2017年3月26日

2017年3月26日号


【ニュース・ヘッドライン】



  • ジャズ、DNRIの第三相OSA試験が成功 
  • イーライリリーのCDK4/6阻害剤も第三相成功 
  • ノバルティス、serelaxinの薬効確認再試験はフェール 
  • 抗IL-23p19抗体がEUで承認申請 
  • CHMPが希少疾患用薬などの承認に肯定的意見 
  • Array社、MEK阻害剤の承認申請を撤回、併用で申請へ 
  • メルクの抗PD-L1抗体が米国で承認 
  • ニューロンのパーキンソン病薬が米国でも承認 
  • EMAが一部のジェネリック薬の承認停止を勧告 

  • 【新薬開発】


    ジャズ、DNRIの第三相OSA試験が成功
    (2017年3月20日発表)

    ジャズ・ファーマスーティカルズ(Nasdaq:JAZZ)は、JZP-110の第三相OSA(閉塞性睡眠時無呼吸)試験の成功を発表した。ナルコレプシー試験の結果を待って年内に承認申請する予定。

    JZP-110は選択的ドパミン・ノルエピネフィリン再取込阻害剤(DNRI)で、14年にAerial BioPharmaから世界開発生産販売権を取得したもの。第三相試験でOSA患者の眠気や覚醒度を改善する効果を検討したところ、37.5~300mgの用量域で偽薬比有意な改善が見られた由。詳細は6月のAPSSで発表される予定。

    リンク: ジャズのプレスリリース

    イーライリリーのCDK4/6阻害剤も第三相成功
    (2017年3月20日発表)

    イーライリリーはLY2835219(abemaciclib)の第三相乳癌ホルモン療法併用試験が成功したと発表した。第2四半期(4~6月)に第二相試験に基づき承認申請する予定だが、今回の成功を受けて第3四半期に併用を追加申請する考えだ。

    abemaciclibは細胞周期進行に係るCDK4とCDK6を阻害する経口剤で、ファイザーが15年に発売したIbrance(palbociclib)、ノバルティスが今月、米国で承認を取得したKisqali(ribociclib)に次ぐサード・イン・クラス。先行品は三週間連続服用して一週間休むスケジュールだが、abemaciclibは好中球減少症がDLT(投与制限的毒性)にならず、連続服用可能なことが特徴。効果が高い可能性があり、データ発表が待望される。

    リンク: イーライリリーのプレスリリース

    ノバルティス、serelaxinの薬効確認再試験はフェール
    (2017年3月22日発表)

    ノバルティスは、Reasanz(serelaxin)の第三相急性心不全試験がフェールしたと発表した。死亡リスクを削減する効果も、心不全の悪化を抑制する効果も、確認されなかった。最初の第三相と同様であり、治験登録によればもう一本進行中だが、好結果は期待できなくなった。

    serelaxinは、relaxinという血管拡張作用を持つぺプチドホルモンの遺伝子組換え品。第三相試験で呼吸困難を改善したが、効果は小さく、もう一つの主評価項目である中程度以上症状改善成功率はフェールした。死亡リスク削減効果も見られなかった。開発した会社を買収したノバルティスが欧米で承認申請に踏み切ったが、臨床的転帰を改善する効果が小さいことや、解析にインピュテーション(欠落値を推定値で補完)が多用されたこと、同時に施行された標準療法に群間の偏りがあることなどから、承認されなかった。

    学会で大々的に発表され好評を得た臨床試験がこのような結果になったのは残念だが、学会発表や論文に記されていることはごく一部なので第三者が細部に潜む悪魔を発見することは困難である。一本目の試験はノバルティスが子会社化する前に開始されており、ベンチャー企業が陥りがちな頑強性を軽視した治験デザインになってしまった。

    リンク: ノバルティスのプレスリリース

    【承認申請】


    抗IL-23p19抗体がEUで承認申請
    (2017年3月24日発表)

    スペインのAlmirallとインドのSun Pharmaは、tildrakizumabをEUで承認申請し受理されたと発表した。Sunが14年にMSDから世界開発販売権を取得した抗IL-23p19抗体で、中重度プラク乾癬の治療に用いる。第三相試験では12週間でPASI75奏効率が61~64%となり偽薬やetanercept(Enbrel)を有意に上回った。

