2018年5月20日

2018年5月20日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • バーモント州、カナダからの医薬品輸入を合法化 
  • テセントリクの肺癌四剤併用試験、全生存の解析も成功 
  • 吸入用アミカシンが承認申請 
  • アストラゼネカ、高カリウム血症治療薬が米国でやっと承認 
  • アムジェンの抗CGRP抗体が片頭痛予防薬として承認 
  • オピオイド乱用者の治療を補助する薬が承認 
  • Cabometyx、腎細胞腫一次治療に承認 
  • FDA、キイトルーダとテセントリクに関して安全性警告 
  • 抗HIV薬テビケイに催奇性の疑い 


【今週の話題】


バーモント州、カナダからの医薬品輸入を合法化
(2018年5月16日発表)

CNNなどの報道によると、米国バーモント州で、カナダから安価な医薬品を輸入する道を開く法案が成立した。長年のアジェンダだが、法制化されたのは初めて。

但し、実際に輸入が始まる可能性は低そうだ。具体策や予算手当はこれからであり、また、輸入する医薬品がFDAの薬効・安全性基準を満たしていることを条件にしているからだ。

カナダの一部の州では、薬局が米国人の注文を電話やメールで受け付けている。処方箋がない場合は地元の医師から入手するサービスもあるようだ。しかし、FDAが過去に行った調査では、送られてきた医薬品が古かったり、パッケージやラベルが途上国のものだったりすることがあった。数年前には、カナダで医薬品の輸入が認められていない国からの輸入が大きく伸びていて、他国に転売されている可能性があると報じられた。

HHS(保健福祉省)のAzar長官は、これらの過去の長官が行った調査を踏まえて、今回の法案成立をギミックと呼んでいる。

トランプ大統領は、先日、医薬品の価格を抑制するための施策を発表したが、過激なものはなく、株式市場で医薬品株の価格が回復した。製薬会社に圧力をかける目的で輸入合法化というカードをチラ見させる可能性はあるが、実際に切ることはないだろう、というのが一般的な見方である。

リンク: CNNの報道


【新薬開発】


テセントリクの肺癌四剤併用試験、全生存の解析も成功
(2018年5月17日発表)

ロシュは、IMpower150試験が全生存期間の解析も成功したと発表した。PFS(無進行生存期間)の解析が成功したことはすでに発表され、適応拡大申請中だが、PFSでいう進行は腫瘍の大きさが一定以上増加という、必ずしも症状の増悪とは相関せず、また、閾値のすぐ下と上で評価がガラッと変わるという理不尽さを持っているので、全生存期間のほうがエビデンスとして頑強だ。

IMpower150試験は、非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療第三相試験。標準療法の一つであるcarboplatin、paclitaxel、Avastin(bevacizumab、和名アバスチン)のレジメンと、更にTecentriq(atezolizumab、和名テセントリク)を追加する四剤併用レジメンの効果を比較した。

メジアン生存期間は四剤併用群が19.2ヶ月、三剤併用は14.7ヶ月、ハザードレシオは0.78(95%信頼区間0.64-0.96)となった。PFS解析結果が学会発表された時の全生存期間解析と、点推定値が殆ど同じだ。PD-L1やTeff遺伝子署名などのバイオマーカーに基づくサブグループ分析も各種実施されたが、結果的に、ほとんど全てのタイプの患者で四剤併用レジメンのほうが延命効果が高かった。

Avastinの代わりにTecentriqを使う三剤併用もテストされたが、これまでの中間解析では有意差が出ていない。次回は最終解析とのことなので、結論が出ることになる。

この試験の標準療法群は、今日では主流でなくなった模様であり、MSDのような、Alimta(pemetrexed)と白金薬のレジメンに追加する併用法のほうが医師にアピールするようだ。四剤併用は金銭的なコストだけでなく深刻な副作用というコストも増えるので、承認されても、どの程度普及するかは不透明だろう。

リンク: ロシュのプレスリリース


【承認申請】


吸入用アミカシンが承認申請
(2018年5月16日発表)

Insmed(Nasdaq:INSM)は、ALIS(amikacinのリポソーム吸入用懸濁液)を米国で承認申請しFDAに受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は9月28日。

適応は、成人のMAC(非定型抗酸菌複合体)による難治性NTM(非結核性抗酸菌症)性肺疾患。ガイドラインに基づく治療(GBT)で治癒しなかった難治性患者を組入れた第三相試験では、6ヶ月内にMACが陰転した患者の比率が29%とGBT継続群の9%を上回った。一方、深刻な治療時発現有害事象の発生率も20.2%対17.9%で上回った。

アミカシンは注射用が実用化されているが、難聴などの副作用を伴う。ALISはPARI Pharma社のeFlowネブライザを用いる吸入用薬で局所的に作用する。承認されれば、米国では年1~1.5万人程度が治療対象となる見込み。

