2015年10月4日

2015年10月4日号


【ニュース・ヘッドライン】


  • ロシュ、抗CD20抗体の一次進行型多発性硬化症試験成功
  • ジャズ、肝静脈閉塞性疾患治療薬を米国で再申請
  • サノフィ、リキスミアを米国で承認申請
  • サノフィ、PraluentがEUで承認
  • MSD、Keytrudaが肺炎に承認
  • BMS、ヤーボイとオプジーボの併用が承認

【新薬開発】


ロシュ、抗CD20抗体の一次進行型多発性硬化症試験成功
(2015年9月28日発表)

ロシュはRG1594(ジェネンテックの開発コードPRO70769、一般名ocrelizumab)の第三相一次進行型多発性硬化症試験が成功したと発表した。再発寛解型試験の成功も発表済みで、欧米で承認申請する予定。データは10月9~10日にECTRIMS欧州多発性硬化症学会議で発表される予定。

ocrelizumabは抗CD20ヒト化抗体。同社のRituxan(rituximab)と比べてマウス由来のアミノ酸が少なく過敏反応が起きにくい可能性があるため、自己免疫疾患領域での後継薬となることが期待された。しかし、第三相関節リウマチ試験で日和見感染症が特に日本の施設で増加したため、Rituxanの開発が進んでいなかった多発性硬化症を除いて、開発中止となった。

RituxanのPOC試験が成功した当時と比べると、多発性硬化症の免疫抑制療法は既に普及し薬の選択肢も経口剤を含めて充実した。しかし、一次進行型に有効性を示した薬は初めてなので、どの程度の進行遅延効果があるのか、データ発表が注目される。

リンク: ロシュのプレスリリース

【承認申請】


ジャズ、肝静脈閉塞性疾患治療薬を米国で再申請
(2015年9月30日発表)

ジャズ・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:JAZZ)は、defibrotideを肝静脈閉塞性疾患(VOD)治療薬として米国で承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は16年3月31日。

肝VODは造血幹細胞移植に用いる抗癌剤の深刻な副作用の一つ。defibrotideはブタの小腸粘膜由来の核酸誘導体で血栓溶解作用を持つ。Gentium社が米国で申請したが承認されず、13年に同社を買収したジャズが再挑戦した。EUでは13年10月に例外的環境条項に基づいてDefitelio名で承認されている。

リンク: ジャズのプレスリリース

サノフィ、リキスミアを米国で承認申請
(2015年9月29日発表)

サノフィは、exendin類縁体であるLyxumia(lixisenatide、和名リキスミア)を二型糖尿病治療薬として米国で承認申請した。EUや日本は13年に承認したが、FDAは脳卒中などの心血管有害事象が増加する可能性を懸念、申請撤回となった。その後、ELIXA心血管アウトカム試験でリスクが大きく増加しないことを確認、今回の再申請に至った。

EU承認時の審査文書によると、主要有害心臓イベントのメタアナリシスでは、ハザードレシオが対照群の1.25倍、95%信頼区間は0.67~2.35だった。心臓疾患が倍増する可能性が否定されていないことになる。

信頼区間が広いのでEUや日本のように大目に見ることもFDAのように厳しく考えることも可能だろう。しかし、自分が服用するとしたら話は別だ。他に選択肢があるのに、わざわざ余計な心配を抱え込むようなことは、普通はしない。サノフィや、同様なパターンで承認が遅れたノボや武田には気の毒だが、時間が掛かっても無垢を確認してから発売するのが仁道だろう。

リンク: サノフィのプレスリリース

【承認】


サノフィ、PraluentがEUで承認
(2015年9月28日発表)

サノフィは、リジェネロン(Nasdaq:REGN)と共同開発した抗PCSK9完全ヒト化抗体、Praluent(alirocumab)がEUで承認されたと発表した。原発性の高脂血症や混合異脂血症でスタチンだけでは不十分な患者、あるいはスタチン不耐患者に用いる。米国では7月に承認。日本は8月に承認申請。

