2013年11月24日

海外医薬ニュース2013年11月24日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • GSKがアミカスに開発販売権を返還
  • ASH:ギリアッドのCLL新薬は効果が凄く高い
  • AHA:第一三共のedoxaban、低用量は承認されないリスク
  • アッヴィの5剤併用第三相C型慢性肝炎試験が成功
  • リジェネロンとサノフィの抗IL-6受容体抗体の第三相リウマチ試験が成功
  • サノフィがJAK2阻害剤の承認申請断念、開発中止
  • FDA諮問委員会がバイオマリンのモルキオ症候群A型治療薬を支持
  • CHMPがギリアッドやGSKの抗ウイルス剤などに肯定的意見
  • フォレストの向精神薬は承認されず
  • 第三のプロテアーゼ阻害剤が米国で承認
  • ネクサバールが甲状腺癌に適応拡大
  • 欧州でInvokana、レルベア、カドサイラなどが承認
  • FDAがアステラスの心機能検査補助剤の警告を強化


【今週の話題】


GSKがアミカスに開発販売権を返還

(2013年11月20日)

グラクソ・スミスクラインはAmigal(migalastat)、及び、同剤と日本ケミカルリサーチからライセンスしたJR-051の合剤の世界開発販売権をアミカス(Nasdaq:FOLD)に返還することを発表した。今後はアミカスが独力で開発することになる。

Amigalは07年にシャイアがライセンスしたが返還、2010年にGSKがライセンスしたが返還と3年毎に権利が移動している。アミカスの会長兼CEO、John Crowleyは映画『小さな声が呼ぶ時』の主人公のモデルだが、今回は苦労している。

Amigalはファーマシューティカル・シャペロンという新しいタイプの経口剤で、ファブリー病の治療薬として第三相試験が行われたがフェールした。もう一本の酵素補充療法対照試験の結果が2014年に開票するのを待って今後の開発方針を当局と相談する予定。JR-051は日本ケミカルリサーチが開発した遺伝子組換え型アルファ-グルコシダーゼAで、ファブリー病患者で不足している酵素を補充する。

GSKはインライセンス時にアミカスの株式を20%弱取得したが、返還に際して300万ドル追加出資する。将来、発売された時は米国以外の主要8市場におけるAmigalや合剤の売上高の一定割合をロイヤルティーとして得る。

リンク:GSKのプレスリリース

【新薬開発】


ASH:ギリアッドのCLL新薬は効果が凄く高い

(2013年11月18日発表)

ギリアッド・サイエンス(Nasdaq:GILD)は、GS-1101(idelalisib)の第三相慢性リンパ性白血病(CLL)試験の結果が12月10日にASH米国血液学会で発表されることを明らかにした。一般公開された抄録を読む限りではかなり良さそうだ。

この第三相試験は、再発性・難治性のCLLで化学療法には適さない患者を、Rituxan(rituximab)と偽薬を併用する群とidelalisib(150mgを一日二回服用)を併用する群に割付けてPFS(無増悪生存期間)を比較したもの。中間解析で主目的を達成し、偽薬群の患者もidelalisibを使えるよう、盲検解除された。

ハザードレシオは0.15、95%信頼区間0.008~0.28、メジアンは偽薬群5.5ヶ月、併用群は未達。客観的反応率は各13%と81%。全生存期間のハザードレシオは0.28、p=0.018となかなか良い。グレード3以上の重度有害事象は下痢や肝機能検査値異常、好中球・白血球減少症が若干増加した。

idelalisibはBセルの活性化や増殖、生存に不可欠な酵素であるPI3Kデルタを阻害する経口剤で、9月に米国で非ホジキン型リンパ腫に承認申請されたが、CLLの追加申請に向けてFDAと相談する考え。欧州では10月に両方の適応症で承認申請済み。2011年に買収したCalistoga Pharmaceuticalsの開発品で、買収費用3.75億ドル、達成報奨金が最大で2.25億ドル、合計6億ドルの大きな投資だが、十分にペイしそうだ。

リンク:ギリアッドのプレスリリース

リンク:ASH抄録(LBA-6)

