2016年1月10日

2016年1月10日号


【ニュース・ヘッドライン】


  • ASCO GU:ロシュ、抗PD-L1抗体の膀胱癌データをFDAに提出へ 
  • B型肝炎の新ワクチン、追加第三相試験が成功 
  • CMV予防薬の第三相がフェール 
  • PTC、筋ジストロフィー治療薬の承認申請完了 
  • CTIら、pacritinibのローリング申請完了 
  • 第二の抗IL-6受容体抗体が承認申請 


【新薬開発】


ASCO GU:ロシュ、抗PD-L1抗体の膀胱癌データをFDAに提出へ
(2016年1月8日発表)

ロシュは抗PD-L1ヒト化抗体RG7446/MPDL3280A(atezolizumab)の第二相局所進行性/転移性尿路上皮膀胱癌試験のアップデートデータをASCO米国臨床腫瘍学会の泌尿器生殖器腫瘍シンポジウムで発表するとともに、FDAなど承認審査機関に提出する予定であることを発表した。米国ではこの用途でブレークスルーセラピー指定を受けているので、承認申請することが認められる可能性がありそうだ。

小野薬品/BMSやMSDの抗PD-1抗体が受容体側をブロックするのに対して、抗PD-L1抗体はレガンドに結合・ブロックする。ロシュの開発戦略の特徴は、浸潤免疫細胞のPD-L1発現状況も検査して薬効との関連性を調べていること。今回のデータも発現度2~3(以下、強陽性)、1~3(陽性)、そして全ユニバース(ITT)の三つの切り口で解析している。

この試験は一次治療と再発治療の二つのコフォートがあるが前者はデータがまだ成熟していない。今回、再発治療コフォートのORR(客観的反応率)やPFS(無進行生存期間)のアップデートと、全生存期間のデータが明らかにされた。まず、ORRは強陽性が26%、陽性は18%、ITTは15%。完全反応だけだと各11%、6%、5%。6ヶ月無進行生存率は30%、23%、21%。12ヶ月生存率は48%、39%、36%でメジアン生存期間は11.4ヶ月、8.8ヶ月、7.9ヶ月となっている。

このデータを元に強陽性、弱陽性、陰性の夫々のORRを試算すると、強陽性は100例中26例で26%、弱陽性は107例中11例で10%、陰性は103人中10人で9%となる。やはり、PD-L1高発現癌のほうが得意そうだが、再発癌で他に治療法がない場合は10%でも有益と見なされることが多いので、限定するほどの差ではないだろう。

白金薬後の再発治療で第三相実薬対照試験中で、17年頃に結果が判明する見込み。FDAは延命効果ではなくバイオマーカーに基づいで加速承認する場合、第三相薬効確認試験の組入れがかなりな程度進捗していることを要件としているが、atezolizumabは充足している。このため、第三相試験の開票前に申請・承認される可能性がありそうだ。

リンク: ロシュのプレスリリース

B型肝炎の新ワクチン、追加第三相試験が成功
(2016年1月7日発表)

ダイナバクス・テクノロジーズ(Nasdaq:DVAX)は、B型肝炎予防用ワクチンHEPLISAV-Bの追加第三相試験が成功したと発表した。再承認申請に向かうのではないか。4年前の申請は成就しなかったが、今度は可能性がありそうだ。

HEPLISAVはB型肝炎ウイルスの表面抗原をTLR-9アゴニストと結合して免疫刺激力を強化したもの。既存製品であるGSKのEngerix-Bは三回接種であるのに対して、一ヶ月置いて二回接種で足りる。小児用は混合ワクチンの一部として既に普及しているため、ダイナバクスはアジア旅行者や慢性腎疾患患者、軍需などを想定して開発している。

12年に欧米で承認申請されたが米国は審査完了通知を受領、EUは申請撤回となった。過去の試験で多発血管性肉芽腫やギラン・バレー症候群が発生したことが理由と推測される。治療用医薬品とは異なり、予防用ワクチンは対象が健常者で稀だが深刻な疾患を防ぐことが目的なので、副反応のハードルが高い。既存製品が存在し便利さだけが比較長所である場合は尚更である。発生頻度が十分に低いことを確認するためには、千人に一人のリスクなら数千人、一万人に一人のリスクなら数万人の投与実績が必要だ。

