2016年10月2日

2016年10月2日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • Kite、CAR-Tの承認申請をFDAと相談へ 
  • アムジェン、抗CGRP受容体抗体の片頭痛予防試験が成功 
  • 抗IL-23p19抗体が第三相でヒュミラに勝った 
  • 経口カンナビジオールの第三相がまた成功 
  • 第三のMEK阻害剤・BRAF阻害剤併用法が浮上 
  • カイプロリス、今度はベルケイドに勝てず 
  • バイオジェン、脊髄性筋萎縮症用薬を承認申請 
  • リジェネロンとサノフィがまた新薬承認申請 
  • JNJ、イムブルビカを辺縁帯リンパ腫に適応拡大申請 
  • アストラゼネカ、Recentinの欧州申請を撤回 
  • ステラーラをクローン病に用いることが承認 


【新薬開発】


Kite、CAR-Tの承認申請をFDAと相談へ
(2016年9月26日発表)

Kite Pharma(Nasdaq:KITE)は、KTE-C19の第2相リンパ腫試験の事前に計画されていた中間解析が良好な結果になったことを明らかにした。承認申請に向けてFDAと相談する考え。

KTE-C19はCD19に結合する抗体の可変領域と膜貫通ドメイン、そしてT細胞に活性化刺激を送るCDゼータとCD28をリンカーで繋げたもの。B細胞リンパ腫のようなCD19発現腫瘍に対するT細胞の攻撃を強化する。

今回の中間解析は第1/2相ZUMA-1試験のフェーズIIポーションが対象。コフォートが二つあり、一つは化学療法難治性びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、もう一つは転換濾胞性リンパ腫(TFL)と原発性縦隔大細胞型B細胞性リンパ腫(PMBCL)で、この三種類に承認申請する意図だ。

DLBCLコフォート51人ではORR(客観的反応率)76%、完全寛解率47%だった。3ヶ月経過時点では各39%と33%となっており、こちらの方が適切な数値かもしれない。TFLとPMBCLのコフォート11人ではORR91%、完全寛解率73%、3ヶ月経過時点の評価はどちらも64%。

両コフォートの合計でグレード3以上の有害事象は好中球減少症(熱性を含む)、貧血、血小板減少症、脳症、サイトカイン放出症候群、神経学的毒性など。有害事象による死亡は2例で、血球貪食性リンパ組織球症と心停止だった。

リンク: Kiteのプレスリリース

アムジェン、抗CGRP受容体抗体の片頭痛予防試験が成功
(2016年9月28日発表)

アムジェンは、AMG 334(erenumab)の第三相片頭痛予防試験、ARISEが成功したと発表した。70mg皮注を4週間毎に12週間に亘って投与したところ、片頭痛発生日数(最後の4週間の集計、ベースライン値は8日)が2.9日減少し、偽薬群の1.8日減少より有意に優れていた。

AMG 334は、片頭痛発作時に増加し鎮静化すると減少する、calcitonin gene-related peptideの受容体を標的とする完全ヒト化抗体。中枢神経領域におけるノバルティスとの共同開発提携の対象で、ノバルティスは北米・日本以外の販売権を持っている。

リンク: アムジェンのプレスリリース

抗IL-23p19抗体が第三相でヒュミラに勝った
(2016年10月1日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、ウイーンで開催されたEuropean Academy of Dermatology and Venereologyで、CNTO 1959(guselkumab)の第三相中重度プラク乾癬試験の結果を発表した。偽薬群だけでなく、実薬であるアッヴィのHumira(adalimumab)と比べても有意に優れていた。

CNTO 1959は、ドイツのMorphoSys社がHuCALヒト・コンビナトリアル抗体ライブラリーを用いて発見した、IL-23のp19サブユニットを標的とするHuCAL抗体。今回のVOYAGE 1試験では、100mgを8週間毎(但し2回目は4週間後)に皮注したところ、主評価項目である16週間後のIGA有効率が85.1%と偽薬群の6.9%を上回り、共同主評価項目であるPASI90達成率も73.3%対2.9%でどちらも有意に優れていた。

二次的評価項目としてHumira群との比較が行われた。IGA有効率65.9%、PASI90は49.7%に留まり、CNTO 1959が有意に優れていた。

深刻な有害事象の発生率は2.4%で、偽薬群の1.7%、Humira群の1.8%より少し高い。試験薬とHumiraは最長48週間投与したが、心筋梗塞は両群1例、癌はCNTO 1959群で2例発生した。この試験だけでは何とも言えないが、後期第二相でも主要有害心血管事故が3例、癌が1例発生しており、全対照試験のプール分析結果が注目される。

リンク: ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

経口カンナビジオールの第三相がまた成功
(2016年9月26日発表)