    乾癬では様々なインターロイキンを標的とする抗体医薬が輩出している。ジョンソン・エンド・ジョンソンの抗IL-12/23p40抗体Stelara(ustekinumab)、ノバルティスの抗IL-17A抗体Cosentyx(secukinumab)などである。

    Stelaraはp40サブユニットに結合するためIL-23だけでなくIL-12もブロックしてしまうが、p19ユニットならIL-23だけなのでIL-12阻害による副作用を回避できる可能性があり、開発が活発化している。ジョンソン・エンド・ジョンソンが一足先にCNTO 1959(guselkumab)を昨年、欧米で承認申請した。ベーリンガー・インゲルハイムもアッヴィと提携してBI 655066(risankizumab)の第三相試験を実施中。

    リンク: 両社のプレスリリース

    【承認審査・委員会】


    CHMPが希少疾患用薬などの承認に肯定的意見
    (2017年3月24日発表)

    EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、3月の会議で以下の新薬と適応拡大の承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

    リンク: EMAのプレスリリース

    今月は希少疾患用薬が多い。まず、ウイーンのアペイロン・バイオロジクス社が承認申請したApeiron(dinutuximab beta)。例外的環境条項に基づいて、高リスク神経芽腫の12歳以上の患者に用いることが支持された。神経芽腫細胞などで発現するGD2抗原を標的とするキメラ抗体。日本では14年に第一相が開始された模様だ。

    次に、ミューニッヒの製薬会社であるbene-Arzneimittelが申請したElmiron(pentosan polysulfate sodium)。glomerulation(五月雨様出血)やHunner潰瘍を伴う膀胱痛症候群の治療に用いる。

    ポリ硫酸ペントサンナトリウムは同社の創業者であるBenend博士が1947年に合成した物質で、日本では旭化成ファーマが変形性関節症試験を行うなど、様々な用途がある模様。膀胱痛症候群(間質性膀胱炎)における作用機序は損傷した膀胱粘膜のグリコサミノグリカン層に結合し修復をもたらすとのこと。

    Axumin(fluciclovine (18F))はMRI造影剤。膀胱癌でアップレギュレートされているアミノ酸トランスポータによって細胞内に取り込まれる性質を持っており、治癒的切除術を受けた患者のPSA値が上昇した時の、再発の画像診断に用いる。

    GEヘルスケアから英国のBlue Earth Diagnostics社がライセンスしたもの。14年にウェルカム・トラスト系のファンドなどが出資して設立した会社で、社名はウェルカム社(後にグラクソが買収)の創立者が少年時代を過ごした米国ミネソタ州の地区名に因んでいる由だ。

    リンク: Blue Earth Diagnosticsのプレスリリース

    ノボ ノルディスクのRefixia(nonacog beta pegol)はB型血友病の出血治療・予防薬。第IX因子に糖ポリエチレングリコールを結合して半減期を5倍に伸ばしたもので、出血リスクが高い患者のルーチン予防に用いる場合、週一回投与で足りる。

    リンク: ノボ ノルディスクのプレスリリース

    ファイザーのTrumenbaはB群髄膜炎菌ワクチン。B群は様々な株があるが、TrumenbaはサブファミリーAとBのfHbp(H因子結合蛋白)を抗原としている。B群髄膜炎菌による侵襲性髄膜炎を予防する目的で10歳以上に接種する。米国では14年に承認。

    リンク: ファイザーのプレスリリース

    適応拡大では、MSDとBMSの抗PD-1抗体が夫々、異なった用途で支持された。まず、MSDのKeytruda(pembrolizumab)は、再発難治性古典的ホジキンリンパ腫の適応拡大。ASCT(自家幹細胞移植)とbrentuximab vedotin(Adcetris)が無効になった患者に、200mgを3週間に一回、投与する。

    リンク: MSDのプレスリリース

    BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)は頭頸部扁平上皮腫で白金ベースのレジメンによる治療中・治療後に進行した患者に適応拡大。3mg/kgを2週間に一回投与する。第三相試験では延命効果が医師が選んだErbitux(cetuximab)などの薬を投与した群を有意に上回った。

