2017年2月5日

2017年2月5日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗PCSK9抗体の心血管アウトカム試験が成功 
  • HIF2-PH阻害剤の貧血治療試験が成功 
  • キイトルーダ、FDAが尿路上皮癌適応拡大申請を受理 
  • オプジーボ、FDAが尿路上皮癌適応拡大を承認 
  • キイトルーダ、EUも非小細胞性肺癌一次治療を承認 
  • エベロリムス、結節性硬化症の癲癇治療でEU承認 


【新薬開発】


抗PCSK9抗体の心血管アウトカム試験が成功
(2017年2月2日発表)

アムジェンは、Repatha(evolocumab、和名レパーサ)の心血管アウトカム試験、FOURIERが成功し、主目的が達成されたと発表した。データは3月のACC米国心臓学会で発表される予定。

Repathaはプロタンパク転換酵素サブチリシン/ケキシン9型(PCSK9)を標的とする完全ヒト化抗体で、LDL受容体が零落しリソソームで分解されるのを妨げる。LDL-C値を50~60%削減する。スタチンの心血管アウトカム試験ではLDL-Cを下げれば下げるほど心血管リスクが低下する傾向が見られたため、高力価スタチン並みのLDL-C低下作用を持つPCSK9の治験結果が待望されていた。

FOURIERは、心筋梗塞、虚血性脳卒中、または症候性末梢動脈疾患でスタチンによる至適治療を受けLDL-Cが70mg/dL以上の患者27500人を組入れた第三相無作為化偽薬対照二重盲検試験で、140mgを二週間に一回または420mgを月一回皮注する群と偽薬皮注群の転帰を比較したもの。主評価項目は心血管死、非致死的心筋梗塞、非致死的脳卒中、不安定狭心症による入院、または冠血行再建術の複合評価項目。最初の三つのハード・エンドポイントだけをカウントする主要二次的評価項目の解析も成功した。

スタチンと同様にLDL-C低下と心血管リスク削減率が相関するとしたら、Repathaは40~50%のリスク削減率が期待できるのではないかと思われる。逆に、これくらいの効果がなかったら、価格を正当化できないだろう。

FOURIER試験の結果は3月17日のLate-Breaking Clinical Trialsセッションで発表される予定。抗PCSK9抗体は前臨床試験などで神経認知機能副作用の疑念が浮上したため、アムジェンは、FDAの要請に基づき、FOURIER試験のサブスタディとして1900人を組入れたEBBINGHAUS試験も実施した。この結果は翌18日のレイトブレイカーで発表される予定。

リンク: アムジェンのプレスリリース

HIF2-PH阻害剤の貧血治療試験が成功
(2017年1月30日発表)

FibroGen(Nasdaq:FGEN)は、中国で実施されたFG-4592(roxadustat)の第三相貧血治療試験二本が成功したと発表した。年内に承認申請を完了する予定。別途、アステラス製薬が欧州や日本で第三相試験中。

FG-4592はHIF2-PH(低酸素誘発因子2-プロリン水酸化酵素)阻害剤。高地などに行って低酸素状態になると発現し赤血球の新生を誘導する転写因子、HIF-2のスクラップに係る酵素を阻害してヘモグロビン値を引き上げる。一日三回、経口投与する。

今回の二本のうち、慢性腎疾患保存期の貧血患者を組入れた試験では、8週間でHb値が1.9 g/dL上昇し、偽薬群の-0.4 g/dLを有意に上回った。透析期貧血でEPOによる治療を受けている患者を組入れたスイッチ試験では、Hb値維持効果が協和発酵キリン製のEPOバイオシミラーと非劣性で、優越性解析も成功した。

FG-4592は日本や欧州などではアステラス製薬が共同開発独占販売権を持ち、米中などはアストラゼネカが共同開発販売権を持つ。

リンク: FibroGenのプレスリリース

【承認申請】


キイトルーダ、FDAが尿路上皮癌適応拡大申請を受理
(2017年2月3日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の末期・転移性尿路上皮癌適応拡大申請がFDAに受理されたと発表した。二次治療とcisplatin不適患者の一次治療に用いるもの。優先審査指定され、審査期限は6月14日。

二次治療の第三相実薬対照試験では、PFS(無進行生存期間)では有意差がなかったがもう一つの主評価項目である全生存の中間解析がメジアン10.3ヶ月、ハザードレシオ0.73、p=0.002となり、独立データ監視委員会が成功認定した。効果はPD-L1陽性のほうが高かった。

cisplatin不適患者の第二相一次治療試験では、最初の100人の中間解析でORR(客観的反応率)24%、完全反応率6%。ORRはPD-L1発現スコアが10%以上の症例では37%、1~10%では15%、1%未満は18%だった。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認】


オプジーボ、FDAが尿路上皮癌適応拡大を承認
(2017年2月2日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)の局所進行性・転移性尿路上皮癌適応拡大がFDAに承認されたと発表した。白金薬による治療を既に受けた患者の二次治療に、3mg/kgではなく240mgを二週間に一回、60分点滴静注する。第二相試験ではORRが20%だった。

リンク: BMSのプレスリリース

キイトルーダ、EUも非小細胞性肺癌一次治療を承認
(2017年1月31日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の非小細胞性肺癌一次治療適応拡大がEUに承認されたと発表した。EGFR阻害剤が適応になるEGFR活性化変異型やALK阻害剤が適応になるALK再編成型ではない、PD-L1 tumor proportion scoreが50以上の腫瘍が適応になる。200mgを3週間に一回、静注点滴。第三相標準療法対照試験ではPFSのハザードレシオが0.50、全生存は0.60と、大変良い結果を出した。

米国では昨年10月に承認。扁平上皮腫以外を組入れた三剤併用一次治療試験も成功しており、非小細胞性肺癌ではOpdivoを追い抜いた。

リンク: MSDのプレスリリース

エベロリムス、結節性硬化症の癲癇治療でEU承認
(2017年1月31日発表)

ノバルティスは、Votubia(everolimus)が結節性硬化症患者の難治性癲癇治療薬としてEUで承認されたと発表した。抗癲癇薬だけでは発作を十分に抑制できない患者に追加投与する。2歳以上が適応。

everolimusはmTOR阻害剤で、臓器移植を受けた患者の拒絶反応予防や腎細胞腫など多彩な適応を持つ。結節性硬化症の合併症ではSEGA(上衣下巨細胞性星細胞腫)や腎血管筋脂肪腫の治療(非癌性腎臓癌)も承認されている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース





今週は以上です。

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