2012年12月29日

海外医薬品ニュース週末版 2012年12月29日号




今年はご愛読ありがとうございました。来年が皆様や医療、医薬品に携わる方々、そして病気に悩む人たちに少しでも良い年でありますように。

【ニュース・ヘッドライン】

  • Eliquisが米国でも遂に承認
  • 画期的なコレステロール治療薬が米国で承認


【承認】


Eliquisが米国でも遂に承認

(2012年12月28日発表)

BMSがファイザーと共同開発したXa阻害剤、Eliquis(apixaban、和名エリキュース)が日本に続いて米国でも非弁性心房細動患者の脳卒中予防薬として承認された。

同じXa阻害剤であるバイエル(米国ではジョンソン・エンド・ジョンソンが販売)のXarelto(rivaroxaban、和名イグザレルト)やベーリンガー・インゲルハイムのトロンビン阻害剤Pradaxa(dabigatran、和名プレザキサ)とシェアを争うことになる。Eliquisは一日二回服用なのでXareltoよりやや不便であり3A4相互作用リスクも持つが、第三相試験で効果と出血リスクの両面でワーファリンより優れていたのはEliquisだけである。

経口抗凝固剤はPradaxaの出血リスクで味噌が付いたが、EliquisやXareltoは腎機能低下患者で出血リスクが上昇するようなことはない。

FDAが治験データの信頼性に疑問を呈した(この薬だけの問題ではなくFDAが心血管アウトカム試験の実施・症例報告方法に懸念を持っていることの表れ)ために承認が遅れたが、二巡目の審査は期限の3月より早く終了した。メーカー側にも意外だったのか、両社はNYの5時過ぎに簡単なプレスリリースを出しただけで、来週改めて詳しいリリースを出す予定。

リンク:FDAのプレスリリース

リンク:BMS/ファイザーのプレスリリース

画期的なコレステロール治療薬が米国で承認

(2012年12月24日発表)

Aegerion Pharmaceuticals(Nasdaq: AEGR)は、Juxtapid(lomitapide)がFDAに承認されたことを発表した。ホモ接合型家族性高脂血症(LDL-C血が極めて高い)の治療に、一日一回、夕食後2時間以上経った後に服用する。29人の患者を組入れた第三相試験では、26週間の治療でLDL-C値が平均330mg/dLから190mg/dLに40%低下した。正常値と比べればまだ高いが、スタチンを服用してもこんなに高い患者には貴重な治療手段である。

JuxtapidはMTP(ミクロソーム・トリグリセライド転移蛋白)を阻害して肝臓や小腸でトリグリセライドやコレステロール・エステルがVLDL-C生産箇所に移送されるのを妨げる。2007年にファイザーのSlentrol(dirlotapide)が肥満犬治療薬として承認されたが、人間の薬は初めて。副作用は胃腸系と肝臓系が多く、トリグリセライド等が余るため肝臓脂肪が蓄積するリスクがある。

更に、治験では3割以上の患者で肝機能検査値異常が観察され、枠付き警告となった。治療開始前と治療中定期的に肝機能検査を行う。3A4を中高度に阻害する薬の併用は禁忌、simvastatinのような専ら3A4で代謝される薬の併用は注意、ワーファリンの血中濃度にも影響する。一日5mgで開始、最大60mgまで漸増する。

ホモ接合という形容が示唆するように、家族性高脂血症は本来、LDL-C受容体等の遺伝子変異が原因で発生するが、遺伝子に問題はなくても機能が低下している患者もいるようだ。前者だけなら米国の対象患者数は300人程度だが、臨床的診断に基づく家族性高脂血症に使用することも認められたため、3000人と大きく増加した。それでもスタチン(数千万人)より少なく、その分、年間20~30万ドルという大変高い値段で発売される予定。

リンク:Aegerion社のプレスリリース

リンク:FDAの12月26日付プレスリリース

今週は以上です。

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2012年12月23日

海外医薬品ニュース週末版 2012年12月23日号




【ニュース・ヘッドライン】

  • Belinostatは今度こそ治験成功
  • メディビア・JNJの抗HCV薬の第三相試験が続々と成功
  • 非小細胞性肺癌治療用ワクチンの第三相試験がフェール
  • 経口ファブリー病治療薬の第三相試験がフェール
  • ノボが三種類の開発品に関してアップデート
  • 塩野義/GSKのインテグラーゼ阻害剤が承認申請
  • GSK/テラバンスがCOPD治療用FDCを米国で承認申請
  • Hemispherxの慢性疲労症候群治療薬はFDA諮問委員会に支持されず
  • 短腸症候群の治療薬が米国でも承認
  • GSKの四価インフルエンザワクチンも米国で承認
  • 水痘帯状疱疹ウイルスの治療薬が米国で承認
  • ナイアシン配合剤の心血管アウトカム試験が再びフェール
  • FDAがテラビックの皮膚毒性に注意喚起
  • ADAが二型糖尿病の血圧管理目標を緩和

【新薬開発】


Belinostatは今度こそ治験成功

(2012年12月21日発表)

HDAC阻害剤PXD101(belinostat)は、ライセンサーであるデンマークのTopotarget社(Nasdaq OMX: TOPO)が承認申請用試験の成功を発表した直後にライセンシーのスペクトラム・ファーマシューティカルズ(NasdaqGS: SPPI)が未了であることを発表するというチグハグな動きがあったが(2012年9月30日号参照)、遂に、スペクトラムも治験成功を発表した。データは未公表。来年央に承認申請される見込み。

この治験は、再発性難治性の末梢T細胞リンパ腫患者129人を組入れた単群試験で、21日サイクルで1000mg/m2を一日一回、5日間連続で30分点滴静注し、治験医以外の第三者が反応を評価した。FDAの特別プロトコル評価(SPA)を受けており、反応率が20%以上なら成功と判定される。

HDAC阻害剤は遺伝子の複製を阻害することによって細胞増殖を阻害し、アポトーシスを誘導する。血管新生阻害、分化誘導、抗癌剤に対する感受性の回復などの作用も持つようだ。米国では2006年にMSDのZolinza(vorinostat)が皮膚Tセルリンパ腫に、2009年にはGloucester社のIstodax(romidepsin)が末梢T細胞リンパ腫に、それぞれ承認されている。

リンク:スペクトラムのプレスリリース

メディビア・JNJの抗HCV薬の第三相試験が続々と成功

(2012年12月20日発表)

C型肝炎ウイルス(HCV)のゲノムに含まれる、ウイルスの組立に必要なプロテアーゼを阻害する薬は、バーテックスやMSDの二剤が発売された後も開発が活発だ。第三弾になりそうなのがスエーデンのメディビア(OMX: MVIR)がジョンソン・エンド・ジョンソンと共同開発しているTMC435(simeprevir)だ。数多くの第三相試験がロンチされたが、まず三本の試験の成功が発表された。

何れもI型ウイルス感染者を組み入れてPEG化インターフェロン・アルファ及びribavirinと三剤併用し、治療効果を二剤併用療法と比較したもの。初めて治療を受けるナイーブ患者を組入れた二本はSVR12(持続的ウイルス学的奏功率:治療完了後12週間経った段階でもHCVが検出されない患者の比率)が一本は81%、もう一本も80%となり、二剤併用(どちらも50%)を有意に上回った。二剤併用療法が一時的に奏功したもののその後に再燃した患者を組み入れた二次治療試験でも79%対37%と有意に上回った。

忍容性面ではビリルビンの穏やかな上昇が見られたが、可逆的で、大きな問題はなかったようだ。

I型HCVの治療は既に三剤併用が主流になっており、二剤併用に勝っても自慢にはならないが、今後、四剤併用やインターフェロン抜き、ribavirin抜きの併用療法の開発が進むにつれて、どのプロテアーゼ阻害剤と組み合わせるのが最適であるかが問題になるだろう。TMC435は力価が高いためコンビ薬の開発に適し、一日一回投与が可能で、今のところ深刻な副作用は表面化していないので、有力な候補になりうる。発売は2014年と先行品に3年ほど遅れを取りそうだが、まだビジネス・チャンスは残っているだろう。

