2016年11月27日

2016年11月27日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • GSK、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の適応拡大試験成功 
  • イーライリリーのsolanezumabはやっぱりフェール 
  • GSK、COPDのトリプルコンビを承認申請 
  • 抗CD38抗体、多発骨髄腫二次治療としても承認 
  • ランタス・リキスミア・プリミックスが承認 
  • 武田のNinlaroがEUで承認 
  • オプジーボがEUでcHLに承認 


【新薬開発】


GSK、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症の適応拡大試験成功
(2016年11月23日発表)

グラクソ・スミスクラインは、Nucala(mepolizumab、和名ヌーカラ)を難治性好酸球性多発血管炎性肉芽腫症(EGPA)の治療に用いる適応拡大試験が成功したと発表した。ステロイド治療を受けている患者に300mgを4週間毎に皮注して、寛解(Birmingham Vasculitis Activity Scoreが0かつステロイド使用量がprednisolone換算で4mg/日以下)の導入効果を比較したもの。

共同主評価項目の一つである24週間以上寛解率が28%(偽薬群は3%)、もう一つの第36週且つ第48週寛解率が32%(同3%)と、何れも有意な差があった。GSKは17年に適応拡大申請する考え。

EGPAは好酸球が著しく増加して血管炎が発生し、様々な臓器・器官に障害を生じる。多くの患者が喘息症や副鼻腔ポリープ、好酸球増加症を併発している。有病率は百万人につき14~45人。難病情報センターによると日本で治療を受けている患者数はおよそ1900人と推定されている。

リンク: GSKのプレスリリース

イーライリリーのsolanezumabはやっぱりフェール
(2016年11月23日発表)

イーライリリーは、LY2062430(solanezumab)の第三相軽度アルツハイマー病試験がフェールしたと発表した。残っている試験は発症前の高リスク患者を対象としたものだけとなった。

solanezumabはアミロイド・ベータ(11-20)を標的とするヒト化モノクローナル抗体。アルツハイマー病患者の脳にはアミロイド・ベータの蓄積が見られること、壮年期に発症する若年性アルツハイマー病の患者の多くがアミロイド・プリカーサー・プロテイン(APP)やそれを切り出す酵素の遺伝子に変異を持っていることなどから、アミロイド・ベータを防止・除去すれば加齢性アルツハイマー病を予防・治療できると考える、アミロイド仮説に基づく開発品の一つだ。

7年前に軽中度アルツハイマー病の治療で第三相入り。二本ともフェールしたが、最初に終了した試験では軽度患者(MMSEで20~26)の事後的サブグループ分析で認知機能評価スコアであるADAS-cog14の悪化を有意に遅らせる可能性が浮上したため、3年前に改めて軽度患者だけの第三相を開始した。組入れ数は最初の二本の軽度患者数合計と大差ないが、MRIまたはCSF検査でアミロイドベータが確認された患者だけに絞り込む工夫を行った。

結果は、偽薬群との差のp値が0.095となり、フェールした。やはり、事後的サブグループ分析は当てにならない。相互に独立した複数の試験で結果が再現されることが重要だ。この試験の結果は、12月8日に CTAD(Clinical Trials on Alzheimer's Disease)のミーティングで発表される予定。ウェブキャストも開催されるようだ。

上記のように、若年性アルツハイマー病はAPPやセクレターゼの遺伝子変異が見られるので、アミロイド・ベータ治療薬に適している可能性がある。但し、全員が数年内に発症するわけではないので、臨床試験で予防効果を検出するのは簡単ではないだろう。最後の戦場である予防試験も楽観できないだろう。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

【承認申請】


GSK、COPDのトリプルコンビを承認申請
(2016年11月21日発表)

グラクソ・スミスクラインは、三種類の活性成分を配合したClosed Triple CombinationをCOPD治療薬として米国で承認申請した。欧州でも数週間内に申請する予定。

COPDの増悪予防は患者の反応を見ながら薬を増量・追加していく。今回のトリプルコンビ薬は、コルチコイドのfluticasone furoate、長期作用性ムスカリン受容体拮抗剤のumeclidinium、そして長期作用性ベータ2作用剤のvilanterolを配合したもので、Ellipta吸入器で一日一回、吸入する。夫々の成分や二剤配合薬は既に実用化されているので併用可能だが、1個で済めば手間が省ける。

Innoviva(Nasdaq:INVA)との共同開発プロジェクトの対象で、GSKは売上の6.5~10%をロイヤルティとして支払い、Innovivaはその85%を14年にスピンアウトしたTheravance Biopharma(Nasdaq:TBPH)に支払う。

リンク: GSKのプレスリリース

【承認】


抗CD38抗体、多発骨髄腫二次治療としても承認
(2016年11月21日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、Darzalexを多発骨髄腫の二次治療に用いる適応拡大がFDAに承認されたと発表した。セルジーンのRevlimid(lenalidomide)またはジョンソン・エンド・ジョンソン/武田薬品のVelcade(bortezomib)をdexamethasoneと併用する、RdレジメンまたはVdレジメンと併用する。

