2016年4月10日

2016年4月10日号


【ニュース・ヘッドライン】

  • ACC:スタチン不耐患者の選択肢 
  • FDA諮問委員会が胆汁性肝硬変治療薬を支持 
  • ギリアド、Descovyが米で承認 
  • EUがGiotrifの適応を拡大 
  • EUがオプジーボの二適応症を承認 
  • FDA、オングリザとネシーナの心不全リスクを通知 

【今週の話題】


ACC:スタチン不耐患者の選択肢
(2016年4月3日発表)

EBMの本旨は、当たり前なことを当たり前で済まさないことだ。スタチン不耐にはスタチン以外のコレステロール治療薬が有効?そりゃそうでしょう。小学生でも分かること、大学入試の問題にもならない。だが、本当にそうなのだろうか?

スタチンは、2001年にセリバスタチンが横紋筋溶解症の懸念からリコールになったため、今でも悪いイメージを持っている人がいる。これまでに数多くの長期アウトカム試験が敢行され、症例数と服用者の比率は数千人に一人と、プライマリーケア用薬でも群を抜いているにも関わらず。

スタチン不耐患者は本当に不耐なのか?単なる食わず嫌いなのではないか?同じコレステロール低下薬でもスタチン以外なら忍容するのか?心臓疾患予防効果は劣後しないか?

この三つの疑問のうち二つに答える臨床試験、GAUSS-3の結果がACC米国心臓学会とJournal of American Medical Associationで発表された。

第一の問いに答えるため、LDL-C高値だがスタチン不耐歴のある491人を組み入れて偽薬とatorvastatinの20mgのクロスオーバー試験を行ったところ、42.6%の患者は筋症状がatorvastatinだけで発生し偽薬では発生しなかった。

臨床試験にはスクリーニングバイアスが付き物だ。過去に重い副作用を経験した人は参加しないだろうし、治験の意義を考えれば、患者が不耐と言ったというだけでは組み入れないだろう。だから42%という数字を全患者の平均値とみなすことはできない。それでも、結構いたという印象だ。

次に、第二の問いに答えるため、不耐患者199人と新たにクレアチニンキナーゼ高値の19人を組み入れて、evolocumab (アムジェンの抗PCSK9抗体、420 mgを月一回皮注)群とezetimibe(10 mgを一日一回経口投与)に2対1割付して24週間治療したところ、LDL-Cが各54.5%と16.7%低下した。

心臓疾患予防効果を調べたわけではないが、取り敢えずLDL-Cは下がることが判明した。

筋症状はezetimibe群の28.8%とevolocumab群の20.7%で発生。それにより投与をやめたのは各6.8%と0.7%だった。油断はできないが、多くの患者が忍容することが判明した

リンク: Nissenらの治験論文(JAMA、オープンアクセス)

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会が胆汁性肝硬変治療薬を支持
(2016年4月7日発表)

FDAの胃腸薬諮問委員会はインターセプト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ICPT)が原発性胆汁性肝硬変(PBC)の治療薬として承認申請したOcaliva(obeticholic acid)を検討し、17人の諮問委員全員が承認を支持した。審査期限は5月29日。

OcalivaはPBCの代表的な治療薬であるウルソデオキシコール酸のアナログで、ファルネソイドX受容体に対する力価が著しく高い。非アルコール性脂肪肝炎(NASH)と二つの適応症に開発されている。PBCではウルソデオキシコール酸に十分に反応しない、あるいは不耐の患者を適応としている。

第三相試験ではアルカリフォスファターゼ及び総ビリルビン正常化率を検討したところ、5mg群も10mg群も46~47%で偽薬群の10%を有意に上回った。尚、総ビリルビンについては元々異常上昇していない患者が多かったため治療効果が明確ではなかった。

忍容性面では重度の掻痒が増加、10mgでは10%が掻痒で治験離脱したが、5mgは1%だった。偽薬群はゼロ。LDL-C値の上昇とHDL-C値の低下も見られた。

Ocalivaは日本では大日本住友製薬がDSP-1747として開発中。

リンク: インターセプトのプレスリリース

【承認】


ギリアド、Descovyが米で承認
(2016年4月4日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)は、FDAがDescovyを12歳以上のHIV-1感染者の治療薬として承認したことを発表した。核酸系逆転写阻害剤emtricitabineとtenofovir alafenamide fumarate(TAF)のコンビ薬。

