2014年4月20日

海外医薬ニュース2014年4月20日号




【ニュース・ヘッドライン】




  • FDAが子宮筋腫の腹腔鏡下細切除去術に関して警告
  • 遺伝子組換え型VW因子の第三相試験が成功
  • ILC:INT-747の第三相試験結果
  • MSDの経口減感作療法用薬が米国で承認
  • GSKのGLP-1作用剤が米国でも承認
  • アーゼラをCLL一次治療に使うことが承認
  • Gardasilの割安コースがEUで承認



【今週の話題】


FDAが子宮筋腫の腹腔鏡下細切除去術に関して警告

(2014年4月17日発表)

FDAは、子宮筋腫の治療法の一つである腹腔鏡下電動細切除去術について安全性情報を発出し、施行しないよう促した。未発見の子宮肉腫細胞を切除し腹腔や骨盤に散らばしてしまうリスクがあるからだ。FDAの推定では、筋腫を治療するために子宮・筋腫摘出術を受ける女性の350人に一人の割合で、平滑筋肉腫などの子宮肉腫が発見される。米国では子宮筋腫を治療する目的の子宮摘出術が年間に25~30万件施行されており、うち10%強が腹腔鏡下電動細切除去術。体の負担が小さい好ましい治療法と考えられていただけに、驚きだ。

この問題に関しては複数の研究論文が刊行されており、様々な学会も声明を出している。FDAの警告は遅すぎたと言えるかもしれないが、研究者やメーカーから様々なデータを得ることのできるFDAがこのような結論を出したことは重要だ。FDAは、もし施行する場合は患者にリスクを伝えるよう勧告しており、医療過誤訴訟リスクを考えると励行せざるを得ないだろう。

FDAによると、一部の医療施設・医師は標本袋の中で細切することによって拡散を防ぐ手法を採用している由。言及しているだけなので効果に関する十分なエビデンスは持っていないのだろうが、どうしても施行しなければならない場合はオプションの一つになるかもしれない。

リンク:FDAのプレスリリース(主要学会の声明のリンク有)

【新薬開発】


遺伝子組換え型VW因子の第三相試験が成功

(2014年4月16日発表)

バクスター(NYSE:BAX)は、BAX 111の第三相試験成功を発表した。遺伝子組換え型のフォン・ヴィレブランド因子で、フォン・ヴィレブランド病患者の出血治療に成功した。

フォン・ヴィレブランド病は遺伝性の男女両性が罹患する疾患で、フォン・ヴィレブランド因子の不足または機能不全が原因で出血時の血栓形成が上手く行かない。罹患率は100人に一人と推測されているが症候が深刻で疾病診断されるのはそのうち10人に一人とのことだ。

今回の試験は欧米や豪州、日本、ロシア、インドの医療施設で重度フォン・ヴィレブランド病の患者37人を組入れて、出血時に単剤でまたは遺伝子組換え型第VIII因子Advate(octocog alfa)と共に投与して治療効果や安全性を検討した。結果は、22人の患者全てで治療に成功した。インヒビターや血栓性イベントは一例も発生しなかった。頭痛、悪心嘔吐、貧血などの有害事象が発生したが、試験薬との関連性が疑われる深刻な有害事象は、点滴時の一時的な心拍上昇と胸部不快感だけだった。

バクスターは2014年末までに米国で承認申請する考え。年内に予防的投与の第三相試験も行う予定。

リンク:
バクスターのプレスリリース


ILC:INT-747の第三相試験結果

(2014年4月12日発表)

ILC(国際肝臓会議、EASL2014)でインターセプト・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:ICPT)のINT-747(obeticholic acid、OCA)の第三相胆汁性肝硬変試験結果が発表された。217人の患者を偽薬、5mg(半年後に10mgに増量)、または10mgを一日一回経口投与する三群に割付けて12ヶ月間治療したところ、各群10%、46%、47%の患者でアルカルフォスフォターゼ値と総ビリルビン値が改善。両用量とも偽薬比有意に優れていた。

胆汁性肝硬変は主として50-60代の女性が罹患する自己免疫性疾患。肝内小型胆管が徐々に破壊され、胆汁が肝臓内に滞留、肝臓障害を合併する。先進国の患者数は最大で30万人、うち6万人が診断されursodiol(UDCA)による治療を受け、その半分が応答する由だ。この治験でもほとんどの患者がUDCAを服用していた。

この試験の難点は、臨床的転帰を検討していないこと。アルカルフォスフォターゼ値と総ビリルビン値が下がれば肝臓疾患死や肝移植のリスクが減少するという事後的メタアナリシスの裏付けがある模様だが、仮説検証的試験ほど明確なエビデンスではない。試験薬群は掻痒の有害事象が多かったのだが、掻痒は胆汁性肝硬変の症状でもあるので、病状が悪化したと考えることもできる。もしQOLが悪化するならば、臨床的な効用は何なのか、明確にする必要があるだろう。

OCAはUDCAと同様な胆汁酸成分の類縁体だが、核内受容体であるFXRのアゴニストとしても作用することが特徴。本試験で示された効果がFXRアゴニスト作用によるものなのか、UDCAを増量するのと同じなのか、作用機序の解明も望まれる。

インターセプトは年末に欧米で承認申請する予定。日本は大日本住友製薬が開発中。

リンク:インターセプトのプレスリリース

リンク:ILCプレスコンファレンスでのP2延長試験などに関するプレゼンテーションのビデオ(You Tube)

【承認】


MSDの経口減感作療法用薬が米国で承認

(2014年4月14日、17日発表)

