2016年12月18日

2016年12月18日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • アミノグリコシド系新薬の第三相が成功 
  • CHMPが抗リウマチ薬などに肯定的意見 
  • アトピーの新薬が承認 
  • MACIが遂に承認 
  • OcalivaがEUでも承認 
  • FDAが三つの課題に結論



【新薬開発】


アミノグリコシド系新薬の第三相が成功
(2016年12月12日発表)

Achaogen(Nasdaq:AKAO)はACHN-490(plazomicin)の第三相試験成功を発表した。17年に米国で、18年に欧州でも、承認申請する予定。

複雑性尿道感染症の患者609人をplazomicin群とmeropenem群に無作為化割付して治療効果を比較したもの。plazomicinは15mg/kgを一日一回、30分点滴静注した。両群とも、所定の条件を満たした患者はlevofloxacinの経口投与にステップダウン可。

FDAとEMAは抗生物質の薬効評価方法に関する見解が異なるため、この試験でも複数の解析が行われた。FDA向け主評価項目は、細菌学的修正intent-to-treat集団を対象とした、臨床的治癒且つ細菌学的駆除の奏効率。第5日時点では88.0%となり、meropenem群の91.4%を3.4%下回ったが、95%信頼区間下限が-10%とFDAと事前に合意した非劣性マージンである-15%を上回ったため、非劣性と認定された。

テスト・オブ・キュア時点の奏効率は81.7%対70.1%となり、差の95%下限は2.7%であったため、優越性認定された。EMA向けの主評価項目では優越性認定された。

plazomicinはアミノグリコシド系であるため腎機能や聴力に対する副作用が懸念される。腎治療時発現有害事象は3.6%対1.3%で上回った。蝸牛や前庭機能は各群1例のみだった。

カルバペネム耐性腸内菌による菌血症・院内感染細菌性肺炎・人工呼吸器関連細菌性肺炎の試験の結果も発表された。meropenemまたはtigecycline併用で28日死亡・重度合併症発生率をcolistinと比較したもので、360例の組入れが順調に進まずに途中打ち切りとなったため検出力が弱いのだが、23.5%対50.0%、28日死亡率11.8%対40.0%と数値上は良い結果になった。

リンク: Achaogenのプレスリリース(pdfファイル)

【承認審査・委員会】


CHMPが抗リウマチ薬などに肯定的意見
(2016年12月16日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、12月の会議で、イーライリリーの抗リウマチ薬、ロシュの抗癌剤、MSDのクロストリジウム・ディフィシル感染症薬などの新薬に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

イーライリリーのOlumiant(baricitinib) は、中重度活性期リウマチ性関節炎で疾病装飾的抗リウマチ薬に十分に反応しない又は不耐の成人の治療に、単剤投与またはMTXと併用する。ノバルティスの骨髄線維症治療薬であるJakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)と同じJAK1/2阻害剤で、何れもインサイト社からライセンスしたもの。欧州でリウマチ用JAK阻害剤が承認されれば初。米国でも承認審査中。

単剤投与試験ではMTXやHumira(adalimumab)より高い効果を示した。有害事象は高脂血症、悪心、上部気道感染症など。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: イーライリリーのプレスリリース

中外製薬が創製し海外ではロシュが開発販売するAlecensa(alectinib、和名アレセンサ)は、ALK融合遺伝子陽性の切除不能非小細胞性肺癌でXalkori(crizotinib)による治療を既に受けた患者に用いる。Xalkoriと同じALK阻害剤で、染色体転座などにより自己リン酸化してしまうALKを阻害することによって、腫瘍細胞のALK依存的増殖を阻害する。条件付き承認となる見込み。14年に日本で、15年には米国でも、承認済み。

重篤有害事象は間質性肺疾患/肺炎、肝毒性、重度筋痛、CPK上昇、徐脈など。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: ロシュのプレスリリース

タイミングがずれたが11月22日付で肯定的意見が出たのがMSDのZinplava(bezlotoxumab)。クロストリジウム・ディフィシルのB毒素を中和する抗体医薬で、感染症治療効果はないが、再発を抑制し、持続的臨床的奏効率を向上する。心不全歴を持つ患者では深刻な心不全の発生率や死亡率が偽薬群を上回った。米国では10月に承認。

