2015年7月26日

2015年7月26日号


【ニュース・ヘッドライン】


  • AAIC:aducanumabの新データは評価が分かれる
  • AAIC:solanezumabは疾病修飾的効果を持つ?
  • エグゼリキシス、VEGFR阻害剤の腎細胞腫試験成功
  • MSD、EUでもC型肝炎用合剤を承認申請
  • CHMPが初のマラリアワクチン等の承認を支持
  • FDAがリジェネロン/サノフィの抗PCSK9抗体を承認
  • EUがアムジェンの抗PCSK9抗体を承認
  • MSD、KeytrudaがEUで承認
  • BMS、Opdivoの適応拡大続く
  • FDA、ノバルティスのSMO阻害剤を承認
  • FDA、アッヴィの抗HCV合剤を承認
  • FDA、ダクルインザを3型C型肝炎に承認

【新薬開発】


AAIC:aducanumabの新データは評価が分かれる
(2015年7月22日発表)

バイオジェンはAAIC(国際アルツハイマー病会議)でBIIB037(aducanumab)の後期第一相試験に関する発表を行った。3月のAD/PD学会の続報で、6mg群の52週データが初公開された。10mgは忍容性が悪そう、3mgは効果がやや弱そうなので追加的に試験した模様だが、まあまあな内容。第三相では過去の抗アミロイドベータ抗体(以下、抗AB抗体)と同様にApoE4変異キャリアには3mgと6mg、ノンキャリアには6mgと10mgをテストする考えのようだ。

aducanumabはアミロイドベータのオリゴマーに結合する完全ヒト化抗体で、アルツハイマー病薬として開発されている。アミロイド仮説に基づく開発品はセクレターゼ阻害剤も抗AB抗体も第三相試験がフェールしたが、後述のsolanezumabの第三相試験の一本では軽度患者に効果の兆しが見られた。アミロイドが多量蓄積する前なら効くのかもしれない。また、作用機序的に、アミロイド蓄積が見られないタイプの患者には効かないのかもしれない。

このため、近年の試験では、軽度または前駆段階の、PET検査でアミロイド蓄積が確認された患者だけを組入れるケースが増えている。今回のaducanumabの後期第一相試験もこのパターンだ。160人の患者を偽薬、1mg、3mg、6mg、10mgの5群に割付けて、4週間に一回点滴静注し、54週間の忍容性やアミロイドプラクの変化、臨床症状の変化を検討した。

若年性アルツハイマー病と異なり、加齢性アルツハイマー病に関わる遺伝子変異はあまり見つかっておらず、リスク因子として広く認知されているのはApoE4位である。変異のキャリアはリスクが高まるが、どういう訳か、抗AB抗体を投与すると血管浮腫が発生しやすい。この副作用は今日ではアミロイド関連映像異常性(ARIA)浮腫と呼ばれている。

aducanumabの試験でもARIA浮腫のリスクが用量依存的に高まった。10mg群ではキャリアの55%、ノンキャリアでも17%で発生した。これを原因とする治験離脱も各35%と8%で頻発した。3mg群の発生率は0%と9%、それによる治験離脱はなかった。

一方、アミロイドプラクは用量依存的に減少し、3mg以上は偽薬比統計的に有意。CDR-SBという症状評価スコアの変化も用量依存的だが、有意差があったのは10mgだけだった。MMSEも用量依存的で3mgと10mgが有意だった。10mgは忍容性が劣り3mgは効果が弱いので今回の6mgのデータ発表が注目されたが、良いとも悪いともいえるものだった。

具体的には、ARIA浮腫の発生率はキャリアで43%、それによる治験離脱は10%と10mgよりは低いが良好とは言えない。ノンキャリアは各22%と11%で10mgと大差ない。アミロイドプラク除去効果は3mgより大きいが10mgより小さい。CDR-SB変化も3mgと10mgの中間だったが偽薬比有意な差は無かった。MMSEでは3mgより悪く、偽薬比有意差無し。

ARIA浮腫症例のうち2/3は症状を伴わず、残りも軽度で一時的であることが多いようだ。それでも、6mg以上は10%が離脱したのだから好ましいことではないだろう。臨床試験、特に初期段階の試験は患者を厳選して行うので、現実の医療では発生率が高まる可能性が高い。