AHA:第一三共のedoxaban、低用量は承認されないリスク

(2013年11月20日発表)

第一三共が開発したXa阻害剤、Lixiana(edoxaban、和名リクシアナ)の心原性脳卒中試験の結果がAHA米国心臓協会科学部会で発表され、New England Journal of Medicine誌のホームページで論文刊行された。心房細動で脳卒中のリスクが高い患者に対する予防効果がワーファリンと非劣性、副作用である大出血のリスクは高用量群、低用量群共に有意に小さかった。

同じXa阻害剤であるバイエル/JNJのXarelto(rivaroxaban)やBMS/ファーザーのEliquis(apixaban)、そしてベーリンガー・インゲルハイムの直接的トロンビン阻害剤Pradaxa(dabigatran)と概ね同じ内容であり、今後は、後発の不利をどのように巻き返すか、販売戦略が注目される。米国はメーカーが価格決定権を持つので、割安な価格を設定しても良いのではないか。日本側では低用量の安全性に着目する意見が多いが、少なくとも米国では高用量しか承認されない可能性がある。

このENGAGE AF-TIMI 48試験は、米国の血栓学共同治験グループであるTIMIが主導して日本を含む46ヶ国で実施した無作為化割付二重盲検試験で、21,105人の患者をワーファリン群、低用量群(30mgを一日一回、経口投与)、高用量群(60mg一日一回)の何れかに割付け、メジアン2.8年間追跡して脳卒中や全身性血栓性疾患のリスクを比較した。

Lixianaは、体重60kg以下、あるいは、腎機能の代理マーカーであるクレアチニン・クリアランスが低い患者や、P糖蛋白を阻害する薬を同時使用する患者では用量を半減した。治験開始時だけでなく、その後に該当するようになった場合も半減。Lixianaは殆ど代謝されずに尿と一緒に排泄され、また、吸収・排泄に関わるP糖蛋白の基質なので、腎機能低下やquinidine、verapamil、dronedaroneの同時使用は効果が高くなりすぎる可能性がある。

結果は、脳卒中・全身性血栓の年率発生率が各群1.50%、1.61%、1.18%となり、両用量ともワーファリン群に対して非劣性だった。ハザードレシオの97.25%上限は低用量が1.31、高用量は0.99で、低用量は本当に非劣性といえるのか微妙だろう。尚、この試験は二種類の用量を一度にテストしたので、多重性を回避するために信頼区間が通常の95%より広く設定されている。

抗血栓薬は効果が高すぎると出血リスクが高まる。大出血の発生率は各群3.43%、1.61%、2.75%となり、両用量ともワーファリンより低かった。二次的評価項目だがハザードレシオの95%上限が何れも1を下回り、p値も0.001未満なので、統計的に有意といっても良いだろう。低用量のハザードレシオは0.47、95%信頼区間0.41-0.55なので、安全性に関してはかなり良い。

しかし、低用量は効果の点で見劣りする。脳卒中を主評価項目とする試験では脳梗塞だけでなく出血性脳卒中もカウントする。判別しにくいケースもあるので主観バイアスを排除する意図だが、効果の指標と副作用リスクの指標がごっちゃになっているので実態が覆い隠される危険がある。そこで、虚血性脳卒中だけの数値に注目すると、年率で各群1.25%、1.77%、1.25%となり、低用量のハザードレシオは1.41、95%信頼区間1.19-1.67、p<0.001と有意に劣っている。

脳卒中のような発生率があまり高くないイベントを評価する試験は大規模、長期になるため費用がかさむ。このため、二種類の用量をテストすることを嫌う会社もあるが、第一三共・TIMIは良心的に対応した。ベーリンガーも同様で、多くの国で両方の用量が承認され、出血リスクの高そうな患者には低用量、といった使い分けがなされている。例外は米国で、FDAは高用量しか承認しなかった。

審査文書によると、脳卒中は深刻な合併症であり十分に予防できる量を投与する必要があるからだ。もし低用量を必要とする患者がいるならば、臨床試験で該当者を明確にし、そのような患者でも投与量を変えれば十分な効果を享受できることを確認すべきである。ENGAGE試験は、正にこのことを確認した試験といえるだろう。

