2017年1月22日

2017年1月22日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • 抗PD-1抗体の競争は一進一退 
  • FDA、第二のGC-C受容体アゴニストを承認 
  • イムブルビカの適応拡大承認 
  • サノフィ、糖尿病コンビ薬がEUでも承認 


【新薬開発】


抗PD-1抗体の競争は一進一退
(2017年1月19日発表)

BMS/小野薬品とMSDは抗PD-1抗体の開発販売でデッドヒートを繰り広げている。今週は三つの動きがあった。BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)の肺癌一次治療用途での承認申請遅延、日本などでの胃癌試験成功、そして、MSDと特許紛争で和解して巨額の特許実施許諾料を確保、である。

非小細胞性肺癌の一次治療ではMSDに後れを取っている。Keytruda(pembrolizumab)はPD-L1高発現型にモノセラピーで承認、扁平上皮腫以外の患者をPD-L1ステータスを問わずに組入れた三剤併用試験も成功した。Opdivoは二次治療で承認されているが、一次治療はモノセラピー試験が白金ベース二剤併用を上回ることができずフェール。モノセラピー、Yervoy(ipilimumab)併用、白金ベース三剤併用を白金ベース二剤併用の標準療法と比較した第三相試験の結果が18年頃に判明するのを待っている状態だ。

このうち、Yervoy併用レジメンの開発方針について、BMSは、現時点では加速承認申請を見送る考えであることを明らかにした。承認申請用試験の厳格性を維持するために詳細は公表しないとのこと。おそらく、CheckMate-227試験のPFS(無進行生存期間)あるいはORR(客観的反応率)が著しく良ければそれに基づいて承認申請できるよう準備していたが、それほどでもなかったため、全生存期間の解析結果が出るまで待つ考えなのだろう。尚、227試験は日本の施設も参加している。

自社製品であるYervoy(ipilimumab)との併用レジメンの開発が成功すれば患者一人当り売上高を倍増できるので、大きな意義がある。Yervoyに関する見識ではMSDを上回るはずであり、併用法の開発自体にもアドバンテージがあろう。期待の用法だったのだがスムーズに進まず、結局、非小細胞性肺癌用途ではMSDに後れを取ってしまった。これまでの化学療法薬とは異なる独特の副作用を持つ免疫強化療法同士の組み合わせなので、指摘用量・用法の探索に手間取ってしまったのだろう。

もう一つは、MSDが比較的早くからPD-L1ステータスに基づくスクリーニングを採用していたのに対して、BMSは否定的であったこと。非小細胞性肺癌の反応予測因子としてどの程度有効なのか、治療段階や併用薬によって異なるのか、よく分からない点もあるが、Keytrudaの成功した試験は高発現だけ、あるいは、発現状況不問だが扁平上皮性肺癌は除く、など対象を絞り込んでいるのに対して、CheckMate-227試験は著しく大きな網を投げている(組入れ数も大きいが)。開発方針のきめ細かさの違いが影響した可能性がある。

BMSは90年代に研究開発の重点をプライマリーケア医領域から腫瘍学、免疫学、ウイルス学などの専門医用薬にシフトし、2000年代以降に画期的新薬を続々と発売する花形企業の一社になった。一方、MSDは2000年代に研究開発カルチャーを転換、自前主義や部門間の垣根を排し、臨床開発のスピードアップに向けた施策を導入した。抗PD-1抗体の開発では小野薬品やBMSが買収したメダレックスの方が先行していたはずだが、発売はMSDが先であり、この二社の競争は戦略と戦略の争いでもある。

リンク: BMSのプレスリリース(1/19付け)
リンク: CheckMate-227試験の治験登録

成功した胃癌試験は小野薬品が日本、韓国、台湾で実施した第三相試験で、切除不能末期再発性胃癌で標準療法に不応不耐だった患者を組入れて、2mg/kgを2週間に一回投与する群と偽薬群の全生存期間を比較したもの。Opdivo群はメジアン5.32ヶ月、偽薬群は4.14ヶ月とメジアン値の差は小さいが、1年生存率は26.6%対10.9%となっており、応答する患者には比較的大きな効果を示している。ハザードレシオは0.63。グレード3/4の治療関連有害事象発生率は10.3%と偽薬の4.3%を上回った。日本で今月、効能追加申請された。

リンク: BMSのプレスリリース(1/19付け)

小野/BMS陣営は押され気味だが、特許侵害訴訟で一矢を報いた。和解に達し、MSDが一時金6.25億ドルと売上ロイヤルティを払うことになったのだ。後者は17~23年は売上の6.5%、24~26年は2.5%というもの。米国で進められていた特許侵害訴訟が小野/BMS優勢で推移していたためMSD側が折れるのは予想されていたが、最初の7年間の料率が予想以上に高い。

リンク: BMSのプレスリリース
リンク: MSDのプレスリリース

【承認】


FDA、第二のGC-C受容体アゴニストを承認
(2017年1月19日発表)

FDAは、Synergy Pharmaceuticals(Nasdaq:SGYP)のTrulance(plecanatide)を慢性特発性便秘治療薬として承認した。米国でIronwood Pharmaceuticals(Nasdaq:IRWD)とアラガン(NYSE:AGN)が共同販売しているLinzess(linaclotide、和名リンゼズ)と同じグアニル酸シクラーゼC(GC-C)受容体アゴニストで、二本の第三相試験では持続的全般的奏効率が21%と偽薬群の10~13%を上回った。主な有害事象は下痢。

LinzessはIBS-C(便秘型過敏性腸症候群)の治療に用いることも承認されている。Trulanceも第三相が成功し3月までに適応拡大申請される見込みなので、早晩キャッチアップするだろう。

リンク: FDAのリリース
リンク: Synergyのプレスリリース

イムブルビカの適応拡大承認
(2017年1月19日発表)

アッヴィ(NYSE:ABBV)とジョンソン・エンド・ジョンソンは、夫々、Imbruvica(ibrutinib)の適応拡大がFDAに承認されたと発表した。これまでに慢性リンパ性白血病や非ホジキンリンパ腫の一種であるマントル細胞腫やワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症に用いることが承認されているが、新たに、非ホジキンリンパ腫の別のタイプである辺縁帯(マージナルゾーン)リンパ腫の二次治療に用いることが認められた。

ImbruvicaはBruton’s tyrosine kinase (Btk)阻害剤。B細胞のサバイバルに関与する酵素を阻害してアポトーシスを誘導する。ファーマサイクリクス社の開発品で、ジョンソン・エンド・ジョンソンは共同開発提携により、アッヴィはファーマサイクリクス社買収により、入手したもの。

リンク: アッヴィのプレスリリース
リンク: JNJのプレスリリース

サノフィ、糖尿病コンビ薬がEUでも承認
(2017年1月18日発表)

サノフィは、SuliquaがEUで承認されたと発表した。持効性インスリンLantus(insulin glargine)とGLP-1作用剤Lyxumia(lixisenatide)のプリミックスで二型糖尿病の治療に用いる。米国では昨年11月にSoliqua名で承認された。

この薬の難点は、インスリンは患者の状態に応じて用量を調整するがGLP-1作用剤はセラプティックインデックスが小さいという違いがあるにもかかわらず、用量の組み合わせが少ないこと。EUはメーカーが申請した二種類の製品を承認したが、米国は誤用を懸念したのか一種類だけだったため、使い勝手が余計悪くなった。

リンク: サノフィのプレスリリース




今週は以上です。

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