Rdレジメンに追加した二次治療試験では、Rdレジメンだけの群と比べてPFS(無進行生存期間)のハザードレシオが0.37(95%信頼区間0.27~0.52)、Vdレジメンに追加した三次治療試験ではVdだけと比べて0.39(0.28~0.53)だった。

DarzalexはCD38を標的とする完全ヒト化抗体。15年に多発骨髄腫の四次治療薬として単剤投与することが米国で承認された。デンマークのGenmab (Nasdaq Copenhagen:GEN)からライセンスしたもの。

リンク: JNJのプレスリリース

ランタス・リキスミア・プリミックスが承認
(2016年11月21日発表)

サノフィは、持効性インスリンLantus(insulin glargine、和名ランタス)とGLP-1作用剤Lyxumia(lixisenatide、和名リキスミア)の活性成分を配合した固定比率合剤、Soliquaが米国で二型糖尿病薬として承認されたと発表した。Retrophinから2億4500万ドルで取得した優先審査バウチャーを利用して早期承認取得を図ったが、結局、承認まで11ヶ月かかった。

遅延の理由は用量を調整できないこと。インスリンは血糖値に応じて用量を変えるが、GLP-1作用剤は滴定の余地が小さく増やすと副作用リスクだけが高まってしまう。サノフィはインスリンとGLP-1作用剤の比率が異なる三種類の規格を用意。欧州ではCHMPがglargine 100単位/ml、lixisenatideは33mcg/mlと50mcg/mlの二種類に肯定的意見を出したところだが、FDAは取り違え事故を懸念したのか33mcgしか承認しなかった。

lixisenatideはZealandから開発販売権を取得したもの。

リンク: サノフィのプレスリリース

武田のNinlaroがEUで承認
(2016年11月24日発表)

武田薬品は、Ninlaro(ixazomib cirate)がEUで再発性多発骨髄腫に承認されたと発表した。同社のVelcade(bortezomib)と同じプロテアソーム阻害剤だが経口投与できることが特徴。

リンク: 武田のプレスリリース

オプジーボがEUでcHLに承認
(2016年11月22日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab、和名オプジーボ)をクラシック・ホジキン型リンパ腫の治療に用いることがEUで承認されたと発表した。自家造血幹細胞移植とAdcetris(brentuximab vedotin)による治療に反応しなくなった患者に用いる。臨床試験ではORR(客観的反応率)が66%だった。

リンク: BMSのプレスリリース



今週は以上です。

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2016年11月20日

2016年11月20日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • AHA:心房細動・ステントのトリプルセラピー 
  • AHA:PCSK9RNA介入薬は効果が長期間持続 
  • AHA:レパーサのIVUS試験成功 
  • アムジェン、抗CGRP受容体抗体の二本目の第三相も成功 
  • ギリアドのJAK阻害剤は第三相が一本成功 
  • ノバルティス、CAR-Tの第二相データを発表へ 
  • ノバルティス、FLT3阻害剤の承認申請が受理 
  • HEPLISAVは承認されず 
  • Qapzolaも承認されず 
  • FDAが外陰膣萎縮症用薬を承認 
  • AHA:セレコックスの安全性試験がやっと終了 



【新薬開発】


AHA:心房細動・ステントのトリプルセラピー
(2016年11月14日発表)

AHA(米国心臓協会)の科学部会で、PIONEER AF-PCI試験の結果が発表された。冠動脈PCIでステント留置術を受けた患者はアスピリンとclopidogrelのような抗血小板薬を併用するデュアル・アンチプレイトレット・セラピー(DAPT)を施行するのが一般的だが、抗血栓薬を服用していて出血リスクが高い非弁性心房細動患者にも有益なのか?単純にDAPTを追加するより良い方法はないのか?

このような問題意識の下に、バイエル/ジョンソン・エンド・ジョンソンのXa阻害剤、Xarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)を使って新レジメンを検討したのが本試験だ。26ヶ国の施設で2124人の患者を以下の三群に無作為化割付して、臨床的に重要な出血のリスクを比較した。

  • rivaroxaban(15mg一日一回)と抗血小板薬(clopidogrel、prasugrel、ticagrelor)の12ヶ月コース(以下、二剤群)。
  • rivaroxaban、アスピリン、そして抗血小板薬を1~12ヶ月用いるコース(用量調整群)。三剤併用期間中はrivaroxabanの用量を2.5mg一日二回に減量する。
  • 対照群はビタミンK拮抗剤、アスピリン、そして抗血小板薬を1~12ヶ月用いるコース。


結果は、二剤群の出血率が16.8%と対照群の26.7%を大きく下回り、ハザードレシオ0.59、統計的に有意だった。用量調整群も18.0%に留まり、ハザードレシオ0.63、有意だった。

心血管イベントの発生数は大差なかったが、非劣性解析を行うには組入れ数が一桁足りず、増えなくてよかったとしか言えないので消化不良だ。抗血栓薬も抗血小板薬も血栓性疾患の予防効果と出血リスクのトレードオフがあるからだ。