それだけに、予防効果の点で明らかに見劣りする低用量が米国で承認される可能性は低いだろう。標準用量は60mg、但し上記の条件に該当する患者は30mgに減量し、それ以外の患者も定期的に検査を行ってモニターする用法になりそうだ。

米国の既存三剤は一つ用量しか承認されていないため、二種類の用量から選択できるLixianaは有利という意見が日本で出ているが、FDAを知らない人の意見である。

リンク:第一三共のプレスリリース(和文)

リンク:NEJM論文(オープンアクセス)

アッヴィの5剤併用第三相C型慢性肝炎試験が成功

(2013年11月18日)

アッヴィ(NYSE:ABBV)は、5種類の経口剤を併用する第三相C型慢性肝炎試験が成功したと発表した。遺伝子型I型のウイルスに感染し初めて多剤併用療法を受ける、肝硬変を合併していない患者を対象とした試験で、SVR12(治療終了後12週間経ってもウイルスが検出されない、持続的ウイルス学的奏功率)が96%という大変良い結果になった。効果はIa型(95%)でもIb型(98%)でも大差なかった。

併用したのはABT-450(プロテアーゼ阻害剤)、ritonavir(3A4阻害剤・・・ABT-450の効果を長期化する)、ABT-267(NS5A複製複合体阻害剤)の一日一回服用型合剤と、ABT-333(非核酸系ポリメラーゼ阻害剤)及びribavirinを各一日二回。C型肝炎の標準薬であるアルファ・インターフェロンを使わないのが最大の特徴だ。治療期間は12週間と短い。有害事象による治験離脱の発生率は0.6%とのことなので、忍容性も良好のようだ。

素朴な疑問は、本当に5剤も必要なのかということだが、ribavirin以外の4剤と5剤併用の比較試験も進行しているので、やがて結論が出るだろう。次の問題は、この4剤または5剤を併用したら治療費はどれだけ高くなるのか?

リンク:アッヴィのプレスリリース

リジェネロンとサノフィの抗IL-6受容体抗体の第三相リウマチ試験が成功

(2013年11月22日)

リジェネロン(Nasdaq:REGN)と開発販売パートナーのサノフィは、REGN88/SAR153191(sarilumab)の第三相リウマチ性関節炎試験の成功を発表した。methotrexateに十分反応しない中重度活性期リウマチの患者にsarilumabを追加投与したところ、偽薬、150mg、200mgの各群のACR20奏功率が24週間で各33%、58%、66%となり、両用量とも統計的に有意に上回った。身体機能の指標(16週間)や関節損傷の指標(52週間)でも有意に上回った。

sarilumabはIL-6受容体のアルファ・サブユニットに結合する完全ヒト化抗体で、中外/ロシュのActemra(tocilizumab)に類似している。週二回、皮注であることが特徴だったが、Actemraも週二回皮注用製剤が日米で承認された。

リンク:両社のプレスリリース(pdfファイル)

サノフィがJAK2阻害剤の承認申請断念、開発中止

(2013年11月18日)

サノフィはSAR302503(fedratinib)の開発中止を発表した。競合的JAK2阻害剤で、今年5月に骨髄線維症の第三相試験が成功、承認申請が期待されていた。しかし、複数の患者でウェルニッケ脳症が発生、FDAが全ての臨床試験の中断を命じた。この疾患はビタミンB1の欠乏が原因なのでサプルメントを併用する方法もあったのではないかと思われるが、よほど大きな影響が出たのだろう。

リンク:サノフィのプレスリリース(pdfファイル)

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会がバイオマリンのモルキオ症候群A型治療薬を支持

(2013年11月19日発表)

米国の希少疾患用薬会社バイオマリン(Nasdaq:BMRN)は、FDAの内分泌学代謝学薬諮問委員会がVimizim(elosulface alfa)をムコ多糖症IVA(モルキオ症候群A型)の治療薬として承認することを支持したと発表した。21人の委員のうち19人が賛成、一人は一部のサブグループだけに承認することに賛成、反対は一人だけだった。

