2014年11月9日

海外医薬ニュース2014年11月9日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • インターセプト、NASH試験の論文刊行
  • アムジェン/武田、trebananibの第三相の一本目はフェール
  • GSK、抗IL-5抗体を承認申請
  • ヴァーテックス、第二の膿胞性線維症用薬を承認申請
  • ギリアド、TAF配合剤を承認申請
  • ベーリンガー、スピリーバを喘息症に適応拡大申請
  • ノバルティス、FDA諮問委員会が再び承認に反対
  • JNJ、ソブリアードとSovaldiの併用が正式承認
  • イーライリリー、Cyramzaの併用療法が米国で承認


【新薬開発】


インターセプト、NASH試験の論文刊行

(2014年11月6日発表)

インターセプト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ICPT)は、INT-747(obeticholic acid)の第二相NASH(非アルコール性脂肪性肝炎)試験の論文がLancet誌に刊行されたと発表した。効果や忍容性に関する懸念が表面化したことから株価が大きく下落した。

INT-747は胆汁酸誘導体で、核内受容体farnesoid x receptor(FXR)を作動する。原発性胆汁性肝硬変の第三相試験が成功、年内にも欧米で承認申請される見込み。日本と中国の権利は大日本住友製薬が取得、DSP-1747という開発コードでこれらの二用途で開発中。

今回のNASH試験は283人の患者を偽薬群と試験薬群(25mgを一日一回、経口投与)に無作為化割付して72週間治療し、病理学的評価と症状スコアの変化を二重盲検方式で比較した。米国国立医療研究所(NIH)が主導。プロトコルに従って実施された中間解析で成功認定された。

主評価項目である奏効率は偽薬群21%、試験薬群45%、p=0.0002で有意な差があった。治療効果は症状の進行した患者のほうが大きかった。脂肪症や小葉炎症、ALTやAST、総ビリルビン値などの代理マーカーも有意に改善した。尤も、これらの代理マーカーの変化が患者のQOLにどのように、どの程度影響するかは判然としない。症状スコアの解析は有意な差が無かった。

忍容性面での懸念も表面化した。LDL-C値が上昇するため必要に応じて治療するプロトコルだったが、それでも10mg/dL上昇した。インスリン抵抗性も悪化する可能性が示唆された。また、体重が偽薬群比2.3kg減少した。症候性副作用では、23%で掻痒が発生(偽薬群は6%)、多くは中程度で、一人が治験離脱した。更に、薬物関連とは見做されなかったが、試験薬群の二名が死亡した。

一方で、中間解析成功が発表された時点で懸念が報じられた心血管リスクに関しては、結局、結局、重度有害事象も、うち心血管に関するものも、群間の偏りは無かったようだ。

これらのことから、Lancet論文は、長期的な便益と安全性をもっと明確にする必要があると結論した。インターセプトは第三相に進む考えだ。NASH試験では25mgを一日一回、経口投与したが、原発性胆汁性肝硬変の試験のように最初の半年は5mgを使ってその後、忍容性を確認しながら10mgに増量する用法なら忍容性が向上するかもしれない。

リンク:インターセプト社のプレスリリース

リンク:Lancet論文の抄録

アムジェン/武田、trebananibの第三相の一本目はフェール

(2014年11月4日発表)

アムジェンは、AMG386(trebananib)の第三相難治性卵巣癌試験の二次的評価項目である全生存期間の解析がフェールしたと発表した。主評価項目であるPFS(無進行生存期間)の解析は成功したが、治療効果は決して高くなかった。延命効果もないとなると、この試験で承認申請するのは困難だろう。他の二本の試験の結果を待つことになる。尚、アムジェンと腫瘍学分野で広範な提携関係にある武田薬品も類似した内容のプレスリリースを出している。

AMG386はVEGF受容体ではなくTie 2受容体のレガンドであるアンジオポイエチン1と2を中和するペプチバディ(Fc・ペプチド融合蛋白)。卵巣癌の第三相は再発治療試験が二本、一次治療試験が一本で、前者は白金薬治療に部分感受または抵抗性の患者を組入れて、今回の試験はpaclitaxelと併用する効果をpaclitaxelだけの群と、もう一本はDoxil(doxorubicinリポソーム製剤)との併用と単剤を比較、一次治療試験はpaclitaxel・carboplatinと三剤併用する効果を検討した。

