2017年9月18日

2017年9月18日


【ニュース・ヘッドライン】

  • 死ね、デニース 
  • 抗IL-4Rアルファ抗体は喘息症にもある程度の効果 
  • ヌーカラはCOPDにもある程度の効果 
  • ビデュリオンは心血管リスクを高めない 
  • イクスタンジ、非転移性去勢抵抗性前立腺癌試験が成功 
  • アッヴィのJAK阻害剤もリウマチ試験成功 
  • 黒色腫アジュバント試験のデータ発表 
  • ザイティガを転移性前立腺癌に適応拡大申請 
  • CHMPがPARP阻害剤などの承認を支持
  • FDA諮問委員会がGSKの帯状疱疹ワクチンを支持 
  • バイエルのPI3K阻害剤が米国で承認 
  • Ocalivaのドクターレター 


【今週の話題】


死ね、デニース
(2017年9月11日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、慢性C型肝炎治療薬JNJ-4178の開発を中止すると発表した。Olysio(和名ソブリアード)の活性成分であるNS3/NS4Aプロテアーゼ阻害剤simeprevirとNS5Bポリメラーゼ阻害剤AL-335、そしてNS5A阻害剤ACH-3102(odalasvir)の三剤合剤で後期第二相段階だったが、優れた類薬が既に複数販売されていることや市場の成長が見込み難いことに鑑みたのだろう。今後はB型肝炎治療薬の開発に経営資源をシフトする。

慢性C型肝炎治療薬の研究開発は、米国政府の支援とゲノム技術の進歩に後押しされて、開花。C型肝炎ウイルスのゲノムが解析され、増殖に必要な上記酵素を標的とするDAA(直接作用性抗ウイルス剤)が、2011年承認のtelaprevirを皮切りに、続々と登場した。

近年の三剤配合薬はSVR12(治療終了後12週間経ってもウイルスが検出されない、持続的ウイルス学的奏功率)が90%を超えるものが少なくない。ウイルスはどこかに隠れてしまうことがあり完全に駆除するのは難しいが、C型肝炎の場合はSVR12ニアリーイコール完治と考えられており、大変重要な成果だ。

一方、今から新薬を開発して既存薬の効果を上回るのは容易ではないだろうし、何とか発見しても発売する頃には治療すべき患者が減っている可能性が高い。第二相試験の発表を見聞きする度に、まだやるのかと思っていたが、今回のJNJの発表は、遂にXデイが来たことを意味する。

病気の進行を抑える薬は長く使ってもらえるが、治癒する薬はやがて使われなくなる。製薬業界のジレンマだ。我々第三者としては、成果を正しく評価し称賛することで応えたい。18世紀ロシアの政治家、ポチョームキンは、デニース・フォンヴィージンの風刺劇の初演を見て、こう言った。「死ね、デニース、これ以上のものはもはや書けまい」(アントン・チェーホフ、『犬を連れた奥さん』、神西清訳より)

リンク: JNJのプレスリリース


【新薬開発】


抗IL-4Rアルファ抗体は喘息症にもある程度の効果
(2017年9月11日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィは、Dupixent(dupilumab)の第三相難治性喘息症試験が成功したと発表した。適応拡大申請する予定。IL-4受容体のアルファサブユニットを標的とする抗体医薬で、IL-4やIL-13をブロックする。今年3月に米国で中重度アトピー性皮膚炎治療薬として承認されたところ。

このLiberty Asthma Quest試験(NCT02414854)は、ICS(吸入コルチコステロイド)を含む二種類のコントローラーを使っても発作を十分に管理できない患者1902人を組入れて、Dupixentを追加する効果を偽薬と比較した。試験薬は200mg群と300mg群が設定された(二週毎の皮注、初回は倍量投与)。

結果は、300mg群の重度喘息発作頻度(年率)が偽薬比46%減少し、FEV1は12週時点で9%、130mLの群間差があった。どちらも統計的に有意で、好酸球が多いサブグループのほうが効果が高かった。この点ではNucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)などの抗IL-5抗体と似ている。主な有害事象は注射箇所反応。