リンク:メディビアのプレスリリース

非小細胞性肺癌治療用ワクチンの第三相試験がフェール

(2012年12月19日発表)

ドイツのメルクは、非小細胞性肺癌の治療用ワクチン、L-BLP25の第三相試験がフェールしたと発表した。米国のOncothyren(Nasdaq: ONTY、旧社名Biomira)からライセンスした、MUC1のアミノ酸配列をリポソームに入れて抗原としMPLをアジュバントとして使うワクチンで、第三相では一次治療に部分的にしか反応しなかった、あるいは安定化しただけの患者を組入れて、延命効果を偽薬と比較したが、効果がなかった。

中国韓国などの施設で同様なデザインの第三相試験が進行中だが、成功は期待薄となった。日本では小野薬品と共同開発している。

リンク:メルクのプレスリリース

経口ファブリー病治療薬の第三相試験がフェール

(2012年12月19日発表)

グラクソ・スミスクラインとアミカス・セラピュティクス(Nasdaq: FOLD)は、migalastatの第三相ファブリー病治療試験がフェールしたと発表した。ファーマシューティカル・シャペロンという新しい作用機序を持ち、もし成功なら様々な遺伝子疾患の治療に夢が広がるので簡単には諦められないだろう。当面は、もう一本の第三相試験の結果を待つことになりそうだ。

ファブリー病は、細胞のライソゾームに存在するアルファ-ガラクトシダーゼAという酵素の遺伝子異常により、GL-3(グロボトリアオシルセラミド)が分解されず蓄積して様々な臓器に障害が発生する。この酵素を医薬品化したジェンザイム(サノフィの子会社)のFabrazyme(agalsidase beta、和名ファブラザイム)が有効だが、二週間に一回、点滴静注投与しなければならないことが難点だ。

アミカスの社長は、2010年に公開された映画、『小さな命が呼ぶとき』の主役のモデルとなったジョン・クラウリーだ。ポンペ病の娘を助けるためにBMSを辞めて新薬の開発に奔走、酵素補充療法のMyozyme(alglucosidase alfa、和名マイオザイム)を実用化した。アミカスはファーマシューティカルズ・シャペロンの開発に特化している。蛋白質の折畳み異常を是正し、ライソゾームへの移行を促し、そこで離れるという、結婚式で花嫁を新婦のところまでエスコートする父親のような薬だ。

酵素補充療法と異なり、経口投与できることが長所。但し、全ての患者に効く訳ではない模様で、miglastatの場合はファブリー病の5-7割がこの薬に適した遺伝子変異を持っているとのことだ。

残念ながら、同社の開発品は挫折が続いている。今回の第三相試験も、主評価項目の奏功率(6ヶ月の治療で腎臓間質性毛細血管におけるGL-3の蓄積量が半分以下になった患者の比率)が41%となり、偽薬群の28%を上回ったもののpは0.3に留まった。副次的評価項目のGL-3減少率(メジアン値)も41%対6%、p=0.093だった。効果はありそうだが、立証されたとは言えない。

この二つのデータから推測すると、何もしなくてもGL-3が減少する、それほど重くない患者が多く含まれていたために偽薬群の奏功率が高く出てしまったのかもしれない。他に有効な薬が存在する病気の偽薬対照試験でしばしば見られる現象だ。もう一本の試験では酵素補充療法と直接比較しているので、医師も比較的抵抗なく、重い患者を組入れることができるだろう。その点では実力を発揮しやすいはずだが、一方で、実薬対照試験はハードルが高い。この試験の結果は2014年に判明する見込み。

リンク:GSK・アミカスのプレスリリース

リンク:難病情報センター:ファブリー病の解説(和文)

ノボが三種類の開発品に関してアップデート

(2012年12月19日発表)

ノボ ノルディスクが三種類の開発品に関して開発状況をアップデートした。まず、管理放出性インスリン(insulin degludec)とGLP-1作用剤(liraglutide)の固定容量配合剤(FDC)であるIDegLiraは、前期第三相試験で良好な成績を上げた。Insulin degludec(和名トレシーバ)は未だ日本でしか承認されていないため、他の地域での承認を待って、FDCの承認申請を行う予定。

次に、insulin aspart(NovoRapid/NovoLog)の様々な新製剤をテストした第一相試験で速効性や安定性に優れるものが見つかったため、2013年末に3000人規模の第三相試験を開始することが発表された。インスリンはバイオシミラーの開発が比較的容易だろうから、次世代品の開発は重要な課題だ。

一方、NN8555(抗NKG2D抗体)のクローン病プルーフ・オブ・コンセプト試験は中間解析で無益性が認定され、開発中止となった。

リンク:ノボのプレスリリース(pdfファイル)

【承認申請】


塩野義/GSKのインテグラーゼ阻害剤が承認申請

(2012年12月17日発表)

ViiVヘルスケア(GSK、ファイザー、塩野義製薬の抗HIV薬合弁会社)はS/GSK1349572(dolutegravir)をEU、米国、カナダでHIV感染症治療薬として承認申請した。2007年に米国で承認されたMSDのIsentress(raltegravir、和名アイセントレス)、今年8月に米国で承認されたギリアッドの四剤配合剤Stribildの活性成分のひとつであるelvitegravirに次ぐ第3のインテグラーゼ阻害剤だ。創製したのは塩野義製薬。

2013年に承認されたとしてIsentressから6年遅れとなり、また、それまでにelvitegravir単剤も承認されるだろうから、競争環境は厳しい。

Dolutegravirはelvitegravirと異なり試験管試験でIsentress抵抗性ウイルスの多くが感受した。薬自体は優れているので、配合剤を開発して利便性を高めることが重要課題だ。Stribildに配合されている優れた核酸系逆転写阻害剤tenofovirの特許は米国でも5年後に失効するはずなので、lamivudineではなくtenofovir配合薬の投入も視野に入れるべきだろう。

リンク:ViiVヘルスケアのプレスリリース

GSK/テラバンスがCOPD治療用FDCを米国で承認申請

(2012年12月18日発表)

グラクソ・スミスクラインとテラバンス(Nasdaq: THRX)は、新開発の長期作用性ムスカリン拮抗剤umeclidinium bromideと長期作用性ベータ2作用剤vilanterolを新開発のEllipta吸入器に充填して用いるCOPD治療薬を米国で承認申請した。一日一回、吸入する。商標名はAnoroとなるようだ。欧州でも間もなく承認申請される見込み。

リンク:GSK/テラバンスのプレスリリース

【承認審査・委員会】


Hemispherxの慢性疲労症候群治療薬はFDA諮問委員会に支持されず

(2012年12月21日発表)

Hemispherx Biopharma(NYSE MKT: HEB)は2007年にrintatolimodを重度慢性疲労症候群の治療薬としてFDAに承認申請したが、受理されなかった。二度目の申請は受理されたが審査完了となった。2012年に追加データを提出し、やっと諮問委員会にたどり着いたが、ここでも過半の委員が支持しなかった。FDAは来年2月2日までに審査を完了する予定だが、再び追加試験を求められる可能性が高いだろう。

Rintatolimodはジョンズ・ホプキンズ大学からライセンスした二重連鎖RNA薬で、難病である慢性疲労症候群の治療薬として第三相試験が実施されたが、有意な治療効果は示されなかった。FDAが有害事象症例を精査する過程でデータの信頼性に関する疑問も浮上した模様だ。効果がない訳ではなさそうだが、一部の患者にしか効かない可能性があり、それがどのような患者なのかは明らかではない。慢性疲労症候群自体も発病原因には諸説あり、XMRVウイルスの関与が指摘されたこともあるが、その後の追試では確認されなかった。

