2015年11月22日

2015年11月22日号


【ニュース・ヘッドライン】


  • FDAが遺伝子組換え鮭を承認 
  • ギリアド、Zydeligの延命効果を確認 
  • バイエル、5年IUSを承認申請 
  • CHMPがナルコレプシー用薬などの承認を支持 
  • FDA、武田の多発骨髄腫用薬をスピード承認 
  • FDA、Darzalexもスピード承認 
  • ヴァーテックス、OrkambiがEUで承認 
  • アムジェン、KyprolisがEUで承認 

【今週の話題】


FDAが遺伝子組換え鮭を承認
(2015年11月19日発表)

FDAはAquaBounty Technologies社のAquAdvantageサーモンを承認した。遺伝子組換え(GE)食物で、トウモロコシや大豆など農産物では珍しくなくなったが動物では初。

米国のGE動物の規制は、動物薬の規制に準拠しているようだ。導入される遺伝子を薬の一種とみなして、導入された動物を食べても安全か、動物自身にとっても安全かを審査し、効能を確認する。

AquAdvantageサーモンはキングサーモンの成長ホルモン遺伝子とオーシャン・パウト(ウナギのような魚)のプロモーター遺伝子を組み込んで春夏だけでなく一年中成長するように仕向けたアトランティック・サーモン。米国の鮭養殖業は輸入に圧され衰退したが、養殖期間を短縮化して飼料や人件費を節減することができれば競争力を回復できるかもしれない。

全てメスで、染色体操作により不妊処理してある。カナダとパナマに設置された自然界から隔離された施設で養殖する。た最初の食用動物で、通常のアトランティック・サーモンより早く成体に育つ。

米国はGE食品の表示義務が緩く、栄養学的な特徴などが非GE食品と同じならば表示しなくてよい。だから、『アレルギーを緩和する成分を含有する米』ではなく、『農薬代を節約できるトウモロコシ』のようなGE食品表示不要な製品が主流になっている。FDAはAquAdvantageサーモンは非GEサーモンと同じなので表示不要と判定したが、公聴手続きを開始した。欧州のように開示義務を課す国もあるので、この機会に改めて世論を確認する意図だろう。

リンク: FDAのリリース

【新薬開発】


ギリアド、Zydeligの延命効果を確認
(2015年11月16日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)は、Zydelig(idelalisib)の再発性慢性リンパ性白血病(CLL)試験が予定より早く成功したと発表した。詳細は12月のASH米国血液学会で発表される。このPI3Kデルタ阻害剤は14年に再発性のCLLや低悪性度非ホジキン型リンパ腫用薬として承認されたが、延命・進行抑制効果が確認されたのは今回が初めて。

この115試験はCLLの標準的な二次治療レジメンの一つであるrituximabとbendamustineに更にZydeligを追加したもので、PFS(無進行生存期間)がメジアン23ヶ月と二剤だけの群の11ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.33だった。全生存のハザードレシオも0.55で、何れも95%上限が1を下回りp値は0.05未満だった。

欧米で効能追加申請されることになるだろう。現時点ではrituximab併用しか承認されていないので、用法の選択肢も拡大することになる。

リンク: ギリアドのプレスリリース

【承認申請】


バイエル、5年IUSを承認申請
(2015年11月20日発表)

バイエルは避妊用の低用量ピルや子宮内黄体ホルモン放出システム(IUS)の大手だ。後者は、日本でも14年に過多月経や月経困難症の治療薬として承認されたミレーナと、12~13年に欧米で承認されたSkylaが代表的。

Skylaは黄体ホルモンの放出量を減らしたもので、エストロゲンやプロゲスチンの用量をできるだけ抑えようとする近年の傾向を反映している。弱点は放出期間が最長3年とミレーナの5年より短いこと。今回欧米で承認申請されたLCS-16は最長5年間放出するので、ミレーナにキャッチアップした。臨床試験のパールインデックスは0.29だった。

リンク: バイエルのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPがナルコレプシー用薬などの承認を支持
(2015年11月20日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月の会議で、ナルコレプシー治療薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月以内にEU全域で承認される見込み。

リンク: EMAのプレスリリース

フランスのBioprojet PharmaのWakix (pitolisant)はナルコレプシーの治療に用いる。脱力発作を伴うかどうかは問わない。現在は覚醒剤などが用いられているが、WakixはヒスタミンのH3受容体にアンタゴニスト/インバース・アゴニストとして作用する新作用機序を持つ。臨床試験では日中の傾眠や脱力発作を減らす効果を示した。主な有害事象は頭痛、不眠、悪心。

リンク: EMAのプレスリリース

medac GmbHのSpectrila(asparaginase)はアスパラギンを分解する酵素で、リンパ球増殖時の核酸合成を妨げる。アスパラギナーゼに過敏反応を持つ人に用いるのがバクスアルタ(NYSE:BXLT)のOncaspar (pegaspargase) で、PEG化により作用長期化と免疫原性改善を実現した。どちらも急性リンパ芽球性白血病の多剤併用療法の一部として承認することが支持された。尚、Oncasparはドイツで20年の市販歴を持つ。バクスアルタは7月にSigma-Tauから権利を取得。