    リンク: BMSのプレスリリース

    この二剤は用途開発が活発なので、今回の肯定的意見も含めてEUでの承認用途を整理すると、悪性黒色腫はモノセラピーに関してはどちらも承認、Yervoy(ipilimumab)併用はOpdivoだけだがOpdivo単剤と比べて上乗せ効果が期待できるのはPD-L1発現度が低い癌のみ。非小細胞性肺癌はKeytrudaはPD-L1陽性癌の二次治療と強陽性癌なら一次治療も可、Opdivoは陽性陰性を問わないが二次治療のみで、どちらも、EGFR活性化変異型はEGFR阻害剤、ALK変異型はALK阻害剤を先に使う。

    古典的非ホジキン型リンパ腫の適応内容は同じ、再発腎細胞腫はOpdivoのみ。頭頸部扁平上皮腫はOpdivoが先行したがKeytrudaも米国では承認されているので時間の問題だろう。

    最後に、Bial-Portela社の抗癲癇薬、Zebinix(eslicarbazepine acetate)は新患に単剤投与する用法追加が支持された。

    抗癲癇薬は有効な薬が既に数多く存在するため、偽薬だけを投与する群が設定されるモノセラピー試験を新患を組入れることは、かっては、忌避されていた。製薬会社が難治性の患者に追加投与するアジャンクト試験を行って承認を取れば、専門医はオフレーベルのままでも新患モノセラピー投与するというのが暗黙の合意であった。しかし、近年はキチンと承認を取るようになった。

    製薬会社がCHMPの薬効や安全性、生産体制などに対する懸念を解消できず申請撤回に至ったのは、まず、CTI BioPharma(Nasdaq:CTIC)のEnpaxiq(pacritinib)。臨床試験で骨髄線維症の脾臓肥大症状を改善する効果などが示されたが、CHMPは、他のJAK阻害剤と比べて効果が小さく、血小板減少リスクを持ち、臨床試験で出血や心臓疾患による死亡が対照群(医師が最善と考える治療を施行)より多かったため、承認に否定的だった。

    PTC Therapeutics(Nasdaq:PTCT)はTranslarna(ataluren)をナンセンス型嚢胞性線維症に用いる適応拡大申請を行っていたが、撤回した。薬効確認試験がフェールしたため。EUによると、Translarnaはアミノグリコシド系抗生剤やバンコマイシンの腎臓における効果を減弱させるため、嚢胞性線維症のように感染症を合併しやすい疾患に用いると腎臓有害事象が増加する懸念がある。

    Array社、MEK阻害剤の承認申請を撤回、併用で申請へ
    (2017年3月19日発表)

    Array BioPharma(Nasdaq: ARRY)はMEK阻害剤のMEK162(binimetinib)をNRAS変異陽性悪性黒色腫用薬として米国で承認申請していたが、撤回した。FDAが効果不十分と判定したため。第三相試験ではPFS(無進行生存期間)のdacarbazine対比ハザードレシオが0.62となり成功したが、メジアン値は2.8ヶ月対1.5ヶ月で差が小さく、全生存期間では有意差がなかった。

    MEK阻害剤はノバルティスやロシュがBRAF阻害剤併用試験を成功させている。ArrayもBRAF-V600変異型悪性黒色腫の第三相LGX818(encorafenib)併用試験を実施中で、LGX818の二種類の用量のうち450mg(一日一回投与)を併用した群は主評価項目のPFSがメジアン14.9ヶ月とvemurafenib(ロシュのBRAF阻害剤、Zelboraf)単剤投与群の7.3ヶ月を上回りハザードレシオ0.54であったことが既に発表されている。

    但し、LGX818単剤投与群との比較は有意差がなかった模様。ArrayはLGX818のもう一つの用量を投与した群の結果を待って承認申請する考え。

    第三相試験で一つの群だけ開票が遅れるのは盲検が毀損しかねない奇妙な話だ。安全性懸念が生じて低用量群を追加したのではないか。だとしたら、治験の全体像が明らかになるまで結論を留保したほうがよさそうだ。