薬効は良く分からない。一群30例程度の試験で検出力は低いだろうから、統計学的に有意であろうが何だろうが、偶然の可能性を疑わざるを得ない。統計学者も、これだけ沢山の検定を行っているのだから有意性を判定するp値のハードルをもっと高くすべきであり統計学的に有意と呼ぶべきではないと主張するだろう。試験期間中の推移をみると、最初の半年は群間差が小さいが、その後に偽薬群が急速に悪化した。効果が発揮されるまで時間が掛かると考えることもできるし、ドロップアウトが影響した可能性も考えられるだろう。

所詮、この段階の試験では答えは出ない。第三相試験の結果が数年後に判明するまで何とも言えないだろう。

aducanumabはスイスのNeurimmuneが創製、07年にバイオジェンがインライセンスしたもので、14年にバイオジェンとエーザイが結んだ共同開発提携の対象品目の一つ。

リンク: バイオジェンのプレスリリース

AAIC:solanezumabは疾病修飾的効果を持つ?
(2015年7月22日発表)

イーライリリーはLY2062430(solanezumab)の第三相試験の延長試験の結果をAAICで発表した。抗可溶性アミロイドベータヒト化抗体で、二本の第三相試験が何れもフェールしたが、軽度患者には効果の兆しがあったため、軽度患者だけの第三相が開始された。今回の延長試験は第三相試験を終了した軽度患者を組入れて全員にsolanezumabを投与し、最初の試験で偽薬に割付けられた患者(遅延開始群)と試験薬に割付けられた患者(早期開始群)の症状判定スコアの差が維持されるかどうかを検証したもの。

症状変化は認知機能をADAS-cog14で、生活機能をADCS-iADLで評価したが、どちらも28週時点の群間差は延長試験開始時と比べて非劣性だった。その後も54週時点まで非劣性だった。優越性検定でも同様な結果が出た。

Aricept(donepezil)など既存のアルツハイマー病薬は、遅れて投与した群の症状スコアが最初から投与した群にキャッチアップする。このため、病気の進行を遅らせる効果は無く症状を改善するだけと考えられている。今回の試験結果は抗AB抗体が疾病修飾的であることを示唆しているが、二点、留意すべき点がある。第一は治験のデザイン。延長試験なので、おそらく、試験薬に忍容しなかったり別の病気になった人は参加しなかっただろう。

第二は、効果が大きいようには見えないこと。52週時点の群間差はADAS-cog14で1.91、ADCS-iADLで1.66に過ぎない。延長試験に参加した患者の偽薬対照試験中の差も同程度だった訳だから、偽薬比の治療効果も、早期治療の効果も、大したことはない。5年、10年続ければ大きくなるかもしれないが、高齢者なので投与を続けられるかどうか分からない。この試験でも元々の試験と通算して3年半の間に半数がドロップアウトした。長期間投与して臨床的に重要な便益を得る確率は半分以下ということになりかねない。

三本目の第三相試験の成否は16年末から17年初めにかけて明らかになる見込み。最初の二本は軽度患者が合計1300人だったが、今回は2100人なので検出力が上がるはずであり、治療効果がもっと小さくても有意差が出る可能性がある。尚、事前にPETまたは脳脊髄液検査でアミロイド兆候が見られた患者だけを組入れている。

もし成功するようならば、小さな一歩だが人類にとって大きな一歩と呼べるだろう。承認されるならば、価格が高いだろうから、人類にとって高価な一歩になる。

リンク: イーライリリーのプレスリリース

エグゼリキシス、VEGFR阻害剤の腎細胞腫試験成功
(2015年7月20日発表)

エグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)はCometriq(cabozantinib)の第三相腎細胞腫試験が成功したと発表した。Sutent(sunitinib)などのVEGFR阻害剤を既に経験した患者を試験薬群とノバルティスのAfinitor(everolimus)を投与する群に無作為化割付してPFS(無進行生存期間)を比較したところ、有意に上回った(ハザードレシオ0.58)。

全生存期間の解析は未だ成熟していないがハザードレシオ0.67、p=0.005と良さそうな数値が出ている(中間解析に割り当てられたアルファは0.0019なのでこれを下回らないと有意とは言えない)。有害事象による治験離脱は各群10%とのことで、大差ない。16年に欧米で適応拡大申請する予定。

腎細胞腫ではBMSもOpdivo(nivolumab)のeverolimus対照試験の成功を発表している(後述)。

Cometriqは数あるVEGFR阻害剤の一つで、切除不能末期転移性甲状腺髄様腫用薬として米国で12年に、EUでも14年に承認された。適応拡大は結腸直腸癌試験がフェール。肝細胞腫試験は17年に開票する見込み。腎細胞腫はVEGFR阻害剤の代表的な用途なので競争は厳しいだろう。

