2015年4月19日

海外医薬ニュース2015年4月19日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • オプジーボ、二本目の肺癌試験も成功
  • ファーザー、Ibranceの二次治療試験が成功
  • FDA諮問委員会が短期作用性P2Y12阻害剤の承認を支持
  • FDA諮問委員会、DPP-4阻害剤の心不全データなどのレーベル収載を勧告
  • FDAがアムジェンの慢性心不全用薬を承認


【新薬開発】


オプジーボ、二本目の肺癌試験も成功

(2015年4月17日発表)

BMSは、小野薬品と共同開発しているOpdivo(nivolumab、和名オプジーボ)の二本目の非小細胞性肺癌二次治療試験が成功したと発表した。適応拡大申請に向かうだろう。

米国では昨年12月に転移性黒色腫の二次治療薬として初承認され、今年3月には扁平上皮非小細胞性肺癌の二次治療薬としても承認された。今回のCheckMate-057試験は扁平上皮腫以外の非小細胞性肺癌の二次治療薬としての効果をdocetaxelと比較したもの。用法用量は既存用途と同じ3mg/kgを二週間に一回、点滴静注。独立データ監視委員会が主評価項目である全生存期間で有意に優れると認定、予定より早く完了することになった。

この試験ではPD-L1の発現状況と薬効の相関性も検討している筈だ。これまでのエビデンスは区々で、閾値をどこに置くで変わるように感じられる。ポストホックでも良いので十分な検討を行ってもらいたいものだ。

Opdivoと同じ抗PD-1完全ヒト化抗体であるMSDのKeytruda(pembrolizumab)も第三相非小細胞性肺癌二次試験の結果が年央に出る見込み。転移性黒色腫ではKeytrudaが先に承認されたが非小細胞性肺癌二次治療ではOpdivoのエビデンスの方が先んじた。

リンク:BMSのプレスリリース

ファーザー、Ibranceの二次治療試験が成功

(2015年4月15日発表)

ファイザーは、Ibrance(palbociclib)の第三相転移性乳癌二次治療試験が成功したと発表した。米国では今年2月に一次治療で承認されているが、二次治療で別のホルモン療法薬と併用しても有効であることは重要な情報なので、データをレーベルに収載すべく申請することになるのではないか。未承認の欧州などでは今回のデータで承認申請できるかもしれない。

Ibranceは細胞周期進行を調停する酵素であるCDK4とCDK6を阻害し、G1期からS期に進むのを妨げる。in vitroでエストロゲン受容体を妨げる薬とシナジーが見られた。閉経後女性のエストロゲン受容体陽性、her2陰性転移性・局所進行性乳癌にFemara(letrozole)と併用した第1/2相一次治療試験でPFS(無進行生存期間)がFemaraだけの群を有意に上回り、米国で加速承認された。

今回のPALOMA-3試験はホルモン受容体陽性、her2陰性乳癌が対象で、併用薬はfulvestrant(アストラゼネカが開発したエストロゲン受容体零落剤Faslodex、和名フェソロデックス)。独立データ監視委員会がfulvestrantだけの群より薬効が優れると判定、繰上終了することとなった。

リンク:ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会が短期作用性P2Y12阻害剤の承認を支持

(2015年4月15日発表)

メディスンズ・カンパニー(Nasdaq:MDCO)は、FDA心血管腎臓薬諮問委員会の12人の委員のうち9人がcangrelorの承認を支持したと発表した。苦節6年を経て、3月の欧州承認に続いて米国でも審査期限の6月に承認される可能性が出てきた。

cangrelorはアストラゼネカからライセンスした注射用のP2Y12阻害剤で、抗血小板作用のオンセットが15分、オフセットは60分と作用が早く短いことが特徴。PCI(経皮的冠介入術)による周術期心筋梗塞を防ぐ薬として06年に第三相入りしたが、09年に無益性が認定され中止、もう一本の第三相も打ち切られた。開発中止かと思われたがPHOENIX試験で再チャレンジ、名前の通り復活に成功し、13年に米国で承認申請された。

フェールした試験の方が多いのだから狐につままれたような感じだ。FDAも14年2月に開催された諮問委員会もエビデンスに懐疑的で、結局、審査完了となった。ところが、今回は審査官も諮問委員の多数も承認に前向きなスタンスに変わった。MDCO社が追加分析データを提出したとは言え、今回も狐につままれた感がある。

