2016年5月15日

2016年5月15日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • BMS、EUが新規抗癌剤とオプジーボの適応拡大を承認 
  • SOBIとバイオジェン、EUがオルプロリクスを承認 
  • FDA、フルオロキノロンの用途を制限 
  • FDA、オランザピンの重篤皮膚副作用を警告 



【承認】


BMS、EUが新規抗癌剤とオプジーボの適応拡大を承認
(2016年5月11日発表)

BMSはEUが新規抗がん剤のEmpliciti(elotuzumab)と、Opdivo(nivolumab)・Yervoy(ipilimumab)の併用を承認したと発表した。

Emplicitiは骨髄腫細胞やNK細胞に発現する表面分子、SLAM7を標的とする抗体医薬。08年にPDL(後にアッヴィが買収)からライセンスした。多発骨髄腫の二次治療にRevlimid(lenalidomide)及びdexamethasoneと併用する。第三相試験ではPFS(無進行生存期間)がメジアン19.4ヶ月とRevlimid・dexamethasoneだけを投与した群の14.9ヶ月を上回った。主な重篤有害事象は骨髄抑制、肺炎、疲労、下痢、血栓、点滴反応など。

米国では昨年11月に承認、日本でも承認審査中。

Yervoyはマウスにヒトの抗体を発現させる技術を持つメダレックスが創製した抗CTLA-4完全ヒト化抗体。CTLA-4は活性化した細胞傷害性T細胞が発現する表面分子で、抗原提示細胞のCD80/CD86が結合して副刺激を送り込むと、T細胞の活性を抑制する。このCLTA-4を雛形にしてBMSが開発した免疫抑制剤がNulojix(belatacept)やOrencia(abatacept)で、BMSは、09年にメダレックスを24億ドルで買収することによって、免疫副刺激に介入する医薬品におけるアドバンテージを確立した。

Opdivoもメダレックスが小野薬品と共同で開発した抗PD-1完全ヒト化抗体。抗原提示細胞や癌細胞が発現するPD-L1(B7-H1)がイフェクターT細胞に結合して活性を抑制するのをブロックする。

適応は多発骨髄腫。一次治療試験ではPFSがメジアン11.5ヶ月と、Opdivoだけを投与した群の6.9ヶ月、Yervoyだけの群の2.9ヶ月を上回った。米国では今年1月に承認。臨床試験のデータに基づいて試算すると、患者一人当たり薬代は30万ドル超。日本の薬価でも大差ない水準になるだろう。

リンク: BMSとアッヴィのプレスリリース(Empliciti承認)
リンク: BMSのプレスリリース(Opdivo・Yervoy併用承認)

SOBIとバイオジェン、EUがオルプロリクスを承認
(2016年5月13日発表)

Swedish Orphan Biovitrum(STO:SOBI)とバイオジェン(Nasdaq:BIIB)は、EUがAlprolix(eftrenonacog alfa、和名オルプロリクス)を承認したと発表した。B型血友病患者の出血事故の治療とルーチン予防に用いる。

遺伝子組換え型第IX因子と免疫グロブリンの固定領域を細胞融合したもの。通常の第IX因子より半減期が長いので予防用途に適している。最初は7~10日に一回の投与で開始して、出血管理状況を見ながら調整する。

ファルマシアのスピンオフであるBiovitrumがSyntonix社と共同開発、前者をSOBIが買収し、後者はバイオジェンが買収した。米国や日本では14年に承認されたが、EUは小児用も同時に申請するよう求めているため、遅くなった。

リンク: 両社のプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA、フルオロキノロンの用途を制限
(2016年5月12日発表)

FDAはフルオロキノロン系合成抗菌剤に関する安全性情報を発出し、副鼻腔炎や気管支炎、非複雑性尿路感染症には用いないよう勧告した。深刻な副作用のリスクがあるため治療便益が小さい或いは明確ではない疾患に用いるべきではないという判断だ。重篤・難治性疾患や、この三疾患でも他に適切な治療法がない場合は使用可。FDAは製薬会社にレーベル変更を要請した。

FDAの分析によると、フルオロキノロンの全身的投与(錠剤、カプセル、注射)は、腱、筋、関節、神経、中枢神経に係る行動制約的で潜在的に永続的な深刻有害事象と関連している。昨年12月に召集された抗微生物薬諮問委員会・医薬品安全性リスク管理諮問委員会合同会議では、急性細菌性副鼻腔炎、COPD患者の慢性気管支炎の急性細菌性増悪、非複雑性尿路感染症に用いるべきではないと殆どの委員が判定した。

フルオロキノロンを使う時は、刺すような痛みやヒリヒリ感、混乱、幻覚などが起きないか注意するよう患者に伝える必要がある。

リンク: FDAのリリース

FDA、オランザピンの重篤皮膚副作用を警告
(2016年5月10日発表)

FDAは、非定型向精神薬olanzapine(Zyprexa、和名ジプレキサ、の活性成分)の重篤皮膚副作用リスクを警告した。イーライリリーやGE薬会社がレーベル変更を行う予定。DRESS(好中球増多症及び全身性症状随伴薬物反応)と呼ばれる疾患・症状で、1996年の初承認以来、23例がFDA有害事象報告システムに報告されている。うち一名は死亡、23名は入院した。外来薬局で処方を受ける患者は米国だけで年85万人(2015年)いるので、頻度は稀。

発生メカニズムは不詳。薬物代謝能の遺伝子的欠陥や、免疫学的要素が複合的に関与している可能性があり、免疫応答はヘルペスウイルスやエプスタインバーウイルスの再活性化が関与している可能性がある由だ。

服用中にラッシュやリンパ節腫脹、顔面腫脹が発生したら直ぐに医療従事者に相談すべき。

リンク: FDAのリリース




今週は以上です。

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