2017年11月26日

2017年11月26日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ロシュ、Tecentriqの肺炎試験成功 
  • ロシュ、Hemlibraの血友病試験成功 
  • サイトキネティックス、ALSの第三相はフェール 
  • バイエル、吸入用抗生物質の第三相がフェール 
  • Acorda、A2A受容体阻害剤の開発を中止 
  • JNJ、ダラザレックスの適応拡大を申請 
  • HIV/AIDSの二剤合剤が承認 
  • JNJ、抗IL-23抗体がEUで承認 


【新薬開発】


ロシュ、Tecentriqの肺炎試験成功
(2017年11月20日発表)

ロシュは、Tecentriq(atezolizumab)の第三相肺癌試験、IMpower150のPFS(無進行生存期間)解析が成功したと発表した。データは未公表。欧米の承認審査機関に結果を提出する予定。

TecentriqはPD-L1を標的とするヒト化抗体で、定常領域の最適化も行われている。16年に米国で転移性尿路上皮癌の一次治療、そして非小細胞性肺癌の二次治療に承認された。日本でも後者の適応で薬食審医薬品第二部会を通過したところ。

IMpower150試験は、末期非扁平上皮非小細胞性肺癌の一次治療を受ける1202人を組入れて、carboplatin、paclitaxel、Avastin(bevacizumab)の三剤併用レジメンと更にTecentriqも使う四剤併用のPFSと全生存期間を検討したもの。全ユニバースの解析と、Teffと呼ばれる遺伝子署名を持つサブグループの解析の両方が成功した。

共同主評価項目である全生存期間の解析は未成熟だが数値は好ましいものである模様。次の解析は18年上期に行われる。

この試験では、carboplatin、paclitaxel、Tecentriqの三剤を用いる群も設定されたが、アルファが配分されていない模様で、検出力なしとのこと。

それでも、一群400例程度なので治験の規模としては十分。全生存の次回解析が有意でなくても良い方向に向かっているようならば、米国だけでなく欧州でも承認される可能性があるのではないか。

扁平上皮非小細胞性肺癌を対象とした第三相試験は別途進行中。

リンク: ロシュのプレスリリース

ロシュ、Hemlibraの血友病試験成功
(2017年11月20日発表)

ロシュは、Hemlibra(emicizumab-kxwh)の第三相試験成功を発表した。7月に日本で、11月には米国でも承認された抗第IX因子/第X因子ヒト化二重特異性抗体で、現在の適応はA型血友病で遺伝子組換え型第VIII因子に反応しないインヒビター(抗第VIII因子抗体)保有患者だが、今回のHAVEN 3試験はインヒビターを持たない12歳以上の患者における出血予防効果をルーチン予防を行わない群と比較したもの。適応拡大申請に向かうだろう。

承認されている用量用法は最初の4回は3mg/kg、その後の維持用量は1.5mg/kgを週一回皮注だが、今回は維持用量が3mg/kgを二週間に一回投与する群も設定された。出血リスクが高いのに何もしない群が相手なので当然と言えば当然だが、両用量とも出血頻度が有意に減少した。

第VIII因子によるルーチン予防を前から施行していた患者は維持用量1.5mg/kgを週一回の第4の群に割付けられたが、第VIII因子を使っていた頃より出血頻度が減少した。直接比較試験ではないので第VIII因子より予防効果が高いかどうかは分からない。

インヒビターを持たない患者は遺伝子組換え型第VIII因子という予防手段が既に存在するので、インヒビターを持つ患者よりも普及のハードルが高そうだ。もし直接比較試験で効果や忍容性が優れているようなら、追い風になるだろう。

リンク: ロシュのプレスリリース

サイトキネティックス、ALSの第三相はフェール
(2017年11月21日発表)

サイトキネティックス(Nasdaq:CYTK)は、CK-2017357(tirasemtiv)の第三相ALS(筋萎縮性側索硬化症)試験がフェールしたと発表した。主評価項目である24週肺活量(SVC)だけでなく、二次的評価項目も全てフェールした。中高用量群に割付けられた、よく忍容して減量しなかった患者は偽薬との差が最も大きかったが、それでも有意水準には達していないとのことなので、判断が難しい。

CK-2017357は速筋トロポニン活性化剤。同社は第二世代品のCK-2127107の第二相試験を行っており、今後はこちらにスイッチすることになりそうだ。CK-2017357より忍容性が良いとのことなので、ドロップアウトや減量による治療効果の希薄化が小さいかもしれない。

