2016年11月13日

2016年11月13日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • 脊髄性筋萎縮症の第三相試験が成功 
  • キイトルーダによる膀胱癌二次治療の延命効果は化学療法を凌ぐ 
  • エマウス、鎌状赤血球症治療薬を承認申請 
  • CHMP、CSLベーリングのA型血友病薬などに肯定的意見 
  • BMSのオプジーボが米国で頭頸部癌の二次治療に適応拡大 
  • ギリアド、ベムリディが米国で承認 
  • ファイザー、IbranceがEUで承認 
  • アムジェン、パーサビブがEUで承認 


【新薬開発】


脊髄性筋萎縮症の第三相試験が成功
(2016年11月7日発表)

バイオジェンとIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、Spinraza(nusinersen)の第三相II型脊髄性筋萎縮症試験が成功したと発表した。I型用に承認申請中だが、FDAから前倒しで結論を出す旨の連絡があったことも明らかにした。年末あるいは来年第1四半期の発売に向けて準備を進めている由だ。

脊髄性筋萎縮症のうち、生後3週間から7ヶ月までの時期に発症するI型とそれ以降の幼児期に発症するII型は、脊髄神経細胞の機能に必要なSurvival Motor Neuronの遺伝子、SMN1の欠損が関与していることが多い。キャリアは50人に一人だが、両方の親から引き継ぐと発症する。日米欧の患者は30000~35000人と推定されている。

nusinersenは、SMN2遺伝子のスプライシングを変えることによって翻訳が途中で終わるのを防ぎ、Survival Motor Neuronを発現させる。アンチセンス薬のスペシャリストであるIonisが創製し、バイオジェンがライセンスした。

第三相はI型の試験が先に成功、今年9月に米国でローリング承認申請が完了。加速審査だが審査期限は公表されていない。EUも承認申請が受理され、加速審査を受ける。この試験は日本の施設も参加した。

今回のII型試験は、2~12歳の歩行不能患者126人を組入れて15か月間治療したところ、HFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)が4ポイント改善。シャム群(髄腔内投与なので偽薬は用いず投与するふりをしただけ)は1.9ポイント悪化し、統計的に有意な差があった。このスケールは3ポイント以上の差があれば臨床的に意味がある由で、臨床的にも合格点を取ったことになる。

バイオジェンはグローバルなEAPを開始する予定。承認を待つ間、規制当局の許諾を得た上で患者に投与することが可能になる。

リンク: バイオジェンのプレスリリース

キイトルーダによる膀胱癌二次治療の延命効果は化学療法を凌ぐ
(2016年11月12日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の第三相尿路上皮腫瘍二次治療試験のデータをSITC(Society for Immunotherapy of Cancer)年次会議で発表した。全生存期間が化学療法を有意に上回る、良い結果だった。

このKEYNOTE-045試験は、切除不能・転移性尿路上皮腫瘍で白金薬による一次治療を既に受けた患者を組入れて、200mgを3週間に一回投与する群と、paclitaxel、docetaxel、vinflunineの中から医師が選んだ薬を使う化学療法群の全生存期間とPFS(無進行生存期間)を比較したもの。独立データ監視委員会が全生存期間の中間解析で成功認定したことが10月に発表されている。

ハザードレシオは0.73、p=0.0022、メジアン生存期間は10.3ヶ月で化学療法群は7.4ヶ月だった。PFSの中央値の差は1.1ヶ月のみであまり大きくない。このデータは全ユニバースの解析だが、PD-L1陽性患者だけの全生存解析はハザードレシオ0.57、p=0.0048、メジアン生存期間8.0ヶ月対5.2ヶ月となっている。陽性患者のほうが恩恵が大きそうだが陰性に効果がないようには見えない。

尿路上皮腫瘍は抗PD-1/PD-L1抗体の代表的な用途になった。ロシュのTecentriq(atezolizumab)はこの二次治療で初承認。BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も第二相二次治療試験のデータに基づいて欧米で承認申請された。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認申請】


エマウス、鎌状赤血球症治療薬を承認申請
(2016年11月8日発表)

米国のエマウスライフサイエンスは、L-グルタミンを鎌状赤血球症治療薬として承認申請しFDAに受理されたと発表した。優先審査か否かは未連絡。EUでも承認申請の計画。

経口液用粉末で、NutreStoreという製品名で、短腸症候群の治療に遺伝子組換え型成長ホルモンと併用することが米国等で承認されている。米国の医療施設で実施された鎌状赤血球症の第三相試験では、鎌状赤血球クリーゼや入院の頻度を減らすことに成功した由だ。

リンク: エマウスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、CSLベーリングのA型血友病薬などに肯定的意見
(2016年11月11日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月の会議でCSLベーリングのAfstylaなどの新薬に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

CSLベーリングのAfstyla(lonoctocog alfa)は遺伝子組換え型ヒト単鎖第VIII因子。A型血友病の出血の治療や予防に用いる。既存の全長第VIII因子よりもvWF親和性が高く、安定的。Afstylaをルーチン予防に用いる場合は週2~3回の投与で済む。米国では今年5月に承認された。

血友病では出血リスクの高い患者に予防目的でルーチン投与する手法が普及した。市場が大きいため投与頻度の少ない新薬が続々と開発・発売されている。類薬では、ノボ ノルディスクのNovoEight(turoctocog alfa)が週2~3回、バイエルのKovaltryやシャイアが買収したバクスアルタのAdynovateは週2回、バイオジェンのEloctate(efmoroctocog alfa)が3~5日に一回、となっている。

