2015年2月1日

15年2月1日号

(リンク先は殆どが英文です。改行で切れてしまう場合があります。リンク先の安全性や内容は保証できません。)

【ニュース・ヘッドライン】

  • Chimerix、エボラの治験を中止
  • リジェネロン/サノフィ、欧米で抗PCSK9抗体を承認申請
  • アムジェン、Kyprolisを適応拡大/新薬承認申請
  • ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の薬が初めて承認
  • Vyvanseがむちゃ食い障害治療薬として承認
  • 3A4阻害剤配合の抗HIV薬二剤が承認

【今週の話題】

Chimerix、エボラの治験を中止
(2015年1月30日発表)

Chimerix(Nasdaq:CMRX)はCMX001(brincidofovir)のエボラウイルス疾患に対する臨床試験を中止すると発表した。リベリアでオックスフォード大学などが国境なき医師団の協力を得て開始したが、新患が減少し少数しか組入れられない状態になったため。サイトメガロウイルス(CMV)予防試験など他の用途は続行する。

流行の鎮静化は朗報だが、喉元過ぎればという懸念もある。アフリカでは数年毎に流行しており、次に備えて研究を続けてほしいものだ。

リンク: Chimerixのプレスリリース

【承認申請】

リジェネロン/サノフィ、欧米で抗PCSK9抗体を承認申請
(2015年1月26日発表)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)と開発パートナーのサノフィは、Praluent(alirocumab)を欧米で承認申請し受理されたと発表した。抗PCSK9完全ヒト化抗体で、高脂血症の治療に用いる。

米国ではバイオマリンから6750万ドルで購入した優先審査バウチャーを利用、優先審査を受ける。PDUFA(承認審査期限)は7月24日。アムジェンの抗PCSK9完全ヒト化抗体、AMG145(evolocumab)は8月27日なので、申請は4ヶ月遅れたが承認では1ヶ月先行する可能性が出てきた。

欧州は申請が4ヶ月遅かった分、承認・発売も遅れるだろうが、フランスなどでは薬価交渉もあるので先陣競争は未だ続く。バイオ薬なので値段は高いだろうが、コレステロール治療薬で一番重要な心血管疾患リスク削減効果が確認されていない。コスト・パフォーマンスをどう評価するか、難しい問題だ。

リンク: リジェネロン/サノフィのプレスリリース

アムジェン、Kyprolisを適応拡大/新薬承認申請
(2015年1月27日発表)

アムジェンはKyprolis(carfilzomib)を多発骨髄腫の二次治療に用いる適応拡大申請を米国で行ったと発表した。12年に三次治療薬として加速承認を受けており、今回の申請で本承認切替も求めることになる。

EUで承認申請し、加速審査を受けることも発表した。欧州は多発骨髄腫用薬の承認に際して反応率に基づく評価では不十分と考えており、Kyprolisは未承認。

承認申請の根拠になった第三相試験は、セルジーンのRevlimid(lenalidomide)及び低量dexamethasoneと三剤併用した。中間解析でPFS(無進行生存期間)がメジアン26.3ヶ月とRevlimid・dexamethasoneだけの群の17.6ヶ月を上回り、ハザードレシオ0.69、log-rank検定によるp値は0.0001未満となり、成功認定された。全生存解析は未だ機が熟していないが、ハザードレシオ0.79で良いトレンドが見られた。有害事象による治験離脱は両群同程度だった。

Kyprolisは武田/ジョンソン・エンド・ジョンソンのVelcade(bortezomib)と同じプロテアソーム阻害剤。プロテアソームは細胞の不要になった蛋白をスクラップするメカニズムに関与するが、腫瘍細胞ではアポトーシスや腫瘍抑制に関わる蛋白の分解などにも関与している模様。Velcadeの初承認は03年、Kyprolisは12年で9年遅れたため、適応・用法の幅広さの差を一つ一つ埋めていく必要がある。

リンク: アムジェンのプレスリリース

【承認】

ワルデンシュトレーム型マクログロブリン血症の薬が初めて承認
(2015年1月29日発表)