尚、この試験の論文はNew England Journal of Medicineに刊行されたが、全死亡解析は別途、Circulationに掲載されている。一つのデータセットで複数の解析を行うと偶然に有意差を拾ってしまうリスクがあるため、ここでは割愛する。

リンク: Gibsonらの治験論文(NEJM、オープンアクセス)

AHA:PCSK9RNA介入薬は効果が長期間持続
(2016年11月15日発表)

メディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)とAlnylam Pharmaceuticals(Nasdaq:ALNY)は、ALN-PCSsc(inclisiran)の第二相試験途中経過をAHAで発表した。一回投与でLDL-Cが60日後に59%低下、180日時点でも43%低かった。90日置いて二回投与した症例では120日時点で57%低下。抗PCSK9抗体と同じ皮注用だが、3ヶ月に一回で足りるなら簡便だ。効果が優れていることはこれで分かった。今後の注目は、副作用の軽重だろう。

inclisiranはRNA介入に特化した新薬開発型新興企業であるAlnylamが創製したRNA介入薬で、PCSK9の合成を阻害する。メカニズムは異なるが、抗PCSK9抗体と同様に、血中LDL-Cを取り込むべき肝臓のLDL受容体にPCSK9が結合して零落するを妨げる。

今回の第二相は、アテローム性心血管疾患またはそれと同等のリスクを持ち、LDL-C治療薬の最大耐容量を服用しても十分に低下しない患者501人を組み入れた、用量変動試験。治療時発現有害事象は筋痛や肝機能検査値異常。どちらもコレステロール治療薬を開発する上で重要なチェックポイントだ。致死的な心筋梗塞も一例あった模様であり、RNA介入薬のクラス・イフェクトではないことも確認すべきだろう。

メディスンズ・カンパニーは13年にAlnylamと開発提携、今回の第二相から主導している。

リンク: 両社のプレスリリース

AHA:レパーサのIVUS試験成功
(2016年11月15日発表)

その抗PCSK9抗体では、アムジェンのRepatha(evolocumab、和名レパーサ)のIVUS試験の結果もAHAで発表された。冠動脈アテロームの量と冠動脈疾患のリスクがダイレクトに相関するものなのかどうか、まだ結論は出ていないので先走るべきではないが、心血管アウトカム試験の結果に希望が持てるくらいのことは言っても良いだろう。

このGLAGOV試験は、冠動脈造影術を受ける、最大耐容量スタチンを服用している患者を偽薬またはRepatha(420mg)を月一回皮注する群に割付けて、78週間後のPAV(%アテローム量)の変化の群間差を比較した。LDL-Cのベースライン値は93mg/dLで、Repatha群は78週後に36mg/dLに低下した。PAVはベースライン(36.4%)から0.95%低下、偽薬群は37.2%から0.05%上昇、有意な群間差があった。

二次的評価項目のnTAV(正常化総アテローム量)は5.8立方mm減少、偽薬群は0.9立方mm減でこれも有意。心血管アウトカムを比較する検出力はないが、発生率は12.2%と偽薬群の15.3%より低く、変な結果ではなかった。

コレステロール治療薬の冠動脈アテローム抑制効果を検討するIVUS試験はまだ件数が少なく、分からないことも多い。一割以上の患者が二回目のIVUS検査を受けないというドロップアウトの多さも難点だ。
今回のデータで見ると、PAVの治療効果である1.0%は臨床的に重要なのか?もし重要なら、ベースライン時点での0.76%の群間差は軽視できるのか?ベースライン値で4分位に分けたサブグループ分析を見たいものだ。

Repathaの心血管アウトカム試験は昨年、2万人を超える患者の組み入れを完了。結果は17年のACC辺りで発表と目されているようだ。

リンク: アムジェンのプレスリリース
リンク: Nichollsらの治験論文(Journal of American Medical Association、オープンアクセス)

アムジェン、抗CGRP受容体抗体の二本目の第三相も成功
(2016年11月16日発表)

アムジェンは、AMG 334(erenumab)の二本目の第三相片頭痛予防試験が成功したと発表した。月に8日ほど発症するepisodicな患者を組入れて、偽薬、70mg、140mgの何れかを月一回、24週間に亘って皮注し、最後の4週間の発症日数をベースライン値と比較したところ、各1.8日、3.2日、3.7日の減少となり、両用量とも偽薬比有意な差があった。70mgだけを試験したもう一本の第三相が既に成功しており、月に18日発症と慢性的な患者を組入れた第二相試験のデータと合わせて、来年承認申請される見込み。

AMG 334は片頭痛発作時に増加し鎮静化すると減少するcalcitonin gene-related peptide(CGRP)の受容体を標的とする抗体。ノバルティスが開発に相乗りしており、北米や日本以外での販売を担当する。

リンク: アムジェンのプレスリリース

ギリアドのJAK阻害剤は第三相が一本成功
(2016年11月16日発表)

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)はGS-0387(momelotinib)の第三相骨髄線維症試験二本の結果を発表した。Jakavi(ruxolitinib)対照試験は成功、主評価項目である脾臓反応率は26.5%、対照群は29.0%で、非劣性であることが確認された。二次的評価項目のTSS(総合的症状スコア)は非劣性ではなかった。有害事象では末梢神経症の発生率が10%対5%で高かった。

