2015年2月15日

海外医薬ニュース2015年2月15日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • 武田、経口プロテアソーム阻害剤の第三相が成功
  • ノバルティス、慢性心不全治療薬の承認申請が受理された
  • ファイザー、乱用抑止オピオイド製剤の承認申請が受理
  • エーザイのVEGFR阻害剤が米国で承認


【新薬開発】


武田、経口プロテアソーム阻害剤の第三相が成功

(2015年2月10日発表)

武田薬品は、MLN9708(ixazomib cirate)の第三相多発骨髄腫試験が成功したと発表した。最初の中間解析で独立データ監視委員会が成功認定した。データは未発表。承認申請に向かうことになりそうだ。

MLN9708は同社が08年に88億ドルで買収した米国のミレニアム社のVelcade(bortezomib)と同じプロテアソーム阻害剤で、経口投与できることが特徴。今回の第三相は1~3レジメンの前治療歴を持つ患者を組入れて、Revlimid(lenalidomide、和名レブラミド)と低量dexamethasoneを併用するRdレジメンと、更にMLN9708を併用する三剤併用法のPFS(無進行生存期間)を比較した。MLN9708は40mgを週一回、三週連続投与して一週間休む28日サイクル。

MLN9708は新患や維持療法の第三相も進行中。また、全身性軽鎖アミロイドーシス(免疫グロブリン性アミロイドーシス)でも第三相中。VelcadeもRd併用で良い成績を上げており、将来的には自社競合も発生しそうだ。

リンク:武田のプレスリリース(和文、pdfファイル)

【承認申請】


ノバルティス、慢性心不全治療薬の承認申請が受理された

(2015年2月13日発表)

ノバルティスはLCZ696の承認申請がFDAに受理されたと発表した。駆出力が低下した慢性心不全患者の治療薬で、承認されればこの分野では久方ぶりの新薬になる。

LCZ696はアンジオテンシンII受容体を拮抗するvalsartan(Diovanの活性成分)と、ANPやBNPを代謝する中性エンドペプチダーゼであるネプリライシンを阻害するsacubitrilを一つの分子にしたもの。体内で分離して夫々の活性を発揮する。新しいタイプのコンビ薬だ。

第三相のPARADIGM HF試験はNYHA心機能分類II~IVで駆出力が35%以下(治験開始当初は40%以下だったが途中で変更)で、BNP値上昇、そしてACE阻害剤又はARBを服用している患者8000人以上を組入れて、200mgを一日二回経口投与する群とACE阻害剤enalapril(10mg)を一日二回経口投与する群の臨床的転帰を比較した。主評価項目は心血管死または心不全による入院だが、心血管死を15%削減する効果を立証できる検出力を持っている。

昨年3月に三回目の中間解析が成功したことが明らかにされた。主評価項目も、心血管死も、ハザードレシオが0.80で、LCZ696群の方が有意に少なかった。

米国の承認審査では、北米施設の組入れが全体の7%と少ないことが論点になりそうだ。地域が違えば典型的な患者や治療法が異なるからだ。例えば、この試験ではペースメーカー使用患者が少ない。

また、アフリカ系患者の症例も少ない。中性エンドペプチターゼを阻害する薬では過去にBMSがomapatrilatのアウトカム試験を成功させたことがあるが、血管浮腫のリスクが見られたためFDAは承認しなかった。PARADIGN HF試験ではLCZ696群で19例、enalapril群10例、p=0.13で有意差はなかったが、もし組入れ数が1.5倍で発生率が同じだったら有意になっただろう。

アフリカ系患者は心不全も血管浮腫もリスクが比較的高いので、米国で承認を取るためにはもっと組入れて安全性を明確にすべきだったかもしれない。

この試験の組入れ/除外条件は上記の他にも色々あり、適応になる患者はごく一部という意見もあるようだ。対象患者をどの程度限定/拡張するかも重要な論点になりそうだ。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

ファイザー、乱用抑止オピオイド製剤の承認申請が受理

(2015年2月13日発表)

ファイザーはALO-02の承認申請がFDAに受理されたと発表した。oxycodoneの中にnaltrexoneを包み込んだ徐放性カプセル製剤で、オピオイドを必要とする慢性疼痛患者に用いる。米国はオピオイド経口剤を破砕して注射・吸引する乱用と、それに伴う死亡者の増加が問題になっている。ALO-02は破砕するとnaltrexoneのオピオイド受容体拮抗作用がoxycodoneの作動作用を相殺してしまうので、乱用に適さない。

リンク:ファイザーのプレスリリース

【承認】


エーザイのVEGFR阻害剤が米国で承認

(2015年2月13日発表)

FDAは、エーザイのLenvima(lenvatinib)を進行性放射性ヨウ素抵抗性分化甲状腺癌用薬として承認した。審査期限より2ヶ月早い、スピード承認。エーザイは専門薬ファーマシー二社を通じて発売する予定。

VEGFR1~3とFGFR、RET、c-kitなどを阻害する小分子薬で、24mgを一日一回、経口投与する。VEGF標的薬経験者も組入れた第三相試験では、PFS(無進行生存期間)がメジアン18.3ヶ月と偽薬群の3.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.21だった。深刻な有害事象は心不全、動脈血栓塞栓、出血、胃腸穿孔、瘻、低カルシウム血症、肝腎障害、QT延長などで、VEGF阻害剤に共通のものと、それ以外のものがある。

ロシュのAvastin(bevacizumab)の第三相試験が成功した時に『類薬を開発している企業や研究者にとっても朗報』と書いた。十数年が経ち、血管新生に関わるVEGFと受容体を阻害する薬は今や一大カテゴリーとなった。受容体チロシンキナーゼを阻害する小分子薬だけでも、米国で05年に承認されたバイエルのNexavar(sorafenib)を皮切りに、ファイザーのSutent(sunitinib)とInlyta(axitinib)、GSKのVotrient(pazopanib)、アストラゼネカのCaprelsa(vandetanib)、バイエルのStivarga(regorafenib)、エグゼリキシスのCometriq(cabozatinib)、ベーリンガー・インゲルハイムのVargatef(nintedanib)と、既に8種類の製品が存在する。

最初の適応症は腎癌系、甲状腺癌系など区々で、また、VEGFRのアイソトープや他の腫瘍関連遺伝子の阻害プロファイルも異なっているが、最終的に同じような癌を狙っている点では大差ない。Lenvimaの最初の適応症は甲状腺がんの一種である点では髄様腫用薬であるCaprelsaやCometriqと類似しており、適応拡大試験中の肝癌ではNexavarが若干異なった用途だが承認されている。

不思議なのは、これだけ多くの類薬が存在するのに価格競争が起きないこと。ARBやSSRIなどでは後発企業が定価を7掛けに抑えてシェアを取りに行く戦略を取った。最近でも抗HCV薬で値引き競争が激化している。VEGFR阻害剤は各社が適応症を若干ずらすことによって上手く回避していると言えるだろう。

リンク:FDAのリリース

リンク:エーザイの米国子会社のプレスリリース

今週は以上です。

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