2018年4月30日

2018年4月30日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • イミフィンジ、抗CTLA4抗体併用試験がまたフェール 
  • アッヴィ、抗IL-23p19抗体を承認申請 
  • FDA諮問委員会、オルミエントの用量依存的血栓リスクに懸念 
  • CHMPがギリアドの抗HIV薬などの承認を支持 
  • マイロターグがEUで初承認 
  • BMS、オプジーボの固定用量がEUでも承認 
  • FDA、ラミクタールの稀な血液疾患副作用を警告 


【新薬開発】


イミフィンジ、抗CTLA4抗体併用試験がまたフェール
(2018年4月24日発表)

アストラゼネカは、Imfinzi(durvalumab、和名イミフィンジ)の第三相非小細胞性肺癌三次治療試験、ARCTICがフェールしたと発表した。PD-L1低・無発現癌(SP263アッセイで閾値25%)に対する、ファイザーからライセンスした抗CTLA4抗体、tremelimumabとの併用療法の効果を化学療法と比較したが、PFS(無進行生存期間)も全生存期間も有意に上回らなかった。

この試験は他にも様々な群が設定されていて、PD-L1陽性にImfinziのモノセラピーと化学療法を比較した群は臨床的に意味のある差があった由だが、統計学的に意味のある解析ではない模様だ。データは学会発表する計画。

Imfinziとtremelizumabの併用療法は、一次治療のMYSTIC試験でもPFS解析がフェールしており、芳しくない。Imfinziは抗PD-L1抗体だが、BMSの抗PD-1抗体であるOpdivo(nivolumab)と抗CTLA4抗体のYervoy(ipilimumab)の併用療法もPD-L1陰性癌の試験がフェールした。悪性黒色腫の試験では、PD-L1陰性癌に対するOpdivoの効果をYervoy併用で増強することができたのだが、肺癌は勝手が違うようだ。

Imfinziは米国で尿路上皮細胞腫の二次治療や非小細胞性肺癌の化学放射線療法後維持療法に承認されている。日本でも後者で承認申請され、先日、第二部会を通過した。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース


【承認申請】


アッヴィ、抗IL-23p19抗体を承認申請
(2018年4月25日発表)

アッヴィは、ABBV-066(risankizumab)を中重度尋常性乾癬の治療薬としてFDAに承認申請した。IL-23のp19サブユニットを標的とするヒト化抗体で、ベーリンガー・インゲルハイムのBI 655066を共同開発しているもの。

抗IL23p19抗体は続々と登場しており、ジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab)は17年に欧米で、今年3月には日本でも、中重度乾癬に承認された。Sun PharmaがMSDからライセンスしたIlumya(tildrakizumab)も先月、米国で承認。

何れも皮注。維持期の投与頻度が異なっており、Tremfyaは8週毎だが、他の二剤は12週毎。

リンク: アッヴィのプレスリリース


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、オルミエントの用量依存的血栓リスクに懸念
(2018年4月23日発表)

FDAの関節炎諮問委員会は、イーライリリーが中重度リウマチ性関節炎の治療薬として承認申請したOlumiant(baricitinib、和名オルミエント)を検討、欧州や日本で標準的開始用量とされている4mg/日の安全性に多数の委員が懸念を示した。

Olumiantは、ファイザーのXeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)と同様に、インターロイキン受容体の細胞内シグナル伝達に係るJAK(Janus kinase)を阻害する経口剤。XeljanzはJAK3に選択的でJAK3とJAK1のヘテロダイマーも阻害できるが、OlumiantはIL-6受容体などに係るJAK1やEPO受容体などに係るJAK2に選択的という違いがある。

09年にインサイト(Nasdaq:INCY)から炎症性疾患領域での開発販売権を取得した。欧州や日本では17年に承認されたが、米国は審査完了となり、今回は二巡目の審査。

欧州や日本では4mg/日で開始して応答したら2mg/日に減量可、というのが標準用法だが、諮問委員会では、薬効に関しては両用量とも概ね支持されたが、安全性は4mgは支持5人、反対10人とダブルスコアで反対が上回った。2mgは9対6で支持が上回ったが決定的な差ではない。便益が危険を上回るか(米国における承認判定基準)、という質問に関しては、4mgは賛成5人、反対10人、2mgは賛成10人、反対5人という結果になった。