Jakavi治療歴がある患者(不応だった患者は除く)を組入れた試験では、脾臓反応率が6.7%、対照群(最適な代替的治療を施行・・・88%がJakaviを継続)は5.8%で優越性解析がフェールした。TSSは数値上は有意な差があったが、主評価項目がフェールしたのでそれ以降の解析は統計学的に意味がない。

ギリアドは当局と今後を相談する予定。Jakaviと同じJAK1/2阻害剤なので、効果が特に優れているわけではなく有害事象で見劣りする点もあるとなると、承認されたとしてもどの程度の出番があるのかよくわからない。

リンク: ギリアドのプレスリリース

ノバルティス、CAR-Tの第二相データを発表へ
(2016年11月16日発表)

ノバルティスは、ペンシルベニア大学の研究者からCART-19の開発販売権を取得、話題の新技術であるキメラ抗原受容体-T細胞(CAR-T)療法に参入した。米国で再発性難治性急性リンパ性白血病の青少年を対象に実施している第二相試験のデータが12月のASH(米国血液学会)で発表される予定。学会サイトで公開された抄録によると、過去の試験と同様な良い結果が出たようだ。CAR-Tの泣き所であるサイトカイン放出症候群が多くの患者で発生し、半分近くがグレード3、4だったが致死例はなかった由。

リンク: ノバルティスの学会発表演題リリース

【承認申請】


ノバルティス、FLT3阻害剤の承認申請が受理
(2016年11月14日発表)

ノバルティスはPKC412(midostaurin)を欧米で承認申請し受理されたことを発表した。米国は優先審査を受ける。適応は、FLT3変異のある急性骨髄性白血病(初治療を含む)と進行全身性肥満細胞症。Invivoscribe TechnologiesのFLT3コンパニオン検査もPMA(販売前申請)が行われた。

急性骨髄性白血病の第三相試験では、cytarabine及びdaunorubicinと併用で導入療法を行い、完全寛解ならサイクル追加、その後はPKC412だけで維持療法を行ったところ、完全寛解率は59%でPKC412の代わりに偽薬を投与した群の54%と比べて有意な差がなかったものの、全生存のハザードレシオは0.77と有意に優れていた。5年生存率は50.9%、偽薬群は43.9%。

進行全身性肥満細胞腫はNEJMに今年、掲載された第二相単群試験に基づくもので、総合反応率60%だった。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


HEPLISAVは承認されず
(2016年11月14日発表)

ダイナバクス(Nasdaq:DVAX)は、HEPLISAV-BをB型肝炎予防用ワクチンとして12年にFDAに承認申請したが、今回、2回目の審査完了通知を受領した。安全性に関する追加情報を要求された模様。追加試験を行ったり、好ましくないデータに関して追加情報や専門家の意見を提出したりしたが、結局、承認されなかった。ダイナバクスは諦めてはいない模様だが、ワクチンは高い安全性が求められ、B型肝炎ワクチンは既に広く用いられている製品が存在するので、安全性懸念を十分に払拭しないまま承認を得るのは困難なのではないか?

リンク: ダイナバクスのプレスリリース

Qapzolaも承認されず
(2016年11月17日発表)

Spectrum Pharmaceuticals(Nasdaq:SPPI)はQapzola(apaziquone)をTUR-Bt(経尿道的膀胱腫瘍切除術)後の補助療法として米国で承認申請していたが、FDAから審査完了通知を得た。二本実施された第三相試験が何れもフェールしたので止むを得ないところ。2年再発率が一本は38%対44.6%、もう一本は40.4%対46.6%と数値上は希釈液だけを投与した群より高かったのだが、測定値には精度というものがある。同社は第三相試験を実施していたが組入れを中止、改めて小規模な試験を行う考え。

リンク: Spectrumのウェブサイト(Statusのところに審査完了通知受領が記されている)

【承認】


FDAが外陰膣萎縮症用薬を承認
(2016年11月17日発表)

FDAは、Intrarosa(prasterone)を承認した。閉経に伴う外陰膣萎縮の症状である、中重度性交痛の治療に用いる。prasteroneは新規活性成分だが、DHEA(dehydroepiandrosterone)として健康食品などにも用いられているアンドロゲンを製剤化したもの。カナダのEndoCeutics社の製品。

リンク: FDAのプレスリリース

【医薬品の安全性】


AHA:セレコックスの安全性試験がやっと終了
(2016年11月13日発表)

Celebrex(celecoxib、和名セレコックス)の心血管安全性試験、PRECISIONの結果がやっと、AHAとNew England Journal of Medicine誌で発表された。04年にMSDのVioxx(rofecoxib)が心血管副作用を理由に販売中止になったことが発端で06年にFDAの要請に基づいて開始されたもの。

当初は11年にも結果が判明する見込みだったが、イベント発生率が想定より低く治験離脱が多かったため、ハードルを引き下げたにも関わらず結局10年かかった。Celebrexは既に米国ではGE化しており、結果がどちらでもファイザーの収益影響は小さい。