VimizimはNアセチルガラクトサミン-6-スルファターゼで、欠乏している酵素を補充する。臨床試験では週一回投与した群で6分歩行テストが偽薬比23メートルほど改善した。3分階段上昇試験や呼吸能力は改善しなかった。欧州でも承認審査中。

モルキオ症候群A型は上記酵素の欠乏が原因でグリコサミノグルカンが蓄積、骨の異形成や低身長、関節異常などを合併する。患者は世界で2500~3000人、うち日米欧で1000~1500人と推測されているが、診断されているのは400人のみ。

リンク:バイオマリンのプレスリリース

CHMPがギリアッドやGSKの抗ウイルス剤などに肯定的意見

(2013年11月21日発表)

EUの薬品審査機関であるEMAの医薬品科学的評価委員会、CHMPは、11月の会議でギリアッドのC型慢性肝炎治療薬、グラクソ・スミスクラインが塩野義からライセンスした抗HIV薬、大塚製薬やLucane Pharmaの結核治療薬などに肯定的意見をまとめた。順調なら2~3ヶ月で承認されるだろう。また、バイオジェン・アイデックの多発性硬化症薬に関して、前言を翻し新規活性成分と認めて10年間のデータ排他権を与えることを推奨した。

リンク:CHMPのプレスリリース

ギリアッド(Nasdaq:GILD)のSovaldi(sofosbuvir)はC型肝炎治療で初の核酸系ポリメラーゼ阻害剤。I型だけでなく様々な遺伝子型のウイルスに有効で、II型やIII型の場合、ribavirin併用でインターフェロンとribavirinを併用する既存療法と同程度の効果を発揮し、治療期間は12週間と半減できる。I型ではribavirin、インターフェロンと三剤併用で治療期間を12週間に短縮。一日一回経口投与なので利便性も高い。

リンク:ギリアッドのプレスリリース

CHMPは、BMSのdaclatasvirをsofosbuvirと併用、またはribavirinと三剤併用する用法でコンパッショネート・ユースすることも推奨した。コンパッショネート・ユース・プログラムは命に関わる難病の治療薬を正式に承認される前に使うことができるプログラムで、今回の場合、I型ウイルスに感染し、非代償性肝疾患や死亡のリスクが高い成人患者が対象になる。

リンク:CHMPのプレスリリース

Tivicay (dolutegravir) はHIV/AIDSの多剤併用療法に用いるインテグラーゼ・ストランド・トランスファー阻害剤。既存のインテグラーゼ阻害剤に抵抗性を持つ株の多くにも有効。私見ではdolutegravirとlamivudine及びギリアッドの核酸系逆転写阻害剤tenofovirの三剤併用が一次治療のベストだが、残念ながらメーカーが異なるためトリプルコンビ薬が存在しない。

塩野義製薬が創製、GSKやファイザーとのHIV/AIDS薬合弁会社であるViiVヘルスケアが開発している。米国ではTivacay名で今年8月に承認された。

リンク:GSKのプレスリリース

大塚製薬のDeltyba(delamanid)は7月に否定的意見を受けたが、大塚の要請で再審査となり、肯定的意見を勝ち取った。それにしても、6ヶ月投与する薬なのに効果の裏付けが2ヶ月時点のデータだけというのは奇妙な話だ。私の推測は、最初は2ヶ月で成功する筈だったがフェールし、同意した患者に対して更に4ヶ月投与したら奏功率が向上したので、6ヶ月投与する薬として承認申請したのではないか?