リンク: Insmedのプレスリリース


【承認】


アストラゼネカ、高カリウム血症治療薬が米国でやっと承認
(2018年5月19日発表)

アストラゼネカのLokelma(sodium zirconium cyclosilicate)が成人の高カリウム血症治療薬として米国で承認された。申請は3年前だったが、工場査察で課題が浮上、承認が遅延した。欧州は今年3月に承認されたが、CHMPが肯定的意見を出したのは一年前なので、やはり遅延したことになる。

カチオン交換剤で、胃腸のカリウムイオンに結合しそのまま排出される。15年に27億ドルで買収したZS Pharmaの開発品。

アムジェンの抗CGRP抗体が片頭痛予防薬として承認
(2018年5月17日発表)

アムジェンは、FDAがAimovig(erenumab-aooe)を成人の片頭痛予防薬として承認したと発表した。臨床試験では、月間の片頭痛発生日数が偽薬群より1~2日少なくなった。主な有害事象は注射箇所反応や便秘。

CGRP(カルシトニン遺伝子関連ペプチド)受容体を標的とする完全ヒト化抗体で、月一回、オートインジェクターで皮注する。一回分が575ドルとのことなので、バイオ薬の割には価格がそれほど高くない。尤も、標準価格が低くても値引きも小さいのかもしれない。

CGRPやその受容体を標的とする抗体は多くの会社が開発を競っているが、Aimovigが承認第一号になった。アムジェンはノバルティスと片頭痛やアルツハイマー病領域で共同開発販売提携を行っており、Aimovigはノバルティスが米国で共同販売、日米以外の国では単独で販売する。

リンク: アムジェンのプレスリリース

オピオイド乱用者の治療を補助する薬が承認
(2018年5月16日発表)

FDAは、US WorldMeds LLCが承認申請したLucemyra(lofexidine hydrochloride)を承認した。アルファ2アドレナリン受容体選択的に作動する経口剤で、OUD(オピオイド使用障害)患者がオピオイドを止める治療を受ける時の離脱症状緩和に用いる。治療期間は14日以内に限定された。主な有害事象は低血圧、徐脈、傾眠、眩暈など。臨床試験では失神も数例発生した模様だ。

リンク: FDAのプレスリリース

Cabometyx、腎細胞腫一次治療に承認
(2018年5月17日発表)

イプセンは、Cabometyx(cabozantinib)錠を中高リスク腎細胞腫の一次治療に用いる適応拡大がEUで承認されたと発表した。臨床試験では、メジアンPFS(無進行生存期間)が8.2ヶ月と標準療法であるSutent(sunitinib)の5.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.69だった。

Exelixis(Nasdaq: EXEL)から北米や日本以外の権利を取得したもので、米国では昨年12月に承認されている。他の適応は、腎細胞腫の二次治療と、Cometriqカプセル名で甲状腺髄様癌に承認されている。また、今年3月には肝細胞腫の二次治療薬として欧米で承認申請された。

リンク: イプセンのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、キイトルーダとテセントリクに関して安全性警告
(2018年5月18日発表)

FDAは、MSDのKeytruda (pembrolizumab)やロシュのTecentriq (atezolizumab)を尿路上皮癌に用いる時の安全性警告を発出した。PD-L1低発現患者の一次治療にモノセラピーを施行すると、生存期間が白金薬ベースの治療より短くなるというもの。KeytrudaのKEYNOTE-361試験、及び、TecentriqのIMVIGOR-130試験のデータ監視委員会が中間解析で発見した。尚、これらの試験は白金薬併用もテストしている。

この両剤は何れも尿路上皮癌に承認されているが、白金薬後の二次治療、または白金薬に適さない患者の一次治療に限定されている。今回の情報を踏まえると、白金薬を使えるなら使ったほうが良いことになる。それでは、使える患者と使えない患者の境界線はどこにあるのか?

FDAは、レーベルの臨床試験セクションをよく読んで治療対象を選択すべしと言っている。承認のエビデンスとなった試験における白金薬不適の判定方法が記されているからだ。

リンク: FDAの安全性情報



抗HIV薬テビケイに催奇性の疑い
(2018年5月18日発表)

FDAは、塩野義製薬が創製しGSKやファイザーとの合弁会社で販売している抗HIV/AIDS薬、Tivacay(dolutegravir、和名テビケイ)に催奇性の疑いが浮上し検討中であることをMedWatchで発表した。ボツワナで行われた観察的研究で、受胎前後や妊娠初期に服用した患者の新生児の中から脳や脊椎、脊髄の神経管欠損が見られたことがきっかけ。FDAは、医療従事者に対して、妊娠年齢の女性に用いる時はこの可能性について伝えるよう求めている。

リンク: MedWatch






今週は以上です。

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