2013年11月10日

海外医薬ニュース2013年11月10日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • Gazyvaはリツキサンより効果が高い
  • アイリーアを糖尿病性黄斑浮腫で承認申請
  • 大日本住友製薬の抗癲癇薬が米国で承認
  • FDAがクレキサン等を麻酔と併用する時のリスクを再警告


【新薬開発】


Gazyvaはリツキサンより効果が高い

(2013年11月7日発表)

ロシュは、今月米国で承認されたCLL(慢性リンパ性白血病)用薬、Gazyva(obinutuzumab)の直接比較試験の結果を公表した。メジアンPFS(無増悪生存期間)がRituxan(rituximab、和名リツキサン)より1年程度長いという大変良い内容。Gazyvaはフコース除去という新しい技術を用いている。これまでに様々な抗体医薬改良技術が登場したが、第二、第三世代品が第一世代品を凌駕したのは今回が初めてであり、同様な技術を持つ協和発酵キリンなどの企業も喜んでいるだろう。

このCLL11試験は、初めて治療を受ける患者を組入れて、第1ステージではchlorambucilを単剤投与する群とGazyvaを併用する群を比較。中間無益性分析で良好な結果が出たため、chlorambucilとRituxanを併用する群と、chlorambucil・Gazyva併用群を比較する第2ステージを開始した。

米国承認は第1ステージの成績に基づくものだが、CLLの一次治療はRituxanもfludarabine及びcyclophosphamide併用で承認されており、患者や医師が治療法を選択する上で必要な情報がなかった。ロシュにとっても、Rituxanはやがてバイオシミラーが登場されるだろうから、雌雄を決するインセンティブがある。

第2ステージの成功は7月に公表されているが、ASH(米国血液学会)での発表が決まり、ヘッドライン・データが公表された。Gazyva群のメジアンPFSは26.7ヶ月、Rituxan群は15.2ヶ月、ハザードレシオ0.39、pは0.0001未満。完全反応率21%対7%。全生存期間のハザードレシオは0.66、pは0.09とまだ有意水準に達していないがデータが未成熟なのだろう(メジアン未到達)。

効果が高い一方で有害事象のリスクも高く、グレード3~5の有害事象発生率は各66%と47%。漸増投与法が採用されており、米国のレーベルによると、初回は100mg、一週間後の二回目は900mgに抑え、更に一週間後の三回目から1000mgを静注点滴する。28日サイクルで最初は4回投与するが、第2サイクル以降は1回、全部で6サイクル施行する。

点滴量は30分毎に漸増、1000mgを投与するのに3時間位かかる。Rituxanの用量は患者の体表面積によって変動するが、2平方メートルとすると点滴時間がやや長い。Rituxanと同様に過敏反応を抑制するためにステロイドなどを用いてプリメディケーションを行う。

報道によると米国のWAC(問屋に販売する時の基準となる価格)は24週間のコースで41300ドルで、Rituxanより2割高い模様だが、効果が高いことを考えればリーズナブルだ。

リンク:ロシュのプレスリリース

【承認申請】


アイリーアを糖尿病性黄斑浮腫で承認申請

(2013年11月5日、7日発表)

リジェネロン・ファーマシューティカルズ(Nasdaq:REGN)とバイエルは、Eylea(aflibercept硝子体注射用、和名アイリーア)を糖尿病性黄斑浮腫の治療に用いる適応拡大申請を欧米で行ったと発表した。Eyleaはロシュ/ノバルティスのLucentis(ranibizumab、和名ルセンティス)の類薬で、異常な血管新生による黄斑障害を抑制する。Lucentisはこの用途でも既に承認されている。バイエルは米国外での開発販売権を持つ。

リンク:リジェネロンの決算発表リリース(11/5付)

リンク:バイエルのプレスリリース(11/7付)

【承認】


大日本住友製薬の抗癲癇薬が米国で承認

(2013年11月8日発表)

FDAは、大日本住友製薬の米国子会社であるスノビオンが承認申請していたAptiom(eslicarbazepine acetate、欧州名Zebinix)を部分癲癇の治療薬として承認したと発表した。薬物療法を受けても発作が起きる患者に追加投与する。麻薬指定はされなかった。2014年の第2四半期(4~6月)に発売される予定。

癲癇の新薬は、単剤投与偽薬対照試験のエビデンスを欠いていることが多いため、追加投与(アジャンクト)に限定して承認されるのが一般的だ。癲癇は有効な薬が多数存在し、また、癲癇発作を起こすと事故の危険だけでなく寿命にも影響するので、偽薬だけを投与して発作を予防しない群を設けることは臨床試験の倫理に反すると考えられている。最近では文献に基づく仮想偽薬群のデータと比較する単群試験も行われるようになったが、Aptiomは承認申請が4年前なので、間に合わなかったのだろう。

この問題の解決は難しく、活性薬対照試験を行えば倫理上の問題は発生しないが、差が小さいため多くの患者を組入れる必要があり、また、新薬の主用途は追加投与なのだから単剤投与時の効果が既存薬と同等である必要はない。薬の反応は人によって異なり、中枢神経系の薬は特にそうなので、代替的な選択肢はそれだけで価値がある。

米国は新薬承認審査と保険適用審査が異なった組織によって行われるため、医師は、追加投与しか承認されていない薬でも裁量に基づき単剤投与することが可能だ。一方、日本のように同じ組織が行う場合、保険適用されず実質的に使えない。工夫が必要だ。

さて、Aptiomはノバルティスが開発した抗癲癇薬、carbamazepine(Tegretol)の誘導体であるoxcarbazepine(Trileptal)の活性代謝物であるlicarbazepine(ノバルティスの開発コードLIC477)のS異性体。ノバルティスはLIC477を双極障害治療薬として開発したが2007年に中止。S異性体はポルトガルのBial-Portelaが開発、欧州はエーザイが共同販促している。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:スノビオンのプレスリリース(pdf)

【医薬品の安全性】


FDAがクレキサン等を麻酔と併用する時のリスクを再警告

(2013年11月6日発表)

FDAは、Lovenox(enoxaparin、和名クレキサン)などの低分子量ヘパリンを脊椎・硬膜外麻酔や腰椎穿刺と併用する時の血腫・麻痺リスクを改めて警告する安全性情報を発出した。米国や日本のレーベルの冒頭に警告されている既知のリスクだが、過去21年間に170件の有害事象報告が寄せられているため、改めて注意を呼び掛けた。

具体的には、麻酔用のカテーテルを留置するのは低分子量ヘパリンを投与してから12時間以上、経ってからにする。高量を投与した場合は更に長時間(24時間)、間を置く。措置後の投与はカテーテルを除去してから4時間以上経ってからとする。

FDAが上記170件のうち診断が確定できた100件についてリスク要因を分析したところ、女性あるいは高齢者が7割を占め、他の抗凝固・抗血栓薬を服用している患者も5割近くを占めた。従って、出血リスクを高める薬を服用していないかチェックすることも重要だ。

尚、米国では深静脈血栓予防用途では30mgを一日二回、または、40mgを一日一回、投与する。日本は2000IU(20mgに相当)を一日二回なので、投与量はそれほど変わらない。従って、対岸の火事ではないだろう。

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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