2014年3月30日

海外医薬ニュース2014年3月30日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • FDA諮問委員会はノバルティスの心不全治療薬を支持せず
  • GSK、黒色腫併用療法のEU申請を撤回
  • バイオジェンの長期作用性第IX因子が米国で承認
  • EUが大日本/武田の向精神薬を承認
  • EUがGSKのGLP-1作用剤を承認
  • エグゼリキシス、CometriqがEUでも承認
  • ロシュ、リツキサンの皮注用製剤もEUで承認


【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会はノバルティスの心不全治療薬を支持せず

(2014年3月27日発表)

FDA心血管腎臓薬諮問委員会は、ノバルティスが急性非代償性心不全治療薬として承認申請したRLX030(serelaxin)を検討し、全員一致で承認に反対した。審査官の懐疑的意見に賛同した格好だ。

RLX030はノバルティスが2010年に買収したCorthera社の遺伝子組換え型relaxin-2。Relaxinは妊娠によって増加する天然のペプチドホルモンで血管の受容体に結合して血管拡張させる。第三相試験では低血圧症のリスクに配慮して収縮時血圧が125mmHg以上の患者だけを組入れて48時間連続点滴静注し、息切れ症状改善効果を偽薬と比較した。

結果は、二種類の主評価項目のうち、5日間のビジュアル・アナログ・スケール(VAS)の推移を曲線下面積で評価した解析では有意に優れていたが、もう一つの、中程度以上の奏効率(Likertスコアを用いて6、12、24時間の症状を評価)はフェールした。副次的評価項目では、60日時点の退院・生存率や心血管死・心腎不全による再入院リスクの解析はフェールしたが、180日死亡率は7.2%対11.3%で有意差があった。

評価方法によって結果が異なるとなると、夫々の評価方法の妥当性と臨床的な意義を検討しなければならない。今回のVAS評価は、インピュテーション(打切り例のデータの扱い方)に不適切な点があった模様だ。群間差は息切れの悪化ではなく心不全症状が悪化した症例数に差が、利尿剤の増量で容易に対処できる程度の小さな悪化でしかなかった可能性がある模様。症状悪化と判定した根拠が記録されていないため、臨床的に重要なイベントが起きたのかどうか、判然としない憾みもあった。。

臨床試験の成果が現実の医療でも再現されるためには、試験は別々に二本、夫々できるだけ多くの施設が参加して行う必要がある。RLX030は曖昧な結果になった試験一本のデータしかないのが弱点だ。また、ノバルティスは心不全症状の改善という効能を求めたようだが、FDA審査官は、臨床試験の主評価項目は息切れ症状改善だけなのだから効能が広すぎると判定した。

EUのCHMPも同様な理由で承認を見送った。急性心不全の臨床試験はフェールが多く、RLX030が片方だけでも成功したことは快挙であり、朗報の筈だったが、残念なことになった。今回の第三相試験はCorthera社がデザインしたものだが、きちっとした臨床試験を行っていれば遠回りしなくてよかったかもしれない、と思わざるを得ない。FDA審査官や諮問委員会が厳しい判定を行ったのはエビデンスが不十分だからであって、薬効を否定したわけではないのだ。

ClinicalTrials.govを見ると、RLX030の第三相試験は三本進行中で、一本は15年中にも結果が出そうだ。それを待って再承認申請することになりそうだ。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

GSK、黒色腫併用療法のEU申請を撤回

(2014年3月26日発表)

グラクソ・スミスクラインはMEK1/2阻害剤Mekinist(trametinib)を悪性黒色腫用薬としてEUで承認申請しているが、braf阻害剤Tafinlar(dabrafenib)との併用は撤回したことを明らかにした。第二相併用試験に基づいて申請したが、CHMPはエビデンス不足と判定した模様。第三相試験が成功したので、単剤投与が承認された段階で改めて用法追加申請を行うのではないか。