MSDの二種類の経口減感作療法用薬が米国で相次いで承認された。減感作療法はアレルギー性鼻炎・結膜炎の患者にアレルゲンを少量ずつ毎日投与して体を慣れさせるもの。注射ではなく経口投与できるので市場が拡大するだろう。尤も、効果は特効薬というほどでもなく、稀だが命に係るアナフィラキシーのリスクもあるので注意が必要だ。子宮頸癌ワクチンの事例を見ても分かるように、普及の妨げになるからといって稀だが深刻な有害事象に言及するのを割愛すると、結局は普及の妨げになる。

Grastek(MK-7243)はチモシー、Ragwitek(MK-3641)はブタクサのアレルゲンを含有する舌下錠で、口腔内で溶解・吸収される。前者は5~65歳、後者は18~65歳の患者に承認された。シーズンが始まる12週間前から一日一回服用する。初回は医療施設で服用し、30分間様子を見る。その後は在宅服用が可能だが、万が一深刻なアナフィラキシーが発生した時のために自己注用エピネフィリンを常備する。臨床試験では、症状や治療薬の量を2割程度減少する効果が見られた。

重度アレルギー反応のリスクが枠付警告された。重度の管理不良喘息症や、重度全身性アレルギー反応歴、好中球性食道炎の患者には投与すべきではない。主な有害事象は口腔内のアレルギー反応。

両剤はAlk Abelloからライセンスしたもの。StallergenesのOralairが一足先にFDA承認を得ており、こちらは5種類のアレルゲンを含有しているのでカバレッジが広い。

リンク:MSDのプレスリリース(Grastek承認、4/14付)

リンク:同(Ragwitek承認、4/17付)

リンク:FDAのリリース(Ragwitek承認、4/17付)

GSKのGLP-1作用剤が米国でも承認

(2014年4月15日発表)

グラクソ・スミスクラインはGLP-1作用剤Tanzeum(albiglutide)が米国で承認されたと発表した。EUでも3月にEperzan名で承認されており、二型糖尿病領域ではAvandia(rosiglitazone)以来の大型薬候補の投入になる。DPP-4に分解され難く改変したヒトGLP-1にヒト血清アルブミンを結合したもので、皮注頻度が週一回であることが特徴。

GLP-1作用剤のクラスレーベルである、既承認のGLP-1作用剤の齧歯類試験で甲状腺C細胞腫が増加したことが枠付警告されている。ヒトにも同様なリスクがあるかどうかは不明だが、甲状腺髄様腫のリスクが高い患者は禁忌。尚、Tanzeum自体の癌原性試験は行われなかった。齧歯類では抗体ができてしまい血中濃度を維持できないからだ。

有害事象プロファイルは他のGLP-1作用剤と同様に、悪心嘔吐や注射箇所反応が増加する。薬効面は、幾つかの活性薬対照非劣性試験がフェールしており、差は小さいものの、やや弱い印象を与える。

リンク:GSKのプレスリリース

リンク:FDAのリリース

アーゼラをCLL一次治療に使うことが承認

(2014年4月17日発表)

グラクソ・スミスクラインとジェンマブ(OMX:GEN)は、Arzerra(ofatumumab、和名アーゼラ)をCLL(慢性リンパ性白血病)の一次治療に用いる適応拡大が米国で承認されたことを発表した。fludarabineによる治療に不適・不耐の患者にchlorambucilと併用する。09年に再発性・難治性CLLに初承認されたが、ジョンソン・エンド・ジョンソンが行ったImbruvica(ibrutinib)の直接比較試験で負けたので、商業的に良いタイミングだ。

Arzerraはジェンザイムが創製した抗CD20抗体で、Rituxan(rituximab)のようなキメラ抗体ではなく完全ヒト化抗体であることが特徴。Rituxanの改良薬であるGazyva(obinutuzumab)も昨年、CLL一次治療で承認されている。夫々の臨床試験で示されたPFS(無増悪生存期間)延長効果は同程度のように見えるが、直接比較試験ではないので良く分からない。

リンク:
GSKのプレスリリース


Gardasilの割安コースがEUで承認

(2014年4月7日発表)

MSDとサノフィの欧州ワクチン合弁会社であるサノフィ・パスツーツMSDは、子宮頸癌ワクチンGardasilを9~13歳の子供に二回接種する用法がEUで承認されたと発表した。これまでの三回接種と比べてコストが下がることになる。費用が理由で避けていた人には朗報だ。14歳以上の人は、これまでと同様に三回接種する。

Dobsonらが行った臨床試験では、16~26歳を対象に三回投与するのと同程度の効果があった。但し、一部の型のHPVに対する効果が2~3年後に低下し非劣性ではなくなったため、著者らは更なる研究が必要と述べている。

既に三回接種を受けた人は何を今更と思うかもしれないが、これには事情がある。子宮頸癌ワクチンの第三相試験の結果、既に癌原性HPVに持続的感染している人にはその型のHPVによる癌を防ぐ十分な効果が無いことが判明。本来なら事前に検査して無駄な投与を止めるべきなのだが、他の型のHPVによる癌の予防に役立つかもしれず、そもそも、事前検査はコストが嵩み、持続感染と判定された人をどうするかという微妙な問題も含んでいるため、検査は止めて、代わりに、まだ感染していないであろう10歳前後の時期に接種することになった。

しかし、10歳前後を対象とした臨床試験は簡単なものしか実施されていなかったので、その段階では至適用法が明らかではなかったのだろう。

グラクソ・スミスクラインのCervarixもEUでは9~14歳に2回接種スケジュールが承認されている。少なくともこの年齢層に関しては2回接種が主流になりそうだ。

リンク:サノフィ・パスツーツMSDのプレスリリース

リンク:Dobsonらの治験論文(JAMA、2013年、オープンアクセス)

今週は以上です。

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