2013年7月28日

海外医薬ニュース2013年7月28日号



【ニュース・ヘッドライン】




  • ヴィーヴァスの委任状合戦が決着
  • ロシュのフコース除去抗体が第三相試験でリツキサンを負かす
  • Sareptaのeteplirsenは2014年上期に承認申請へ
  • 武田のTAK-700の第三相試験がフェール
  • FDAがMSDのvorapaxarの承認申請を受理
  • BMS/アストラゼネカがSGLT2阻害剤の追加データをFDAに提出
  • CHMPがベーリンガーの抗癌剤等に肯定的意見
  • フォレスト/ファーブルのSNRIが米国で承認
  • グラセプターが米国でも承認
  • CHMPがインクレチンの膵癌懸念を否定
  • ケトコナゾールの規制強化


【今週の話題】


ヴィーヴァスの委任状合戦が決着

(2013年7月18日発表)

新薬を次々と発売した割には業績がパッとしないヴィーヴァス(Nasdaq:VVUS)を巡る委任状合戦は、結局、経営側が大幅譲歩に応じ株主側が勝利した。株主と言っても二社の合計保有比率は12%に過ぎず、他の株主にとっては今後の展開、つまり大手製薬会社との提携や身売りが実現するかどうかのほうが関心事だろう。

カリフォルニアに本拠を持つヴィーヴァスは、2012年に米国で体重管理薬Qsymia(phentermineとtopiramateの合剤)と田辺三菱製薬からインライセンスした性的不全治療薬Stendra(avanafil)の承認を取得したが、前者は2013年第1四半期の売上高が4000万ドルに留まり、EUでは承認されなかった。後者も既に類薬が三品もあるため大きな期待はできない。

今回、経営陣刷新に成功したファースト・マンハッタンは1964年に設立されたNYの投資顧問会社で、ヴィーヴァスの株式の10%弱を保有している。大手製薬会社の力を借りずに単独販売路線に固執する経営陣に業を煮やし、年次株主総会を機に取締役を送り込むべく委任状争奪戦を開始した。結局、ヴィーヴァス側が妥協。CEO以下4名が退任し、ファーストマンハッタンが選んだ6人の取締役の選任を株主に推奨することとなった。

22日にはファーストマンハッタンの要求に応じてアストラゼネカの営業部門でEVPを務めたZook氏を社長に、社会保障庁長官のAstrue氏を会長に、指名した。 Astrue氏はQsymiaの売上拡大と販売提携、及び欧州での承認、そして費用削減という四大目標に向けて迅速に行動する考えを表明している。

他の取締役候補の顔触れは、Colin氏はファーストマンハッタンのシニア・マネージング・ダイレクター、Denner氏はアクティビスト系ヘッジファンドのSarissa Capital Managementのチーフ・インベストメント・オフィサーで、過去の投資歴はバイオジェン・アイデック、ジェンザイム、メディミューン、イムクローンなど。バイオジェン以外は株主の圧力に押されて身売りした。Sarissaを設立する前は買収屋として高名なアイカーンと共に働いていた。Sarissaはヴィーヴァスの株式の約2%を保有。

Johannes J.P. Kasteleinは、おそらく、アムステルダム大学アカデミック・メディカル・センターに在籍し高脂血症治療薬の臨床研究で数々の実績を持つKastelein教授のことだろう。

ヴィーヴァスは8月中旬までに年次株主総会を開催して取締役改選の承認を得る予定。

二社合計で12%しか保有していない株主が経営陣入替に成功し取締役会の過半を握ることには驚かされる。ヴィーヴァスの経営成績が物言わぬ株主にとっても不満足であったからだろう。経営権という権利の上に眠る豚は、誰も守ってくれない。

リンク:和解に関するヴィーヴァスのリリース

リンク:
社長・会長指名に関する同社のリリース(7/22付)


【新薬開発】


ロシュのフコース除去抗体が第三相試験でリツキサンを負かす

(2013年7月24日発表)

ロシュは、慢性リンパ性白血病の第三相試験でGA101(obinutuzumab、開発コードはRG7159とかRO 5072759とか呼ばれることもある)がMabThera/Rituxan(rituximab、和名リツキサン)を有意に上回るPFS(無増悪生存期間)を示したと発表した。データは12月のASH米国血液学会で公表される予定。

