2013年12月29日

海外医薬ニュース2013年12月29日




私事で恐縮ですが、今年は異動で就業環境に大きな変化があり、正直、海外医薬ニュースを続けるのは大変でした。何とか来年も続けたいと思いますので、ご声援お願いします。

来年が新薬の研究に情熱を傾ける人たちや、病気に苦しむ人たちに少しでも良い年になりますように。

【ニュース・ヘッドライン】




  • NK-1受容体拮抗剤の第三相が成功したが
  • TAK-875が開発中止
  • 武田、MLN0002のFDA審査期限延期
  • ノボの第XIII因子が米国でも承認
  • ルンドベックの抗鬱剤が欧州でも承認


【新薬開発】


NK-1受容体拮抗剤の第三相が成功したが

(2013年12月23日発表)

TESARO(Nasdaq:TSRO)は、Opko Health(AMEX:OPX)からライセンスしたNK-1受容体拮抗剤rolapitantの三本の第三相試験のうち最初の二本が成功したと発表した。中度と高度の催吐性を持つ化学療法を受ける癌患者を組入れた悪心嘔吐予防試験で、5-HT3受容体拮抗剤とdexamethasoneを併用してrolapitantを一回投与したところ、化学療法開始の24時間後から120時間後の間の悪心嘔吐が偽薬比有意に少なかった。

残念だったのは、二次的評価項目である最初の24時間、あるいは全期間では有意差が無く、トレンドに留まったこと。10年前に承認された類薬であるEmend(aprepitant、和名イメンド)の試験では全期間でも有意差があった。

NK-1受容体拮抗剤は遅発性悪心嘔吐の予防に有効と考えられており、rolapitantの試験結果は意外ではない。また、Emendは3日間経口投与するが、rolapitantは半減期が長いため一回で足り、また、薬物相互作用リスクが小さい。ただそれにしても、10年以上遅れて発売される薬のデータが先行品に見劣りするのでは情けない。

rolapitantは09年にシェリング・プラウから権利を取得したもの。TESAROはエーザイが買収したMGIの経営陣などが設立した会社で、そう言えば、同社が開発した5-HT3受容体拮抗剤Aloxi(palonosetron)も第三相試験のデータが先行品より見劣りした。

リンク:Tesaroのプレスリリース

TAK-875が開発中止

(2013年12月27日発表)

武田薬品は、GPR40部分作動剤TAK-875(fasiglifam)の開発中止を発表した。第三相試験中で、日本では今年5月に試験成功が発表されたが、肝安全性懸念が浮上したようだ。

GPR40は膵島細胞に発現する遊離脂肪酸受容体で、TAK-875は部分作動して血糖濃度依存的にインスリン分泌を刺激する。第二相試験では50mg一日一回の投与でHbA1cが偽薬比0.99%低下した。深刻な有害事象の発生率は1%で、肝機能検査値異常、心停止・腎不全、冠動脈頸動脈疾患が見られた。

第三相では独立肝安全性評価委員会が設置されたとのことなので、FDAのガイダンスに対応して、Hyの法則に該当する症例について薬物誘導性肝障害であるかどうか判定するプロトコルが採用されたのだろう。その結果、5年前に開発中止となったTAK-475(lapaquistat)と同様に、関連性を否定できない症例が見つかったのだろう。

1000人に一人といった低頻度で発生する肝毒性は第三相試験でないと確認できない。血圧、血糖値、コレステロール値を下げる薬は効果に関しては後期第二相試験で十分に確認することができるので、第三相試験の意義は稀に起きる副作用の発見である。その意味では、武田がきちんとした体制を取って発売前にリスクを検出したことは賞賛すべきだろう。

リンク:武田のプレスリリース(和文)

【承認審査・委員会】


武田、MLN0002のFDA審査期限延期

(2013年12月25日発表)

武田薬品は、FDAが炎症性腸疾患治療薬MLN0002(vedolizumab)の潰瘍性大腸炎用途における承認審査期限を来年2月18日から5月20日に延期したと発表した。武田が添付文書の記述などを改定したことが申請内容の主要な変更と見做された模様だ。クローン病は標準審査で日程的な余裕があり、期限は変更されていない。

MLN0002はアルファ4ベータ7インテグリンを標的とする抗体医薬型免疫抑制剤で、バイオジェン・アイデックのTysabri(natalizumab)と似ているが、アルファ4ベータ1には結合しないのでPML(進行性多病巣性白質脳症)という深刻な副作用リスクを持たない可能性があり、現実に、臨床試験では一例も発生しなかった。しかし、Tysabriも発生頻度は数千人に一人なので、エビデンスが十分とは言えない。迂闊に安全と認定してしまうと、医師や患者が油断して発見・対応が遅れてしまうリスクがある。

このため、私は、REMS(リスク評価緩和戦略)という適正使用担保策が導入され医師・薬剤師の事前登録やPMLの原因であるJCウイルスの事前検査などが課されると予想しているが、武田のリリースはREMSに言及していない。もし特別なREMSがなく添付文書の注意喚起だけで済むのだとしたら、販売面でポジティブだ。

リンク:武田のプレスリリース(和文)

【承認】


ノボの第XIII因子が米国でも承認

(2013年12月20日発表)

ノボ ノルディスクは、Tretten(catridecacog)が第XIII因子欠乏症患者の出血予防薬としてFDAに承認されたと発表した。欧州では昨年承認されたが、米国は生産問題などが原因で遅れていた。

第XIII因子は、血栓のフィブリンとクロスリンクして網状に変え、強固な凝固塊にする。第XIII因子欠乏症は世界で1000人強の超希少疾患で、一旦は止血するものの再出血しやすい。第XIII因子は酵素活性を持つAサブユニットとBサブユニットで構成されるが、第XIII因子欠乏症の殆どは前者を欠いている。そこで、遺伝子組換え型の第XIII因子AサブユニットであるTrettenを月1回、点滴静注して、補充する。

リンク:ノボのプレスリリース

ルンドベックの抗鬱剤が欧州でも承認

(2013年12月27日発表)

ルンドベックは、Brintellix(vortioxetine)がEUで鬱病に承認されたと発表した。米国でも9月に承認。抗鬱剤はSSRIが普及、難治性患者にはSNRIなどもあり、一次治療薬に反応しなくても二次治療薬でかなりの患者が寛解するようになった。それでも三次治療薬、四次治療薬を必要とする患者はいるが、開発が難しく商業的なポテンシャルも小さくなったので、製薬会社の開発意欲は高くない。その中で、第三相試験がフェールしても諦めずに開発を続けたルンドベックが、遂に、欧米で承認に漕ぎ着けたことは意義深い。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

今週は以上です。

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1 件のコメント:

  1. ジレッタント2014年1月5日 17:00

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