一本目は昨年6月にPFS解析成功が発表された。メジアン値が5.4ヶ月から7.2ヶ月に1ヶ月強延長し、ハザードレシオ0.66、pは0.001を下回った。しかし、一番重要な全生存期間はメジアン18.3ヶ月から19.3ヶ月に1ヶ月しか延びず、フェールした。有害事象による治験離脱の発生率が7%対20%と高いことが影響したのかもしれない。

類似した作用機序を持つAvastin(bevacizumab)の初期の第三相卵巣癌試験でもPFSは延びたが全生存期間は大差なく、FDAは承認しなかった。アムジェンも延命効果が確認されたら承認申請、駄目なら開発中止というスタンスである模様だ。

米国の新薬承認が早いのは代理マーカーを活用しているからだが、その裏では、代理マーカーの有効性を厳しくチェックしている。PFSは無増悪生存期間と訳されることが多く、増悪が遅れるなら良いような印象を与えるが、実際には腫瘍の大きさなど症状とは必ずしも連動しない基準に基づく評価である。腫瘍の成長が21%であっても19%でもそれほど大きな差は無いが、PFSの判定では進行と未進行で線引きされてしまう。

判定の客観性を担保するためにはやむを得ないのだが、一方で、副作用という有害症状は必ず発生するので、QOLが改善するのか、それとも悪化するのかを十分に吟味する必要がある。

リンク:アムジェンのプレスリリース

【承認申請】


GSK、抗IL-5抗体を承認申請

(2014年11月5日発表)

グラクソ・スミスクラインは、SB240563(mepolizumab)を欧米で承認申請したと発表した。好酸球増多型重度喘息症の維持療法として100mgを4週間に一回、皮注する。抗IL-5完全ヒト化抗体で、08年に欧州で承認申請したが承認されず、好酸球増多型だけを組入れた第三相試験を実施して増悪リスク削減効果を確認した上で再申請となった。

リンク:GSKのプレスリリース

ヴァーテックス、第二の膿胞性線維症用薬を承認申請

(2014年11月5日発表)

ヴァーテックス(Nasdaq:VRTX)は、VX-809(lumacaftor)とKalydeco(ivacaftor)を12歳以上のホモF508欠損型膿胞性線維症の併用療法として欧米で承認申請したと発表した。

膿胞性線維症はCFTR遺伝子の機能不全が関与している。KalydecoはCFTRのポテンシエイターで、G551D型などの変異を持つ患者に承認されている。VX-809はCFTR矯正剤と呼ばれる新薬で、CFTRが細胞の表面に移行して機能を果たすのを支援する。ホモF508欠損型は両親から受け継いだ遺伝子がどちらもF508欠損型で、12歳以上の患者数は米国で8500人、欧州で12000人と推定されている。

患者が多く、また用量も大きいので、Kalydecoの売上高にも大きく寄与するだろう。

リンク:ヴァーテックスのプレスリリース

ギリアド、TAF配合剤を承認申請

(2014年11月6日発表)

ギリアド・サイエンシズ(Nasdaq:GILD)は、tenofovirの新しい塩であるTAF(tenofovir alafenamide fumarate)を配合した4剤合剤を米国で承認申請したと発表した。従来の塩であるTDF(tenofovir disoproxil fumarate)と同様にプロドラッグだが、用量が1/30なので合剤を開発しやすく、また、TDFより腎機能や骨塩密度に与える悪影響が小さい長所を持つ。

この合剤は、分かりやすく言えば、Stribild(和名スタリビルド配合錠)のTDFをTAFに替えたもの。日本たばこからライセンスしたインテグラーゼ阻害剤elvitegravir、3A4阻害剤cobicistat、逆転写阻害剤emtricitabineとTAFを配合している。欧州でも年内に承認申請する予定。

TDFは数年後に特許切れするので、同社がラインアップする数多くのTDF配合剤の需要をTAF合剤に切り替えさせることができれば業績面でポジティブだ。

リンク:ギリアドのプレスリリース(HPにアクセスできなかったためBusiness Wireのサイト)

ベーリンガー、スピリーバを喘息症に適応拡大申請

(2014年11月4日発表)