200mg群のデータは300mgと概ね同様とのことなので、敢えて300mgを使う必要はないかもしれない。

第三相はこの一本だけ。後期第二相試験の後にFDAと相談の上、一本だけで承認申請することを決めた経緯がある。抗癌剤の第一相試験で組入れが最終的に200例を超えたり、後期第二相と第三相試験の二本を薬効のエビデンスとして承認申請したり、今日では相と実態が噛み合わなくなっている。

難治性喘息症の治療薬では、アムジェンとアストラゼネカが共同開発している抗TSLP(胸腺間質リンパ球増殖因子)抗体、AMG 157/MEDI9929(tezepelumab)の後期第二相試験の結果が先日発表された。喘息発作頻度が6~7割減少と、効果が大変高く注目できる。TSLPは胸腺など上皮細胞が分泌するサイトカインで、IL-4、IL-5、IL-13の川上で機能し、アレルギー性炎症のマスタースイッチとも言われているようだ。データ面でもメカニズム面でも、Dupixentが霞んでしまった。

リンク: 両社のプレスリリース

ヌーカラはCOPDにもある程度の効果
(2017年9月12日発表)

グラクソ・スミスクラインの抗IL-5抗体、Nucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)は、重度好酸球性喘息症のアドオン薬として日米欧で承認されている。COPD(慢性閉塞性肺疾患)の維持療法薬としても開発されており、第三相試験二本の結果がNew England Journal of Medicine誌に刊行された。二連勝ではないが、GSKは承認申請する予定。

METREX試験は、主評価項目の一つである好酸球増多フェノタイプの解析が成功。100mgを4週毎皮注したところ、増悪頻度が年1.40回と偽薬群の1.71回を下回った。率比は0.82、p=0.036で、ギリギリ統計的に有意。しかし、もう一つの主評価項目である全ユニバースの解析は率比0.98でフェールした。一方、好酸球増多だけを組み入れたMETEOは率比0.80、p=0.068とフェール。この試験だけ設定された300mg群も率比0.86、p=0.14に留まった。

METREX試験では好酸球フェノタイプに対する効果が伺われたがMETEO試験では再現されなかったことになる。METEOの100mg群のほうが率比が若干低く、症例数は大差ないのにp値が悪いのは奇妙だが、この二本の試験は多重性の調整手法が異なるので、その影響かもしれない。細かいことを忘れて健全な常識を適用すれば、p値が0.036でも0.068でもボーダーライン上であることに変わりない。効果が解析計画の前提(増悪頻度が30~35%減少)より弱かったのだから、期待外れの結果と言わざるを得ないだろう。

リンク: GSKのプレスリリース

ビデュリオンは心血管リスクを高めない
(2017年9月14日発表)

アストラゼネカが販売する長期作用性GLP-1作用剤、Bydureon(exenatide、和名ビデュリオン)の心血管アウトカム試験の結果がEASD欧州糖尿病研究学会とNEJM誌で発表された。MACE(主要有害心血管イベント)の偽薬比ハザードレシオは0.91、95%信頼区間0.83~1.00となり、非劣性解析は成功したが優越性解析はフェールした。リスクは高まらないが有意に減るわけでもないという良くも悪くもない内容だ。

ノボ ノルディスクのGLP-1作用剤、Victoza(liraglutide)は有意に減らしたので物足りなさが残るが、Victozaのハザードレシオの95%信頼区間は0.78~0.97なので、かなり重なっている。全死亡ハザードレシオはVydureonが0.86(95%信頼区間0.77~0.97)、Victozaは0.85(同0.74~0.97)なので、これも大差ない。

それでも、ノボと異なり心血管リスクを削減する薬として販促することができないので、紙一重、二重の差が大きなインプリケーションを持つ。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

イクスタンジ、非転移性去勢抵抗性前立腺癌試験が成功
(2017年9月14日発表)

アステラス製薬とファイザーは、Xtandi(enzalutamide、和名イクスタンジ)のPROSPER試験が成功したと発表した。先般、治験プロトコルを変更したおかげで治験完了が2年早まった。メカニズムの異なる他の新薬との開発・販売競争が激化しているので、今までより早い段階で使えるようになれば販促の追い風になるだろう。

前立腺癌はアンドロゲン除去療法(ADT)が有効だが、治療を続けるうちにPSA値が再び上昇することがあり、タイミングを見て他の薬を追加したりスイッチしたりする。典型的には転移して症状が重くなった段階でdocetaxelのような化学療法薬にスイッチする。Xtandiは化学療法の次に使う薬として最初の承認を取り、その後、転移したり症状が出始めた後に化学療法より前に用いることが承認された。抗癌剤は出番が前の段階になればなるほど市場性(患者数x投与期間)が大きくなる。