諮問委員会の意見は分かれ、治療効果については14人中9人が十分に確立されたとは言えないと判定したが、4人は肯定、一人は退場した由だ。安全性についても9対4で否定的な評価が上回ったが肯定意見もあり、承認に値するか(正確には、便益がリスクを上回るか)という最終質問についても、8人が否定的、5人が肯定的だった。このようなケースではFDA自身の判断が重みを増す。過去の経緯から推測すると、承認されない可能性が高いだろう。

リンク:Hemispherxのプレスリリース

【承認】


短腸症候群の治療薬が米国でも承認

(2012年12月21日発表)

NPSファーマシューティカルズ(Nasdaq: NPSP)のGattex(teduglutide)が短腸症候群の治療薬としてFDAに承認された。この病気の治療薬はドイツのメルクのZorbtive(成長ホルモン)などに次ぐ三剤目。2013年第1四半期に発売される予定。

Gattexは小腸内膜の成長を促すGLP-2というホルモンの遺伝子組換え型アナログで、一日一回皮下注射する。短腸症候群は腸の切除術を受けた患者などの合併症で栄養物を吸収できず、点滴投与が必要になるが、Gattexを投与すれば量を減らすことができる。一方で、腫瘍やポリープの成長を促す可能性があり、胃腸閉塞や膵臓障害の懸念もあるため、治療前に内視鏡でポリープを全て切除するなどの措置や各種検査が必要だ。

米国の患者数は1~1.5万人と推測されており、同社はピーク年商3.5億ドルを期待している。EUでも今年9月に承認、権利を持つ武田薬品が販売する。

リンク:NPSのプレスリリース

リンク:FDAのプレスリリース

GSKの四価インフルエンザワクチンも米国で承認

(2012年12月17日発表)

グラクソ・スミスクラインはFluarix四価インフルエンザワクチンが米国で承認されたと発表した。

インフルエンザワクチンは春先に冬に流行しそうな株を予想し、A型インフルエンザ・ウイルスから二株、B型から一株を選んで培養・混合する。予測は難しく、そもそも、同じ年でも国や地域、時期によって変わることが多い。似たウイルスならある程度の効果が期待できるが、全く異なると期待できない。中でもB型はビクトリア株と山形株の両方が流行するパターンが続いている。このため、四価ワクチンの開発が進められており、米国では今年2月のアストラゼネカのFlumist(点鼻用生ワクチン)に続いて今回、Fluarixが承認された。

インフルエンザワクチンのもう一つの世界的大手であるサノフィも開発中。日本でも実用化されれば、折角ワクチンを打ったのに感染したという苦情が減るだろう。教科書的に言えば、インフルエンザワクチンは重大な合併症のリスクを削減するためのものであり感染を防ぐために打つわけではなく、また、リスクが減ると言ってもゼロになる訳ではない。苦情を言われても困るのだが、それはそれとして、年間に何千万人が接種するのだから効果や安全性の検証を怠るべきではなく、少しでも良い製品を開発する努力をしなければならない。

リンク:GSKのプレスリリース

水痘帯状疱疹ウイルスの治療薬が米国で承認

(2012年12月21日発表)

FDAはカナダのCangene社のVarizigを水痘帯状疱疹ウイルス感染症の治療薬として承認した。米国の場合、多くの国民が、子供の頃に感染したりワクチンによって免疫を持っているが、抗体を持たない人が感染すると重度感染症を発症し死に到るケースもある。抗ウイルス治療が無効であったり不適例もある。

Varizigは抗体を多く持つ健常者から採取した血漿分画製剤で、曝露から4日以内に投与すれば症状を緩和することができる。同様な薬が2006年に回収されたため、唯一の製品となる。

リンク:FDAのプレスリリース

【大規模試験】


ナイアシン配合剤の心血管アウトカム試験が再びフェール

(2012年12月20日発表)

ナイアシンはHDL-CやLDL-Cの治療薬として広く用いられているが、難点は、火照りなどの副作用が出やすいことだ。MSD(米国のメルク)はこの副作用を緩和するDP1阻害剤laropiprantを開発、徐放性ナイアシンと共に配合したTredaptiveを2007年に欧米で承認申請、欧州では承認された。火照りが不快で服用を止める患者が減れば、LDL-C減少・HDL-C増加というナイアシンの便益を長期間享受でき、その結果、心筋梗塞などの冠動脈疾患のリスクを削減できる---はずだった。

しかし、オックスフォード大学を中心に英国や中国などで実施された心血管アウトカム試験、HPS-2 THRIVEはフェールした。MSDの発表によると心血管疾患リスクを削減することはできず、致命的ではないが重篤な有害事象が増加した。Tredaptiveは約70ヶ国で承認され約40ヶ国で販売されているが、MSDは新たに治療を開始しないよう警告した。これを受けて、EUも1月に再審査を行うことを発表した。

Tredaptiveは米国では承認されず、MSDはHPS2試験の結果が出るのを待っていたが、申請断念となった。2012年1~9月の売上高は1300万ドルと期待外れに留まっているが、効果や安全性も期待外れなら仕方がない。試験結果は3月のACC(米国心臓学会)で発表されると予想されるが、内容次第では、アボットのナイアシン製剤Niaspanの需要にも影響が出るだろう。AIM-HIGH試験に次ぐ、二度目のフェールなのでナイアシンの効果に疑問を持たせるには十分以上だ。

尤も、フェールの原因としては様々なものが考えられる。FDAが承認を見送った時の私の想像は、simvastatinとの相互作用による副作用の増加、アスピリンとの相互作用による抗血小板作用の減少、ナイアシンやlaropiprantの副作用だった。順番に検討しよう。

HPS-2THRIVEは、MSDが開発したsimvastatinやezetimibeを服用している患者に更にTredaptiveを投与する効果を比較するデザインなので、simvastatinとTredaptiveの相互作用が治験成績に影響する。実際、1万人以上を組入れた中国では、Tredaptive群のマイオパシー発生率は1.1%で偽薬群の6倍だった(今年のESCで発表された中間解析のデータ)。

マイオパシーはスタチンの典型的な副作用であり、simvastatinは薬物相互作用が比較的大きいので、単なる相加作用ではなく相乗作用が起きたとしても不思議はない。ナイアシンとlaropiprantのどちらがリスクをブーストしたのかは判然としないが、他のスタチンなら違った結果になったかもしれない。

DP1拮抗剤がアスピリンの抗血小板作用を妨げるという疑いは以前からある。MSDの試験では特に問題がなかった模様だが、HPS-2試験がフェールしたことで疑惑が再燃するだろう。

ナイアシンは肝腎毒性を持ち、laropiprantの著高用量併用試験ではリスクが増加した。投与を続けるうちにリスクが高まり、服用中止する患者が増えて、効果の群間差が希薄化されたことも考えられる。

CETP阻害剤やフィブレートの心血管アウトカム試験がフェールした後だけにHDL-C治療薬の効用に疑問を呈する意見が増加しそうだが、ナイアシンはLDL-C削減効果も持つのだから、早計だろう。但し、HDL-C値が正常な患者も組入れてHDL-C治療薬の試験を行うことには私も疑問を持つ。大型薬の特許切れを迎えている薬品業界が次の大型薬を熱望するのは無理もないが、階段は一歩ずつ上がるのが正しい行動で、HDL-C治療薬ならHDL-C値が低い患者を最初のターゲットにするのが王道だろう。

リンク:MSDのプレスリリース

リンク:EMA(EUの薬品審査機関)のプレスリリース

リンク:2012年ESCで発表された中間安全性解析のスライド(PowerPointファイル)

【医薬品の安全性】


FDAがテラビックの皮膚毒性に注意喚起

(2012年12月19日発表)

FDAは、ヴァーテックス(Nasdaq: VRTX)の抗HCV薬Incivek(telaprevir、和名テラビック)の深刻な皮膚有害反応に関する安全性警告を発出した。2011年5月の発売から2012年6月までの13ヶ月間に、DRESS症候群が92例、SJS症候群が20例の発生が報告されたため。TEN(中毒性皮膚壊死融解症)も日本で二例報告され、うち一例は致死的だった。皮膚毒性は既知の副作用だが、症状が悪化した後も投与を続けて死に到った症例もあるようなので、ヒューマン・エラーの側面もありそうだ。

