切り、など)では優越性が確認された。体重減少はどちらの方法でも有意に大きかった。一方、Januvia対照試験ではどの方法でも、HbA1cでも体重でも、有意に優れていた。

経口剤なので作用が似ているDPP-4阻害剤が直接のライバルになりそうだ。GLP-1作用剤のほうが効果が高いのは周知の事実。悪心有害事象や有害事象による治験離脱が若干多いのも、残念なことではあるが、予想されたこと。Januvia対照試験では血糖管理や忍容状況に応じて用量を調節する手法が採用されており、1年後の服用量は14mgが60%、半分の7mgが31%、3mgが9%だった。

リンク: ノボのプレスリリース

第一三共、FLT3阻害剤の第三相が成功
(2018年6月18日発表)

第一三共は、AC220(quizartinib)の第三相試験成功をEHA欧州血液学会で発表した。FLT3を阻害する経口剤で、FLT3遺伝子内縦列重複変異のある再発性難治性急性骨髄性白血病を組入れて低量cytarabineなど化学療法と全生存期間を比較したところ、メジアン6.2ヶ月対4.7ヶ月となり、ハザードレシオは0.76(95%信頼区間0.58-0.98)、1年生存率は27%対20で上回った。承認申請する見込み。

この変異は急性骨髄性白血病の3割程度で見られる。類薬ではノバルティスのRydapt(midostaurin)が一次治療薬として昨年、欧米で承認され、アステラスのASP2215(gilteritinib)が今年、再発治療で承認申請された。

リンク: 第一三共のプレスリリース(和文)


【承認申請】


アレクシオン、第二のソリリスを承認申請
(2018年6月19日発表)

カナダのアレクシオン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ALXN)は、ALXN1210をPNH(発作性夜間血色素尿症)治療薬として米国で承認申請した。優先審査バウチャーを使ったとのこと。欧州は年央に、日本は下半期に、承認申請する考え。

同社は補体系のC5を標的とする抗体医薬、Soliris(eculizumab、和名ソリリス)をPNH治療薬として販売している。ALXN1210の長所は半減期が長く静注点滴頻度が8週間に一回と、Solirisの二週毎より少ないこと。初めて治療を受ける患者を組入れた直接比較試験では、効果が非劣性だった。Solirisは発売から10年経つため特許切れ対策という意味合いもありそうだ。

リンク: アレクシオンのプレスリリース

オプジーボとヤーボイの併用を高TMB肺癌に承認申請
(2018年6月21日発表)

BMSは、高TMB(Tumor Mutation Burden)の転移性非小細胞性肺癌の一次治療薬としてOpdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を併用する適応拡大申請を米国で行い、受理されたと発表した。標準審査の模様で、審査期限は19年2月20日。欧州でも5月に申請受理されている。

TMBは腫瘍における遺伝子変異の頻度を示しており、変異が多いほど変な蛋白が多く生成されるので免疫療法の応答予測因子として使える可能性がある。今回の適応では塩基1メガ当り10以上の変異を高TMBとした。転移性非小細胞性肺癌の40~45%が該当する模様。適応拡大のエビデンスとなるのはCheckMate-227試験。化学療法群と比べて、PFSのハザードレシオが0.58、統計的に有意だった。全生存の解析はハザードレシオ0.79、95%信頼区間0.56~1.10と、まだ有意差は出ていない。

この試験は複雑で、今回の解析はもともと主評価項目ではなかった。Opdivoのモノセラピーで行われた一次治療CheckMate-026試験では、高TMB(243ヶ所以上が変異)のPFSで有意差が出たが
全生存期間は化学療法と大差なかった。そのせいか、227試験の全生存期間の解析はPD-L1陽性という異なったユニバースに対して行われる。

リンク: BMSのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDAもキイトルーダとテセントリクの膀胱癌一次治療を制限
(2018年6月20日発表)

EUに続いて、FDAも、Keytruda(pembrolizumab)やTecentriq(atezolizumab)を切除不能末期/転移性尿路上皮癌の一次治療に用いる時の条件を厳格化した。但し、全ての白金薬に不適な患者なら、これまで通り、PD-1発現の有無を問わず、モノセラピーで使ってもよい。

一方、cisplatinだけに不適な患者は、Keytrudaの場合はCombined Positive Scoreが10超、TecentriqはPD-L1陽性、だけが適応になる。

どちらも白金薬レジメン歴を持つ患者の再発治療とcisplatin不適の一次治療に承認されたが、進行中の臨床試験で、cisplatin不適に関してはこれらの薬より白金薬レジメンのほうが延命効果が高い可能性が浮上した。今後は、cisplatin併用などの開発が重要になりそうだ。

リンク: FDAのプレスリリース







今週は以上です。

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