今回のPROSPER試験は、転移も症状もない患者に追加投与する用法を偽薬と比較したもので、無転移生存期間の延長が達成されたとのこと。データは未発表。今後、承認申請に向かうことになりそうだ。

リンク: アステラスのプレスリリース(和文)

アッヴィのJAK阻害剤もリウマチ試験成功
(2017年9月11日発表)

アッヴィ(NYSE:ABBV)は、ABT-494(upadacitinib)の第三相リウマチ性関節炎試験成功を発表した。バイオ薬に不耐又は反応不十分な患者を偽薬、15mg、30mgの各群に無作為化割付して12週間経口投与したところ、ACR20が各群28%、65%、56%となり、両用量とも偽薬群を有意に上回った。

深刻有害事象の発生率は各群ゼロ、5%、7%。死亡者は各群ゼロ、1人、1人となっており、15mgの症例は死因不明、30mg症例は肺塞栓や心不全などを発症していたとのことなので、試験薬との関係を疑う余地がありそうだ。症例数が各群160人強と少ないので、全第三相試験のプール分析結果が明らかになるまで何とも言えない。

ABT-494はJAK1阻害剤。ファイザーのXeljanz(tofacitinib citrate、和名ゼルヤンツ)はJAK1と3に選択的、インサイト/イーライリリーのJakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)はJAK1と2に選択的と、選択性が多少異なるが、副作用リスクはそんなに変わらないように感じられる。本来の作用である免疫抑制が強力なので感染症や癌のリスクも警戒しなけれなならず、その意味でも、安全性はプール分析のデータ発表待ちだ。

リンク: アッヴィのプレスリリース

黒色腫アジュバント試験のデータ発表
(2017年9月10日発表)

ステージIIIbからIVの黒色腫を完全切除した後に薬物療法で再発を防ぐ、アジュバント試験の結果が複数、発表された。まず、BMS/小野薬品の抗PD-1抗体、Opdivo(nivolumab、オプジーボ)をBMSの抗CTLA-4抗体、Yervoy(ipilimumab)と比較したCheckMate-238試験。中間解析で目的を達成したことが7月に発表済みだが、ESMO(欧州臨床腫瘍学会)でデータが発表された。無再発生存期間のハザードレシオは0.65、97.56%信頼区間は0.51~0.83だった。

有害事象による治験離脱率はOpdivoが9.7%、Yervoyは42.6%と大きな差があった。治療関連死亡はOpdivoがゼロ、Yervoyは2人(被験者数は両群合わせて906人)。

リンク: BMSのプレスリリース(9/10付け)

次に、ノバルティスのBRAF阻害剤Tafinlar(dabrafenib、和名タフィンラー)とMEK1/2阻害剤、Mekinist(trametinib、和名メキニスト)の併用。BRAF-V600E/K変異を持つステージIII黒色腫の完全切除後アジュバント試験で、無再発生存期間の偽薬比ハザードレシオが0.47、95%信頼区間0.39~0.58となった。3年無再発生存率は58%で偽薬群の39%を上回った。

全生存の解析は、ハザードレシオ0.57、p=0.0006と良い数字が出たが、事前に設定された中間解析の閾値である0.000019を上回ったため、統計的に有意とは言えない。

有害事象による治験離脱は26%と偽薬群の3%をだいぶ上回った。

リンク: ノバルティスのプレスリリース(9/11付け)

最後に、ロシュのBRAF阻害剤Zelboraf(vemurafenib、和名ゼルボラフ)はフェールした。ノバルティスの試験との違いは、単剤投与であることと、ステージIIIだけでなくIICも対象であったこと。但し、後者が原因とは考え難い。事後的解析によると、IICからIIIBまでのサブグループの無病生存ハザードレシオは0.54、IIICは0.80となっており、進行した癌に対する効果が小さかった。

リンク: ロシュのプレスリリース(9/11付け)