GA101はロシュが2005年に買収したGlycArt社のGlycoMAb技術を用いたフコース除去抗体で、CHO細胞にグリコシルトランスフェラーゼを過剰発現させることによって、翻訳後装飾で糖鎖にフコースが付与されるのを防ぐ。異なった方法でフコース除去抗体を産生するポテリジェント抗体と同様に、NKセルやマクロファージのFcガンマ受容体IIIaとの結合力が高く、同じ抗CD20抗体であるRituxanより高いADCC活性を持つ。尚、GA101はヒト化抗体、Rituxanはキメラ抗体という点も異なっている。

このCLL11試験は、一次治療薬としての効能を検討したもので、第一ステージではchlorambucil単剤と二剤併用、及び、chlorambucil単剤とRituxan・chlorambucil併用をそれぞれ比較した。前者の比較はPFSがメジアン10.9ヶ月から23.0ヶ月に延長、ハザードレシオ0.14、pは0.001未満と大変良い結果が出た。後者の比較は各10.8ヶ月、15.7ヶ月、0.32でこれも有意に優れていたが、数値上はGA101併用の方が優れていた。

今回成功が発表されたのは第二ステージで、予想された通り、GA101の二剤併用がRituxanの二剤併用を上回った。Rituxanは非ホジキン型リンパ腫など様々な用途に承認されているのでキャッチアップするには時間が掛かるが、少なくとも今回の用途では販促の重要なツールになる。

ロシュは第一ステージの結果に基づいて4月に欧米で承認申請、米国では12月にも承認される見込み。Rituxanを開発したバイオジェン・アイデックと共同販売する予定。

リンク:ロシュのプレスリリース

Sareptaのeteplirsenは2014年上期に承認申請へ

(2013年7月24日発表)

Sarepta Therapeutics(Nasdaq:SRPT)は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬として開発しているeteplirsenを2014年上期に米国で承認申請する予定であることを発表した。失望的な内容で、株価が19%下落した。

eteplirsenはエクソン・スキッピング・ドラッグという新しいタイプの薬。遺伝子の塩基配列を読み取りアミノ酸を繋げていく過程に介入、蛋白の合成を途中で終わらせたり、途中の塩基配列を無視させたりすることによって、遺伝子疾患を治療する。筋ジストロフィーの主因であるジストロフィンの場合、途中で終わらせて短いジストロフィンを作らせることができれば、ある程度は機能するので転帰を改善できる可能性がある。

eteplirsenはエクソン50変異型など、デュシェンヌ型筋ジストロフィーの13%程度に有効な可能性がある。オランダのProsensa社もグラクソ・スミスクラインと提携してdrisapersenの第三相試験を実施しており、Sareptaがキャッチアップ/逆転するためには手持ちの第二相試験のデータに基づく承認申請が必須だが、問題は、FDAがジストロフィンの増加を臨床的な効用を期待するに足りる代理マーカーとして認めて、サブパートH承認してくれるかどうかだ。

FDAと相談したがあまり良い反応は得られなかった模様だ。第一に、FDAがジストロフィンの測定方法の内容や有効性を明らかにするよう求めたため、承認申請が半年後に遅れることとなった。第二に、FDAは、ジストロフィンを代理マーカーとして認めるかどうか態度を明らかにしなかった。承認申請すること自体は認めた模様だが、承認するかどうかは様々なデータを検討した上で判断するという、至極もっともな考え方だ。

同社は2014年第1四半期に第三相試験を開始する予定。もっと早く始めるべきだったのではないだろうか。

リンク:Sareptaのプレスリリース

武田のTAK-700の第三相試験がフェール

(2013年7月25日発表)

武田薬品はTAK-700(orteronel)の第三相前立腺癌試験がフェールしたと発表した。もう一本進行中だが、期待薄となった。

TAK-700は精巣や副腎に分布する17.20-リアーゼという酵素を阻害する小分子薬で、男性ホルモンの生成を抑制する。ジョンソン・エンド・ジョンソンが2011年に欧米で発売したZytiga(abiraterone)の類薬なのでフェールしたのは意外だ。

この試験はホルモン療法に反応しなくなり化学療法を受けたが不応・再発した転移性前立腺癌にpredonisoneと併用する効果をpredonisone単剤と比較したもの。事前に予定されていた中間解析で主評価項目である全生存期間のハザードレシオが0.894、p=0.226となったため、独立データ監視委員会が治験を続行しても成功する可能性が低いと判定、アンブラインドを勧告した。