FDAは、深刻な皮膚反応が起きたら、三剤併用療法の全ての薬剤を中止し、即座に治療を行うよう勧告した。もし他に同様なリスクを持つ薬を服用している場合はそれも中止する。日本は臨床試験でも重篤な皮膚毒性が発生しており、人種的な問題があるのかもしれない。

マスメディアには特効薬という言葉が飛び交うが、薬と毒薬は紙一重であり、また、誰かにとっては特効薬でも他の人には悪魔の薬かもしれない。正しく理解し正しく使うことが重要であり、そのためには、特効薬などという一面的な形容は排除すべきである。

リンク:FDAのプレスリリース

ADAが二型糖尿病の血圧管理目標を緩和

ADA(米国糖尿病学会)は毎年、糖尿病診断治療ガイドラインを見直しDiabetes Care誌に刊行しているが、2013年1月改定では、二型糖尿病の収縮期血圧管理目標を従来の130 mm Hg未満から140 mm Hg未満に緩和するらしい。一部で報道されている。これまでは観察的試験に基づいていたが、ACCORD試験など複数の無作為化割付試験の結果を踏まえて、緩和に踏み切った。130 mm Hg未満を目標に治療しても、脳卒中が若干減るだけで死亡・心筋梗塞リスクは減らず、低血圧性副作用が増加するからだ。

高血圧の治療でもJカーブ効果を懸念する意見があり、二型糖尿病の血糖治療目標もlower is betterではないことが判明した。世の中には意外な出来事が多く、だからこそ、アウトカム試験を行うことが重要だ。日本人や中国人は白人より脳卒中のリスクが高く、従って、ADAのガイドラインを鵜呑みにせず日本独自のアウトカム試験で答えを出す必要があるだろう。

今週は以上です。

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2012年12月16日

海外医薬品ニュース週末版 2012年12月16日号




【ニュース・ヘッドライン】

  • ASH:アンビット/アステラスの開発品はAMLに有効
  • ASH:セルジーンの第三の免疫調停薬の第三相試験が成功
  • イーライリリーはsolanezumabの追加試験を実施へ
  • イーライリリーのリウマチ性関節炎第三相試験にブレーキ
  • SYK阻害剤の坑リウマチ作用はTNF阻害剤に劣る?
  • バイエルがラジウム223を前立腺がん治療薬としてEUで承認申請
  • ファイザーがエストロゲン・SERMコンビ薬を米国で承認申請
  • CHMPが三種類の新薬に肯定的評価、二剤に否定的評価
  • 難治性CML用薬が米国で承認
  • Zytigaを化学療法に先駆けて使うことが承認
  • 米国で肺炭疽治療薬が承認
  • クッシング病の治療薬が米国で承認



【新薬開発】


ASH:アンビット/アステラスの開発品はAMLに有効

(2012年12月10日発表)

先週末にASH(米国血液学会)で様々な開発品の第二相、第三相試験の結果が発表された。先ず、米国のアンビット・バイオサイエンス社がアステラス製薬と提携して開発しているFLT3チロシンキナーゼ阻害剤、AC220(quizartinib)の第二相AML(急性骨髄性白血病)試験。AMLの3割を占める、FLT3遺伝子にインターナル・タンデム・デュプリケーション(ITD:遺伝子の中で同じ塩基配列が何度も繰り返されるもので悪性度が高く治療に反応しにくい)を持つタイプに効果が高そうだ。男は135mg、女は90mgを一日一回経口投与する。

60歳以上の一次治療不応患者を組入れた第一コフォートのうちFLT3-ITD型(90人)では、複合完全寛解率が53%だった。赤血球・白血球が正常化しない完全寛解が50%で殆どを占めた。メジアン反応持続期間は10週間、メジアン全生存期間は19週間。FLT3-ITD以外では複合完全寛解率36%だった。

18歳以上の再発性・難治性患者を組入れた第二コフォートでもFLT3-ITD型(100人)は複合完全寛解率46%(赤血球・白血球が正常化しない完全寛解が40%)、それ以外は32%と第一コフォートと同様だった。

今後の開発方針は明記されていないが、AMLの治験の割には規模が大きいので、加速承認申請に向けて当局と相談する可能性がありそうだ。

リンク:ASHの様々な新薬治験発表に関するプレスリリース(12月9日付)

リンク:アンビットのプレスリリース

リンク:アステラス製薬のプレスリリース(和文、pdfファイル)

ASH:セルジーンの第三の免疫調停薬の第三相試験が成功

(2012年12月9日発表)

セルジーン(Nasdaq: CELG)はThalomid(thalidomide)とRevlimid(lenalidomide、和名レブラミド)の二種類の免疫調停薬を多発骨髄腫の治療薬として商品化しているが、第三のCC-4047(pomalidomide)も第三相試験が成功した。Revlimidとbortezomib(和名ベルケイド)による前治療経験を持つ多発骨髄腫患者455人を2対1の割合で組入れた三次治療試験で、dexamethasoneだけの群と二剤併用群の無増悪生存期間(PFS)を比較した。

中間解析で主目的を達成、対照群の患者が併用療法にスイッチすることを認めた。ハザードレシオは0.45、全生存のハザードレシオも0.53で共にpが0.001を下回った。尤も、PFSのメジアン値は3.6ヶ月対1.8ヶ月で差はそれほど大きくない。有害事象はこれまでと同様に熱性好中球減少症が増加した。

CC-4047は第二相試験の結果に基づいて今春、欧米で承認申請された。第三相試験の成功で承認に一歩近づいたと言えるだろう。

リンク:セルジーンのプレスリリース

イーライリリーはsolanezumabの追加試験を実施へ

(2012年12月12日発表)

イーライリリーの坑アミロイドベータ(11-20)抗体、LY2062430(solanezumab)は、アルツハイマー病の第三相試験が二本実施されたがどちらもフェールした。一本では軽度患者に効果の兆しが見られたため同社は承認申請に向けて欧米等の当局と相談したが、支持してもらえなかったようだ。2013年に追加試験を開始することを決めた。

アルツハイマー病は難病なので治療効果が小さくても承認される可能性はあるが、偽薬比で統計的に有意な差があることが前提だ。二本のうち一本しか有意ではなかったのだから、承認申請が認められなかったのは当然だろう。坑うつ剤を見ても分かるように、もう一本成功すれば治験が二勝一敗でも承認される可能性があるが、成功するだろうか?

リンク:イーライリリーのプレスリリース

イーライリリーのリウマチ性関節炎第三相試験にブレーキ

(2012年12月13日発表)

イーライリリーは、坑BAFF完全ヒト化抗体LY2127399(tabalumab)のリウマチ性関節炎第三相試験の一つが無益性で中止されたと発表した。他の二本は投与を継続しているが、新規組入れは中断となった。坑BLyS完全ヒト化抗体Benlysta(belimumab)もリウマチは第二相試験がフェールしたので、この作用機序は効果が限定的なのだろう(BAFFはBLySの別名)。

Benlystaの承認用途と同じ全身性エリトマトーデスの第三相試験は続行されている。

リンク:イーライリリーのプレスリリース

SYK阻害剤の坑リウマチ作用はTNF阻害剤に劣る?