英国のGW Pharmaceuticals(Nasdaq:GWPH)は、Epidiolexの第三相レノックス・ガストー症候群試験の成功を発表した。既にもう一本の試験とDravet症候群試験も成功しており、来年上期に米国で承認申請する予定。

Epidiolexは大麻の成分の一つであるカンナビジオール(CBD)を経口剤化したもの。今回の試験では、平均で3種類の抗癲癇薬を併用しても発作を十分に防げないでいる患者225人を偽薬、一日10mg/kg、同20mg/kgの三群に割付けて14週間治療したところ、失立発作頻度(4週間当り、ベースライン値はメジアン85回)が各群17%、37%、42%減少し、両用量とも偽薬比有意に優れていた。

有害事象による治験離脱は各群1人、1人、6人。深刻な有害事象は8人、13人、13人で発生し、治療関連と判定されたのは0、2人、5人。高用量は忍容性が悪化するように見える。

リンク: GW社のプレスリリース

第三のMEK阻害剤・BRAF阻害剤併用法が浮上
(2016年9月26日発表)

米国コロラド州のArray BioPharma(Nasdaq:ARRY)とフランスのPierre Fabreは、BRAF阻害剤LGX818(encorafenib)とMEK阻害剤MEK162(binimetinib)の第三相併用試験が成功したと発表した。

BRAF-V600変異陽性の末期切除不能・転移性黒色腫に対するPFS(無進行生存期間)延長効果を検討したもので、LGX818(450mg一日一回)とMEK162(45mgを一日二回)を経口投与した群はメジアン14.9ヶ月、活性対照薬であるロシュのZelboraf(vemurafenib)を投与した群は7.3ヶ月で、ハザードレシオは0.54(95%信頼区間0.41-0.71)となり有意に上回った。一方、LGX818モノセラピー(300mg一日一回)は9.6ヶ月となり、この比較では併用しても効果が有意に高まらなかった。

MEK162は今年6月にモノセラピーで承認申請済み。LGX818は、300mgとMEK162の併用試験の結果が出てから承認申請することになるのではないか。今回のデータを見る限りでは有効ではあるがそれほど有望には見えない。BRAF-V600変異陽性悪性黒色腫にBRAF阻害剤とMEK阻害剤を併用する手法は既にロシュとノバルティスが実用化しており、併用で単剤に勝つだけではアピールが弱い。

Array社は元々、ノバルティスと共同開発していたが、ノバルティスがグラクソ・スミスクラインとアセットスワップを行ってBRAF阻害剤やMEK阻害剤などの腫瘍学ポートフォリオを取得したため、反トラスト局の命令により権利を返還した。

リンク: Array社のプレスリリース

カイプロリス、今度はベルケイドに勝てず
(2016年9月27日発表)

アムジェンは、Kyprolis(carfilzomib、和名カイプロリス)の第三相一次治療試験がフェールしたと発表した。実薬対照優越性試験がフェールしたという話なので有効性が否定された訳ではないが、開発段階で期待されたほどの薬ではないというエビデンスがまた積み重ねられた。今回の併用レジメンは忍容性があまりよくない可能性がありそうだ。

この試験は、造血幹細胞移植に不適な多発骨髄腫の一次治療としてKyprolis、melphalan、prednisoneを併用するKMPレジメンを、先輩格の類薬である武田薬品/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib)を用いる代表的なVMPレジメンと比較したもの。Kyprolisはレジメンによって様々な用量、増量ペース、投与サイクルが採用されているが、KMPではdexamethasoneを併用するKdレジメンより低量を用いている。

結果は、PFS(無進行生存期間)が22.3ヶ月、VMPは22.1ヶ月でハザードレシオは0.91(95%CI:0.75-1.10)となり、大差なかった。全生存期間の解析はイベント数がまだ所定に達しておらず未成熟だが、ハザードレシオ1.21(95%CI:0.90-1.64)で成功しそうな感じはない。有害事象データを見ると、致死的な治療時発現有害事象の発生率が6.5%とVMPの4.3%を上回っている。

優越性試験で有意差が出ないことは非劣性試験で有意差が出ないのとは意味が違うので、この試験だけに基づいて適応拡大申請しても承認されないだろう。幸い、臨床腫瘍学ではオフレーベル使用が盛んであり権威のあるコンペンディアやガイドラインに収載されていれば医療保険の対象になることが多い。KMPの人気は低下するだろうが、多発骨髄腫は次々と新薬、新レジメンが登場しており、VMP自体が米国では減ってきている様子だ。

従って、忍容性に関してこれ以上ネガティブな話が出ない限り、需要に与える影響は限定的だろう。

リンク: アムジェンのプレスリリース

【承認申請】


バイオジェン、脊髄性筋萎縮症用薬を承認申請
(2016年9月26日発表)