CHMPは専門家などの意見を踏まえて、2ヶ月時点の評価が6ヶ月時点の評価と相関すると判定、別の臨床試験が成功することを条件に、条件付承認することを推奨した。適応になるのはMDR-TB(多剤耐性結核菌)による肺結核で既存薬に抵抗性・不耐の成人患者。欧米では希少疾患だが、症例の多い国の多くでは欧州や米国で承認を取れば簡単な手続きで承認されるので、今回の肯定的意見は意義がある。

フランスのLucane PharmaのPara-aminosalicyclic acid Lucaneは新製剤。活性成分は1946年から70年代にかけて標準療法として使われた古い薬だが、90年代のMDR-TB増加で再び使用されるようになった。こちらは条件付ではなく本承認が支持され、適応は既存薬抵抗性・不耐のMDR-TB感染症の成人・小児。

リンク:CHMPの二剤に関するプレスリリース

CHMPはBMS/アストラゼネカのSGLT2阻害剤dapagliflozinとmetforminの合剤、Xigduoにも肯定的評価を出した。二型糖尿病の治療に用いる。

リンク:両社のプレスリリース

バイオジェン・アイデックの再発寛解型多発性硬化症維持療法薬Tecfidera(dimethyl fumarate)は今年3月にCHMPの肯定的意見を受けた。その段階では新規活性成分とは認められなかったが、今回、CHMPが認めたので、3ヶ月以内に承認され10年間のデータ排他権を獲得することになるだろう。

EUは承認されている活性成分の光学異性体や代謝物については、何か長所がない限り新規活性成分として認めないスタンスを取っている。近年、この種の新薬が米国でしか承認申請されなくなったのは、これが原因だ。dimethyl fumarateはドイツで中重度乾癬の治療薬として20年の販売歴を持つので、新規活性成分と言えるかどうか微妙なところがあった。

私見では、適応症が大きく異なり、今日のスタンダードに適合した大規模な臨床試験を行う必要があったのだから、それなりの報酬があってしかるべきである。もし新薬と認められなかったら、EUの患者はこの優れた薬を使うことができなかったかもしれないので、好ましい結果になった。

リンク:バイオジェン・アイデックのプレスリリース

一方、ABサイエンス社が消化管間質腫瘍用薬として承認申請したMasican(masitinib)は否定的意見となった。薬効のエビデンスが第二相試験のみで、デザインが不適切であるために効果や安全性が確立していないと判定した。masitinibはc-KIT阻害剤で犬のマスト細胞腫瘍の治療薬として欧米で販売されている。

適応拡大ではセルジーン(Nasdaq:CELG)のAbraxane(アルブミン結合paclitaxel、和名アブラキサン)を膵癌に用いることを支持した。gemcitabineと併用する。臨床試験ではメジアン生存期間が8.5ヶ月と、gemcitabineだけを投与した群の6.7ヶ月を上回った。

また、ドイツのメルクがイーライリリーからライセンスして販売しているErbitux(cetuximab、和名エルビタックス)について、転移性結腸直腸癌に用いる時はkrasが変異していないだけでは足りず、rasが変異していない癌を適応とすることを推奨した。kras野生型の2割程度を占めるnrasに変異のある癌は適応外となる。FOLFOXという一次治療レジメンと併用する場合は、kras変異だけでなくnras変異も禁忌になる。

先にアムジェンのVectibix(panitumumab)も同様な適応変更を受けており、クラス・イフェクトなのだろう。

リンク:CHMPのプレスリリース(pdfファイル)

フォレストの向精神薬は承認されず

(2013年11月21日発表)

フォレスト(NYSE:FRX)とハンガリーのGedeon RichterはRGH-188(cariprazine)を統合失調症と双極障害I型の治療薬として米国で承認申請していたが、審査完了通知を受領した。プレスリリースからは明らかではないが、報道によると、薬物動態に関する追加情報を求められた模様だ。会社側はすぐにも回答可能と見ているようだが、承認が大きく遅れるという観測も出ているようだ。日本では田辺三菱製薬がMP-214として開発している。

リンク:両社のプレスリリース

【承認】


第三のプロテアーゼ阻害剤が米国で承認

(2013年11月22日発表)

FDAは、Olysio(simeprevir、和名ソブリアード)をC型肝炎で代償性肝疾患を合併する患者の一次、二次治療薬として承認したと発表した。スエーデンのメディビアが創製しジョンソン・エンド・ジョンソンが日欧米で承認申請したプロテアーゼ阻害剤で、日本は今年9月に承認された。先に発売された二剤と異なり、一日一回経口投与で足りる。