この試験は、変形性/リウマチ性関節炎で心血管疾患又はリスク因子を持つ患者23081人を、Celebrex(100mgを一日二回)、naproxen(375mg一日二回)、 ibuprofen(600mg一日三回)の三群に割付けて、主要有害心血管イベント(心血管疾患による死亡、心筋梗塞、脳卒中)のリスクを比較したもの。

各群の発生率は2.3%、2.5%、2.7%となり、Celebrexはnaproxenと比べてハザードレシオ0.93、95%信頼区間0.76~1.13、統計的に非劣性だった。ibuprofen対比でもそれぞれ0.85、0.70~1.04となっている。サプライズではないが、胃腸イベントはCelebrex群が一番少なく、腎臓イベントはibuprofenが多かった。

この試験の難点は、被験者の心血管疾患のリスクがあまリ高くないこと、期中に服用を止めた患者が68%と多いこと、追跡打ち切り例が27%もあることなど。当時のCox-II阻害剤バッシングを考えると、心血管疾患のリスクが高い患者を多数組入れるのは難しかっただろう。鎮痛剤なので状態の良い時は飲まないだろうしほかの薬にスイッチするために治験を離脱した人も多かっただろう。結局、このような結果になるのは止むを得ないことであり、10年前に危惧されたことなのだが、

それでも行うことに意義がある

と私は思う。

リンク: Nissenらの治験論文(NEJM、オープンアクセス)




今週は以上です。

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2016年11月13日

2016年11月13日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • 脊髄性筋萎縮症の第三相試験が成功 
  • キイトルーダによる膀胱癌二次治療の延命効果は化学療法を凌ぐ 
  • エマウス、鎌状赤血球症治療薬を承認申請 
  • CHMP、CSLベーリングのA型血友病薬などに肯定的意見 
  • BMSのオプジーボが米国で頭頸部癌の二次治療に適応拡大 
  • ギリアド、ベムリディが米国で承認 
  • ファイザー、IbranceがEUで承認 
  • アムジェン、パーサビブがEUで承認 


【新薬開発】


脊髄性筋萎縮症の第三相試験が成功
(2016年11月7日発表)

バイオジェンとIonis Pharmaceuticals(Nasdaq:IONS)は、Spinraza(nusinersen)の第三相II型脊髄性筋萎縮症試験が成功したと発表した。I型用に承認申請中だが、FDAから前倒しで結論を出す旨の連絡があったことも明らかにした。年末あるいは来年第1四半期の発売に向けて準備を進めている由だ。

脊髄性筋萎縮症のうち、生後3週間から7ヶ月までの時期に発症するI型とそれ以降の幼児期に発症するII型は、脊髄神経細胞の機能に必要なSurvival Motor Neuronの遺伝子、SMN1の欠損が関与していることが多い。キャリアは50人に一人だが、両方の親から引き継ぐと発症する。日米欧の患者は30000~35000人と推定されている。

nusinersenは、SMN2遺伝子のスプライシングを変えることによって翻訳が途中で終わるのを防ぎ、Survival Motor Neuronを発現させる。アンチセンス薬のスペシャリストであるIonisが創製し、バイオジェンがライセンスした。

第三相はI型の試験が先に成功、今年9月に米国でローリング承認申請が完了。加速審査だが審査期限は公表されていない。EUも承認申請が受理され、加速審査を受ける。この試験は日本の施設も参加した。

今回のII型試験は、2~12歳の歩行不能患者126人を組入れて15か月間治療したところ、HFMSE(Hammersmith Functional Motor Scale Expanded)が4ポイント改善。シャム群(髄腔内投与なので偽薬は用いず投与するふりをしただけ)は1.9ポイント悪化し、統計的に有意な差があった。このスケールは3ポイント以上の差があれば臨床的に意味がある由で、臨床的にも合格点を取ったことになる。

バイオジェンはグローバルなEAPを開始する予定。承認を待つ間、規制当局の許諾を得た上で患者に投与することが可能になる。

リンク: バイオジェンのプレスリリース

キイトルーダによる膀胱癌二次治療の延命効果は化学療法を凌ぐ
(2016年11月12日発表)

MSDは、Keytruda(pembrolizumab)の第三相尿路上皮腫瘍二次治療試験のデータをSITC(Society for Immunotherapy of Cancer)年次会議で発表した。全生存期間が化学療法を有意に上回る、良い結果だった。

このKEYNOTE-045試験は、切除不能・転移性尿路上皮腫瘍で白金薬による一次治療を既に受けた患者を組入れて、200mgを3週間に一回投与する群と、paclitaxel、docetaxel、vinflunineの中から医師が選んだ薬を使う化学療法群の全生存期間とPFS(無進行生存期間)を比較したもの。独立データ監視委員会が全生存期間の中間解析で成功認定したことが10月に発表されている。

ハザードレシオは0.73、p=0.0022、メジアン生存期間は10.3ヶ月で化学療法群は7.4ヶ月だった。PFSの中央値の差は1.1ヶ月のみであまり大きくない。このデータは全ユニバースの解析だが、PD-L1陽性患者だけの全生存解析はハザードレシオ0.57、p=0.0048、メジアン生存期間8.0ヶ月対5.2ヶ月となっている。陽性患者のほうが恩恵が大きそうだが陰性に効果がないようには見えない。