UCBのBriviact(brivaracetam)も支持された。癲癇部分発作の治療に用いる。シナプス小胞2A作動剤で、選択性や力価が同社のKeppra(levetiracetam、イーケプラ)より高い。三種類の用量をテストした第三相試験では、28日間部分発作発生率が偽薬比19~24%低下した。発作半減成功率は35~39%で偽薬群の20%を上回った。

リンク: EMAのプレスリリース
リンク: UCBのプレスリリース

ドイツのBirken AGのEpisalvanも肯定的意見。皮膚の中間層損傷の治療に用いる。カバノキ樹皮抽出物で、炎症を調停したり、ケラチノサイトを補助したりして、損傷治癒を早める。

Samsung BioepisのBenepaliも肯定的意見。EU初のEnbrel(etanercept)のバイオシミラーで、リウマチ性関節炎、乾癬性関節炎、軸性脊椎関節炎、プラク乾癬の治療に用いる。関節リウマチの試験ではACR20が80.8%とEnbrelの81.5%と同程度だった。

この会社は韓国のサムソン・バイオロジックスとバイオジェンの合弁で、他にも様々なバイオシミラーを開発・承認申請している。CelltrionもRemicade(infliximab)のバイオシミラーで先行しており、韓国勢の台頭が著しい。

リンク: バイオジェンのプレスリリース

【承認】


FDA、武田の多発骨髄腫用薬をスピード承認
(2015年11月20日発表)

FDAは、武田薬品の米国子会社であるミレニアム・ファーマシューティカルズが開発した経口プロテアソーム阻害剤、Ninlaro(ixazomib cirate)を多発骨髄腫の二次治療薬として承認した。第三相試験を開始したのは2012年、最初の中間解析で成功認定されたのが今年2月、承認申請が7月で審査期間は4ヶ月というスピード開発、スピード承認だ。

この第三相は、前治療歴1~3ラインの再発性難治性多発骨髄腫で過去にRevlimid(lenalidomide)やプロテアソーム阻害剤に抵抗性を示さなかった722人を組入れて、Revlimidと低量dexamethasoneを併用するRdレジメンと共に、偽薬またはNinlaroの4mgを28日サイクルで第1、8、15日に経口投与した。

結果は、Ninlaro群のメジアンPFS(無進行生存期間)は20.6ヶ月、偽薬群は14.7ヶ月でハザードレシオ0.74、統計的に有意だった。全生存の解析は未だのようだ。グレード3以上の有害事象は骨髄抑制、下痢、ラッシュなど。

多発骨髄腫は新薬が続々と登場している。今年はノバルティスのFarydak(panobinostat)が2月に承認され、今週はジョンソン・エンド・ジョンソンのDarzalex(daratumumab)もスピード承認された(次項)。

幹細胞移植不適な場合の代表的なレジメンは武田/JNJのVelcade(bortezomib)か、セルジーンの免疫調停剤であるThalomid(thalidomide)またはRevlimidを使うレジメンで、どちらかを一次治療、もう一つを二次治療に使う。今回の被験者は7割がVelcadeによる前治療歴を持っているので、不応患者以外は二次治療でも武田のプロテアソーム阻害剤を使うことができるようになる。

リンク: FDAのリリース
リンク: 武田薬品のプレスリリース(和文、11/21付)

FDA、Darzalexもスピード承認
(2015年11月16日発表)

FDAは、ジョンソン・エンド・ジョンソンがデンマークのジェンマブから権利を取得して開発・申請した抗CD38完全ヒト化抗体、Darzalex(daratumumab、ジェンマブの開発コードHuMax-CD38)を多発骨髄腫の4次治療薬として承認した。ローリング承認申請が完了したのは今年7月、審査期限は来年3月だったので、これもスピード承認。

薬効のエビデンスは第二相試験の反応率データ。一本は29%、もう一本は36%だった。前者の試験では被験者の95%がプロテアソーム阻害剤にも免疫調停剤にも難治性だった。主な有害事象は点滴関連反応、疲労、悪心、骨髄抑制など。

リンク: FDAのリリース
リンク: JNJのプレスリリース

ヴァーテックス、OrkambiがEUで承認
(2015年11月20日発表)

ヴァーテックス・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:VRTX)はOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)がEUで12歳以上のF508欠損ホモ接合型嚢胞性線維症の治療薬として承認されたと発表した。

嚢胞性線維症はCFTRの遺伝子に欠損や置換が生じ機能が低下・喪失する。F508欠損は一番多いパターンで、両方の遺伝子に持つ12歳以上の患者は12000人と推定されている。lumacaftorはCFTR蛋白が細胞の表面に移行するのを助長し、ivacaftorはCFTRをポテンシエートすると考えられている。臨床試験では一秒量が穏やかに改善、増悪を抑制する作用も見られた。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

アムジェン、KyprolisがEUで承認
(2015年11月19日発表)

アムジェンはKyprolis(carfilzomib)がEUで多発骨髄腫の二次治療薬として承認されたと発表した。武田/JNJのVelcade(bortezomib)と同様な点滴静注用プロテアソーム阻害剤で、末梢神経障害のリスクが小さいと考えられている。Revlimid及びdexamethasoneと三剤併用するので、用途としては武田のNinlaroとバッティングすることになる。米国では12年に承認。日本は小野薬品がライセンス、8月に承認申請した。

アムジェンが13年に104億ドルで買収したオニクス社が09年に8億ドルで買収したProteolixの開発品。

リンク: アムジェンのプレスリリース



今週は以上です。

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