2015年4月11日

海外医薬ニュース2015年4月12日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • シャイア、ドライアイ治療薬の承認申請をFDAが受理
  • ギリアド、もう一つのTAF合剤を米国で承認申請
  • ロシュ、アバスチンがEUで子宮頸癌に承認
  • アムジェン、Vectibixの新用法がEUで承認
  • FDA諮問委員会がDPP-4阻害剤の安全性を検討へ


【承認申請】


シャイア、ドライアイ治療薬の承認申請をFDAが受理

(2015年4月9日発表)

英国のシャイアは、FDAがlifitegrastの承認申請を受理したと発表した。ドライアイの治療に用いる。優先審査指定されたが、審査期限は10月25日と通常より遅いのが奇異。第三相試験の結果が明快ではないので承認されるかどうかは微妙だろう。

経口インテグリン阻害剤で、白血球の表面分子であるLFA-1に結合、ドライアイの角膜結膜組織で過剰発現しているICAM-1の結合を妨げて、Tセルが活性化して組織に移行するのを抑制する。第三相試験は二本実施され、夫々光学的評価と症状・機能評価を共主評価項目としたが、一本は光学的評価、一本は症状改善効果だけしか有意な効果が見られなかった。事前にFDAと相談した上での申請なので勝算が無い訳ではないのだろう。

13年に1.6億ドルで買収したSARcode Bioscienceの開発品。

リンク:シャイアのプレスリリース

ギリアド、もう一つのTAF合剤を米国で承認申請

(2015年4月7日発表)

HIV/AIDS治療薬の最大手であるギリアド(Nasdaq:GILD)は、F/TAF(emtricitabine<F>とtenofovir alafenamide fumarate<TAF>の合剤)を米国で承認申請したと発表した。12歳以上のHIV/AIDS患者に用いる。

TAFはViread(tenofovir disoproxil fumarate<TDF>、和名ビリアード)の類縁体でどちらも体内で同じ活性成分に変わるプロドラッグ。用量が10分の1と小さく、また、腎機能に対する副作用が小さそうだ。Vireadは米国で17年にジェネリック化するため特許切れ対策という側面もありそうだ。昨年11月には4種類の薬剤を配合したコンビ薬も米国で承認申請されている。

抗HIV薬にはアルファベットの略称が付けられる。emtricitabineがFなのは奇妙な感じだが、EはJTから導入して開発したVitekta(elvitegravir)に譲ったようだ。

リンク:ギリアドのプレスリリース

【承認】


ロシュ、アバスチンがEUで子宮頸癌に承認

(2015年4月8日発表)

ロシュは、Avastin(bevacizumab、和名アバスチン)の適応拡大がEUで承認されたと発表した。持続性難治性転移性子宮頸癌に、cisplatin(白金薬不耐の場合はtopotecan)及びpaclitaxelと併用する。米国でも昨年8月に承認されている。

承認の根拠となったGOG-024試験ではメジアン生存期間が16.8ヶ月とAvastin以外の二剤だけを用いた群の12.9ヶ月を上回り、ハザードレシオは0.74、p値は0.013だった。副作用面ではグレード3以上の胃腸、泌尿器、生殖器の瘻の発生率が6%(対照群は0%)、同じくG3以上の血栓塞栓が8%(1%)だった。

リンク:ロシュのプレスリリース

アムジェン、Vectibixの新用法がEUで承認

(2015年4月6日発表)

アムジェンは、Vectibix(panitumumab)の用法追加がEUで承認されたと発表した。野生kras型の転移性結腸直腸癌の一次治療薬として、FOLFIRIというirinotecanベースのレジメンと併用する。この組み合わせは初期の第三相試験で深刻な有害事象が多く見られたため開発が遅れていたが、その後、抗EGFR抗体は変異kras型には無効・有害だが野生型なら大丈夫ということが判明した。

リンク:アムジェンのプレスリリース

【医薬品の安全性】


FDA諮問委員会がDPP-4阻害剤の安全性を検討へ

(2015年4月10日発表)

FDAは4月14日に内分泌学代謝学薬諮問委員会を招集してアストラゼネカのOnglyza(saxagliptin、和名オングライザ)と武田薬品のNesina(alogliptin、和名ネシーナ)の心血管アウトカム試験のデータを検討する。4月10日にブリーフィング資料が公開されたが、心不全リスクとOnglyzaの試験で見られた死亡リスクのシグナルが主な議題である模様だ。

FDAは血糖治療薬を開発している企業に心血管アウトカム試験の実施を求めている。承認申請前の第三相試験などで大きな懸念が見られなかった場合は承認・発売後に、見られた場合は申請前に実施して、心筋梗塞などのリスクが高まらないことを確認しなければならない。二型糖尿病は患者が多く、薬物療法を何十年も続ける可能性があるため、心血管疾患リスクだけでなく様々な副作用を評価する価値がある。

OnglyzaのSAVOR試験も、NesinaのEXAMINE試験も、心筋梗塞や脳梗塞などのMACE(主要有害心血管イベント)が増えも減りもしなかったが、意外なことに、SAVOR試験では心不全による入院が有意に増加した。発生率は3.5%、他の薬で治療した対照群は2.8%、ハザードレシオ1.27、p値は0.007だった。また、更に意外なことに、二次的評価項目である全死亡のハザードレシオは1.11だった。有意ではないが、死亡のような発生数の少ないイベントは有意差が出難いので、慎重に受け止めることが必要だ。

EXAMINE試験では心不全入院に有意差は無かったが、発生率2.6%対2.2%、ハザードレシオ1.19、95%信頼区間0.9~1.6なので、これもイベント数が少ないために有意差が出なかった可能性を考えざるを得ない。

もしリスクが現実のものであった場合、メカニズムは何なのか?ブリーフィング資料によると、二種類のDPP-4作用剤の試験で、二型糖尿病患者の心血管疾患リスク因子の一つである内皮機能障害を誘導する可能性が浮上したとのこと。

となると、心不全入院リスクはDPP-4阻害剤のクラス・イフェクトかもしれない。MSDのJanuvia(sitagliptin、和名ジャヌビア/グラクティブ)の心血管アウトカム試験の結果が6月のADAで発表されるので、注目したい。諮問委員会当日にFDAが公表する可能性もありそうだ(ブリーフィング資料は1ヶ月前までに委員に配布することになっているため、情報は最新ではない)。

EXAMINE試験ではMACEに群間差が無かったが、北米の施設だけのサブグループ分析はハザードレシオが1.28と、有意ではないがあまり良くなかった。この点も討議される予定。

長期大規模試験は検出力が高いので、偶然にノイズを拾ってしまうことがある。今回もその可能性はあるが、もし現実のリスクであった場合は危険にさらされる潜在人口が多いので、軽々には結論を出せないだろう。血糖治療薬の選択肢は多いので尚更だ。諮問委員の判断が注目される。

リンク:FDA諮問委員会用ブリーフィング資料

今週は以上です。

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