(2012年12月13日発表)

アストラゼネカはライジェル社(Nasdaq: RIGL)からSYK阻害剤R788(fostamatinib disodium)をライセンスして坑リウマチ薬として第三相試験を実施中だ。結果は来年上期に明らかになる見込み。販促面で残念なことに、後期第二相単剤投与試験でHumira(adalimumab、和名ヒュミラ)に負けたことが明らかにされた。偽薬には勝ったので効果はあるのだろうが、発売後の競争相手は少なくないので直接比較試験で勝てなかったことはハンデになる。

尤も、R788は経口剤なので利便性が高い。11月に米国で承認されたファイザーのJAK阻害剤、Xeljanz(tofacitinib)も経口剤だが、免疫抑制作用が強いために日和見感染症や癌が増える懸念がある。この二剤は標的が異なるものの、IL-6の低下など作用が類似しているので、もし忍容性が優れているなら出番はあるだろう。

リンク:アストラゼネカのプレスリリース

【承認申請】


バイエルがラジウム223を前立腺がん治療薬としてEUで承認申請

(2012年12月14日発表)

バイエルは二塩化ラジウム223を去勢抵抗性前立腺癌で骨転移がりdocetaxelによる治療に不耐・不適・不応な患者向けにEUで承認申請した。第三相試験では全生存期間のハザードレシオが偽薬比0.695で統計的に有意、メジアン生存期間は13.6ヶ月対8.4ヶ月だった。

二塩化ラジウム223はカルシウムに似ているため骨の分布が良く、局所的にアルファ線を放射する。ノルウェーのAlgeta社から世界開発販売権を取得したもの。

リンク:バイエルのプレスリリース

ファイザーがエストロゲン・SERMコンビ薬を米国で承認申請

(2012年12月13日発表)

ファイザーが2009年に買収したワイスはエストロゲン製剤の大手で、ライガンド社(Nasdaq: LGND)からライセンスした選択的エストロゲン受容体調節剤bazedoxifeneとエストロゲンのコンビ薬も開発している。FDAがbazedoxifeneを承認しなかったため開発が遅れていたが、EUに続いて米国でも、承認申請が受理された。適応症は閉経期の血管運動性症状や外陰部・膣萎縮の治療と閉経後骨粗鬆症の予防。

リンク:ファイザーのプレスリリース

【承認審査・委員会】


CHMPが三種類の新薬に肯定的評価、二剤に否定的評価

(2012年12月14日発表)

EUの医薬品科学的審査委員会であるCHMPは12月の委員会で三種類の新薬に肯定的評価、二剤に否定的評価を下した。

リンク:CHMPのプレスリリース

肯定的評価を受けたのは、先ず、ロシュの坑2C4ヒト化抗体Perjeta(pertuzumab)。同社のHerceptin(trastuzumab、和名ハーセプチン)やdocetaxelと併用で、her2陽性の転移性・局所再発性切除不能乳癌の一次治療に用いる。Herceptinはher2に結合して本来のレガンドの結合を阻害するが、Perjetaはher2の異なったエピトープに結合してEGFR、her3、her4と共役するのをブロックする。

臨床試験ではHerceptin・docetaxel群と比べて三剤併用群の無増悪生存期間はメジアン18.5ヶ月と6ヶ月延長、ハザードレシオは0.62だった。全生存のハザードレシオも0.66で有意だった。米国では6月に承認され、5900ドル/月の価格で発売された。三剤併用は薬だけで月1万ドルを超えるので、医療保険や患者の負担が大きい。

リンク:ロシュのプレスリリース

次に、ルンドベックのSelincro(nalmefene HCI)がアルコール依存の治療薬として肯定的評価を受けた。オピオイドのミュー、デルタ、カッパ受容体を選択的に調節する薬で、臨床試験では大酒(男はアルコールを60g以上、女は40g以上)飲酒日数が6ヵ月後に6割以上減少、偽薬群も半減したが統計的に有意な差があった。二本目も6割以上減ったが偽薬群も同程度減少した。これらの試験では禁酒指導は行わなかった模様だが、CHMPは心理社会的な支援が必要と判定した。

フィンランドのBio Tie Therapiesから欧州などの権利を取得したもの。EUのアルコール依存有病率は男が5-6%、女は1-2%とのこと。別の会社が病的賭博で第二・三相試験を行ったことがあるが、フェールした。

リンク:ルンドベックのプレスリリース

リンク:EUのプレスリリース

Alexza(Nasdaq: ALXA)のAdasuve(loxapine)も肯定的評価を受けた。統合失調症や双極障害の興奮(アジテーション)症状を迅速に治療する、吸入用薬。治験では10分後から有意な治療効果が見られた。

リンク:Alexzaのプレスリリース

一方、否定的評価を受けたのはISIS(Nasdaq: ISIS)がサノフィ傘下のジェンザイムと共同開発したKynamro(mipomersen)。ApoB-100の遺伝子の翻訳を妨げるアンチセンス薬で、家族性高脂血症患者に週一回皮注した治験ではLDL-Cが偽薬比20%減少した。支持されなかった理由は有害事象に関する懸念で、インフルエンザ様症状や注射箇所反応、肝臓副作用による離脱が比較的多かったため、慢性病薬としての適性が疑われた。肝臓脂肪の蓄積や深刻な心血管疾患のリスクも見られた。

先週号で新薬絡みのインサイダー取引を取り上げた。立件はされていないが、mipomersenもフロントポイント・パートナーズのヘッジファンド・マネージャーが第二相試験で肝毒性が発生したことを素破抜き、ISIS側がそれほど深刻ではないと否定したことがある。

リンク:ISISのプレスリリース

ヴァンダ(Nasdaq: VNDA)が統合失調症治療薬として承認申請したFanaptum(iloperidone)も否定的評価を受けた。効果が小さくオンセットが遅い上にQT延長の懸念もあるため、便益がリスクを上回るとは言えない、と評されている。ヴァンダは異議申立・再審手続きを要請する考えだ。

リンク:ヴァンダのプレスリリース

【承認】


難治性CML用薬が米国で承認

(2012年12月14日発表)

アリアド社(Nasdaq: ARIA)が承認申請していたCML(慢性骨髄性白血病)用薬Iclusig(ponatinib)が予定より早くFDAに承認された。アリアドは年内に9580ドル/月の価格で発売する予定。

CMLはノバルティスのGleevec(imatinib)が有効だが、T315I変異が生じると効果が減じる。この変異はTasignaなど他のbcr-abl阻害剤にも抵抗性を持つが、Iclusigは第二相試験でT315I変異型慢性期患者における主要細胞遺伝学的反応率が70%だった。一次治療試験でどれだけの効果を挙げるか、注目される。

リンク:アリアドのプレスリリース

リンク:FDAのプレスリリース

Zytigaを化学療法に先駆けて使うことが承認

(2012年12月10日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンのCYP17A1阻害剤Zytiga(abiraterone)の適応拡大が米国で承認された。2011年に去勢抵抗性前立腺癌で化学療法の前治療歴を持つ患者向けに初承認されたが、まだ化学療法を受けていない患者に対象が広がった。前立腺癌は手術や放射線療法、ホルモン療法が有効だが、再発した場合は化学療法を施行するのが一般的だった。しかし、作用が若干異なるもののテストステロンの分泌を抑制する薬であるZytigaが有効であることが分かったので今後は化学療法の出番が減少するだろう。

リンク:ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

米国で肺炭疽治療薬が承認

(2012年12月14日発表)

GSKは坑炭疽菌保護抗原完全ヒト抗体raxibacumabが肺炭疽治療薬として米国で承認されたと発表した。肺炭疽は炭疽菌を吸い込むことによって発症する。ごく稀だが死亡率は著しく高い。発生率が低いため薬効は動物試験で確認した。サルでは生存率64%、ウサギでは44%、偽薬群は何れもゼロだった。抗生剤併用ウサギ試験では生存率82%と抗生剤だけの65%より高かった。

貿易センタービル事件の後、TVニュース・キャスターに炭疽菌が郵送され生物兵器テロかと騒がれた。それ以前に、米国政府のアドバイザーがソビエトの生物兵器研究所勤務時代に感染性を高める遺伝子操作を加えた炭疽菌を見たと報告したこともあった。米国など多くの国がキノロン系合成抗菌剤を備蓄したが、米国はraxibacumabも数万回分を備蓄した。民需は小さいので、今後は、政府の期限切れによる追加発注が需要の中心になりそうだ。

リンク:GSKのプレスリリース

リンク:FDAのプレスリリース

クッシング病の治療薬が米国で承認

(2012年12月14日発表)

ノバルティスはSignifor(pasireotide)がクッシング病治療薬として承認されたと発表した。手術不適・不応の患者に用いる。クッシング病は癌などが原因で副腎皮質刺激ホルモンが過剰分泌され、様々な症状が起きる。患者数は日米欧で1万人。

リンク:ノバルティスのプレスリリース

リンク:FDAのプレスリリース

今週は以上です。

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2012年12月9日

海外医薬品ニュース週末版 2012年12月9日号




【ニュース・ヘッドライン】

  • ASH:BTK阻害剤がCLLに著効
  • SABCS:ファイザーの画期的新薬が第二相試験で有望な成績
  • SABCS:ハラヴェンの効果はゼローダを大きく上回ってはいない
  • アルツハイマー病新薬:MSDは第三相にゴー、BMSはストップ
  • EUがPTC124の承認申請を受理
  • バイエルがEUでアイリーアをCRVO性黄斑浮腫に適応拡大申請
  • 製薬会社や医学研究者の皆さん、インサイダー取引にご注意!