リンク: EMAのプレスリリース

アクテリオン(SIX: ATLN)と言えばジョンソン・エンド・ジョンソンが買収を断念し次はサノフィかと世間を賑わせているが、CHMPではLedaga(chlormethine)が菌状息肉腫型皮膚T細胞リンパ腫(MF-CTCL)用薬として肯定的意見を得た。活性成分自体は70年の歴史を持つがゲル製剤は初めて。薬局調剤品が存在する模様であり、発売は早くて17年末になるようだ。

リンク: アクテリオンのプレスリリース

適応拡大では、MSDのKeytruda(pembrolizumab)を非小細胞性肺癌の一次治療に用いることを支持した。切除不能の末期癌で、TPS(PD-L1腫瘍比率スコア)が50以上なら適応になる。200mgを3週間に一回、点滴静注する。臨床試験ではPFS(無進行生存期間)や全生存期間が白金レジメンを上回った。米国では10月に承認。

リンク: MSDのプレスリリース

ノバルティスの抗IL-1ベータ抗体、Ilaris(canakinumab、和名イラリス)は周期熱症候群のうちマックル-ウェルス症候群MWSと家族性寒冷自己炎症性症候群の治療薬として承認されているが、家族性地中海熱、高IgD症候群/メバロン酸キナーゼ欠損症、そしてTNF受容体関連周期性症候群に用いることも支持された。米国では9月に承認、日本でも11月に第二部会通過。Ilarisはこのほかに、全身性小児特発性関節炎や活性期Still病などでも承認・承認申請されている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ノバルティスのmTOR阻害剤everolimusは様々な用途で承認されているが、その一つである結節性硬化症(TSC)では様々な合併症に対する効果も認められている。上衣下巨細胞性星細胞腫(SEGA)、腎血管筋脂肪腫に続いて、CHMPは難治性癲癇発作の治療用途に肯定的意見を出した。臨床試験では発作頻度を30~40%抑制した。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

アムジェンの抗PCSK9抗体、Repatha(evolocumab)は高いLDL-C低下作用を持つが、難点の一つは皮注用薬であること。140mgを2週間に一回、または月に一回140mgを3回投与するが、新たに420mg製剤が肯定的意見を得た。競合薬であるリジェネロン/サノフィのPraluent(alirocumab、和名プラルエント)は月一回投与が承認されていないので、420mgが承認されれば差を広げることができる。

リンク: アムジェンのプレスリリース

【承認】


アトピーの新薬が承認
(2016年12月14日発表)

FDAはファイザーのEucrisa(crisaborole)を2歳以上の軽中度アトピー性皮膚炎の治療薬として承認した。軟膏で一日二回塗布する。臨床試験では奏効率が31~32%となり偽薬群の18~25%を有意に上回った。プール分析では紅斑 、滲出 、擦過傷 、硬結、苔癬化などが改善した。有害事象による治験離脱は両群とも1.2%だった。深刻な有害事象は過敏反応。

今年6月に52億ドルで買収したAnacor PhamaceuticalsのPDE-4阻害剤。効果の面ではリジェネロン/サノフィの抗体医薬であるDupixent(dupilumab)のほうが良い数字が出ているが、塗り薬であることや忍容性、そしておそらく価格の面でも普及のハードルが低そうだ。

リンク: FDAのリリース
リンク: ファイザーのプレスリリース

MACIが遂に承認
(2016年12月14日発表)

Vericel Corporation(Nasdaq:VCEL)はMACIがFDAに承認されたと発表した。症候性の膝関節軟骨全層欠損の治療に用いる。第3世代の軟骨細胞療法で、患者から採取した軟骨細胞を培養し
ブタI/III型コラーゲン膜に播種、損傷場所に移植して再生を図る。欧州で実施された2年間の臨床試験では、マイクロフラクチャー術(微小な穴をあけて天然の再生プロセスをトリガーする)より奏効率が高かった(87.5%対68.1%)。