同社はアステラス製薬と速筋トロポニン活性化剤の研究開発提携を結んでおり、CK-2127107の共同開発販売権とCK-2017357のライセンスオプションを供与している。

リンク: サイトキネティックスのプレスリリース

バイエル、吸入用抗生物質の第三相がフェール
(2017年11月24日発表)

バイエルは、Amikacin Inhale(amikacin吸入用エアロゾル液)の第三相グラム陰性ベンチレータ関連肺炎試験がフェールしたと発表した。アミノグリコシド系抗生物質の肺分布をネクター社(Nasdaq:NKTR)のPDDS技術で大きく改善した薬剤だが、30日生存率は標準療法と偽薬の群と大差なかった。

リンク: バイエルのプレスリリース

Acorda、A2A受容体阻害剤の開発を中止
(2017年11月20日発表)

NY州の医薬品開発会社、Acorda Therapeutics(Nasdaq:ACOR)は、SYN115(tozadenant)の開発中止を決めた。パーキンソン病で第三相段階だったが、無顆粒球症や敗血症による死亡が複数発生。当初は、血球計算の頻度を週一回に増やすことで対処しようとしたが、ワークしなかった。

SYN115は選択的アデノシンA2A受容体阻害剤。16年にフィンランドのBiotie社を3.6億ドルで買収して入手した。15年に進行パーキンソン病患者のオフタイム削減効果を検討する第三相試験を開始したが、後期第二相とあわせて累計300人年の投与実績に対して敗血症が7例発生、5人が死亡した。7例中4例では無顆粒球症が見られた。

作用機序との関連は明確ではない。A2A受容体拮抗剤はMSDやVernalisも開発していたことがあったが、無顆粒球症リスクは見られなかったようだ。開発に成功したのは協和発酵キリンがノウリアスト(イストラデフィリン)をパーキンソン病治療薬として日本で販売しているだけなので、そのデータも検討する必要があるのではないか。

リンク: Acordaのプレスリリース


【承認申請】


JNJ、ダラザレックスの適応拡大を申請
(2017年11月21日発表)

ジョンソンエンドジョンソンは、Darzalex(daratumumab、和名ダラザレックス)を多発骨髄腫の一次治療に用いる適応拡大を欧米で承認申請した。

ジェンマブからライセンスした抗CD38完全ヒト化抗体で、15年に米国で多発骨髄腫の四次治療薬として承認された。日本でも今月、薬価収載。

一次治療のエビデンスはALCYONE試験。自家造血幹細胞移植に適さない多発骨髄腫のフロントライン治療として、JNJ/武田薬品のVelcade(carfilzomib)とmelphalan、prednisoneを併用するVMPレジメンと更にDarzalexも併用する群のPFS(無進行生存期間)を比較したもので、中間解析でハザードレシオ0.50、95%信頼区間0.38-0.65となり成功認定された。

リンク: JNJのプレスリリース(米国申請)
リンク: JNJのプレスリリース(EU申請)


【承認】


HIV/AIDSの二剤合剤が承認
(2017年11月21日発表)

ジョンソンエンドジョンソンは、FDAがJulucaをHIV/AIDSの維持療法として承認したことを発表した。欧州でも承認審査中。

塩野義製薬が創製し欧米ではViiVヘルスケア(GSK、塩野義、ファイザーのHIV/AIDS合弁)が販売するインテグラーゼ・ストランド・トランスファー阻害剤、Tivicay(dolutegravir)と、ジョンソンエンドジョンソンの非核酸系逆転写阻害剤、Edurant(rilpivirine)の活性成分の合剤で、標準的な3~4剤併用療法を受けてウイルス抑制に成功した患者が適応になる。二剤合剤で他の薬を併用しなくても良いレジメンは初。

リンク: JNJのプレスリリース

JNJ、抗IL-23抗体がEUで承認
(2017年11月23日発表)

ジョンソンエンドジョンソンは、Tremfya(guselkumab)がEUで中重度乾癬治療薬として承認されたと発表した。IL-23のp19サブユニットに結合する完全ヒト化抗体で、臨床試験では奏効率がTNF阻害剤のHumira(adalimumab)より有意に高かった。米国は7月に承認。日本でも4月に承認申請された。

リンク: JNJのプレスリリース






今週は以上です。

_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/_/

0 件のコメント:

コメントを投稿