尿路上皮腫瘍は抗PD-1/PD-L1抗体の代表的な用途になった。ロシュのTecentriq(atezolizumab)はこの二次治療で初承認。BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab)も第二相二次治療試験のデータに基づいて欧米で承認申請された。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認申請】


エマウス、鎌状赤血球症治療薬を承認申請
(2016年11月8日発表)

米国のエマウスライフサイエンスは、L-グルタミンを鎌状赤血球症治療薬として承認申請しFDAに受理されたと発表した。優先審査か否かは未連絡。EUでも承認申請の計画。

経口液用粉末で、NutreStoreという製品名で、短腸症候群の治療に遺伝子組換え型成長ホルモンと併用することが米国等で承認されている。米国の医療施設で実施された鎌状赤血球症の第三相試験では、鎌状赤血球クリーゼや入院の頻度を減らすことに成功した由だ。

リンク: エマウスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMP、CSLベーリングのA型血友病薬などに肯定的意見
(2016年11月11日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月の会議でCSLベーリングのAfstylaなどの新薬に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: EMAのプレスリリース

CSLベーリングのAfstyla(lonoctocog alfa)は遺伝子組換え型ヒト単鎖第VIII因子。A型血友病の出血の治療や予防に用いる。既存の全長第VIII因子よりもvWF親和性が高く、安定的。Afstylaをルーチン予防に用いる場合は週2~3回の投与で済む。米国では今年5月に承認された。

血友病では出血リスクの高い患者に予防目的でルーチン投与する手法が普及した。市場が大きいため投与頻度の少ない新薬が続々と開発・発売されている。類薬では、ノボ ノルディスクのNovoEight(turoctocog alfa)が週2~3回、バイエルのKovaltryやシャイアが買収したバクスアルタのAdynovateは週2回、バイオジェンのEloctate(efmoroctocog alfa)が3~5日に一回、となっている。

リンク: EMAのプレスリリース

ノボ ノルディスクのFiasp(insulin aspart)も肯定的意見を受けた。即効性インスリンNovoRapidの新製剤で、添加剤(ビタミンとアミノ酸)を加えることにより初期の吸収速度や血糖降下作用の発現を向上、食中食後の投与を可能にした。管理放出型とミールタイム用の二種類を用いる患者のミールタイム用途や、インスリン・ポンプでの使用を想定している模様。

リンク: ノボのプレスリリース

サノフィのSuliqua(lixisenatideとinsulin glargine)も肯定的意見。GLP-1作用剤Lyxumiaと管理放出性インスリンLantusの活性成分のプリミックスで、二型糖尿病の血糖治療に用いる。インスリンは血糖管理の状況を見ながら用量を加減するのが本来の使い方だが、プリミックスは細かな調整ができないのが難点。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: サノフィのプレスリリース

ギリアド・サイエンス(Nasdaq:GILD)のVemlidy(tenofovir alafenamide fumarate、略称TAF)はB型肝炎治療に肯定的意見を得た。HIVやHBVの治療に用いられているViread(tenofovir disoproxil fumarate、略称TDF)の親戚で、どちらも体内でtenofovirに変換されて活性化するプロドラッグだが、TAFのほうが安定性や分布がよいため投与量は10分の1で足りる。腎臓や骨の副作用リスクも緩和された。

リンク: ギリアドのプレスリリース

適応拡大では、ノバルティスのArzerra(ofatumumab)を再発性慢性リンパ性白血病(CLL)の二次治療にfludarabine及びcyclophosphamideと三剤併用することも支持された。ジェンマブが創製した抗CD20完全ヒト化抗体で、グラクソ・スミスクラインが承認を獲得、発売したが、後にノバルティスに腫瘍学部門を売却した。

最初の承認はfludarabineとalemtuzumabに反応しなかった難治性CLLに単剤投与、次の承認はCLLの一次治療を受ける、fludarabineベースのレジメンが適さない患者に、chlorambucilまたはbendamustineと併用。最初と最後が先に承認されたことになる。

リンク: EMAのプレスリリース

さて、PTC Therapeutics(Nasdaq: PTCT)のTranslarna(ataluren)はデュシェンヌ型筋ジストロフィー用薬として14年にEUで条件付き承認されたが、第三相試験がフェールしたため、販売許可が更新されるかどうか注目されていた。今回、CHMPはPTCにセカンドチャンスを与えることを発表した。もう一度臨床試験を行って結果を2021年第1四半期までに提出する。前回の第三相試験は2013年開始、15年に結果が判明したので、5年間の猶予は潤沢だ。

リンク: PTCのプレスリリース

【承認】


BMSのオプジーボが米国で頭頸部癌の二次治療に適応拡大
(2016年11月10日発表)