二次的評価項目の一つである放射線学的PFS(無増悪生存期間)の解析ではハザードレシオ0.755、p=0.00029と大変良い数値が出たが、延命効果の方が重要だ。

この種の試験は中間解析で主目的を達成できるよう多数の患者を組入れるのが流行のようで、Zytigaの同様な試験も中間解析で成功となった。全生存のハザードレシオは0.74、二次的評価項目の放射線学的PFSは0.67で、何れもTAK-700より数値上、良い。効果、あるいは忍容性に差があるのだろう。

TAK-700のもう一本の第三相は、化学療法未施行の転移性無/軽度症候性ホルモン療法抵抗性前立腺癌を対象としている。この領域はZytiga以外にも様々な新薬が登場したので、もしTAK-700の効果が不十分なら打ち切っても良いのではないかと思われる。TAK-700の問題だけではなく、対照群の治療法は最早標準療法とは言えないので倫理的な問題もはらんでいるからだ。にも拘らず続行を決めたのは、既に組入れが完了していることや、おそらく、多くの被験者が既に進行し二次治療にシフトしているからだろう。

Zytigaの同様な試験は、主評価項目二つのうち全生存のハザードレシオは0.75、放射線学的PFSは0.53となった。このうち全生存はp=0.0097と、数値的には良いが事前に設定されたハードルである0.0008を上回ったためフェールした。その後に行われた解析でもハザードレシオ0.792、p=0.0151とハードルを上回った。主評価項目が二つあり、何度も中間解析を行うプロトコルなので多重性を回避するために個々の解析には小さなアルファしか与えられないのである。

武田の試験も主評価項目が二つあり、放射線学的PFSは年内に結果が出るのではないかと思われるが、一本目がフェールしただけに、全生存の解析を成功させることが極めて重要だ。最終解析は来年と推測されるが、もし放射線学的PFSの解析が成功しても全生存で有意差が出なかった場合、Zytigaと異なり、承認されない可能性も出てくるだろう。

リンク:ミレニアムと武田薬品のプレスリリース

【承認申請】


FDAがMSDのvorapaxarの承認申請を受理

(2013年7月24日発表)

MSDは、FDAがMK-5348/SCH 530348(vorapaxar)の承認申請を受理したと発表した。PAR-1阻害という新しい作用機序を持つ経口抗血小板薬で、心筋梗塞の再発予防に用いる。深刻な出血リスクを持つので脳卒中やTIA(一時的脳虚血発作)既往患者に用いることはできない。

第三相アウトカム試験の結果は2011年のAHAと2012年のACCで学会発表された。非ST上昇型急性冠症候群を組入れたTRACER試験は脳卒中既往者で頭蓋内出血など深刻な出血事故が増加したため途中で投薬中止、解析結果もフェールした。心筋梗塞亜急性期/安定期の患者や脳梗塞、末梢動脈疾患の患者を組入れたTIMI50試験は成功したが、やはり、脳梗塞患者の組み入れは深刻な出血リスクが見られたため途中で中止された。

後者の試験は脳卒中既往患者を除外した解析では比較的良い結果が出た。心血管死・心筋梗塞・脳卒中・緊急血行術の複合評価項目の解析はハザードレシオ0.84(95%信頼区間0.76、0.93)、Number Needed to Treatは77、GUSTO中重度出血は有意に増加、Number Needed to Harmは67(薬効評価項目とは観察期間が異なるので比較できない)、しかし頭蓋内出血は5割ほどの増加に留まり、致死的出血は44%増えるだけで有意差は無かった。

ただ、比較的良いというのは脳卒中既往患者のデータより遥かにマシというだけで、このデータを見ただけでは承認に値するようには感じられない。第一三共/イーライリリーのEfient(prasugrel)の時と同じように、適応条件に体重や年齢を加味すれば数値をもっと良くできるのかもしれないが、Efientの時と同様に、スンナリとは承認されないだろう。

リンク:MSDのプレスリリース

BMS/アストラゼネカがSGLT2阻害剤の追加データをFDAに提出

(2013年7月25日発表)

BMSとアストラゼネカは、FDAがForxiga(dapagliflozin)の追加データを完全回答として受理したと発表した。第二巡の承認審査が始まったことになる。2014年1月11日までに結果が出る予定。