主因は、日欧のレーベルにも記載されている、血栓リスクだ。JAK阻害剤は複数承認されているが、Olumiantは他剤と異なり臨床試験で深静脈血栓や肺塞栓のリスクが見られた。頻度は100人年当り0.46と極稀だが、致死例もあり、敢えてこの薬を選ぶことを正当化ためには、明確なアドバンテージが欲しいところだ。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

CHMPがギリアドの抗HIV薬などの承認を支持
(2018年4月27日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの科学的評価委員会、CHMPは、4月の会合で、ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のBiktarvyなどの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

Biktarvyはインテグラーゼ・ストランド・トランスファー阻害剤のbictegravirと核酸系逆転写阻害剤のemtricitabine及びtenofovir alafenamide fumarateを配合した錠剤で、一日一回の服用で足りる。米国では2月に承認された。

リンク: ギリアドのプレスリリース

適応拡大では、まず、ロシュのPerjeta(pertuzumab、和名パージェタ)を早期her2陽性乳癌の術後アジュバント療法に用いることが支持された。化学療法及びHerceptin(trastuzumab)と併用する。エビデンスはAPHINITY試験だが、一部のサブグループでは効果が確認されなかったため、CHMPは適応を高リスク患者に限定した。昨年承認された米国でも同様。日本でも適応拡大審査中。

リンク: ロシュのプレスリリース

次に、アストラゼネカのTagrisso(osimertinib、和名タグリッソ)をEGFR活性化変異型非小細胞性肺癌の一次治療に用いること。現在は他のEGFR阻害剤の次に使う薬として日米欧で承認されている。

また、ファイザーのXeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)による中重度尋常性乾癬治療。疾病装飾的抗リウマチ薬に十分に反応しない患者に用いる。現在は関節リウマチなどに承認されている。

そしてアムジェンのProlia(denosumab)をステロイド誘導性骨減少の治療に用いること。骨折リスクの抑制を目指す。

リンク: アムジェンのプレスリリース

最後に、UCBの抗TNFアルファPEG化抗体フラグメント、Cimzia(certolizumab pegol)の中重度尋常性乾癬適応拡大。Dermira(Nasdaq:DERM)がこの用途での権利を持っている。


【承認】


マイロターグがEUで初承認
(2018年4月23日発表)

ファイザーは、Mylotarg(gemtuzumab ozogamicin)がEUで急性骨髄性白血病用薬として承認されたと発表した。15歳以上で、初めて治療を受ける、原発性の、CD33陽性癌が適応になる。肝毒性があり、致死的な肝静脈閉塞症を発症することがある。

Mylotargは抗体薬物複合体のハシリで、2000年に米国で承認されたが、深刻な肝毒性が表面化する一方で薬効確認試験がフェールしたため、FDAの要請に基づきメーカーが自主的に販売を中止した。その後、研究者主導試験が成功、昨年、改めて承認された。日本は05年にモノセラピーが承認され、米国販売中止後も販売が継続されており、用量が多すぎるままである。

日米と異なりEUは最初は承認しなかったので、今回が名実ともに初承認になる。

リンク: ファイザーのプレスリリース

BMS、オプジーボの固定用量がEUでも承認
(2018年4月25日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の新用量がEUに承認されたと発表した。従来は患者の体重に合わせて決定していたが、6種類の癌にモノセラピーを施行する時は240mgを2週間おきに30分点滴静注することができる。悪性黒色腫と腎細胞腫のモノセラピーは480mgを4週間おきに60分点滴静注することも可能。

MSDのKeytruda(pembrolizumab)も固定用量が承認されており、高価な薬を使い残す無駄の解消に役立とう。Keytrudaの投与頻度は3週毎なので、一部の適応ではOpdivoの利便性が上回ることになる。

リンク: BMSのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDA、ラミクタールの稀な血液疾患副作用を警告
(2018年4月25日発表)

FDAは、Lamictal(lamotrigine、和名ラミクタール)のHLH(血液貪食リンパ組織球増数症)リスクに関する警告を発出した。94年の初承認以来、8例がFDAに報告されている。年一件足らずの極稀な有害事象ということになるが、広く認知されていない有害事象は報告されないことが多いので、油断はできない。早く治療すれば死亡リスクを削減できるので、その意味でも、内容を理解しておくことが重要だ。

HLHの判定は、診断基準に記載されている複数の症状のうち幾つ当てはまるかで決する。Lamictalの症例報告で比較的多いのは、発熱、血小板減少症、高フェリチン血症、低フィブリノーゲン血症など。

リンク: FDAの安全性情報





今週は以上です。

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