リンク: エグゼリキシスのプレスリリース

【承認申請】


MSD、EUでもC型肝炎用合剤を承認申請
(2015年7月23日発表)

MSDは、grazoprevirとelbasvirの合剤をEUに承認申請し受理されたと発表した。汎遺伝子型NS3/4Aプロテアーゼ阻害剤とNS5A複製複合体阻害剤を配合しており、慢性C型肝炎の治療に用いる。5月に米国でも承認申請したが対象が若干異なっており、EUでは遺伝子型1型、4型、6型に加えて3型も申請した。

リンク: MSDのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが初のマラリアワクチン等の承認を支持
(2015年7月24日発表)

EUの薬品審査機関EMAの医薬品科学的評価委員会であるCHMPは、7月の会議で、マラリアワクチンやコレステロール治療薬などの承認に肯定的意見を纏めた。順調なら2~3ヶ月内に承認される見込み。

リンク: CHMPのプレスリリース

グラクソ・スミスクラインのMosquirix(通称RTS, S)はマラリアとB型肝炎のワクチン。マラリアワクチンが承認されれば初。マラリアは世界で年60万人以上が死亡するが、その9割はアフリカ。CHMPの肯定的意見もEU域外での使用を想定したもので、承認審査能力を持たないアフリカ諸国のために代わりを務めた格好だ。今後、WHOが接種体制や費用などを検討した上で年内に接種勧奨を行い、グラクソ・スミスクラインが夫々の国の承認を取得する手筈になる。

対象年齢は生後6週間から17ヶ月まで。予防効果はそれほどでもなく、5~17ヶ月児ではリスクを56%、6~12週児では31%削減。1年経つと効果が減衰する。

GSKはワクチンの世界的大手の一つで、もう一つの大手とは異なり、アフリカやアジアの風土病用ワクチンの開発に積極的に取り組んでいる。MosquirixはPATHマラリアワクチン・イニシアティブやビル・ゲイツ夫妻の財団の支援を得て開発したもので、収入のうちコストを上回る部分については第2世代品や熱帯病ワクチンの研究開発に投じる旨を2010年に発表している。

リンク: CHMPのプレスリリース
リンク: GSKのプレスリリース

肯定的意見を得た新薬は、まず、リジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発したPraluent(alirocumab)。新作用機序を持つコレステロール治療薬。米国で承認されたので、後記を参照されたい。

リンク: CHMPのプレスリリース
リンク: サノフィのプレスリリース

シャイアのIntuniv(guanfacine)はアルファ2Aアドレナセプター・アゴニストの徐放性剤で、6~17歳のADHD(注意欠陥多動性障害)患者のうち、医療用覚醒剤に不応不適不耐の患者に限定して用いる。米国では09年に承認された。日本では塩野義製薬と共同開発。

リンク: シャイアのプレスリリース

バジレア(SIX:BSLN)のCresemba(isavuconazole)はアゾール系の抗真菌薬で、腎毒性が比較的小さいことが特徴。侵襲性のアルペルギルス症やamphotericin B不適のムーコル症の治療に用いる。深刻な有害事象は肝臓障害や点滴反応、アレルギー反応など。

リンク: バジレアのプレスリリース

ケリックス(Nasdaq:KERX)のFexeric(ferric citrate、和名リオナ)は慢性腎疾患患者の高リン血症に用いる鉄の経口剤。米国では14年に承認、日本は14年に鳥居が発売。

リンク: ケリックスのプレスリリース

Baxalta(NYSE:BXLT)のObizur(susoctocog alfa)はブタ由来の遺伝子組換え型第VIII因子。A型血友病で第VIII因子のインヒビターを持つ患者の出血治療薬として、例外的環境条項に基づく承認が支持された。Baxaltaは今年7月にバクスターからスピンアウトした会社。Obizurは12年に破産法適用申請したInspiration社から買収したもの。

MSDのZerbaxaは静注用の複合セファロスポリンで、アステラスからライセンスしたceftolozaneと大鵬薬品が開発したベータラクタマーゼ阻害剤tazobactamの合剤。複雑腹腔内感染症、急性腎盂腎炎、複雑尿道感染症の治療に用いる。米国では昨年、承認された。MSDが今年1月に負債を含めて95億ドルで買収したキュビストが、09年にCalixa社を買収して入手した開発品。

適応拡大では、ノバルティスの転移性黒色腫治療薬、Tafinlar(dabrafenib)とMekinist(trametinib)を併用することが支持された。V600変異を持つタイプが適応になる。前者はbraf阻害剤、後者はMEK阻害剤でモノセラピーは既に承認されている。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