バイオジェン(Nasdaq:BIIB)とIonis(Nasdaq:IONS)は、 脊髄性筋萎縮症(SMA)用薬IONIS-SMN Rx(nusinersen)のローリング承認申請が完了したと発表した。FDAには優先審査も求めた。EUでも承認申請の予定で、既に加速審査が決まっている。

SMAは神経筋の成長・機能に係るSurvival Motor Neuronの遺伝子、SMN1の欠損が関与している。キャリアは50人に一人と多いが、ホモ接合型が発症する。nusinersenは、SMN2遺伝子のエクソン7をスキップさせスプライシングを変えることによって、本来は作れないはずのSurvival Motor Neuronを作らせるもの。月齢7ヶ月未満の幼児発症型を対象とした第三相試験(日本の施設も参加)が中間解析で成功、今回の承認申請に至った。

Ionis(ISISから社名変更)が創製、バイオジェンが今年8月にオプト・イン・オプションを行使してライセンスした。

リンク: 両社のプレスリリース

リジェネロンとサノフィがまた新薬承認申請
(2016年9月26日発表)

抗体医薬に係る基礎技術を持つ会社の強みは、多くのパイプラインを創製できることだ。バイオ薬の特許は製法に係るものが多く、全く異なる方法で作る技術があれば、他社と同じような薬を開発できる。

リジェネロン(Nasdaq:REGN)はそのような会社の一つで、08年に抗IL-1受容体抗体Arcalyst(rilonacept)が初承認された後も、11年にVEGF受容体融合蛋白Eylea(aflibercept)が承認、12年に同じ活性成分が抗癌剤Zaltrap(ziv-aflibercept)として承認、15年に抗PCSK9抗体Praluent(alirocumab)が承認。

今年に入って抗IL-6受容体アルファ・サブユニット抗体REGN88(sarilumab)を承認申請し、更に今回、抗IL-4受容体アルファ・サブユニット抗体のDupixent(dupilumab、開発コードREGN668/SAR231893)をアトピー性皮膚炎の治療薬として米国で承認申請し受理されたことを発表した。審査期限は来年3月29日。

管理不良中重度アトピー性皮膚炎の第三相試験の論文もNew England Journal of Medicine誌に刊行された。二本の試験で奏効率が36~38%と偽薬群の8~10%を大きく上回った。有害事象は注射箇所反応や結膜炎。感染症は増えなかった。皮注用で負荷用量600mg、維持用量は300mg。投与頻度は週一回と二週に一回の二つがテストされたが、効果は大差なさそうだ。

リンク: 両社ののプレスリリース
リンク: E. Simpsonらの治験論文(New England Journal of Medicine、フリーアクセス)

JNJ、イムブルビカを辺縁帯リンパ腫に適応拡大申請
(2016年9月26日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはImbruvica(ibrutinib、和名イムブルビカ)を辺縁帯(マージナル・ゾーン)リンパ腫の二次治療薬として米国で適応拡大申請した。第二相試験に基づくもので、データは今後、学会発表される見込み。辺縁帯リンパ腫はリンパ節や唾液腺、肺などの辺縁帯に発生するもので、非ホジキンリンパ腫の12%を占める由。

リンク: JNJのプレスリリース

【承認審査・委員会】


アストラゼネカ、Recentinの欧州申請を撤回
(2016年9月21日発表)

アストラゼネカはVEGFR阻害剤Recentin(cediranib)を再発性白金薬感受性卵巣癌向けにEUで承認申請していたが、撤回したことを公表した。申請はICON6試験に基づくもので、Lancetに治験論文も刊行されているのだが、忍容性に問題があったのかもしれない。

リンク: アストラゼネカのプレスリリース

【承認】


ステラーラをクローン病に用いることが承認
(2016年9月26日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンはFDAが抗IL-12/23p40抗体Stelara(ustekinumab、和名ステラーラ)の適応拡大を承認したと発表した。中重度クローン病で免疫調停剤やステロイドに不応不耐の患者に用いる。臨床試験はTNF阻害剤経験者や未経験者の34~56%が奏功した。奏功者に対する維持療法も有効だった。導入は点滴静注、維持療法は皮注が可能。

乾癬や感染性関節炎で承認されている。クローン病用途はEUでも9月にCHMPが肯定的意見を出した。日本でも3月に承認申請。

MedarexがUltiMab技術を用いて創製したもの。BMSが買収したためあまり表面に出てこなくなったが、Regeneronに負けずに多くの抗体医薬を世に出している。

リンク: JNJのプレスリリース





今週は以上です。

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