    この二剤は当初のアウトライセンス先であるノバルティスがGSKの腫瘍学事業を買収してMEK阻害剤やBRAF阻害剤を入手したため、反トラスト規制をクリアするために、ライセンス返還となった。その後、欧州や南米、アジアの権利をPierre Fabreに供与している。

    リンク: Array社のプレスリリース

    【承認】


    メルクの抗PD-L1抗体が米国で承認
    (2017年3月23日発表)

    FDAは、Bavencio(avelumab)を転移性メルケル細胞腫用薬として承認した。メルケル細胞腫は進行の早い皮膚癌で、米国では年2500人が発症する。Bavencioはドイツのメルクがファイザーと共同開発した抗PD-L1完全ヒト化抗体で、第二相試験では全般的反応率が33%(完全反応率11%)、反応例の86%は6ヶ月以上持続した。加速承認なので別途、臨床試験を行って臨床的効用を確認する必要がある。

    PD-1/PD-L1をブロックする抗体医薬は特許の壁が低いようで応用分野が多いため開発競争が活発だ。PD-L1を標的とするものではロシュのTecentriq(atezolizumab)が昨年、尿路上皮細胞腫と非小細胞性肺癌の二次治療薬として承認されたのに次ぐセカンド・イン・クラスで、アストラゼネカのMEDI4736(durvalumab)も順調なら今年6月までに尿路上皮細胞腫で承認されるだろうから、1年の間に3剤が相次いで承認されることになりそうだ。

    メルケル細胞腫は用途としてはニッチだが、既存薬が承認されていない疾患なら迅速に承認を得ることが可能だ。適応拡大試験が成功し学会発表すれば、販売されている薬なら未承認でも普及が始まる。後発であることに変わりはないが、ビハインドは少しでも小さいほうが良い。

    リンク: FDAのリリース
    リンク: メルクとファイザーのプレスリリース

    ニューロンのパーキンソン病薬が米国でも承認
    (2017年3月21日発表)

    FDAは、イタリアのニューロン・ファーマスーティカルズ(SIX:NWRN)のXadago(safinamide)をパーキンソン病用薬として承認した。MAO-B阻害剤で、レボドパなどに十分反応しない患者のオフタイムを減らすために追加投与する。副作用はジスキネジア、傾眠、眩暈、起立性低血圧など。

    EUでは15年に承認されたが米国は申請手続きが書類目次や添付文書、利益相反情報などに関する不備という余り聞かない理由で何度も遅れ、結局、承認が2年遅れとなった。レーベルで特徴的なのは禁忌。重度肝障害に加えて、併用禁忌となるのが他のMAO阻害剤やオピオイド、SNRIなどの抗鬱剤、そしてOTC薬の成分でもあるデキストロメトルファン、ハーブの成分であるセイヨウオトギリソウと多彩。血圧上昇やセロトニン症候群のリスクがある模様だ。

    日本では15年にMeiji Seikaファルマが第2/3相試験を開始した。

    リンク: FDAのリリース
    リンク: ニューロンのプレスリリース(BusinessWire)

    【医薬品の安全性】


    EMAが一部のジェネリック薬の承認停止を勧告
    (2017年3月24日発表)

    EMAは、加盟国で承認されたジェネリック薬の一部について、承認停止を勧告した。インドのCRO会社であるMicro Therapeutic Research Labsが行った生物学的同等性試験の信頼性に疑問が生じたため。対象品目は、国毎にリストアップされているので重複があるかもしれないが、22頁、数百品目に及んでおり、製薬会社名も大手が数多く含まれていることが目を引く。

    きっかけは、オーストリアとオランダの当局が同社の二拠点を査察した時にGCP(臨床試験基準)違反が発覚したこと。データの不実表示や資料作成やデータ取り扱いの欠陥が判明した。これらの施設で12年6月から16年6月までに実施された試験のデータは受け入れられないと判断した。尚、効果不足や毒性を疑う根拠があるわけではないことをEMAは明記している。

    リンク: EMAのリリース
    リンク: EMAが販売停止勧告した薬のリスト(pdfファイル)
    リンク: EMAが販売継続可能と判定した薬のリスト(pdfファイル)




    今週は以上です。

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