【新薬開発】


ASH:BTK阻害剤がCLLに著効

(2012年12月8日発表)

ファーマサイクリクス社(Nasdaq: PCYC)は、ジョンソン・エンド・ジョンソンと共同で第三相試験を実施しているBTK阻害剤、PCI-32765(ibrutinib)の第二相慢性リンパ性白血病(CLL)試験の結果概要を発表した。ASH(米国血液学会)で発表される予定だが、学会側の記者発表会で8日に取り上げられたためエンバーゴ(報道・発表禁止)が解除されたようだ。

後期第一相/第二相試験では116人の高齢患者に一日一回、経口投与したところ、初めて治療を受ける患者では反応率68%、26ヶ月無増悪生存率は96%、再発・難治性のCLLと小リンパ性白血病の患者では各71%と75%だった。高リスク患者にrituxanと併用した第二相試験でも反応率83%と著効を示した。主なG3/4(重度/深刻な)有害事象は骨髄抑制だった。真菌感染に肺炎を合併した致死例も一例あったようだ。

BTKはBセルのサバイバルに関わるチロシン・キナーゼで、阻害するとアポトーシスが誘導される。両社は2011年12月に開発販売提携を結び、2012年に第三相のofatumumab対照再発性・難治性CLL試験と、bendamustine・rituximab併用試験を開始した。来年1月にはchlorambucil対照高齢者一次治療試験も始まる予定。マントルセル・リンパ腫のtemsirolimus対照二次治療試験も進行しており、期待のほどが窺われる。

リンク:ファーマサイクリクス社のプレスリリース

リンク:MedPageの記事

SABCS:ファイザーの画期的新薬が第二相試験で有望な成績

(2012年12月5日発表)

CTRC-AACRサンアントニオ乳癌会議(SABCS)でファイザーのCDK4/6阻害剤の乳癌第二相試験結果が発表された。中々良い成績で、同社は2013年に第二/三相試験を開始する計画だ。

この試験は閉経後局所進行性・転移性乳癌でエストロゲン受容体陽性、her2陰性の患者165人を、アロマターゼ阻害剤letrozole(Femara、和名フェマーラ)とPD-0332991(PD-991)を併用する群と、Feramaだけを投与する群に無作為化割付した、オープンレーベル一次治療試験。letrozoleは2.5mgを一日一回経口投与、PD-991は125mgを一日一回、21日間連続経口投与し7日間休むサイクルを繰り返した。

主評価項目のPFS(無増悪進行期間)はメジアンで各26.1ヶ月と7.5ヶ月となり、ハザードレシオ0.37、pは0.001未満となった。反応率は各45%と31%で有意に上回ったが、PFSほど大きな差はなかった。主なG3/4(重度・深刻な)治療関連有害事象は好中球減少症などの骨髄抑制と疲労。

乳癌のうちエストロゲン受容体陽性・her2陰性は6割を占めるので、PD-991の用途は広い。この第二相試験は第一部と第二部に分かれ第二部では前臨床の知見に基づき特定のタイプだけを組み入れたが、効果は大差なかったようだ。

CDK4とCDK6は細胞分裂・増殖過程に関与するキナーゼで、阻害すると、細胞周期がG1期からS期(遺伝子複製期)に進めなくなる。PD-991はファイザーが買収したワーナー・ランバートがオニクス(Nasdaq: ONXX)と共同開発したアッセイを用いてスクリーニングしたもので、オニクスは最大で1700万ドルの達成報奨金と一ケタ台の売上ロイヤルティを受取る権利を持っている。

リンク:ファイザーのプレスリリース

リンク:CTRC-AACR SABCSのプレスリリース

リンク:第二/三相試験の治験登録

SABCS:ハラヴェンの効果はゼローダを大きく上回ってはいない

(2012年12月7日発表)

SABCSではエーザイのHalaven(eribulin mesylate、和名ハラヴェン)の局所進行性・転移性乳癌第三相試験の結果も発表された。摘出術後や転移後の標準的な薬であるアントラサイクリン系とタキサン系の抗癌剤を既に使ってしまった患者1102人を組み入れて全生存期間とPFSをcapecitabine(Xeloda、和名ゼローダ)と比較したが、どちらも有意差はなかった。副作用の出方や投与方法が異なるので、患者に応じて使い分けることになりそうだ。

全生存期間はp=0.056と惜しかったが、主評価項目が二つあるので通常より厳しく評価する必要があり、また、メジアン値の差は1.4ヶ月、ハザードレシオは0.879なのでそれほど大きな差ではない。サブポピュレーション分析ではher2陰性患者とトリプル・ネガティブ(her2、エストロゲン受容体、プロゲスチン受容体の何れも陰性)患者で比較的良い数値がでた。後者はポストホック分析だが、ハザードレシオが0.702と良くく、トリプル・ネガティブに有効な薬は少ないことを考えれば、更に探索する価値がありそうだ。

リンク:エーザイのプレスリリース(和文)

リンク:CTRC-AACR SABCSのプレスリリース

アルツハイマー病新薬:MSDは第三相にゴー、BMSはストップ

(2012年12月3日と11月30日発表)

アルツハイマー病の坑アミロイド療法は二種類の抗体医薬とガンマ・セクレターゼ阻害剤の第三相試験が相次いでフェールし行き詰まった感があるが、まだ希望が残っているようだ。BMSが11月30日にガンマ・セクレターゼ阻害剤BMS-708163(avagacestat)の開発中止を発表した一方で、MSD(米国メルク)は12月3日にBACE1阻害剤MK-8931の第二/三相試験開始を発表した。BACE1阻害剤はイーライリリーやエーザイ等も臨床開発を進めており、次の開発激戦区になりそうだ。

アルツハイマー病患者の脳で蓄積が見られるアミロイド斑は、アミロイド前駆蛋白(APP)がアルファ、ベータ、ガンマの三種類の酵素で切断されてできる。このうち、ベータ・セクレターゼは若年性アルツハイマー病の一部にも関係しており創薬ターゲットとして有望なのだが、ガンマ・セクレターゼ阻害剤と比べて開発が遅れていた。

ところが、ガンマ・セクレターゼ阻害剤はLY450139(semagacestat)の二本の第三相試験で症状がむしろ悪化する懸念が浮上、第二相では見られなかった皮膚腫瘍も増加した。BMS-708163も高用量を投与した群で同様な現象が見られたことがあるので、開発中止は止むを得ないところだろう。

MK-8931は第一相単回投与試験で脳脊髄液中のアミロイド・ベータ(1-40)と同(1-42)が9割以上減少、10分の一の量を反復投与した試験でも50~80%減少した。アミロイド・ベータをノックアウトしたマウスでは神経細胞の機能に異常が見られるようだが、MK-8931はマウス、ラット、サルの何れでも問題なかった。もしMK-8931が駄目ならベータ・セクレターゼ阻害剤による治療は無効と結論できるような、キチンとした試験薬を用意するところは流石、MSDだ。