【承認申請】


ザイティガを転移性前立腺癌に適応拡大申請
(2017年9月14日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはZytiga(abiraterone acetate、和名ザイティガ)の適応拡大をFDAに申請した。6月にASCO米国臨床腫瘍学会で結果発表されたLATITUDE試験に基づくもので、高リスク転移性前立腺癌にアンドロゲン除去療法及びprednisoneと併用する。臨床試験ではアンドロゲン除去療法だけの群と比べた全生存ハザードレシオ0.62と有意に優れていた。

リンク: JNJのプレスリリース


【承認審査・委員会】


CHMPがPARP阻害剤などの承認を支持
(2017年9月15日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、9月の会議で、PARP阻害剤や抗IL-23抗体などの新薬承認などに肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域などで承認されることになる。一方、Opdivo(nivolumab)については、BMSが肝細胞腫適応拡大申請を撤回する意向を7月に連絡していたことが判明した。

リンク: EMAのプレスリリース

肯定的意見を得た新薬は、まず、Tesaro(Nasdaq:TSRO)のZejula(niraparib)。遺伝子の複製にはミスが付き物だが、通常は修復メカニズムが機能する。二種類のメカニズムの一つに係るポリ(ADP-リボーゼ)ポリメラーゼ(PARP)を阻害するのがZejulaで、PARPとDNAの複合体がDNAに損傷を与え、細胞死を誘導する。再発高悪性度卵巣癌で白金薬レジメンに部分反応以上した患者の維持療法として用いる。

PARP阻害剤は、もう一つの修復メカニズムが十分に機能しないBRCA1/2変異を持つ患者の乳癌や卵巣癌に有望と考えられてきたが、Zejulaの承認の根拠となった試験では、生殖細胞系BRCA変異の有無を問わず、進行・死亡リスクを大きく削減した。

Zejulaは米国で今年3月に承認。アストラゼネカなど三社のPARP阻害剤のうち、現時点では最も適応患者数が多い。乳癌の適応拡大試験も進行中。日本と韓国などの権利は武田薬品が7月に取得。

リンク: Tesaroのプレスリリース

Steba biotechのTookad(padeliporfin)は、前立腺癌のフォトダイナミック・フォーカル・セラピーに用いる光感受性物質。投与後にターゲット部位にレーザーを照射すると、活性酸素が血管閉塞などを誘導、数日内に焦点的壊死をもたらす。主な副作用は泌尿器や再生産系の障害。初治療、片側性、低リスク、余命10年以上などの条件を満たす患者が適応になる。前立腺癌は進行が遅く手術や放射線療法が必ずしも必要ではないケースが少なくない。低侵襲性の焦点治療手段が増えれば多くの患者にメリットがありそうだ。

Stebaはルクセンブルク籍のフランス企業である模様。Tookadはイスラエルのワイツマン科学研究所の技術を用いて創製、オックスフォード大学やメモリアル・スローン・ケタリングがんセンターなどと臨床開発を進めた由。

リンク: Stebaのホームページ

ジョンソン・エンド・ジョンソンのTremfya(guselkumab)は抗IL-23p19サブユニットを標的とするHuCAL抗体。中重度乾癬症の全身的療法で、直接比較試験でPASI90やIGA改善率がHumira(adalimumab)を有意に上回った。米国では7月に承認、日本でも4月に承認申請された。

リンク: JNJのプレスリリース

グラクソ・スミスクラインのTrelegy Elliptaはコルチコステロイドのfluticasone furoate、長期作用性ムスカリン阻害剤umeclidinium、長期作用性ベータ2作用剤vilanterolを配合した吸入用薬で、COPDのステップアップセラピーに用いる。

リンク: GSKのプレスリリース

ムンディファーマはオピオイド関連の二剤が肯定的意見を得た。Nyxoidはnaloxoneの点鼻用新製剤。オピオイド過剰摂取の救急治療に用いる。もう一つはスエーデンのOrexo社からライセンスしたZubsolv(buprenorphine、naloxone)。オピオイド依存の治療に用いる舌下崩壊錠。乱用者は即効性を求めて注射で使う傾向があるが、Zubsolvを分解するとnaloxoneがオピオイドの作用を拮抗するため十分な効果が得られない。

リンク: Orexoのプレスリリース

スペインの血液製剤会社であるInstituto Grifols(MCE:GRF)のVeraSealはヒト・フィブリノーゲンとヒト・トロンビン。液状で、手術中の止血に用いる。