今回の第三相は、18~70歳を対象としたEngerix-B対照試験。抗体保有率は全ユニバースの解析でも二型糖尿病だけでも、非劣性であることが確認され、さらに、優越性の解析も有意だった。安全性面では自己免疫疾患を重点的に監視したが群間の偏りなし、多発血管性肉芽腫やTolosa-Hunt症候群は発生しなかった。高安脈管炎が1例報告されたが、専門家パネルが治験医の診断を否定した。

今回の試験で安全性データベースが1万例を超えた。詳細分析で特に問題がなければ、今度は承認される可能性がありそうだ。

リンク: ダイナバクスのプレスリリース

CMV予防薬の第三相がフェール
(2015年12月28日発表)

Chimerix(Nasdaq:CMRX)はCMX001(brincidofovir)の第三相試験がフェールしたと発表した。造血細胞移植を受けた患者を組み入れてサイトメガロウイルス(CMV)感染症の予防効果を検討したところ、14週間の治療期間中は対照群より少なかったが、その後の10週間は多かった。有意ではないが死亡も多かった。

治療後の発症も死亡例も、GvHD(移植片対宿主病)でステロイドを多く投与した症例が多かった由。患者背景に偏りがあったのかもしれなが、いずれにせよ、臨床試験をやり直す必要がありそうだ。

cidofovirに脂肪を結合して力価を向上、腎毒性を緩和、経口投与を可能にしたもの。In vitroでエボラウイルスに活性が認められ臨床試験が実施されたが、時すでに遅く、被験者不足で中止。今回のCMV予防は本命用途だったが、残念な結果になった。

リンク: Chimerixのプレスリリース

【承認申請】


PTC、筋ジストロフィー治療薬の承認申請完了
(2016年1月8日発表)

PTCセラピュティクス(Nasdaq:PTCT)は、Translarna(ataluren)の米国におけるローリング承認申請が完了したと発表した。特定のタイプのデュシェンヌ型筋ジストロフィーに用いる。欧州では一昨年に条件付き承認されている。

第三相試験の結果提出を以て完了したのだが、この試験自体はフェールしたので承認されるかどうか、不確か。類薬が二品、すでに承認審査中なので、先行事例になりそうだ。バイオマリン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:BMRN)のKyndrisa(drisapersen)はFDA審査官や諮問委員会の支持を得ることはできなかった。Sarepta(Nasdaq:SRPT)のAVI-4658(eteplirsen)は今月22日に諮問委員会の予定。

リンク: PTCのプレスリリース

CTIら、pacritinibのローリング申請完了
(2016年1月5日発表)

CTI BioPharma(Nasdaq:CTIC)とバクスアルタ(NYSE:BXLT)は、pacritinibのローリング承認申請を完了したと発表した。適応は、中高程度リスク骨髄線維症で血小板数がマイクロリットル当たり5万個未満と少ない患者。

JAK2/FLT阻害剤で、先行品であるインサイト/ノバルティスのJakafi(ruxolitinib、和名ジャカビ)と異なりJAK1を阻害しないので、赤血球や血小板を減らすリスクが小さい。勿論、血小板数が正常な患者にも有効だが、第三相試験二本のうち一本しか完了していないので、unmet Medical Needであるこの用途に限定して少しでも早く承認を得る意図。

バクスアルタは米国の利益を折半、海外は単独販売する。

リンク: CTIのプレスリリース

第二の抗IL-6受容体抗体が承認申請
(2016年1月8日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)とサノフィは、REGN88/SAR153191(sarilumab)を米国で承認申請し受理されたと発表した。審査期限は10月30日。抗IL-6受容体で、中重度活性期リウマチ性関節炎の治療に用いる。

抗IL-6受容体抗体といえば中外のヒト化抗体、Actemra(tocilizumab、和名アクテムラ)の類薬ということになる。直接比較試験も行われたので、どの程度の違いがあるのか、ないのか、明らかになるだろう。現時点ではバイオシミラーみたいなものと考えておけばよいだろう。

リンク: リジェネロンらのプレスリリース



今週は以上です。

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