ForxigaはSGLT2阻害剤で二型糖尿病の治療に用いる。ジョンソン・エンド・ジョンソンが田辺三菱製薬と共同開発したInvokana(canagliflozin)より早く承認申請され、欧州で承認されたが、米国ではInvokanaに先を越された。臨床試験で癌の発生に偏りがあったことが理由のようだ。発癌物質でも何年も投与しなければ癌にはならないので、おそらく偶然なのだろうが、FDAは二型糖尿病薬については特に承認審査が慎重だ。

リンク:BMS/アストラゼネカのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPがベーリンガーの抗癌剤等に肯定的意見

(2013年7月26日発表)

EUの医薬品審査委員会であるCHMPは7月の月例会議で多くの新薬・適応拡大に肯定的意見を出した。順調なら2~3ヶ月後に承認されるだろう。

リンク:CHMPのプレスリリース

新薬では、ベーリンガー・インゲルハイムのEGFR阻害剤、Giotrif(afatinib)が、EGFR活性化変異を持つ局所進行性/転移性の非小細胞性肺癌にで支持された。

リンク:ベーリンガーのプレスリリース

武田薬品のDPP-4阻害剤Vipidia(alogliptin、和名ネシーナ)とそのコンビ薬であるIncresync(alogliptin、pioglitazone)とVipdomet(alogliptin、metformin)も二型糖尿病治療薬として支持された。

適応拡大では、以下が支持された。

・バイエルがリジェネロンからライセンスした抗VEGF薬Eylea(aflibercept、和名アイリーア)をCRVO(網膜中心静脈閉塞症)による黄斑浮腫の治療に用いること

リンク:バイエルのプレスリリース

・ノバルティスの抗IL-1ベータ抗体Ilaris(canakinumab、和名イラリス)を難治性の活性期全身性小児特発性関節炎の治療に用いること

・グラクソ・スミスクラインがライガンド(Nasdaq:LGND)からライセンスしたRevolade(eltrombopag、和名レボレード)を慢性C型肝炎で血小板が少ないために抗ウイルス治療を受けられない患者の血小板新生刺激剤として用いること。C型肝炎は血小板減少症を併発することがあるが、アルファ・インターフェロンとribavirinは血小板減少リスクがあるので、Revoladeで増やすことができれば今より多くの患者が治療を受けられるようになる。

リンク:GSKのプレスリリース

・ジョンソン・エンド・ジョンソンのPrezista(darunavir、和名プリジスタ)の400mg及び800mg錠を12歳以上で且つ体重40kg以上のHIV/AIDS患者の一次治療に用いること

・同社の抗TNF薬Simponi(golimumab)を難治性活性期潰瘍性大腸炎の治療に用いること

・同社の抗IL-12/23抗体Stelara(ustekinumab)を難治性活性期乾癬性関節炎の治療に用いること

新製品では、ノバルティスの二種類のCOPD治療薬を配合したUltibro/Xoterna Breezhaler(glycopyrronium bromide、indacaterol)が支持された。また、ギリアッドのHIV/AIDS治療用4剤合剤Stribild(和名スタリビルド)に配合されている3A4阻害剤cobicistatがTybost名の単剤として支持された。

一方、大塚製薬が多剤耐性結核の治療薬として承認申請したdelamanidは否定的意見となった。メインの臨床試験は2ヶ月で、その後延長試験やレジストリー方式による長期フォローアップも行われたが、CHMPは、最初の2ヶ月間の薬効解析データしかないため、6ヶ月以上投与する薬のエビデンスが不十分と判定した。至適用量が明確でないことも指摘した。至極ごもっともな意見であり、おそらく、この試験には何らかの誤算があったのだろう(2ヶ月の治療で足りるはずが足りなかったので延長した、等)。

尚、delamanidは日本でも承認審査中。日本は欧米ほど薬効や安全性のエビデンスに厳格でないので、CHMPとは異なった結果が出ても不思議ではない。

4月に否定的意見を受けた経口抗リウマチ薬Xeljanz(tofacitinib、和名ゼルヤンツ)は、ファイザーの再審査請求に基づいて再び検討されたが、変わらなかった。安全性面では癌や胃腸穿孔、肝障害、脂質異常等の懸念があること、薬効面では構造障害進行を遅らせる効果が確立していないことがボトルネックとなった。これまでの抗リウマチ薬(バイオ薬を含む)は承認時点では構造障害進行遅延効果が確認されていなかったものが多いので、意外だ。

リンク:ファイザーのプレスリリース(7/25付)