元々はVerigenの製品で98年に欧州の一部地域で発売されたが、規制変更や経営陣交代、販売不振などを経て販売中止となった。05年にジェンザイムがVerigenを買収、そのジェンザイムを買収したサノフィが14年に細胞療法・再生医療事業をVericeに譲渡。Vericelは米国なら売れると判断して開発を続行、18年ぶりに治療法として再生した。

リンク: Vericelのプレスリリース

OcalivaがEUでも承認
(2016年12月14日発表)

Intercept Pharmaceuticals(Nasdaq:ICPT)はOcaliva(obeticholic acid)がEUで原発性胆汁性肝硬変の治療薬として承認されたと発表した。既存薬であるウルソデオキシコール酸の類縁体でファルネソイドX受容体(FXR)を作動する力価が著しく高い。アルカリフォスファターゼや総ビリルビンを改善する、代理マーカーに基づく条件付き承認であるため、改めて臨床的効用を確認しないと承認が取り消される可能性がある。

リンク: Interceptのプレスリリース


【医薬品の安全性】


FDAが三つの課題に結論
(2016年12月12日発表)

米国は大統領が代わると行政組織の上層部も大きく入れ替わる。だからということでもないのだろうが、FDAは、長年の検討課題であった三つの問題に結論を出した。Actos(pioglitazone)と膀胱癌の関連性、乳幼児や胎児の麻酔リスク、そして禁煙補助薬の精神学的副作用問題だ。

PPAR作動剤は90年代に承認される前から癌原性懸念があったが、三製品のうち二品は他の副作用が理由で一つは販売中止、一つは売上激減した。唯一の生き残りである武田薬品の二型糖尿病薬Actosは心不全のリスクを持つが、大規模アウトカム試験や疫学的試験で膀胱癌懸念が浮上、医療保険組織のデータベースを使った10年間の前向き疫学的試験が実施された。

この試験の5年中間解析ではハザードレシオが1.2倍とActosを服用しない患者より発症率が高かったが、95%信頼区間は1を跨いでおり、有意ではなかった。しかし、用量や服用期間との関連性が疑われた。その後、最終解析の結果が出たが、ハザードレシオは1.06、95%信頼区間0.89~1.26と、有意な関連性がないことが確認された。服用期間が長いとリスクが高まるトレンドが見られたが、有意性はなかった。PROACTIVE試験の観察的追跡試験では、ハザードレシオが1.00に低下した。

一方、英国の医療データベースを用いたTuccoriらの研究ではリスクが有意に増加した。これらを踏まえて、FDAは、pioglitazoneは膀胱癌のリスク上昇と関連している可能性があると判断した。

リンク: FDAの安全性通知(12/12付け)

乳幼児や妊娠後期の胎児に全身麻酔を行うと脳細胞に悪影響を及ぼすリスクがあることを示唆する前臨床試験や疫学的試験の論文は以前から存在しているが、FDAは、今回、麻酔薬や鎮静剤のレーベルに警告追加するよう製薬会社に要求した。リスクと便益を慎重に検討して、長時間の使用や複数回の施行に気を付けるよう促している。FDAも指摘しているように、麻酔のリスクより治療を行わないリスクの方が切迫しているかもしれないので、難しい問題だ。

リンク: FDAの安全性通知(12/14付け)

ファイザーの禁煙補助薬、Chantix(varenicline、和名チャンピックス)は米国のメディアが異常行動問題を大きく取り上げたことが発端で米国売上がピークアウトした。あまり報道されていない日本などでは引き続き伸びたが、米国はPL訴訟も盛んなので白黒決着が付くかどうかは経済的にも大きな問題だ。

FDAの要請でファイザーが行った市販後監視試験ではリスクが高まらなかった。9月に開催された諮問委員会は枠付き警告解除を支持した。FDAの最終判断が注目されたが、結局、従来疑われていたほどリスクは高くないと判断。今回、枠付き警告を止めて、気分、行動、思考に関する副作用警告箇所にこの試験の結果を掲載することを決めた。グラクソ・スミスクラインのZyban(bupropion)のレーベルにも同じ変更を行う。

リンク: FDAの安全性通知(12/16付け)




今週は以上です。

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