2015年9月27日

2015年9月27日号


【ニュース・ヘッドライン】


  • MSD、クロストリジウム・ディフィシレ治療薬を承認申請へ
  • オプジーボは腎細胞腫の二次治療に有効
  • ギリアドの新NS5A阻害剤も第三相が成功
  • BMS、オプジーボとヤーボイの併用一次治療を再び申請
  • CHMPが19剤に肯定的意見
  • 大鵬、遂に米国で承認取得
  • ノボ、トレシーバが米国でも承認


【新薬開発】


MSD、クロストリジウム・ディフィシレ治療薬を承認申請へ
(2015年9月20日発表)

MSDはクロストリジウム・ディフィシレのトキシンAとBを夫々標的とする二種類の抗体医薬の第三相試験を実施していたが、トキシンB中和抗体が再発予防に成功したと発表した。年内に欧州や北米で承認申請する予定。

この二つの抗体はMassachusetts Biologic Laboratories(MBL)とメダレックス社が共同で開発し、09年にMSDにライセンスしたもの。トキシンB中和抗体の一般名はbezlotoxumab、開発コードはMSDがMK-6072、メダレックスはMDX-1388、MBLはMBL-CDB1。トキシンA中和抗体は、各、actoxumab、MK-3415、MDX-066、MBL-CDA1。

第三相試験では二本合計で2600人超の患者を組入れて、偽薬、bezlotoxumab、actoxumab、あるいは両剤を一回投与する四群に割付け、その後12週間の再発予防効果を検討した。actoxumab単剤は効果がなく途中で打ち切られたが、bezlotoxumabを単剤投与した群と二剤を投与した群は再発率が15~17%と偽薬群の25~27%を下回った。副作用は、悪心や下痢、発熱などが若干増加したが深刻なものは少ないようだ。

クロストリジウム・ディフィシレは重度の下痢などを引き起こす細菌で、近年、抗生物質耐性を持つ毒性の強いタイプによる院内感染が増加している。米国では年30万人が発症、20~25%が再発、2%が死亡と推定されている。それだけに、再発リスクの高い患者に有効な薬が現れたことはポジティブ。

メダレックスはトランスジェニック・マウスにヒトの抗体を発現させる技術を持ち、これまでに、ジョンソン・エンド・ジョンソンのSimponi(golimumab)やBMSのYervoy(ipilimumab)、Opdivo(nivolumab)などを創製した。09年にBMSが24億ドルで子会社化したのは慧眼だった。

リンク: MSDのプレスリリース

オプジーボは腎細胞腫の二次治療に有効
(2015年9月25日発表)

BMSはECC欧州癌学会やNew England Journal of Medicine誌でOpdivo(nivolumab)の第三相腎細胞腫試験の結果を発表した。Sutent(sunitinib)などの血管新生阻害剤に不応・不耐・再発した患者を組入れて全生存期間をAfinitor(everolimus、和名アフィニトール)群と比較したもので、中間解析が成功したことを7月に発表済み。

メジアン生存期間が25ヶ月とAfinitor群の19.6ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.73。p値は0.002で、中間解析に割り当てられたアルファの0.0148を下回った。承認申請に向かう予定。Opdivoは一次治療でもYervoy併用で有望そうなデータを出しており、第三相試験中。

リンク: BMSのプレスリリース
リンク: NEJMの治験論文(オープンアクセス)

ギリアドの新NS5A阻害剤も第三相が成功
(2015年9月21日発表)

ギリアド(Nasdaq:GILD)はHIVやHCVなどウイルス感染症の治療薬を数多く実用化すると共に、合剤の開発にも積極的に取り組んでいる。患者はピルバーデンが緩和し、ギリアドは自社のベストセラー製品と抱き合わせで販売することが可能になる。今回は、新規NS5A複製複合体阻害剤を配合した合剤の第三相C型肝炎治療試験が成功したことを発表した。

NS5B阻害剤Sovaldi(sofosbuvir、和名ソバルディ)とNS5A複製複合体阻害剤GS-5816(velpatasvir)の合剤で、一日一回経口投与する。第三相は様々な遺伝子型のC型肝炎ウイルスに感染している患者を組入れて、非代償性肝硬変を合併している患者には12週間コース、24週間コース、12週間でribavirin併用コースの三種類の用法を試験し、それ以外は12週間コースだけを施行した。

結果は、非代償性肝硬変を合併していない患者はこの合剤を12週間服用するだけで持続的ウイルス学的奏効率が97~100%と、大変高い成果が上がった。非代償性肝硬変では、ribavirin併用12週間コースが一番良さそうだ。

sofosbuvirとNS5A複製複合体阻害剤ledipasvirの合剤であるHarvoni(和名ハーボニー)も遺伝子型I型には同様に優れた成績を上げており、しかも、半分程度の患者は8週間の治療で足りることが明らかになっている。実薬に勝つのは容易ではないので、Harvoniの臨床試験があまり行われていない分野でどの程度の成果を上げるかが販促上、重要なテーマになりそうだ。