今回の第二/三相試験では、先ずフェーズIIポーションで200人の軽中度アルツハイマー病を組み入れて、偽薬、12mg、40mg、60mgの何れかを一日一回投与し、安全性を検討する。良好ならフェーズIIIポーションで1700人を組み入れ、78週間後の認知機能、生活機能をADAS-CogとADCS-ADLというオーソドックスな病状評価スコアを用いて比較する。

リンク:MSDのプレスリリース

リンク:MK-8931の第二/三相試験の治験登録

リンク:
BMSのプレスリリース


【承認申請】


EUがPTC124の承認申請を受理

(2012年12月6日発表)

PTCセラピュティクスは、EUの薬品審査機関であるEMAがPTC124(ataluren)の承認申請を受理したと発表した。適応は、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのうち、ジストロフィン機能喪失変異(ナンセンス・ミューテーション)を持つ患者。難病なのでキチンとした第三相試験で薬効を確認することを条件に承認される可能性もあるが、薬効の裏付けが惜しくもフェールした第二相試験なので、不透明だ。

デュシェンヌ型筋ジストロフィーは筋力が低下し歩行能力やバイタルな機能が次第に低下する難病。米国の患者数は約1万人で、このうち約13%では、ジストロフィンの遺伝子の途中にpremature termination codon(PTC)と呼ばれる塩基配列があり、mRNAの翻訳が途中で終わってしまうためちゃんとしたジストロフィンを作れない。イスラエルでは5割と特にこのタイプが多い。PTC124はこのPTCを探知する機能を阻害する模様。

第二相試験では二種類の用量をテストしたが、6MWT(6分間歩行試験)の改善幅は偽薬比有意ではなかった。しかし、低用量群では、事前の解析計画に基づく調整を行なう前の素の数値が29.7m改善し、治験の仮説であった30mを若干下回っただけだった。解析方法の違いに関する詳細は不明であり、また高用量群は偽薬並みだったので、本当に効果があるのかどうかは分からない。

PTC124は嚢胞性線維症の第三相試験でも呼吸機能を若干改善したが有意ではなかった。何らかの作用を持つのだろうが、薬としては効果不足なのかもしれない。それでも、他社も同様な薬を開発しているので、やがてはもっと優れた薬が登場するかもしれない。

リンク:PTCセラピュティクスのプレスリリース

バイエルがEUでアイリーアをCRVO性黄斑浮腫に適応拡大申請

(2012年12月6日発表)

バイエルはEylea(aflibercept、和名アイリーア)をCRVO(網膜中心静脈閉塞症)患者の黄斑浮腫の治療薬としてEUで適応拡大申請した。滲出型加齢性黄斑変性の治療薬として承認されている坑VEGF薬で、同じ作用機序を持つLucentis(ranibizumab、和名ルセンティス)と適応症で肩を並べるために重要な用途のひとつ。

Eyleaはリジェネロン(Nasdaq: REGN)がトラップ技術を用いて開発した抗体医薬。VEGFの二種類の受容体の可変領域と免疫グロブリンの固定領域を細胞融合したもの。通常の抗体と異なった方法で作るため、既存の抗体医薬の特許を侵害せずに類似した薬を開発できる可能性を持つ、有望な手法だ。バイエルは米国外の権利を持っている。日本でも9月に承認された(参天製薬が販売、バイエルと共同販促)。

リンク:バイエルのプレスリリース

【今週の話題】


製薬会社や医学研究者の皆さん、インサイダー取引にご注意!

日本で今年、大手証券会社が絡むインサイダー取引事件が二件、表面化した。米国でもSEC(証券取引委員会)が強力な捜査陣をフルに活用して多くの犯罪を摘発している。気になるのは、高名な医学者や製薬会社職員が逮捕されたり、辞職したりする事件が増えていることだ。インサイダー取引というと証券売買を行わない人には無縁のように思われがちだが、場合によっては、新薬に関わる重大な未公開情報を気軽に漏らすだけでも犯罪になりうる。情報を求めてあの手この手で近寄ってくる人もいるので、注意が必要だ。

新興医薬品会社の開発品を巡るインサイダー取引で有名なのは、2011年に逮捕されたフロントポイント・パートナーズ社のDr. Joseph Skowronだ。同社はヘルスケア関連株式の投資で有名なヘッジファンド。Skowronはエール大で学位を取りハーバード大でレジデントとなったが金融界に転身した。逮捕の理由となったのは、ヒューマン・ジノム・サイエンシーズ(HGS)社が開発していたアルファ・インターフェロン新製剤の臨床試験で深刻な副作用が発生したことを知り、保有していた同社株を売却して空売りまでしたことだ。

この情報を漏らしたのは欧州最大の病院であるHopitaux de Paris-Pitie-SalpetrierのBenhamou博士で、先にSECに逮捕された。博士はこのアルファ・インターフェロンの治験実施委員会のメンバーで、同時に、フロントポイントのコンサルタントでもあった。報道によると、Skowronはこの新薬を高く評価し同僚が心配するほど多額の運用資産をHGS社株に投資していたが、Benhamou博士のおかげで副作用懸念が表面化する前に売却できたため、推定30億円の損失を回避できた。

Skowronがハーバードを辞めて転職したSAC Capitalという運用資産でトップクラスのヘッジファンドとその系列会社でも多くのインサイダー取引が発覚している。今年11月にはMathew Martomaが、エランが開発していたアルツハイマー病薬のインサイダー情報に基づいて保有株式を売却し200億円以上の損失を回避したとして、SECに告発された。売却したのは2008年で、彼は同年末に7億円以上のボーナスを貰ったとのことだ。

2011年にはFDAの新薬承認審査官がインサイダー取引で逮捕された。同僚から承認審査の情報を聞き出し、予め売買した上で、審査結果が発表され株価が動いた段階で反対売買を行うことを繰り返した。

最近、サノフィ、セルジーンなどの製薬会社職員がチームを組んで行ったインサイダー取引も摘発された。勤務先の会社が買収しようとしている会社の株式を他のメンバーに買わせて利益を山分けするという、違法行為がばれにくい工夫をしたが、最後は見つかった。報道を読むと一人当りの利益は数千万円に過ぎず、職を失うダメージのほうがはるかに大きかっただろう。

それと比べると、ヘッジファンドが絡む事件は巨額の資金が動く。Scrip誌によると、アメリカには機関投資家や証券会社にオピニオン・リーダー的な医学者を紹介するビジネスも存在するようだ。新薬開発の成否によって株価が大きく動く新興企業に投資する者にとって、治験を主導する医師は重要な標的であり、投資の損得や成果報酬の額が大きいだけに、情報を引き出すための予算やモティベーションも大きい。

思い出すのは2007年にASCO(米国臨床腫瘍学会)の学会誌に掲載された注意喚起だ。ヘッジファンドはあの手この手でアプローチし、巧みに情報を引き出すが、治験医はその新薬を開発している製薬会社に対して守秘義務を負うのが一般的であり、場合によってはインサイダー取引で摘発されることもあるので気をつけろ、という内容だ。ASCOを始め、多くの学会が学会発表の抄録を一般公開するようになったが、これも、インサイダー取引を回避するための配慮である。

研究者のスキャンダルというと収賄とか、不正論文が代表的だが、新興企業株式に絡むインサイダー取引はプロが潤沢な予算で行うのでトラップに嵌らないように、くれぐれも注意してください。

リンク:Journal of Clinical Oncologyの注意喚起

リンク:SECのMartoma告発に関するプレスリリース

今週は以上です。

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2012年12月2日

海外医薬品ニュース週末版 2012年12月2日号



【ニュース・ヘッドライン】

  • ギリアッドの坑HCV薬の第三相試験が成功
  • パーキンソン病性精神疾患用薬の第三相試験が今度は成功
  • EUがMSD/エンドサイトの卵巣がん用薬の承認申請を受理
  • FDA諮問委員会が多剤耐性結核菌の治療薬を支持
  • 他に方法がなければtelavancinを院内感染肺炎に用いてもよい
  • 甲状腺髄様癌用薬が米国で承認
  • EUでEyeleaとConstellaが承認