一方、否定的意見が出たのはSovrima(idebenone)の適応拡大。往年の脳循環改善薬アバンの活性成分で、欧州では例外的条項に基づいて15年にLHON(レーバー遺伝性視神経萎縮症)治療薬として承認された。他にも様々なミトコンドリア疾患に承認申請され、否定的意見を受けている。今回はデュシェンヌ型筋ジストロフィーで呼吸機能が低下し始めた、ステロイドを服用していない患者に承認申請されたが、CHMPは、効果が限定的でQOLも改善せず、治験の実施方法や解析方法にも懸念ありと判定した。

米国で承認申請するためにステロイド利用者を組入れた臨床試験が進行中なので、まだチャンスは残っている。

BMSはOpdivo(nivolumab)を肝細胞腫の二次治療に用いる適応拡大申請を行っていたが、7月に撤回する意向をCHMPに連絡していたことが明らかになった。根拠となった第二相試験は対照群がなく、外挿に必要な情報も不足しているため、CHMPは否定的な見方をしていた。尤もな意見で、特に意外感はない。

FDA諮問委員会がGSKの帯状疱疹ワクチンを支持
(2017年9月13日発表)

FDAのワクチン及び関連生物学的製品諮問委員会(VRBPAC)は、グラクソ・スミスクラインが承認申請した帯状疱疹ワクチン、Shingrixの承認を全員一致で支持した。既存の弱毒化生ワクチンと異なり、抗原はウイルスの糖タンパクEだけで、アジュバントはAS01-Bを用いている。50歳以上がヘルペス感染後神経痛などの発症を防ぐために、2~6ヶ月おいて2回、筋注する。臨床試験では免疫力が低下してワクチンが効き難い70歳以上でも高い予防効果を示した。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認】


バイエルのPI3K阻害剤が米国で承認
(2017年9月14日発表)

バイエルは、FDAがAliqopa(copanlisib、開発コードBAY 80-6946)を濾胞性リンパ腫の三次治療薬として加速承認したと発表した。第二相単群試験では、ORR(客観的反応率)が59%、メジアン反応持続期間は12.2ヶ月、完全寛解率は14%だった。深刻有害事象が26%の患者で発生した。

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)のZydelig(idelalisib)と同じphosphatidylinositol-3-kinase(PI3K)阻害剤で、B細胞の活性化、増殖、生存に必要な酵素を阻害する。ZydeligがPI3Kデルタ選択的であるのに対して、Aliqopaはアルファとデルタをベータ比10倍優先的に阻害する。Zydeligは肺炎など深刻な感染症のリスクが見られるが、Aliqopaも同様なので要注意。

リンク: バイエルのプレスリリース

【医薬品の安全性】


Ocalivaのドクターレター
(2017年9月8日発表)

インターセプト・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:ICPT)は、PBC(原発性胆汁性肝硬変)の治療薬でNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)治療薬としても開発中のファルネソイドX受容体(FXR)アゴニスト、Ocaliva(obeticholic acid)について、Dear Health Care Professionalレターを送付した。

16年の発売後に、中重度肝機能低下患者に過剰投与して肝不全が起きた致死例を含む症例が報告されていること、中重度肝機能低下患者にはレーベル通りに間歇投与すること、そして肝毒性の兆候が見られたら速やかに減量・中止することを伝えた。

Ocalivaは肝機能を問わず肝毒性があり、定期的に肝機能検査を行う必要がある。中重度肝機能低下患者では血漿濃度が著増するため、治療開始時は5mgを毎日ではなく週一回に抑え、増量する場合も10mg毎日ではなく10mg週二回までとなっている。重要な副作用なので医療従事者が無視して過剰投与したとは考え難い。PBCが悪化して肝機能が低下し、減量する前に副作用が発生してしまったのではないだろうか。肝臓治療用なのに肝臓副作用を持つ薬のジレンマだ。

DHCPレターにも記されているように、投与を止めても病気は直ぐには増悪しないが、肝副作用の兆候を軽視して続行すると深刻な転帰になりかねない。治療の便益とリスクを慎重に評価すべき薬なのだろう。

Ocalivaは欧米で2016年に承認。日本では大日本住友製薬が開発中。

リンク: Ocalivaの米国医療従事者向け情報サイト(ポップアップからDHCPレターをダウンロードできる)





今週は以上です。

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