FDAは、Imbruvica(ibrutinib)をワルデンシュトレーム型マクログロブリン血(WM)症の治療に当てる適応拡大を承認したと発表した。希少疾患用薬指定、ブレークスルーセラピー指定、優先審査指定を受けており、審査期限を3ヶ月余してスピード承認。

WMは非ホジキン型リンパ腫の一種で、異常なBセルが増殖し免疫グロブリンMを大量生産、易出血性や視覚、神経障害を招くことがある。年に1000~1500人が診断される由。

ImbruvicaはBruton' tyrosine kinase(Btk)というBセルの生存機構を調停するキナーゼを阻害する経口剤。ファーマサイクリクス(Nasdaq:PCYC)がジョンソン・エンド・ジョンソンと提携して開発販売。これまでに、非ホジキン型リンパ腫の一種であるマントルセルリンパ腫や慢性リンパ性白血病に承認されている。

WM症の試験では62%の患者が反応した。有害事象は血栓性血小板減少症、好中球減少症、貧血、下痢など。有害事象による治験離脱が6%の患者で、減量は11%の患者で発生した。心房細動や二次性原発性腫瘍などに気を付ける必要がある。

リンク: FDAのリリース
リンク: 両社のプレスリリース

Vyvanseがむちゃ食い障害治療薬として承認
(2015年1月30日発表)

FDAは、シャイアー社のVyvanse(lisdexamfetamine dimesylate)を成人のむちゃ食い障害の治療薬として適応拡大承認したと発表した。アンフェタミンのプロドラッグで、07年にADHD治療薬として承認されている。

むちゃ食い障害は、強迫感に基づく過剰な摂食が週一回以上の頻度で3ヶ月以上、続く。体重増や肥満に伴う疾患のリスクが高まる。Vyvanseの試験では過食頻度や強迫性過食行動が偽薬比有意に減少した。

アンフェタミンなので精神性有害事象や心血管疾患リスクを持つ。また、薬物依存リスクがあるため麻薬取締法上のスケジュールIIに指定され、処方・流通規制を受けている。

リンク: FDAのプレスリリース

3A4阻害剤配合の抗HIV薬二剤が承認
(2015年1月29日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンとBMSは、夫々、プロテアーゼ阻害剤と3A4阻害剤cobicistatの合剤が米国で承認されたと発表した。

JNJの新薬はPrezcobix。Prezista(darunavir、和名プリジスタ)の活性成分と組み合わせた。BMSはEvotazで、Reyataz(atazanavir、和名レイヤターズ)の活性成分を配合。HIV/AIDSの治療に他の薬と併用する。

プロテアーゼ阻害剤は生物学的利用率が低いため初期の製品は一日に沢山のピルを2~3回服用する必要があったが、同じプロテアーゼ阻害剤であるアッヴィのritonavirを少量併用することで半減期を延ばす、ritonavirブーストという手法が普及、ピルバーデンが緩和した。3A4阻害による薬物相互作用を逆手に取ったのである。ritonavirは隠れたベストセラーになり、また、アッヴィはlopinavir合剤であるKaletraもラインアップした。

PrezistaもReyatazもritonavir併用で一日一回服用を実現したが、ritonavirはアッヴィの特許が未だ失効していないため、他のプロテアーゼ阻害剤も含めて合剤は無かった。

そこに目を付けたのがギリアド(Nasdaq:GILD)で、3A4阻害剤cobicistatを薬物動態強化剤として開発、三種類の抗HIV薬と組み合わせたStribildや単剤のTybostとして商品化すると共に、JNJ、BMSの両社に合剤用としてライセンスしたのである。

折しも、FDAが合剤の承認に関するガイドラインを見直し、cobicistatのようなそれ自体には薬効を持たない成分の開発や、Stribildのような未承認薬同士の平行開発を容易にした。医師や患者も、ピルバーデンを緩和するために企業の壁を乗り越えて合剤を実用化することを要望した。

これらの新薬は、当局や製薬会社、医療組織・患者支援団体が患者のために何ができるかを示している。

リンク: JNJのプレスリリース
リンク: BMSのプレスリリース


今週は以上です。

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