【新薬開発】


ギリアッドの坑HCV薬の第三相経口剤併用試験が成功

(2012年11月27日発表)

ギリアッド(Nasdaq: GILD)はNS5Bポリメラーゼ阻害剤GS-7977(sofosbuvir)のC型慢性肝炎第三相試験が成功したと発表した。遺伝子型II型とIII型のHCVに感染しているインターフェロン不適患者を、GS7977(400mgを一日一回)とribavirin(体重に応じた量を一日二回)の経口剤二剤を12週間投与する群と偽薬だけの群に3対1の比率で無作為化割付けし、SVR12(治療完了の12週間後にウイルス検出不能になった患者の比率)を比較したもの。

結果は、併用群は78%がSVR12を達成、うちII型は93%、III型は61%だった。偽薬併用群は一人も達成しなかった。

GS-7977の第三相試験はII型・III型感染者の初回治療やI型等に感染している患者のインターフェロン・ribavirin試験も進行中。ギリアッドは2013年央に承認申請する予定。

リンク:ギリアッドのプレスリリース

パーキンソン病性精神疾患用薬の第三相試験が今度は成功

(2012年11月27日発表)

ACADIA Pharmaceuticals(Nasdaq:ACAD)のセカンド・チャレンジが成功した。ACP-103(pimavanserin tartrate)のパーキンソン病性精神症状改善効果を調べた第三相試験で、主評価項目(第43日におけるSAPS-PD改善)に有意な治療効果が見られた。

偽薬効果が高く出てフェールした一本目の試験の経験を生かし、二本目は標準療法が励行されている国の医療施設だけで実施して、最初に二週間のランイン期間を設け、症状改善度合いは第三者が評価するプロトコルを導入した。精神疾患の治験は患者を厳選して自然に治る患者を除外することが肝要だ。

ACP-013は同社が発見した物質で5-HT2A受容体のアンタゴニスト/インバース・アゴニスト。バイオベイル(現ヴァレアント・ファーマスーティカルズ)が2010年に提携を解消したため、単独開発している。同社はもう一本、第三相試験を行う予定。

リンク:ACADIAのプレスリリース

【承認申請】


EUがMSD/エンドサイトの卵巣がん用薬の承認申請を受理

(2012年11月27日発表)

MSD(米国のメルク)と米国のエンドサイト(Nasdaq: ECYT)はMK-8109/EC145(vintafolide)の承認申請がEUに受理されたと発表した。アルカロイド系抗癌剤を葉酸(ビタミンB9)と結合した薬で、一次治療で白金薬に反応しなかった白金薬抵抗性卵巣癌の患者を、EC20(etarfolatide)という新開発のSPECT造影剤を用いて検査し、全ての標的病変で葉酸受容体陽性であった場合に、Doxil(doxorubicinのリポソーム製剤)併用で治療する。

MSDらは後期第二相試験等に基づいて条件付承認を求めた。この試験ではPFS(無増悪生存期間)がメジアン5.5ヶ月とDoxilだけの群の1.5ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.38、p=0.018だった。全生存期間の解析は何故かフェールしたが、患者背景に偏りがあったとのことだ。

卵巣癌はEUで年4万人、米国でも年2万人が新たに診断される。白金薬に感受することが多く、その場合は二次治療も白金薬が有効だが、抵抗性患者の二次治療オプションは限られている。MSDは今年4月に世界共同開発販売権を取得した。

リンク:両社のプレスリリース

【承認審査・委員会】


FDA諮問委員会が多剤耐性結核菌の治療薬を支持

(2012年11月28日発表)

ジョンソン・エンド・ジョンソンが承認申請した多剤耐性肺結核治療薬がFDA諮問委員会の支持を受けた。承認審査期限は12月29日。承認なら40年振りの新薬となる。

このTMC207(bedaquiline)は結核菌のATP合成を阻害する。第二相併用試験で優れた効果を示したため、諮問委員18人全員が薬効を認めた。死亡者数が10人と対照群の2人より多かったせいか安全性を認めたのは11人に留まった。同社は2013年に第三相試験を開始して、7剤併用9ヶ月コースと標準療法18~24ヶ月コースの治療効果を検討する予定。

リンク:ジョンソン・エンド・ジョンソンのプレスリリース

他に方法がなければtelavancinを院内感染肺炎に用いてもよい

(2012年11月29日発表)

FDA坑感染症薬諮問委員会はTMC207を討議した翌日に、テラバンス(Nasdaq: THRX)のVibativ(telavancin)の適応拡大申請を検討した。15人中9人が否定的な評価を下したが、他の治療薬に適さない患者に限定して用いることは13人が支持した。

Vibativは2009年に米国でグラム陽性菌による複雑皮膚皮膚構造感染症の治療薬として承認。今回の適応は院内感染肺炎で、EUでは2011年に承認されている。MRSAに有効なのは長所だが、腎毒性が見られることが弱点。院内感染肺炎第三相試験は二本実施され、何れも奏功率がバンコマイシンと比べて非劣性だったが、一本では死亡率が高かった。アステラス製薬が世界共同開発販売権を持っていたが、2012年1月に提携解消となった。

リンク:テラバンスのプレスリリース

【承認】


甲状腺髄様癌用薬が米国で承認

(2012年11月29日発表)

米国のエグゼリキシス(Nasdaq: EXEL)は、Cometriq(cabozantinib)が進行性転移性甲状腺髄様癌向けにFDAに承認されたと発表した。新薬開発企業から医薬品会社にステージアップすることになる。この癌は米国の患者数が年500~700人の希少疾患で、月9900ドルで発売される模様だ。臨床試験では無増悪進行期間がメジアン11.2ヶ月と偽薬群の4.0ヶ月を大きく上回り、ハザードレシオは0.28、p<0.0001だった。

2011年に同じ適応症で承認されたアストラゼネカのCaprelsa(vandetanib)と同じVEGF受容体拮抗剤で、他のVEGF受容体拮抗剤と同様に腸の穿孔や出血が枠付警告されている。

CometriqはGSKがライセンスする権利を持っていたが行使せず、BMSが共同開発販売提携したが解消、エグゼリキシスの単独開発販売となった。今のところ市場規模は極めて小さいが、前立腺癌試験が成功すれば広がるだろう。

リンク:エグゼリキシスのプレスリリース

リンク:FDAのリリース

EUでEyeleaとConstellaが承認

(各2012年11月27日と28日発表)

バイエルは11月27日、Eyelea(afilbercept)が滲出型加齢黄斑変性治療薬としてEUで承認されたことを発表した。米国のリジェネロン(Nasdaq: REGN)から米国外の権利をライセンスしたもので、米国では2011年に承認、日本でも今年9月に承認され11月に参天製薬が発売した。AvastinやLucentisとの三つ巴のシェア争いがEUでも勃発することになる。

EyeleaはVEGFR1とVEGFR2のサブユニットを免疫グロブリンGの固定領域と細胞融合したもので、全てのVEGF-AとPIGFに結合する。効果はLucentisなどの坑VEGF抗体医薬と大差ないように感じられるが、治療を3ヶ月行ったら投与頻度を4週間おきから8週間おきに減らせることがキチンとした臨床試験で確認されていることが長所。

リンク:バイエルのプレスリリース

一方、スペインのアルミラル(ALM: MC)と米国のアイアンウッド(Nasdaq: IRWD)は28日に、Constella(linaclotide)が中重度便秘主導型過敏性腸症候群の治療薬としてEUで承認されたと発表した。アイアンウッドが開発し、今年8月に承認された米国ではフォレスト(NYSE: FRX)が、欧州ではアルミラルが、販売権を持っている。米国では慢性便秘の治療向けにも承認されている。

リンク:アルミラルのプレスリリース

今週は以上です。

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