BMSのOpdivo(nivolumab)を難治性・転移性頭頸部扁平上皮腫の二次治療に用いる適応拡大がFDAに承認された。第三相試験の中間解析では、メジアン生存期間が7.5ヶ月と実薬対照群(cetuximab、MTX、docetaxelなどの中から医師が選択)の5.1ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.70、統計的に有意だった。頭頸部癌の一部はヒトパピローマウイルス(HPV)感染との関連が疑われているが、HPV陽性患者ではハザードレシオ0.56、陰性でも0.75と、どちらも点推定値は1を下回った。ただし、陰性患者の95%上限は1を超えるので、有意性は明確ではない。

Opdivoは小野薬品が日韓台で実施した第三相胃癌サルベージ試験も成功したことが発表された。データは未発表。

リンク: BMSのプレスリリース

ギリアド、ベムリディが米国で承認
(2016年11月10日発表)

ギリアド・サイエンスはVemlidy(tenofovir alafenamide fumarate)が米国で慢性B型肝炎の治療に承認されたことを発表した。上記のように、Vireadの類薬だが用量が10分の1で足り分布が良いため腎臓や骨の副作用が小さい。米国ではVireadと同じ価格で発売されるようだ。日本でも承認申請済み。

リンク: ギリアドのプレスリリース

ファイザー、IbranceがEUで承認
(2016年11月10日発表)

ファイザーは、Ibrance(palbociclib)がEUで承認されたと発表した。FDAは第二相試験のデータに基づいて15年にエストロゲン受容体陽性her2陰性の閉経後末期乳癌の一次治療薬としてletrozoleと併用することを承認したが、EUは第三相試験の結果を待って、この用途と二次治療にfulvestrantを併用する用法を閉経を問わずに承認した。

細胞周期進行に関与するCDK4、CDK6というキナーゼを阻害する経口剤。前臨床でアロマターゼ阻害剤などの効果をブーストする作用が見つかり、展望が開けた。一次治療の第三相試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン24.8ヶ月とletrozoleだけの群の14.5ヶ月を上回り、二次治療試験では11.2ヶ月とfulvestrantだけの4.6ヶ月を上回った。

リンク: ファイザーのプレスリリース

アムジェン、パーサビブがEUで承認
(2016年11月11日発表)

アムジェンはParsabiv(etelcalcetide、和名パーサビブ)がEUで二次性副甲状腺機能亢進症の治療薬として承認されたと発表した。透析期慢性腎疾患の患者に用いる。カルシウム感受受容体を作動する小分子薬で、副甲状腺ホルモンの分泌を抑制し、血清リン濃度を低下させる。週3回静注。透析が終わった後に投与できるので簡便。

同社のSensipar(cinacalcet、和名レグパラ)と比較した臨床試験では、副甲状腺ホルモン抑制奏効率が非劣性だった。治療時発現有害事象は症候性低カルシウム血症や心不全が若干多かった。

米国でも申請されたが審査完了通知を受領した。日本は小野薬品が導入、10月に第一部会を通過した。

リンク: アムジェンのプレスリリース




今週は以上です。

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2016年11月6日

2016年11月6日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ノバルティスがCDK4/6阻害剤を承認申請 
  • メルク、抗PD-L1抗体をEUでメルケル細胞腫に承認申請 
  • 皮注用リツキサンを米国でも承認申請 
  • FDA諮問委員会、solithromycinの評価は分かれた 


【承認申請】


ノバルティスがCDK4/6阻害剤を承認申請
(2016年11月1日発表)

ノバルティスはLEE011(ribociclib)を米国で承認申請し受理されたと発表した。優先審査を受ける。ファイザーのIbrance(palbociclib)と同じCDK4/6阻害剤で、細胞周期進行に関わる酵素の機能を妨げることによって癌細胞の増殖を抑制、アポトーシスを誘導する。適応はホルモン受容体陽性、her2陰性の進行性転移性閉経後乳癌。一次治療薬として、アロマターゼ阻害剤Femara(letrozole)と併用で600mgを一日一回、3週間経口投与して1週間休む。

第三相試験ではPFS(無進行生存期間)をletrozole単剤投与群と比較したが、中間解析でハザードレシオ0.556、p=0.000003、サブグループ全てで改善し、独立データ監視委員会が成功認定した。グレード3以上の主な有害事象は骨髄抑制と肝機能検査値異常上昇。軽度の不整脈も見られるようだ。

乳癌用薬の市場は早期乳癌の術後補助療法向けが一番大きいが、切除が成功し治癒した患者が対象なので高い安全性が求められる。LEE011はどうだろうか。

LEE011はノバルティスがAstex Pharmaceuticals(後に大塚製薬が買収)と行った細胞周期制御に関する共同研究の成果。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

メルク、抗PD-L1抗体をEUでメルケル細胞腫に承認申請
(2016年10月30日発表)

ドイツのメルクと米国のファイザーは、MSB0010718C(avelumab)を転移性メルケル細胞腫用薬としてEUに承認申請し、受理されたと発表した。メルケル細胞腫は進行性の皮膚癌の一種で、5年生存率は20%以下といわれる。希少疾患でEUの推定患者数は2500人。

avelumabはPD-L1を標的とする完全ヒト化抗体。承認申請の根拠となった第二相の二次治療試験では、88人に10mg/kgを二週間に一回投与したところ、独立放射線学委員会の査読に基づく確認客観的反応率(cORR)が31.8%、完全反応8人、部分反応20人だった。深刻な治療関連有害事象は腸炎、点滴反応、アミノトランスフェラーゼ上昇、軟骨石灰化症、滑膜炎、間質性腎炎など。尚、この試験はPD-L1陽性でない患者も組み入れた。