面白いのは、CHMPとFDAの対応や評価が分かれたこと。Mekinistは米国では12年8月に単剤投与で承認申請、13年5月に承認、同年7月にTafinlar併用法を申請、今年1月に承認という経過をたどった。一方、EUは米国に半年遅れで13年2月に、単剤投与だけでなく第一相/二相試験のデータに基づいてTafinlar併用法も申請、加速審査を受けたが、単剤はまだ結論が出ず、併用は標準審査に切り替わっただけでなく申請撤回になってしまった。

単剤・併用同時申請を認めたという点ではEUのほうが好意的だったのだが、結局、反応率と反応持続期間という代理マーカーに基づく承認にはFDAほど前向きではなかったということなのだろう。

リンク:
GSKのプレスリリース


【承認】


バイオジェンの長期作用性第IX因子が米国で承認

(2014年3月28日発表)

FDAは、バイオジェン・アイデックのAlprolixをB型血友病薬として承認した。出血事故の予防・治療や施術時の出血管理、そして重度患者のルーチンな出血エピソード予防に用いる。免疫グロブリンG1の固定領域と結合して半減期を長期化したもので、点滴静注頻度が一週間または10日間に一回と、既存の製剤の週2~3回より少ないことが長所。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:バイオジェン・アイデックのプレスリリース

EUが大日本/武田の向精神薬を承認

(2014年月日発表)

大日本住友製薬と武田薬品は、異型向精神薬Latuda(lurasidone)がEUで承認されたことを発表した。英国は大日本が、それ以外の地域では武田が販売する。向精神薬は様々な受容体に対する作用の組み合わせが夫々に異なり、LatudaはH1やM1受容体に対する作用が小さいことが特徴。

リンク:両社のプレスリリース

EUがGSKのGLP-1作用剤を承認

(2014年3月26日発表)

GSKは、長期作用性GLP-1作用剤Eperzan(albiglutide)がEUで承認されたと発表した。二型糖尿病の治療に用いる。同社が買収したヒューマン・ジノム・サイエンシーズが昔、買収した企業のアルブミン結合技術を用いて半減期を長期化したもので、週一回の投与で足りる。この技術はインターフェロン・アルファなど様々なバイオ薬に応用されたが、実用化第一号となった。

リンク:GSKのプレスリリース

エグゼリキシス、CometriqがEUでも承認

(2014年3月25日発表)

米国のエグゼリキシス(Nasdaq:EXEL)は、Cometriq(cabozantinib)がEUで切除不能進行性甲状腺髄様腫に承認されたと発表した。VEGFR2やmet、kitなどを阻害するマルチ・キナーゼ阻害剤で、米国でも昨年11月に承認された。

同社は、難治性去勢抵抗性前立腺癌の第三相試験についてもアップデートした。予定通り中間解析が行われ、データ監視委員会が続行を勧告したというもの。株式市場は成功を期待していた模様で、株価が大きく下落した。ジョンソン・エンド・ジョンソンのZytiga(abiraterone)やメディベーション/アステラスのXtandi(enzalutamide)が中間解析で主目的を達成したからだろう。

Cometriqの場合は用途探索試験の成績が中々よく、第三相試験の検出力もハザード・レシオ0.75を前提に90%と高いので、中間解析で成功判定されなかったことは物足りない印象だ。

リンク:エグゼリキシスのプレスリリース

リンク:同(前立腺癌試験中間解析について)

ロシュ、リツキサンの皮注用製剤もEUで承認

(2014年3月28日発表)

ロシュは、MabThera(rituximab、和名リツキサン)の皮注用製剤がEUで濾胞性リンパ腫やびまん性大Bセルリンパ腫に承認されたと発表した。昨年はHerceptin(trastuzumab)の皮注用製剤も承認されており、また、ハロザイム社の技術ではないがRoActemra(tocilizumab、和名アクテムラ)の皮注用製剤もEUで承認審査中(日本は昨年承認)と、皮注用製剤の開発に積極的に取り組んでいる。一々病院に行かなくても良いので患者は便利、医療費の節約にもなり、また、既存製剤の特許切れ対策にもなるだろう。

リンク:ロシュのプレスリリース

今週は以上です。

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