リンク: ギリアドのプレスリリース

【承認申請】


BMS、オプジーボとヤーボイの併用一次治療を再び申請
(2015年9月25日発表)

BMSは、Opdivo(nivolumab)とYervoy(ipilimumab)を悪性黒色腫の一次治療に併用する用法追加をFDAに承認申請し、受理されたと発表した。優先審査を受け、審査期限は来年1月23日。

同社は6月にも同様な趣旨の発表を行っているが、審査期限は9月30日だった。前回は第二相試験、今回は第三相試験に基づく承認申請で、用途用法が同じなのだから本来なら一つの承認申請に統合されるべきものと思われるが、一刻も早く承認を取るべく、最初の申請とは別モノ扱いしたのではないか。

リンク: BMSのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが19剤に肯定的意見
(2015年9月25日発表)

EUの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは9月の会議で新薬19品について肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内にEU全域で承認されることになる。

リンク: CHMPのプレスリリース

まず、ベーリンガー・インゲルハイムのPraxbind(idarucizumab)は、経口トロンビン阻害剤Pradaxa(dabigatran、和名プラザキサ)及びその代謝物に結合する完全ヒト化抗体フラグメントで、Pradaxaの抗血栓作用を5分でオフセットする。脳梗塞などのリスクを削減する目的でPradaxaを服用している患者が、緊急手術を受けたり大出血事故が起きた時に用いる。

PradaxaやXa阻害剤は解毒剤のないことがボトルネックであったが、PradaxaはPraxbind、Xa阻害剤はPortola(Nasdaq:PTLA)のandexanet alfaの開発が進捗している。

リンク: ベーリンガーのプレスリリース

ノバルティスのEntresto(sacubitril/valsartan)はネプリリシン阻害剤sacubitrilとアンジオテンシンII受容体阻害剤valsartanを一つの分子に纏めた、新しいタイプの合剤。症候性慢性心不全で駆出率低下を伴う患者の心不全増悪や心血管疾患死のリスクを抑制する。心不全の薬物療法では久々の超大型薬候補だ。米国では9月に承認。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

アムジェンは二品あり、Kyprolis(carfilzomib)は武田/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib)と同じプロテアソーム阻害剤。多発骨髄腫の二次治療にRevlimid(lenalidomide)及びdexamethasoneと併用する。Velcadeは一次治療にも使われているので、今後、一歩一歩、用途用法を充実させていくことになりそうだ。

米国では2012年に承認。EUは多発骨髄腫用薬の承認のハードルが高く、単群試験で反応率を調べるだけでは駄目、というスタンスであるため遅くなった。日本は小野薬品が8月に承認申請したところ。

もう一つは、Blincyto(blinatumomab)。再発・難治性でフィラデルフィア染色体陰性の成人急性リンパ芽球性白血病向けに条件付き承認することが支持された。第二相試験で6週サイクルで4週間連続点滴静注したところ、3割が完全寛解した。メジアン生存期間は6.1ヶ月に過ぎず、25%の患者で熱性好中球減少症が発生するなど、効果も忍容性も十分ではないが、数少ない治療法の一つになりそうだ。尚、フィラデルフィア染色体を持つタイプにはGleevec(imatinib)のようなbcr-abl阻害剤も選択肢になる。

アムジェンは買収を通じて小分子薬や抗体医薬を拡充してきた。Kyprolisはアムジェンが13年に104億ドルで買収したOnyx社が09年に8億ドルで買収したProteolix社の開発品。一方、Blincytoは12年に11億ドルで買収したMicrometの開発品で、抗CD3抗体フラグメントと抗CD19抗体フラグメントを結合したもの。最近流行りのキメラ抗原受容体療法と似た発想だ。日本はアステラスと共同開発中。

リンク: アムジェンのプレスリリース

ロシュのCotellic(cobimetinib)はMEK阻害剤で、BRAF-V600変異陽性の悪性黒色腫に同社のZelboraf(vemurafenib)と併用する。ジェネンテックが06年にエグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)からライセンスしたもの。

リンク: ロシュのプレスリリース

グラクソ・スミスクラインのNucala(mepolizumab)は抗IL-5ヒト化抗体。好酸球数が多い、好酸球性喘息症で吸入ステロイドなどだけでは発作を十分に管理できない患者に用いる。スミスクラインがグラクソと合併する前から注目されていたパイプラインで、何故か開発に時間が掛かった分、他社の開発品が直ぐ後ろに迫っている。

リンク: GSKのプレスリリース

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)のOrkambi(lumacaftorとivacaftorの合剤)は、嚢胞性線維症でCFTR遺伝子にホモ接合型F508欠損を持つ12歳以上の患者に用いる。ivacaftorはCFTRポテンシエイターで、Kalydyco名で違ったタイプの嚢胞性線維症の治療薬として承認されている。lumacaftorはCFTRコレクターと呼ばれ、CFTRが細胞の表面に移行するのを手助けする。米国では7月に承認され、年25万ドルという高価格で発売された。

