2012年12月29日

海外医薬品ニュース週末版 2012年12月29日号




今年はご愛読ありがとうございました。来年が皆様や医療、医薬品に携わる方々、そして病気に悩む人たちに少しでも良い年でありますように。

【ニュース・ヘッドライン】

  • Eliquisが米国でも遂に承認
  • 画期的なコレステロール治療薬が米国で承認


【承認】


Eliquisが米国でも遂に承認

(2012年12月28日発表)

BMSがファイザーと共同開発したXa阻害剤、Eliquis(apixaban、和名エリキュース)が日本に続いて米国でも非弁性心房細動患者の脳卒中予防薬として承認された。

同じXa阻害剤であるバイエル(米国ではジョンソン・エンド・ジョンソンが販売)のXarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)やベーリンガー・インゲルハイムのトロンビン阻害剤Pradaxa(dabigatran、和名プレザキサ)とシェアを争うことになる。Eliquisは一日二回服用なのでXareltoよりやや不便であり3A4相互作用リスクも持つが、第三相試験で効果と出血リスクの両面でワーファリンより優れていたのはEliquisだけである。

経口抗凝固剤はPradaxaの出血リスクで味噌が付いたが、EliquisやXareltoは腎機能低下患者で出血リスクが上昇するようなことはない。

FDAが治験データの信頼性に疑問を呈した(この薬だけの問題ではなくFDAが心血管アウトカム試験の実施・症例報告方法に懸念を持っていることの表れ)ために承認が遅れたが、二巡目の審査は期限の3月より早く終了した。メーカー側にも意外だったのか、両社はNYの5時過ぎに簡単なプレスリリースを出しただけで、来週改めて詳しいリリースを出す予定。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:BMS/ファイザーのプレスリリース

画期的なコレステロール治療薬が米国で承認

(2012年12月24日発表)

Aegerion Pharmaceuticals(Nasdaq: AEGR)は、Juxtapid(lomitapide)がFDAに承認されたことを発表した。ホモ接合型家族性高脂血症(LDL-C血が極めて高い)の治療に、一日一回、夕食後2時間以上経った後に服用する。29人の患者を組入れた第三相試験では、26週間の治療でLDL-C値が平均330mg/dLから190mg/dLに40%低下した。正常値と比べればまだ高いが、スタチンを服用してもこんなに高い患者には貴重な治療手段である。

JuxtapidはMTP(ミクロソーム・トリグリセライド転移蛋白)を阻害して肝臓や小腸でトリグリセライドやコレステロール・エステルがVLDL-C生産箇所に移送されるのを妨げる。2007年にファイザーのSlentrol(dirlotapide)が肥満犬治療薬として承認されたが、人間の薬は初めて。副作用は胃腸系と肝臓系が多く、トリグリセライド等が余るため肝臓脂肪が蓄積するリスクがある。

更に、治験では3割以上の患者で肝機能検査値異常が観察され、枠付き警告となった。治療開始前と治療中定期的に肝機能検査を行う。3A4を中高度に阻害する薬の併用は禁忌、simvastatinのような専ら3A4で代謝される薬の併用は注意、ワーファリンの血中濃度にも影響する。一日5mgで開始、最大60mgまで漸増する。

ホモ接合という形容が示唆するように、家族性高脂血症は本来、LDL-C受容体等の遺伝子変異が原因で発生するが、遺伝子に問題はなくても機能が低下している患者もいるようだ。前者だけなら米国の対象患者数は300人程度だが、臨床的診断に基づく家族性高脂血症に使用することも認められたため、3000人と大きく増加した。それでもスタチン(数千万人)より少なく、その分、年間20~30万ドルという大変高い値段で発売される予定。

リンク:Aegerion社のプレスリリース

リンク:FDAの12月26日付プレスリリース

今週は以上です。

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