高力価スタチンと同程度の高いLDL-C降下作用を持つ。難点は第一に皮注用薬であること(二週間に一回)、第二に高いこと(米国の問屋取得価格は月1120ドル)。アムジェンの抗PCSK9完全ヒト化抗体Repatha(evolocumab)との違いは低量も製品化していることと、希少疾患であるホモ接合型家族性高脂血症を適応としていないこと。

リンク: サノフィのプレスリリース

MSD、Keytrudaが肺炎に承認
(2015年10月2日発表)

FDAは、MSDの抗PD-1抗体Keytruda(pembrolizumab)の適応拡大を承認したと発表した。非小細胞性肺癌で、白金薬を用いる一次治療レジメンや適応になる場合はEGFR阻害剤やALK阻害剤にも不応・再発の、PD-L1陽性癌に用いる。用量用法は14年に承認された悪性黒色腫と同じで、2mg/kgを30分点滴静注、三週間に一回施行する。

後期第一相試験の反応率データに基づく加速承認で、別途、延命またはそれに準じる効果を確認する必要がある。ORR(客観的反応率)は18%程度で、再発性非小細胞性肺癌用薬としては高いが、特効薬というほどでもない。ところが、サンプルの50%以上でPD-L1が発現している高発現症例(280例中61例)ではORRが41%と著しく高かった。

BMS/小野の抗PD-1抗体、Opdivo(nivolumab)は、扁平上皮腫やそれ以外の非小細胞性肺癌の三次治療試験でORRが15%前後だった。これらの試験はPD-L1陽性癌に限定していないので、おそらく、低発現癌に対する抗PD-1抗体の効果は陰性癌の場合と大差ないのだろう。

さて、非小細胞性肺癌での両剤の適応範囲を整理すると、現時点ではどちらも二次治療薬で対象はKeytrudaがPD-L1陽性(6割程度が該当)、Opdivoは扁平上皮腫(3割程度が該当)だが非扁平上皮腫(残りの7割)試験の成功がASCO米国臨床腫瘍学学会で発表されているので、承認前に普及するだろう。従って、実質的にはOpdivoのほうが対象患者が多いことになる。エビデンスも、実薬対照試験で延命効果が確認されているので、優れている。PD-L1検査代を節約できるメリットもある。

但し、一次治療に適応拡大する局面ではPD-L1検査が重要な要素になるのではないか。高発現症例のORR41%というのは標準療法である白金レジメンと比べてもそん色なく、延命効果が勝っているようならば、一次治療の選択肢の一つに留まらず文句なしの第一選択になる可能性があり、そうなると、EGFRやALKと同様にPD-L1検査もマストになるだろう。

リンク: FDAのリリース
リンク: MSDのプレスリリース

BMS、ヤーボイとオプジーボの併用が承認
(2015年10月1日発表)

BMSは、Yervoy(ipilimumab)とOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)を悪性黒色腫の一次治療に併用することがFDAに承認されたと発表した。現時点では野生BRAFのみが対象で、活性化変異癌はBRAF阻害剤だけが適応だが、この二剤の併用も同程度の効果がありそうなので、近い将来、限定解除されるのではないか。

承認の根拠となった第二相試験では、cORR(確認客観的反応率)が60%と、Yervoyだけを投与した群の11%を有意に上回った。PFS(無進行生存期間)のメジアン値は8.9ヶ月と4.7ヶ月、ハザードレシオは0.40だった。

効果も高いが副作用リスクや治療費も高い。前者は、非小細胞性肺癌ではOpdivo主、Yervoy従の併用の方が良さそうな結果を出しており、黒色腫でもOpdivoではなくYervoyを減量することで効果を維持しながら忍容性を改善できないものか、もどかしく感じられる。

後者は、米国の標準価格で計算すると、最初の4回は二剤併用で14万ドル、その後はOpdivoだけを月1.25万ドル。合計治療期間を8ヶ月とすると一人20万ドル、実売価格が8掛けで自己負担率3割とすると患者の負担は薬代だけで576万円。臨床試験では薬物関連死亡も複数発生しており、効果だけでなく失うものも大きい。

リンク: BMSのプレスリリース


今週は以上です。

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