ノバルティスはグラクソ・スミスクラインとアセット・スワップを行い、OTC薬事業を合弁会社化する一方で、ワクチン事業をGSKに譲渡し、GSKの抗癌剤事業を譲り受けた。上記二剤はGSK由来だが、もう一つ、特発性血小板減少性紫斑症の経口治療薬Revolade(eltrombopag、和名レボレード)も適応拡大が支持された。重度再生不良性貧血で免疫抑制剤による治療に十分反応しない患者に用いる。ライガンド社から開発販売権を取得したもの。

リンク: ノバルティスのプレスリリース

最後に、アステラス製薬の末梢神経痛治療薬Qutenza(capsaicin)は、09年に承認された時点では糖尿病患者が対象外だったが、今回、限定解除が支持された。チリの辛み成分を合成したもので貼付薬。NeurogesX社の開発品だが、13年にAcorda社が権利を譲り受けた。

【承認】


FDAがリジェネロン/サノフィの抗PCSK9抗体を承認
(2015年7月24日発表)

FDAはリジェネロン(Nasdaq:REGN)がサノフィと共同開発したPraluent(alirocumab)を承認した。LDL-C受容体の零落に関わるPCSK9に結合・阻害する抗体医薬の承認は初。スタチン服用患者に追加投与するとLDL-Cが45~55%低下する。二週間に一回、75mgまたは150mgを皮注する。主な有害事象は注射箇所反応で、入院治療が必要になった症例もあるようだ。

WAC(問屋取得価格)は両用量とも4週間分が1120ドルで、スタチンの10倍以上。スタチンはジェネリックも多い。両社が指摘するように自己注用の抗体医薬の中では最も安価だが、症状を伴わない慢性疾患に用いる薬なので、コンプライアンス(患者が勝手に止めてしまう)が心配だ。

意外なのは対象患者が限定されたこと。第一に、ホモ接合型家族性高脂血症(両親から受け継いだLDL-C受容体などの遺伝子の両方に変異がありLDL-C値が著しく高い)が対象外。第二に、ヘテロ接合型(片方の遺伝子だけ変異)は適応になるが、それ以外は臨床的アテローム性心血管疾患を持つ患者に限定された。スタチンの最大耐用量を服用してもLDL-Cが十分に低下しない患者に追加投与する。モノセラピーは承認されていない。

スタチンは米国だけで数千万人が服用するが、その中にはLDL-C値が高いだけでまだ虚血性疾患を合併していない患者もいる。抗PCSK9抗体は心筋梗塞予防効果がまだ確立していないので対象患者が限定されることは予想していたが、思っていたより厳しかった。

アムジェンが承認申請しているRepatha(evolocumab)は後述のようにEUで承認、米国でも間もなく承認されるだろう。ホモ接合型は適応になると推測されるが、ホモでもヘテロでもない非家族性高脂血症に関してはPraluentと同様な限定を受けるのではないか。

Praluentは用量が二種類あるので低量を安価にして価格優位を狙うのではないかという観測もあったが、実現しなかった。ホモ接合型は患者が少なく米国はオフレーベル投与も可能なので適応の違いは大きな影響はないだろうが、Repathaは4週間に一回の投与も可能なので、若干有利だろう。

リンク: FDAのリリース
リンク: 両社のプレスリリース

EUがアムジェンの抗PCSK9抗体を承認
(2015年7月21日発表)

アムジェンはEUがRepatha(evolocumab)を承認したと発表した。Praluentと同様な抗PCSK9抗体で、EUでは初。LDL-C治療効果はPraluentの高用量と同程度。140mgを二週間に一回、または、420mg(140mgを三本)を月に一回、皮注する。ホモ接合型家族性高脂血症は420mg月一回で、2週間に一回に増やすことも可。

適応は広く、ホモ接合型家族性高脂血症(12歳以上)に加えて、原発性高脂血症又は混合異脂血症の患者でスタチンの最大耐用量を服用しても不十分な患者に追加することも可能。スタチン不耐患者には他のLDL-C治療薬と併用だけでなくモノセラピーも認められた。

日本ではアステラスと共同開発、今年3月に承認申請された。

リンク: アムジェンのプレスリリース

MSD、KeytrudaがEUで承認
(2015年7月22日発表)