リンク: ヴァーテックスのプレスリリース

バイオジェンのEloctate(efmoroctocog alfa)は遺伝子組換え型長期作用性第VIII因子で、A型血友病の治療や出血予防に用いる。後者は重度出血を頻発する患者にルーチンに投与するので投与頻度が少なくて済む長期作用性製剤が求められている。日米では14年に承認されたが、EUは成人と小児を同時に申請することを求めているため、一年遅れになっている。

リンク: バイオジェンのプレスリリース

Horizon Pharma(Nasdaq:HZNP)のRavicti(glycerol phenylbutyrate)経口液は尿素サイクル異常症(UCD)の補助療法。米国では13年に承認された。UCDは尿素合成サイクルに先天的な異常があり、アンモニアが代謝されずに血中に蓄積し、脳などに重度障害をもたらすリスクがある。Ravictiはアンモニアの窒素が別の経路を通じて排泄されるのを促す。

リンク: Horizon社のプレスリリース

ギリアド(Nasdaq:GILD)のGenvoyaは4種類の成分を配合した合剤でHIV/AIDSの治療に用いる。日本たばこからライセンスしたインテグラーゼ阻害剤elvitegravir、その代謝を遅らせ効果を長続きさせる3A4阻害剤のcobicistat、核酸系逆転写阻害剤emtricitabine、そして新開発のヌクレオチド系逆転写阻害剤tenofovir alafenamide fumarate(TAF)を配合している。

別の言い方をすると、Stribild(和名スタリビルド)の活性成分のうちtenofovir disoproxil fumarate(TDF)をTAFに替えたもの。TAFは腎毒性や骨塩密度低下副作用がTDFより小さい長所がある。ギリアドにとっては、TDFの特許切れ対策という面もある。

リンク: ギリアドのプレスリリース

インパックス(Nasdaq:IPXL)のNumientはレボドパとカルビドパの合剤でパーキンソン病の治療に用いる。一日三回服用。米国では1月にRytary名で承認された。

リンク: インパックスのプレスリリース

メディスンズ・カンパニーのIONSYSは、フェンタニル鎮痛剤を電流に乗せて経皮的に供給するクレジットカードサイズの機器。術後疼痛の治療に用いる。従来の静注型システムと異なり針による事故が起きにくく、セットアップも楽。ジョンソン・エンド・ジョンソンが06年に欧米で承認を取得したが誤作動による過剰投与リスクが判明し09年に販売中止。開発権を取得した会社をメディスンズが12年に買収した。

リンク: メディスン・カンパニ-のプレスリリース

BMSのOpdivo(nivolumab)を扁平上皮非小細胞性肺癌の二次治療薬として用いることも支持された。既にNivolumab BMSという製品名で5月にCHMP支持、7月に承認されているので紛らわしい。扁平上皮腫以外の非小細胞性肺癌でも承認審査中。

【承認】


大鵬、遂に米国で承認取得
(2015年9月22日発表)

5-FU系の経口剤といえば大鵬薬品の一連の製品とロシュの日本拠点が創製したXeloda(capecitabine、和名ゼローダ)が代表的だが、薬物動態が人種により異なるようで、ティーエスワンは欧州では承認されたが米国は未承認。Xelodaは米国人に使う時は量を減らすべきという意見がある。

そんな中、遂に大鵬のロンサーフ配合錠が米国で承認された。転移性結腸直腸癌のサルベージ療法で、第三相試験ではメジアン生存期間が7.1ヶ月と、偽薬群の5.3ヶ月を2ヶ月弱、上回った。

リンク: FDAのリリース
リンク: 大鵬薬品のプレスリリース(9/24付、和文)

ノボ、トレシーバが米国でも承認
(2015年9月25日発表)

FDAはノボ ノルディスクの管理放出性インスリンTresiba(insulin degludec、和名トレシーバ)と短期作用性インスリンとのプリミックスであるRyzodeg(insulin degludec、insulin aspart)を糖尿病治療薬として承認した。2012年に日本で初承認、13年にはEUでも承認されたが、FDAは、Lantus対照試験で心血管疾患リスクが高まる可能性が浮上したため、心血管アウトカム試験で無垢を証明することを要求。ノボは中間解析データを提出し、今回の承認に至った。

トレシーバは日本で価格が折り合わず薬価収載が遅れた。ドイツでも健康保険基金連合会との価格交渉が不調に終わり、今月で販売中止になる。インスリンは三社が寡占しているせいか強気だ。

ノボは、TresibaとVictoza(liraglutide、和名ビクトーザ)の合剤であるXultophyを米国で承認申請したことも発表した。EUでは9月に承認されている。

リンク: FDAのリリース
リンク: ノボのプレスリリース


今週は以上です。

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