一方、イタリアのGentium(Nasdaq:GENT)社が申請したDefitelio(defibrotide)に関しては、3月の意見を覆し、肯定的意見を出した。造血幹細胞移植の前に行われる化学療法の副作用である重度VOD(肝静脈閉塞症)の治療・予防薬として承認申請されたが、予防は便益が明確でないため申請取下げとなった。一方、治療に関しては、Gentiumが追加提出した米国の患者登録データにより移植後の生存率を向上する効果が示唆されたため、例外的条項に基づく承認を支持した。

リンク:Gentiumのプレスリリース(pdfファイル)

【承認】


フォレスト/ファーブルのSNRIが米国で承認

(2013年7月26日発表)

フォレスト(NYSE:FRX)とフランスのピエール・ファーブルは、FDAがFetzima(levomilnacipran)を成人の大鬱病の治療薬として承認したと発表した。Savella(milnacipran、和名トレドミン)の異性体でノルエピネフィリンとセレトニンの再取込を阻害する。尚、Savellaは米国では線維筋痛症候群の治療薬として承認されている。

リンク:両社のプレスリリース

グラセプターが米国でも承認

(2013年7月19日発表)

アステラス製薬はAstagraf XL(tacrolimus徐放性剤、和名グラセプター)が米国で腎移植後の拒絶反応予防薬として承認されたと発表した。オリジナルの製剤であるPrografは一日二回服用だが、Astagraf XLは一回で済むのでやや便利。但し、当初は血中濃度が不足する可能性があるので頻繁にチェックするなどの注意が必要。また、当然のことながら用量が異なるので、処方箋を明確に書き、取り違えが起きないよう注意する必要がある(欧州で注意喚起が出たことがある)。

米国の承認が遅れたのは、治験における男性と女性の成績に偏りがあったことや、この機会にtacrolimusの安全性や至適用量を改めて検討したことが主因と推測される。肝移植は承認されなかったが、元々オフレーベル使用が多い領域なので大きな問題はないだろう。

リンク:アステラスの米国法人のプレスリリース

【医薬品の安全性】


CHMPがインクレチンの膵癌懸念を否定

(2013年7月26日発表)

CHMPは二型糖尿病のインクレチン療法(GLP-1作用剤やDPP-4阻害剤)に関する再検討結果を発表した。一部の研究者が膵癌の懸念を指摘したが、エビデンスが不十分として却下した。尤も、ベータ細胞の機能を刺激しアルファ細胞の機能を抑制する作用機序を考えれば長期的な影響について不透明な点もあるため、引き続き調査を行う考えを示した。

FDAの問題提起が契機となり、糖尿病治療薬を発売したメーカーは臨床的な転帰を調べる大規模アウトカム試験を実施しており、その中で膵癌や膵炎の発生状況も監視する予定である。更に、メーカーとは独立したグループによって二種類の大規模研究が開始されており、2014年春から結果が出始める予定。

尚、インクレチンについては膵炎の懸念も表明されているが、既にレーベルで言及されており、医師なら誰でも知っていることだ。

リンク:CHMPのプレスリリース

ケトコナゾールの規制強化

(2013年7月26日発表)

EUのCHMPとFDAは、それぞれ別個に、アゾール系抗真菌薬Nizoral(ketoconazole、日本の一般名はケトコナゾール)の経口剤に関する規制を強化した。EUは厳しく、承認停止。米国も難治性の患者の二次治療に限定した。

発端はフランスが2011年6月に承認停止したこと。肝障害のリスクが類薬より高いことが理由だ。フランスはEMA(欧州薬品庁)に検討を要請、CHMPが今回、同じ結論に達した。CHMPによると、肝障害は推奨開始用量(200mg/日)で治療を開始した後早い段階で発生しており、リスクを回避する適当な方法は見つかっていない。そもそも、ketoconazoleの薬効に関するデータは限定的で、今日のスタンダード(開発ガイドライン)に適合していない。

CHMPは用途制限なども検討したが、何れも不十分と判断した。

FDAは警告強化と用途をブラストミセス症、コクシジオイデス症、ヒストプラスマ症、クロモ真菌症、パラコクシジオイデス症で他剤不適例だけに限定することを決めた。カンジダや白癬菌感染症に用いることは禁止。

尚、今回の制限は局所性のクリームや軟膏製剤には当てはまらない。体内に吸収される量が少ないため。

リンク:CHMPのプレスリリース

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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