弱点は、米国のIa型ウイルスに多い、NS3プロテアーゼにQ80K置換のある株に対する効果が弱いこと。インターフェロンとribavirinと三剤併用するが、このタイプに対する奏功率は二剤併用とそれほど変わらなかった。このため、事前に検査をして該当する場合は他の治療法を考慮するという文言がレーベルに導入された。また、光毒性があり、入院例もあったようだ。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:JNJのプレスリリース

ネクサバールが甲状腺癌に適応拡大

(2013年11月22日発表)

FDAは、アムジェンの子会社になったオニクスがバイエルと共同販売しているNexavar(sorafenib、和名ネクサバール)を分化甲状腺癌の治療に用いることを承認した。局所再発性または転移性で進行性の分化甲状腺癌で放射性ヨードに反応しなくなった場合に適応になる。Nexavarのこれまでの適応症は、腎細胞腫、肝細胞腫。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:アムジェンのプレスリリース

欧州でInvokana、レルベア、カドサイラなどが承認

(2013年11月18~21日発表)

CHMPが9月の会議で肯定的意見を出した薬が続々と承認された。

ジョンソン・エンド・ジョンソンが田辺三菱製薬と共同開発したSGLT2阻害剤、Invokana(canagliflozin)は、二型糖尿病薬。腎臓で濾し取られたグルコースがSGLT2というトランスポータによって血液中に戻るのを阻害、尿と一緒に排泄させる。性器の感染症に注意する。

リンク:JNJのプレスリリース(11月18日付)

グラクソ・スミスクラインのRelvar(fluticasone furoateとvilanterolの合剤、和名レルベア)は、COPDや喘息症の増悪・発作予防に用いる吸入用コンビ薬。米国ではCOPDのみ、日本では喘息症のみに承認された。

リンク:GSKのプレスリリース(11月18日付)

ロシュのKadcyla(trastuzumab emtansine、和名カドサイラ)はher2陽性転移性乳癌の二次治療薬。今後、ドイツなど一部の市場を除いて薬価審査が行われ、ドイツでも一年後に審査を受けることになる。欧州は日本と同様に価格に辛いので、どのような評価を受けるか注目される。米国では今年2月に承認され、月9800ドルの価格で発売された。

Herceptin(trastuzumab)に細胞毒を結合し効果を強化したもので、一般名で処方する場合は、薬剤師がHerceptinと間違えないように正確に書かなければならない。

リンク:ロシュのプレスリリース(11月20日付)

大塚製薬がルンドベックと提携して開発したAbilify Maintena(aripiprazole)は、異型向精神薬Abilifyの月一回筋注用新製剤。経口剤を飲みたがらない患者に適している。

リンク:ルンドベックのプレスリリース(11月21日付)

【医薬品の安全性】


FDAがアステラスの心機能検査補助剤の警告を強化

(2013年11月20日発表)

FDAは安全性情報を発出し、米国でアステラス製薬が販売しているLexiscan(regadenoson)とAdenoscan(adenosine)の心臓発作・死亡リスクを改めて警告すると共に、レーベルの記載を変更したと発表した。労作性狭心症の心筋血流シンチグラフィを行う時は事前に運動負荷を与えるが、運動に適さない場合患者はこれらの動脈弛緩剤で血流を増強する。ところが、血流が強くなると狭窄していない血管に優先的に流れるようになり、狭窄部位の虚血が酷くなるリスクがあるようだ。

FDAが自発的有害事象報告を分析したところ、Adenoscanは95年の発売以降、心筋梗塞が6例、死亡が27例あった。Lexiscanも08年の発売以降、各26例と29例、あった。発症時期が明らかな症例では、投与後6時間以内に発症する傾向があった。市販歴の短いLexiscanのほうが多いが、一般に新薬のほうが副作用報告が多い傾向があるので、単純に比較することはできない。

FDAは、高リスク患者には用いないことと、心蘇生に必要な機器やスタッフを用意した上で投与することを推奨している。

リンク:FDAの安全性情報

今週は以上です。

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