2015年6月21日

海外医薬ニュース2015年6月21日号


【ニュース・ヘッドライン】


  • バイオマリン、軟骨無形成症の第二相試験が成功
  • Tekmira、エボラ治療試験がフェール
  • テバ、抗IL-5抗体の承認申請が受理された
  • オプジーボ、EUで承認

【今週の話題】


LancetがMERSの特集
(2015年6月3日オンライン刊行)

Lancet誌がMERSセミナーの内容をホームページで刊行した。発生状況や原因ウイルス、診断、治療、予防について総説している。

治療方法は存在せず支持療法が中心、と書いているが、現場の医療従事者はそうも言っていられないので、便益がリスクを上回る可能性のある方法をエビデンス(試験論文)と合わせて紹介している。

まず、中和抗体。エボラウイルス性疾患でも出てきたが、感染から回復した患者の血漿などだ。次に、インターフェロンのアルファやベータ。MERSのコロナウイルスはSARSよりインターフェロン感受性が高いようだ。ribavirinも収載された。インターフェロンとribavirinの併用試験では14日生存率が改善したが28日生存率はしなかった。進行した患者が対象だったことが敗因かもしれないようだ。

in vitroで活性が見られたのは、プロテアーゼ阻害剤のlopinavirやnelfinavir(抗HIV薬として承認)、cyclophilin阻害作用を持つciclosporin(免疫抑制剤)やalisporivir(C型肝炎治療薬として開発)、chloroquine(抗マラリア薬)、mycophenolic acid(免疫抑制剤)、nitazoxanide(抗寄生虫薬)。免疫抑制剤は有害かもしれないので、臨床研究が待たれるところだ。

リンク: Middle East respiratory syndrome(Lancet、オープンアクセス)

【新薬開発】


バイオマリン、軟骨無形成症の第二相試験が成功
(2015年6月17日発表)

希少疾患用薬メーカーのバイオマリン(Nasdaq:BMRN)は、BMN 111(vasoritide)の第二相軟骨無形成症試験が良好な結果になったことを発表した。最高用量群で成長速度が正常に近い数値まで改善した。承認審査機関と相談の上で承認申請用試験を開始する考え。

軟骨無形成症は軟骨の成長を抑制するFGFR3(線維芽細胞増殖因子受容体3)の遺伝子変異が原因で、四肢短縮型低身長になる。多くの場合、親の遺伝ではない。頻度は1.5~4万出生に一人と推定されている。BMN 111は、FGFR3と逆に軟骨の成長を促すC型ナトリウム利尿ペプチドを修飾して安定性を高めたもの。欧米で希少疾患用薬指定を受けている。

第二相試験では5~14歳の患者26人を、体重1kg当り2.5mcg、7.5mcg、または15mcgを毎朝投与する3群に割付けたところ、15mcg/kg群は6ヶ月成長速度が平均で年率6.1cmと、ベースライン時点の4.0cmを50%上回った(p=0.01)。7.5mcg/kg群は年率4.2cmに45%増加(p=0.04)、2.5mcg/kgは無効だった(3.4cmとベースライン値の3.8cmから殆ど変らず)。深刻な有害事象は発生しなかった。

バイオマリンは、15mcg/kgで承認申請用試験を行うと共に、年齢の進んだ患者に対するキャッチアップ用として30mcg/kgを開発する考えだ。同社が事業を行っている地域には96000人の患者がいて、うち18歳以下の24000人が治療対象と推定している。

リンク: バイオマリンのプレスリリース

Tekmira、エボラ治療試験がフェール
(2015年6月19日発表)

Tekmira Pharmaceuticals(Nasdaq:TKMR)は、シエラレオネで行われていたエボラウイルス疾患試験の組入れが中止されたと発表した。同社が開発したsiRNA薬、TKM-Ebola-Guineaの効果や安全性を検討していたが、中間解析で無益性が認定された。小規模な試験なのでサブグループ解析を行えば例えば発症後の期間が短いサブグループに偶然に良い結果が出る可能性もあるが、常識的に考えれば、同じような話を1年間に2度も3度も聞く可能性は低いだろう。

リンク: Tekmiraのプレスリリース

【承認申請】


テバ、抗IL-5抗体の承認申請が受理された
(2015年6月15日発表)

テバ製薬(NYSE:TEVA)は、FDAがreslizumabの承認申請を受理したと発表した。抗IL-5ヒト化抗体で、難治性好酸球性喘息症の治療に用いる。グラクソ・スミスクラインも昨年、抗IL-5ヒト化抗体Nucala(mepolizumab)を承認申請、6月の諮問委員会で支持された。欧州や日本でも承認審査中。また、アストラゼネカも協和発酵キリンのポテリジェント技術を用いた抗IL-5受容体アルファ鎖ヒト化抗体、MEDI-563(benralizumab)の第三相試験を行っており、競争が激化している。

テバは世界最大のGE薬メーカーだが、特許性新薬でも実績がある。イスラエルの研究所との繋がりを生かしたものが多く、フラッグシップは日本でも昨年、武田薬品が承認申請した再発寛解型多発性硬化症用薬、Copaxone(glatiramer acetate)だ。

2011年には中枢神経系薬に強いセファロンを68億ドルで買収、医療用の覚醒剤や麻薬をラインアップした。reslizumabはシェリング・プラウ(MSDが買収)がセルテック(UCBが買収)と共同開発していたが02年に中止、開発権を取得したCeption社を2010年にセファロンが買収という経緯。

リンク: テバのプレスリリース

【承認】


オプジーボ、EUで承認
(2015年6月19日発表)

BMSは、小野薬品と共同開発したOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)がEUで悪性黒色腫用薬として承認されたと発表した。米国より半年遅れたが適応は広く、一次治療と再発治療が認められ、braf阻害剤が適応になるbrafV600変異型に一次治療で単剤投与することも可。

一次治療dacarbazine対照試験では1年生存率が73%対42%と上回り、二次治療試験の中間解析では客観的反応率(ORR)が31.7%と化学療法群(dacarbazine又はcarboplatin・paclitaxel併用)の10.6%を上回った。

リンク: BMSのプレスリリース


今週は以上です。

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