適応は、PCIの数時間前にPlavix(clopidogrel)のようなP2Y12阻害剤をプリロードすることができず、また、術中にReoPro(abcximab)のようなGPIIb/IIIa阻害剤を使う予定の無い患者に限定される。Plavixは作用のオンセットが遅いため事前に投与しておく必要があるが、もし検査の結果、PCIではなく開胸手術が決定した場合、薬が抜けるまで数日間、待つ必要がある。このため、医療施設や患者によってはプリロードを行わないことがあり、cangrelorの出番が来る。

PCIの対象の半分以上を占める安定期の患者では、事前の準備に時間を掛けられるので、出番は無いだろう。

cangrelorはEUでは3月にKengrexal名で承認。米国名はKengrealとなる模様。

リンク:MDCO社のプレスリリース

FDA諮問委員会、DPP-4阻害剤の心不全データなどのレーベル収載を勧告

(2015年4月14日発表)

FDA心血管腎臓薬諮問委員会は、アストラゼネカと武田薬品のDPP-4阻害剤の心血管アウトカム試験の結果を検討し、大多数の委員が、処方規制を強化する必要はないが心不全など安全性に関するデータをレーベルに記載すべきと回答した。MSDのDPP-4阻害剤の治験結果が明らかになった段階で必要があれば改めて検討することになるのではないか。

Onglyza(saxagliptin、和名オングリザ)はBMSが開発したDPP-4阻害剤で、14年2月にアストラゼネカが他の代謝学薬資産と共に買収した。FDAの要求に基づき実施した心血管アウトカム試験、SAVORで、心筋梗塞などのリスクが高まらないことが確認されたが、奇妙なことに、心不全による入院の発生率が3.5%と、Onglyzaを用いない対照群の2.8%より有意に高かった。ハザードレシオは1.27。また、全死亡のハザードレシオが1.11と、有意ではないが数値上は多かった。

一方、武田のNesina(alogliptin、和名ネシーナ)は第三相試験などで心血管安全性の要件を満たせなかったため米国では承認が遅延。心血管アウトカム試験EXAMINEの中間解析結果などを追加提出して13年に承認取得した。このEXAMINE試験では心筋梗塞などのリスクが高まらないことが確認された。Onglyzaとの関連で注目された心不全による入院は、2.6%と対照群の2.2%より若干多くハザードレシオは1.19だったが、95%信頼区間は1を跨いでおり有意ではなかった。

二型糖尿病は患者が多いので、1000人に一人、1万人に一人の副作用でも多くの被害を生む。大規模、長期間の試験を行ってリスクを精査する必要があるが、症例数や評価項目が多ければ多いほど、偶然に有意な差が出るリスクが高まる。回避策は、薬効に関しては評価項目を限定すること。実薬対照試験で時々見られる、主評価項目は非劣性、多数の二次的評価項目のうち一つ、二つで有意に優れていたという宣伝的研究発表は無視すればよい。一方、安全性については回避策は無い。薬効は一つで十分だが副作用が全てが重要だからだ。

もう一度安全性試験を行うのがベストだが、現実的ではない。幸い、DPP-4阻害剤についてはベストセラーであるMSDのJanuvia(sitagliptin)を始め、複数のコンパウンドの心血管アウトカム試験が実施されている。不確実なデータに基づいて議論しても結論は出ないので、これらのデータが発表されるのを待つのが賢明・・・これが今回の諮問委員会の判断のようである。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

リンク:武田のプレスリリース(和文)

【承認】


FDAがアムジェンの慢性心不全用薬を承認

(2015年4月15日発表)

FDAはアムジェンのCorlanor(ivabradine)を承認した。適応は、症候性安定性慢性心不全で安静時の心拍数が70bpm以上、且つ、耐容できる最大用量のベータブロッカーを服用している患者。効能は心不全の悪化による入院リスクの削減。

フランスのセルビエが開発したIfチャネル阻害剤で、ペースメーカーの電流を阻害して心拍数を抑制する。欧州では05年に慢性安定性狭心症の治療薬として初承認、ProcoralanまたはCorlentor名で販売されている。11年には慢性心不全に適応拡大が認められた。ところが、承認用量の1.3倍まで投与した慢性心疾患の試験で症候性狭心症を伴うサブグループの心血管疾患死・非致死的心筋梗塞が有意に増加、警告強化となった。

アムジェンは米国の権利を取得、SHIFT試験のデータに基づいて承認申請した。上記の条件に加えて、左心室機能が低下し、心房細動ではない患者を組入れて転帰を偽薬と比較したところ、心不全悪化による入院または心血管疾患による死亡のハザードレシオが0.82と有意に低かった(発生率24%対29%)。主な有害事象は徐脈、高血圧、一時的な視覚異常。妊婦は禁忌。

日本では小野薬品が11年にライセンス、ONO-1162として第二相試験中。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:アムジェン

今週は以上です。

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