この二社は2年前からPD-1/PD-L1を標的とする抗体医薬のパイプラインを持ち寄って共同研究・開発を行っている。巨大な経営資源を生かして、非小細胞性肺癌や胃癌、腎細胞腫、卵巣癌、尿路上皮癌など多数のavelumabの第三相試験を実施中。

リンク: 両社のプレスリリース

皮注用リツキサンを米国でも承認申請
(2016年11月3日発表)

ロシュの米国子会社であるジェネンテックは、Rituxan(rituximab、和名リツキサン)の皮注用新製剤を米国で承認申請し受理されたことを発表した。Rituxanは米国で97年に承認された抗CD20キメラ・モノクローナル抗体で、非ホジキン型リンパ腫や慢性リンパ性白血病、リウマチ性関節炎などの治療に用いられる。血液癌では維持療法も承認されているが、点滴静注に2時間以上かかることがネックだ。皮注用は5分で、ready-to-useなので利便性が高い。

皮膚は強力な外敵排除機構が存在するため高分子薬を投与してもブロックされてしまう。皮注用RituxanはHalozyme(Nasdaq:HALO)が開発した遺伝子組換え型ヒト・ヒアルロン酸分解酵素、rHuPH20を同時に投与することで速やかな吸収を可能にした。EUでは14年に承認。her2陽性乳癌用薬Herceptin(trastuzumab)もrHuPH20を用いる皮注用製剤が13年にEUで承認された。

リンク: ジェネンテックのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会、solithromycinの評価は分かれた
(2016年11月4日発表)

Cempra(Nasdaq:CEMP)はCEM-101(solithromycin)を市内感染細菌性肺炎の治療薬として欧米で承認申請中。FDAは11月4日に抗微生物薬諮問委員会を招集したが、賛成7人、反対6人と意見が分かれた。効果があることでは全員一致したが、肝毒性の検討が不十分であることも一人を除く全員が同意した。

経口剤と静注用の二製剤が承認申請され前者の審査期限は12月27日、後者は28日となっているが、Ketek(telithromycin、和名ケテック)の苦い経験があるので、FDAは慎重なスタンスを取るのではないか。

Ketekはアベンティスが創製した抗生薬で、マクロライド系の派生であるケトライド系の第一号とされた。01年にドイツ、03年に日本、04年に米国で市中感染肺炎や急性気管支炎、急性副鼻腔炎などの治療に承認されたが、疫学研究で他の抗生薬より肝不全リスクが高い疑いが浮上、意識喪失などの深刻な有害事象も見られっため、用途が限定された。

FDAの承認がEUや日本より遅かったのは、肝毒性を懸念してアベンティスに2万例以上の大規模な臨床試験を行わせてリスクが既存薬と比べて著しく高くないことを確認させたからだが、この試験に多くの患者をエントリーした医師が不正報告を行い真実を覆い隠してしまった。アベンティス側は早い段階で不正に気付いていたがFDAに報告しなかった、という報道を当時、読んだことがある。

ひどい話だ。バルサルタンは特別な長所がないだけでARBとしての効能は確立している。それに対して、深刻な副作用の隠蔽は人類全体、後世も含めれば何十億人、何百億人に対する犯罪であり、罪ははるかに重い。

solithromycinはOptimer Pharmaceuticalsからライセンスしたフルオロケトライド系の抗生物質。日本は富山化学が導入し第三相試験中。リボソームの結合箇所がマクロライド系は一ヶ所、Ketekは二ヶ所であるのに対して、三ヶ所あり、マクロライド耐性菌にも効果が期待できる。力価自体もin vitroでazithromycinの16倍と高いようだ。

第三相市中感染細菌性肺炎試験ではフルオロキノロンのmoxifloxacinを対照薬として細菌学的反応率や臨床的奏効率が非劣性だった。治療関連有害事象の発生率は34%対13%で高かったが、マクロライド系と同様に点滴箇所痛が目立ったようだ。肝機能検査値異常の発生率も若干高く、FDAの分析によると、Ketekと比べても高い。このため、FDAは、Ketekと同様な大規模な試験の実施を求める可能性がありそうだ。

画期的な抗生薬が登場してもしばらくすると耐性菌が見つかる、という状態なので新薬のニーズは高い。しかし、深刻な副作用があるならば、メリットも確実であることが望まれる。上記のように抗生剤の臨床試験は非劣性試験が多いが、もしmoxifloxacin耐性菌が多いならば、新薬のほうが奏効率が高くなるはずだ。本当にキノロンやマクロライドが効かない菌に有効なのか?奏効率が同じだということは、キノロンやマクロライドほど効かない菌もあるのだろうか?

リンク: Cempraのプレスリリース




今週は以上です。

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