MSDは抗PD-1ヒト化抗体のKeytruda(pembrolizumab)がEUで末期黒色腫用薬として承認されたと発表した。一次治療またはBMSのYervoy(ipilimumab)の後の二次治療に用いる。用量は昨年9月に承認された米国と同様に、2mg/kgを3週間に一回、30分点滴静注する。2mg/kgは第三相試験ではテストしなかったはずだが、第二相までのデータに基づいて、効果は両用量とも同程度で2mgの方が忍容性に優れると判定したのだろう。

小野薬品/BMSのOpdivo(nivolumab)は2週間に一回なので、Keytrudaの方が簡便。

リンク: MSDのプレスリリース

BMS、Opdivoの適応拡大続く
(2015年7月20日発表)

BMSと小野薬品は、Opdivo(nivolumab)がEUで扁平上皮非小細胞性肺癌のモノセラピーとして承認されたと発表した。米国でも3月に承認されている。白金薬などによる一次治療後の二次治療に用いる。

前後して、EUで二種類の適応拡大申請が受理されたことも発表した。一つは悪性黒色腫にYervoy(ipilimumab)を併用する用法。もう一つは扁平上皮以外の非小細胞性肺癌のモノセラピー。前者はモノセラピーより効果が高いが副作用や費用もかなり増加する。後者は治験でdocetacelより高い延命効果を示しており、対象患者が数倍に拡大するため商業的な意義が大きい。

更に、腎細胞腫の第三相試験が中間解析で成功認定されたことも公表された。VEGF阻害剤の次に使う薬としてのeverolimus対照試験で、全生存期間が有意に上回った。データは未発表。適応拡大申請に向かうことになりそうだ。

リンク: BMSのプレスリリース(EU承認)
リンク: 同(腎細胞腫試験成功)
リンク: 同(EU適応拡大申請、7/23付)

FDA、ノバルティスのSMO阻害剤を承認
(2015年7月24日発表)

FDAはノバルティスのOdomzo(sonidegib)を切除術・放射線療法不応不適の局所進行性基底細胞腫用薬として承認した。200mgカプセルを一日一回、服用する。第二相試験で反応率58%、メジアン反応持続期間は6ヶ月以上だった。重大な副作用は催奇性と、グレード3/4の横紋筋融解症が9%の患者で発生した。前兆である血清クレアチンキナーゼの上昇も見られる。

哺乳類の発育形態形成に関わるヘッジホッグ・シグナリング・パスウェイに関わるSmoothened(SMO)を阻害する薬で、12年に承認されたロシュのErivedge(vismodegib)に次ぐ第二号。

リンク: FDAのリリース
リンク: ノバルティスのプレスリリース

FDA、アッヴィの抗HCV合剤を承認
(2015年7月24日発表)

FDAはアッヴィ(NYSE:ABBV)のTechnivieを遺伝子型4型の慢性C型肝炎の治療薬として承認した。NS5A阻害剤ombitasvirとNS3/4A阻害剤paritaprevir、そして3A4阻害剤ritonavirを配合、一日一回経口投与する。ribavirin併用で12週間治療する。肝硬変を合併している患者は適応外。インターフェロンが不要な経口剤だけの治療法は4型に関しては初めて。

臨床試験では全員が持続的奏効を達成した。ribavirinを併用しなかった群は91%が達成。肝機能検査値異常が発生することがあり、エチニル・エストラジオール(避妊薬)は同時使用するとリスクが高まるので禁忌。

C型肝炎ウイルスは色々な遺伝子型があり地域によって分布が異なる。Technivieは日本では1型の治療薬として承認申請され、ribavirinを併用しなくても良い模様だ。何かが違うのか、それとも地域によって優先順位を付けているだけなのか、良くわからない。

リンク: FDAのプレスリリース
リンク: アッヴィのプレスリリース

FDA、ダクルインザを3型C型肝炎に承認
(2015年7月24日発表)

BMSは、FDAがDaklinza(daclatasvir、和名ダクルインザ)を遺伝子型3型の慢性C型肝炎治療薬として承認したと発表した。NS5A複製複合体阻害剤で、ギリアド(Nasdaq:GILD)のsofosbuvir(Sovaldi、和名ソバルディ)と併用する。臨床試験では代謝性肝疾患を合併する患者に一次治療では90%、再発治療でも86%の持続的奏効率を示した。

日本では1型、EUでは1、2、3、4型に承認されている。米国の承認が限定的なのは、おそらく、併用開発されたNS3/4Aプロテアーゼ阻害剤、asunaprevir(和名スンベプラ)の1a型に対する効果が見劣りするからだろう。未承認の開発品同士でも併用試験ができるようになったが、相手を厳選しないと共倒れになってしまう。

リンク: BMSのプレスリリース



今週は以上です。

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