TAFはtenofovir disoproxil fumarateと同じtenofovirのプロドラッグだが薬物動態が良く少量で副作用を抑えながら治療することができる。HIV/AIDS薬は3A4阻害剤を併用してブーストする薬が少なくないが、そのような薬と併用する場合はTAFの量を減らす。

EUでは2月にCHMPの肯定的意見を得た。日本は日本たばこが今年、、承認申請する計画。

リンク: ギリアドのプレスリリース

EUがGiotrifの適応を拡大
(2016年4月7日発表)

2月のCHMPで肯定的意見を得た適応拡大のうち、今週は、ベーリンガー・インゲルハイムのEGFR・her2阻害剤Giotrif(afatinib)を扁平上皮非小細胞性肺癌の二次治療に単剤投与することが承認された。EGFR活性化変異を持つ非小細胞性肺癌の一次治療単剤療法として先に承認されている。

今回の適応拡大のエビデンスとなったTarceva対照試験では延命効果が有意に上回った。このタイプの患者にTarcevaを使うことが適切なのかどうか、議論の余地がありそうだが、もし偽薬並みの効果がなかったとしてもGiotrifは有意に上回ったのだから、承認されてしかるべきである。とはいえ、もし使えるなら、次のOpdivo(nivolumab)の方が効果が高いだろう。

リンク: ベーリンガーのプレスリリース

EUがオプジーボの二適応症を承認
(2016年4月6日発表)

2月のCHMP肯定的意見では、BMS/小野薬品のOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を扁平上皮以外の非小細胞性肺癌や腎細胞腫の二次治療に用いる適応拡大も承認された。前者は臨床試験でメジアン生存期間が12.2ヶ月と、代表的な二次治療薬であるdocetaxelを投与した群の9.4ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.73だった。これまでは扁平上皮の非小細胞性肺癌限定だったが、対象人口が倍以上に増えることになる。

2%以上の患者で発生した深刻な有害事象は肺炎、肺塞栓、呼吸困難、胸水、呼吸不全。

腎細胞腫試験ではメジアン生存期間が25ヶ月とeverolimus(ノバルティスのmTOR阻害剤Afinitor)を投与した群の19.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.73だった。

リンク: BMSのプレスリリース(腎細胞腫)
リンク: BMSのプレスリリース(肺癌)

【医薬品の安全性】


FDA、オングリザとネシーナの心不全リスクを通知
(2016年4月5日発表)

FDAは二種類のDPP-IV阻害剤の心不全リスクに関する安全性通知を発出した。アストラゼネカのOnglyza(saxagliptin、和名オングリザ)は大規模アウトカム試験SAVORで心不全による入院が有意に増えた(Onglyza群の発生率3.5%、偽薬群2.8%、p=0.007)。

一方、武田薬品のNesina(alogliptin、和名ネシーナ)の大規模アウトカム試験EXAMINE試験では有意な差がなく、一安心したのだが、FDAや諮問委員会は無垢とはみなさなかった。今回のFDA発表によると、心不全入院の発生率は3.9%で偽薬群の3.3%より高かった。統計的に有意ではないが差は0.6ポイントでOnglyzaの0.7ポイントと大差ない。

Nesinaの第三相試験で心不全がしばしば見られたのは、営業戦略上、Actos(pioglitazone)服用患者を多く組入れた影響もあるのではないかと感じていたが、EXAMINE試験に関してはActos服用比率は3%だけなので、関係なさそうだ。

それにしても、この2剤、2アウトカム試験について諮問委員会が検討してから既に1年経つ。FDAが結論を出すのがずいぶん遅かったが、無理もない。心不全の患者は他の薬にスイッチする可能性があるが、もし他のDPP-IV阻害剤にもリスクがあるなら意味がないかもしれないからだ。慎重に検討したはずなので、その結論は重視せざるを得ない。

リンク: FDAの安全性通知



今週は以上です。

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