リンク: EMAのプレスリリース

ノボ ノルディスクのFiasp(insulin aspart)も肯定的意見を受けた。即効性インスリンNovoRapidの新製剤で、添加剤(ビタミンとアミノ酸)を加えることにより初期の吸収速度や血糖降下作用の発現を向上、食中食後の投与を可能にした。管理放出型とミールタイム用の二種類を用いる患者のミールタイム用途や、インスリン・ポンプでの使用を想定している模様。

リンク: ノボのプレスリリース

サノフィのSuliqua(lixisenatideとinsulin glargine)も肯定的意見。GLP-1作用剤Lyxumiaと管理放出性インスリンLantusの活性成分のプリミックスで、二型糖尿病の血糖治療に用いる。インスリンは血糖管理の状況を見ながら用量を加減するのが本来の使い方だが、プリミックスは細かな調整ができないのが難点。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: サノフィのプレスリリース

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)のVemlidy(tenofovir alafenamide fumarate、略称TAF)はB型肝炎治療に肯定的意見を得た。HIVやHBVの治療に用いられているViread(tenofovir disoproxil fumarate、略称TDF)の親戚で、どちらも体内でtenofovirに変換されて活性化するプロドラッグだが、TAFのほうが安定性や分布がよいため投与量は10分の1で足りる。腎臓や骨の副作用リスクも緩和された。

リンク: ギリアドのプレスリリース

適応拡大では、ノバルティスのArzerra(ofatumumab)を再発性慢性リンパ性白血病(CLL)の二次治療にfludarabine及びcyclophosphamideと三剤併用することも支持された。ジェンマブが創製した抗CD20完全ヒト化抗体で、グラクソ・スミスクラインが承認を獲得、発売したが、後にノバルティスに腫瘍学部門を売却した。

最初の承認はfludarabineとalemtuzumabに反応しなかった難治性CLLに単剤投与、次の承認はCLLの一次治療を受ける、fludarabineベースのレジメンが適さない患者に、chlorambucilまたはbendamustineと併用。最初と最後が先に承認されたことになる。

リンク: EMAのプレスリリース

さて、PTC Therapeutics(Nasdaq: PTCT)のTranslarna(ataluren)はデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として14年にEUで条件付き承認されたが、第三相試験がフェールしたため、販売許可が更新されるかどうか注目されていた。今回、CHMPはPTCにセカンドチャンスを与えることを発表した。もう一度臨床試験を行って結果を2021年第1四半期までに提出する。前回の第三相試験は2013年開始、15年に結果が判明したので、5年間の猶予は潤沢だ。

リンク: PTCのプレスリリース

【承認】


BMSのオプジーボが米国で頭頸部癌の二次治療に適応拡大
(2016年11月10日発表)

BMSのOpdivo(nivolumab)を難治性・転移性頭頸部扁平上皮腫の二次治療に用いる適応拡大がFDAに承認された。第三相試験の中間解析では、メジアン生存期間が7.5ヶ月と実薬対照群(cetuximab、MTX、docetaxelなどの中から医師が選択)の5.1ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.70、統計的に有意だった。頭頸部癌の一部はヒトパピローマウイルス(HPV)感染との関連が疑われているが、HPV陽性患者ではハザードレシオ0.56、陰性でも0.75と、どちらも点推定値は1を下回った。ただし、陰性患者の95%上限は1を超えるので、有意性は明確ではない。

Opdivoは小野薬品が日韓台で実施した第三相胃癌サルベージ試験も成功したことが発表された。データは未発表。

リンク: BMSのプレスリリース

ギリアド、ベムリディが米国で承認
(2016年11月10日発表)

ギリアド・サイエンスはVemlidy(tenofovir alafenamide fumarate)が米国で慢性B型肝炎の治療に承認されたことを発表した。上記のように、Vireadの類薬だが用量が10分の1で足り分布が良いため腎臓や骨の副作用が小さい。米国ではVireadと同じ価格で発売されるようだ。日本でも承認申請済み。

リンク: ギリアドのプレスリリース

ファイザー、IbranceがEUで承認
(2016年11月10日発表)

ファイザーは、Ibrance(palbociclib)がEUで承認されたと発表した。FDAは第二相試験のデータに基づいて15年にエストロゲン受容体陽性her2陰性の閉経後末期乳癌の一次治療薬としてletrozoleと併用することを承認したが、EUは第三相試験の結果を待って、この用途と二次治療にfulvestrantを併用する用法を閉経を問わずに承認した。

細胞周期進行に関与するCDK4、CDK6というキナーゼを阻害する経口剤。前臨床でアロマターゼ阻害剤などの効果をブーストする作用が見つかり、展望が開けた。一次治療の第三相試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン24.8ヶ月とletrozoleだけの群の14.5ヶ月を上回り、二次治療試験では11.2ヶ月とfulvestrantだけの4.6ヶ月を上回った。

リンク: ファイザーのプレスリリース

アムジェン、パーサビブがEUで承認
(2016年11月11日発表)

アムジェンはParsabiv(etelcalcetide、和名パーサビブ)がEUで二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として承認されたと発表した。透析期慢性腎疾患の患者に用いる。カルシウム感受受容体を作動する小分子薬で、副甲状腺ホルモンの分泌を抑制し、血清リン濃度を低下させる。週3回静注。透析が終わった後に投与できるので簡便。

同社のSensipar(cinacalcet、和名レグパラ)と比較した臨床試験では、副甲状腺ホルモン抑制奏効率が非劣性だった。治療時発現有害事象は症候性低カルシウム血症や心不全が若干多かった。

米国でも申請されたが審査完了通知を受領した。日本は小野薬品が導入、10月に第一部会を通過した。

リンク: アムジェンのプレスリリース




今週は以上です。

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