ベーリンガー・インゲルハイムは、Spiriva Respimat(tiotropium、和名スピリーバ レスピマット)を難治性喘息症の成人の維持療法薬として米国で承認申請し、受理されたと発表した。EUでは今年9月に、吸入ステロイドとベータ2作用剤を併用しても増悪を十分に管理できない成人患者向けに承認されている。

COPDと喘息症は病理や発症年齢など多くの点で異なる疾患と考えられていたが、COPDの研究が進むにつれて案外に共通点があったり、併発症例も報告されるようになった。薬に関しても吸入ステロイドとベータ2作用剤はどちらの治療にも用いられているが、Spirivaのようなムスカリンブロッカーも承認されれば、また一つ共通点が増えることになる。上記の抗IL-5抗体もCOPD試験が進行中だ。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


ノバルティス、FDA諮問委員会が再び承認に反対

(2014年11月6日発表)

ノバルティスは多くの有望開発品を持っていて、その幾つかは承認審査中だが、急性心不全治療薬として承認申請されたReasanz(serelaxin)に続いて、多発骨髄腫用薬Farydak(panobinostat)もFDA諮問委員会から厳しい評価を受けた。腫瘍学薬諮問委員会で7人の委員のうち5人が便益がリスクを上回るとは言えないと判定したのだ。今回も、第三相試験の結果が学会発表された時には明かされなかった問題点が表面化した。

panobinostatは汎ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤で、ヒストンやチューブリン、p53などの転写を妨げる酵素を阻害する。第三相試験では、再発性難治性の多発骨髄腫768人を組入れて、Velcade(bortezomib)及びdexamethasoneと三剤併用する効果をこの二剤だけを投与する群と比較した。PFSは二剤併用群がメジアン8.1ヶ月、三剤併用群は12.0ヶ月となり、ハザードレシオ0.63、p値は0.0001未満と大変良い結果となった。一方、深刻な有害事象は増加した。

問題点は、第一に、プロトコルと異なる基準に基づいて進行判定された症例が散見されたこと。基準を統一するために第三者による中央評価を行ったところ、メジアン7.7ヶ月対9.9ヶ月と、有意だが小さな差しか見られなかった。こういう場合は全生存期間の解析に頼るしかないが、まだ解析に必要なイベント数に到達しておらず、中間解析値もメジアン30.4ヶ月と33.6ヶ月で3ヶ月しか違わなかった。

忍容性では、有害事象による治験離脱が20%対36%と試験薬群の方が多く、深刻な有害事象の発生率も42%対60%と多かった。更に、治療中に癌の進行以外の理由で死亡した患者の比率も3.5%対7%で多かった。

治療の便益は十分に確立しておらず、副作用で死亡するリスクも決して小さくないとなると、承認反対が上回ったのも無理はないだろう。この第三相試験は日本の施設も参加しており、9月に日本でも承認申請されたが、機構はどのような判定を下すだろうか。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

【承認】


JNJ、ソブリアードとSovaldiの併用が正式承認

(2014年11月5日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、慢性C型肝炎治療薬Olysio(simeprevir、和名ソブリアード)をギリアドのSovaldi(sofosbuvir)と二剤併用する用法が米国で承認されたと発表した。

インターフェロンやribavirinを併用する必要がないため米国では既にオフレーベルで広く用いられている。正式に承認されれば能動的な販促が可能になるが、この二剤を併用すると12週間コースで15万ドルかかる。10月に米国で承認されたギリアドの合剤、Harvoni(sofosbuvirとledipasvir)の9.4万ドルと比べて効果は大差ないのにあまりにも割高。

JNJが対抗するためにはOlysioの価格を6.6万ドルから1万ドルに下げる必要があり、断行するか、Harvoniが承認されていない国に重点を置くか、難しい判断を迫られることになる。

リンク:JNJのプレスリリース

イーライリリー、Cyramzaの併用療法が米国で承認

(2014年11月5日発表)

イーライリリーは、FDAがCyramza(ramucirumab)を末期・転移性胃癌の二次治療にpaclitaxelと併用することを認めたと発表した。この抗VEGFR-2完全ヒト化抗体は今年4月に二次治療として単剤投与する用法で初承認された。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

今週は以上です。

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